前々回のこのコラムで紹介した性転換ファイター(男性→女性)のファロン・フォックスが、ナチュラルな女性ファイターと対戦することはフェアであるのか否かについての議論が、米MMAの選手やメディアの間で非常にホットな話題になっている。
UFCスウェーデン大会で気分良く勝利したばかりのマット・ミトリオンは、ネット番組に出演して次のような持論を展開した。
「あの人のことを彼女とは呼ばないぞ。彼は彼だ。彼の染色体は男だ。ジェンダーは変えたかもしれないが、セックスは変わらない。彼は男のままだ。彼は31年間も男だった。俺より少し若いだけだ。その後6年ほど、女性ホルモンを使っていたということだが、それで全部が変わるって言うのか?アホらしい。彼は嘘つきで、病気で、人格障害で、胸が悪くなる化け物だ。本気だぞ。彼が追放されて、今後二度と戦わないことを希望する。本当にゾッとする」
UFCではこの発言を受けて、ミトリオンに無期限の契約停止処分を課し、次のようなリリースを発表した。
「UFCでは、ヘビー級所属選手マット・ミトリオンの『The MMA Hour』での、トランスジェンダーを嫌悪するコメントを強く遺憾に思っております。ミトリオンの侮辱的なコメントは許容しがたく、UFC行動規」にも違反しておりますので、詳しい調査を行なう間、UFCではミトリオンとの契約を一時的に停止します。UFCはLGBTコミュニティーを支援しており、450名の配下選手には敬意を持って他人に接することを求めております」
ロレンゾ・フェルティータは、ミトリオンに対する契約の停止はそんなに長くは続かず、罰金などの処分も科せられることはないだろうとの見通しを口にしながらも、次のようにコメントした。
「トランスジェンダーについてどう思おうが構わないが、ミトリオンのコメントは悪意が強すぎて、一度きちんと検討したほうがいいと思った。簡単な問題ではないし、多くの人が賛否を論じている。公平な議論は許されるべきだが、“胸が悪くなる”とかいうのは別問題だ。NFLでもほかのスポーツでも、同じように対処することだろうと思う」