テッツさん のコメント
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―― 先ほど、バンタム級GP2回戦のカード発表会見が行なわれましたが、ピリッとした雰囲気でしたね。
金太郎 ああ、一応そういう雰囲気で臨みました。対戦相手が井上直樹選手ということは聞いてたし、遊びじゃないですから。
―― 井上選手は今回の優勝候補とも言われていますが、金太郎選手はこの対戦が決まって「うれしかった」と言われていたので、少し驚きました。
金太郎 そうですか? もう、2回戦に来た選手は全員が強いというのはわかっているんでね。その中で誰がいいとか誰がイヤとかはないですけど、逆に優勝候補と言われている選手と対戦できるので、モチベーション的にはいい感じです。
―― ここで勝てそうな相手と対戦して、大晦日に出たいという考えはなかったですか。
金太郎 もう、安牌はいいですよ。どうせ大晦日までいったら2試合しないと優勝できないし、大晦日は1試合目でどうせグチャグチャになると思うんで。だったら、元気なうちにヤバいヤツを潰しとくんが一番いいです。大晦日の1試合目に組まれるより全然いいですね。
―― ご自身のYouTubeでは、井上直樹vs石渡伸太郎戦を石渡勝利と予想されていましたよね?
金太郎 そうですね。石渡選手のほうがいろいろと上回ってるかなと思てたんですけど、井上選手との試合が決まっていろいろ研究していたら、手の長さであったりボクシング技術であったり、あとはスクランブルのうまさでひとつ抜けてるのかな、と。まあ、YouTubeの予想はパッと見の感覚で決めただけなんで。
―― そんなに気にするな、と(笑)。
金太郎 全部当てにいってるわけじゃないし、深く考えてなかったんで。ただ、相手が井上選手になって印象は変わりました。
―― では、あらためて井上選手の強さとは?
金太郎 やっぱり、しっかりステップを使っていてボクシングの技術が凄いのと、リーチがあるぶん遠くで戦えるじゃないですか。だから、相手よりリスクが少ないという。そこですかね。井上選手の手の長さはデカいですよ。
―― 安全圏で戦える強さですか。
金太郎 あとは、無理矢理入ってきたところで、相手の力をうまく利用してバックに回る。そのときの足のロックも強いんじゃないかな、と。そこでキープできるから相手の体力も削れるというか。そこから極めることもできるし、休憩もできるし。やっぱり、やられるリスクが少ない戦い方をするなあとは思います。まあでも、安全な位置でしか戦わないというわけじゃなくて、けっこうしっかり攻めてくるんでね。
―― それ、攻略は難しくないですか?
金太郎 いやいや、難しいとかじゃなく、その中で自分はしっかりと考えがありますから。もちろん、技術や勝負強さ、あとメンタルも強いと思うんですけど、そこはべつにみんな一緒かなと思いますし。特別に「こいつはヤバい」とは思わないです。そりゃ強いけど、そういう相手と戦えるというのは楽しみしかないですね。
―― その井上選手は、1回戦を経てほぼ無傷で上がってくるわけで。一方で、金太郎選手は伊藤空也選手との試合の印象だと、けっこうダメージやケガもありそうでしたが……。
金太郎 それは、もう全然関係ないなと思ってます。どっか動かれへんケガをしているかと言われればしてないし、足をケガしていたのも1ヵ月半以上前なんで充分、治ってますし。前の試合のダメージと言ったら、自分が練習どおりに動かれへんかったメンタル的なダメージぐらいですよ。
―― ということは、右目も大丈夫だったんですか? 2ラウンド途中からは「目が見えなくなった」とも言われていましたが。
金太郎 ああ、もう全然。眼窩底が折れてたら手術しないといけなかったんですけど、運よく折れてもなかったし。だから、全然イーブンの状態ですね。
―― それは安心しました。それにしても、伊藤戦では「自分の戦い方に納得がいかなかった」と言って、ずいぶん鬱憤が溜まっていたみたいですね。
金太郎 そうですね。
―― その反動で「2回戦は実験台だ」という発言をされてましたけど。
金太郎 それは、相手が井上選手でもやることは変わらないです。というか、そこは自分の問題なんでね。鬱憤がたまっているのは自分の責任やし、練習どおりにできひんかったんで。それをちゃんと次の試合で、強い相手だからこそ全部出さないと勝てないですから。
―― 金太郎選手ってけっこう作戦は綿密に立てるほうなんですか?
金太郎 最近は細かく立てるようになりました。前は、2回ぐらいしか相手の試合は観てなかったんですけどね。RIZINに出てから周りの練習仲間もしっかり見てくれるようになったし、ほかの選手がしっかり研究して試合に臨んでいるというのも、選手らのYouTubeを通してわかったんで。前までは誰が研究熱心にやっているかもわからなかったんですけど、YouTubeで誰がどう研究しているとかがわかるんで。それに影響されて自分も周りの仲間もしっかり対策を考えるようになりました。
―― たしかに、いまの時代ってほかの選手がどう試合に取り組んでいるかという情報もバンバン入ってきますもんね。
金太郎 それでも自分にはまだまだ足りない部分もあるんですけど、今回はしっかり作戦を決めて実行していこうと思ってます。この2ヵ月間は井上選手のことだけを考えてやろうと思ってますね。
―― 率直に、どんな試合になるでしょう?
金太郎 まあ、バチバチに……なるのかなあ? でも、当たれば終わる試合にはなりますよ。ただ、ボクは組みもそんなに弱くないんでね。そこは向こうもびっくりすると思います。
―― 伊藤選手も、金太郎選手との組み合いになったときに「パワーにびっくりした」と言われてましたもんね。
金太郎 練習ではもっと強いんで。井上選手にも組み負けることはないと思ってます。まあ、強い相手だからこそ全部出さないと勝てないですから。
―― たしかに井上選手はそういう相手ですよね。あと、前回の試合も振り返りたいんですが、先ほど伊藤戦は「メンタル的なダメージが大きかった」と言われてましたよね。それって具体的にいうとケガがあったからですか?
金太郎 そうです。ケガがあったんでできる練習も限られてたし、体重もめっちゃ落ちにくかったし。水抜きで落とす量が多かったんですけど、それが落ちひんくて焦ったり。あとは、やっぱり地元の大阪大会というところに変にプレッシャーを感じてしまった部分もありました。そこで力みすぎたので、自分の戦い方はできなかったですね。
―― そういうので緊張する金太郎選手って、なんか意外ですね。
金太郎 いやあ、緊張しましたよ(苦笑)。「大阪やから負けられへん、弱いとこ見せられへん」とか、いろいろ雑念がよぎってしまったんで。変に空回りしたのが反省点ですね。誰が相手でも負けられへんのでそこは同じなんですけど、いきなりセミファイナルに組まれたりもしたし。「実力じゃなくて人気だけでセミファイナルか……」とか、自分でそういうのも考えてしまったんでね。ただ、このセミファイナルでしっかり勝って、次は実力で大阪大会のメインイベントに選ばれればと思ってたんで、そこはプラスに働いた部分もあったんですけど。
―― 試合内容は伊藤選手の気迫も凄くて、セミファイナルにふさわしい試合でした。
金太郎 伊藤選手はだいぶ気持ちを作ってきたなとは思いました。リングに向かっている伊藤選手をモニターで見たときに「めっちゃ気合入ってるな」と。しんどい試合になるやろなと思ったし、しんどいことをやったほうが勝つと思ったんで、そこは相手の顔を見て自分も気合を入れましたね。
―― 環境的なプレッシャーもありつつ、試合中盤では目も負傷して。さらに、相手は打っても下がらないという、いろんなプレッシャーが入り混じってたんですね。
金太郎 でも、相手も玉砕覚悟で突っ込んでくるとは思ってたんで、カウンターの練習はけっこうしていたんですよ。それを最後まで実行しようと思ってたんで、作戦どおりといえば作戦どおりだったんですけどね。
―― 大会後のコメントでは、「メンタル面でいい経験になった」と言われてましたよね。
金太郎 ケガがあっても試合は欠場できひんし、減量で「体重、落とせるんかな……」というのもあったし。そういう不安なメンタルの状態でも我慢して、とりあえずやれることをやって、周りにもいっぱい助けてもらいながらなんとか試合をやり遂げることができたんで、そこは自分の自信になったというか。弱ってるときの自分でも戦えるという、そこのメンタルは成長したのかなと思います。
―― けっこう過去イチぐらいキツかったですか?
金太郎 まず、ケガがありましたからねえ。みんな練習しているのに自分は練習できひんかったんですよ。練習もできんし、家でも何もやることがなくて。だから、全然関係ないことやって気を紛らわしたり。
―― 関係ないことって、たとえば何を?
金太郎 ……旅行に行ったりね(苦笑)。ホンマに何もやれなかったんで。
―― けっこう大胆ですね(笑)。でも、そういうので気を晴らすしかないし。
金太郎 そうなんですよ。だから、遊んでるようにみえて……まあ、遊んでたんですけど、そのあいだもずっと試合のことを考えていたんで結局遊びじゃなかったですよね。でも、足の裏を骨折するって、ホンマに……最初のほうは歩くこともできなかったんで。
―― え……。というか、それでよく旅行に行きましたね(笑)。
金太郎 足にギブス巻いて石垣島に行きました(笑)。
―― そんなところまで! でも、さすがに海の中は入れないですよね?
金太郎 いや、取り外し可能なギブスやったんで、取って海にも入ってました。
―― えええ! それはマズい!
金太郎 だから、医者に「何考えてんねん!」と言われましたけど……。
―― そりゃ、そうですよ! でも、結果的にそういうキツい状態でも、ちゃんと試合で勝てたというのが大きかったんですね。
金太郎 総合格闘技って、そういうスポーツなんでね。ヘタに穴も空けられへんし、日本で最大規模の特別なGPに選ばれたということもあって責任があったし。プロとしての仕事やから、変わりもいないじゃないですか。
―― 金太郎選手が欠場となると、ちょっとGP全体の士気もダウンしちゃいますよね。
金太郎 あの大阪大会は、ボクが欠場してたらなんの大会かわからなかったんでね。ただ、個人的には「いまのままじゃヤバいな」と思ったのが本音で。次の井上戦をどう戦うかが自分の課題になるから、今回は勝負に勝つのはもちろん、自分のやれることをすべて出し切って勝ちたいなと思います。
―― ぜひ、本領発揮をお願いします! ところで、今回、金太郎選手のキャリアを探っているうちに、ちょっと面白いエピソードを発見しまして。金太郎選手といえばケンカのイメージがありますが、ケンカに目覚めたのは、小学生のときにいじめっこに反撃したのがキッカケだったそうですね。
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