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大会後恒例!RIZIN広報の笹原圭一さんが超RIZIN5マッチメイクの裏側と、広島大会を総括します!(聞き手/ジャン斉藤)


【1記事から購入できるバックナンバー】

・大感動!! 扇久保vs神龍の“鶴屋プロレス”とは何か■笹原圭一



笹原
 ファン参加型だった超RIZIN5の記者会見はおかげさまで大盛況でした!

――1000人近く集まってすごかったですよね。ただ、ビックリしたのは、最後に榊原さんの囲み取材をやるということで、控室に入った瞬間、榊原さんが大激怒してて(笑)。

笹原
 「笹原、オマエは怒っているか!?」「会見の進行に怒ってます!」と(笑)。

――
それは“猪木問答”です!(笑)。

笹原
 ボクも会見の仕切りにむちゃくちゃ怒りました。

――
あれだけ盛り上がった会見だったのに納得がいかなかったんですか?

笹原
 全然ダメですねぇ。大反省です!今回発表されたカードには自信がありましたし、司会の鈴木アナはやっぱり腕があるので、熱のある口上で選手を呼び込んでの発表はよかったんですけど、全体の進行ですね。今回は予定より10分遅れで始まったじゃないですか。あれは客入れに時間がかかったんで遅れちゃったんですけど、その準備面を含めて怒り狂ってました(笑)。

――
逆にRIZINがすごいと思いましたよ。会場もSNSもあんなに盛り上がってるのに終わった瞬間、大反省。

笹原
 やっぱり来場したお客さんや配信で見ている方にストレスなく見ていただけるようなものを作んなきゃいけないですからね。ライブイベントを作ることにこだわりがなくなったら本当におしまいです。

――今回の記者会見も4万人の京セラドームと変わらずに気を抜かない。

笹原
 規模は関係ないですね。そこはずっとこだわっているし、猪木さんは「世の中に怒りが足りない!」と言ってましたけど、何かあれば怒ってますよ(笑)。

――
最近は大会前後のイベントも多いですよね。後夜祭でYUSHIが活躍してたみたいですけど(笑)。

笹原
 後夜祭はクラブでやったんで、社長が「DJが必要じゃないの?」とアイデアを出して。

――
榊原さん、なんでもやりますね(笑)。

笹原
 大会後に総括をやって雑誌のインタビューを受けて、そのまま後夜祭に出てYUSHIと歌って踊って、社長こそ“怪物くん”ですよ(笑)。

――
ちょっと前は「もうそろそろ引退」とか言ってませんでしたっけ?

笹原
 社長が引退してくれないと、ボクも引退できないんですよ(笑)。でも誰よりも元気だもんなあ。

――
今回発表されたカードはどれもインパクト充分でしたけど。記者会見の日程が早めに発表されたわりには、カードが決まったのはギリギリだったようですね。

笹原
 けっこうギリギリでした。いろんなパターンを想定してたんですけど。

――今回はフェザー級のカードが多いけど、たとえば鈴木千裕がケガで出られなくなったら、またシャッフルしたり。

笹原
 そのとおりです。千裕選手のケガの話を聞いたのは会見の10日前……2週間もなかったんですけど、ギリギリはギリギリですよ。千裕選手とのカードが内定していた選手は別のカードになりましたね。

――面白いと思ったのは、6月の段階で朝倉未来や斎藤裕はYouTubeで「相手は、ほぼ決まっている」と口を揃えていて。2人とも「ほぼ」ということは仮決定みたいな感じだったんですか?

笹原 一応決定はしてたんですけど、会見で発表されるまでは油断できないというか。たとえば斎藤選手もRIZINでは、いろんな経験をしてるじゃないですか。

――
「一寸先はハプニング」がRIZINですね(笑)。

笹原
 斎藤選手に「打ち合わせしたいんです」と連絡すると、「……何かありましたか?」ってむちゃくちゃ警戒してくるんです(笑)。何か悪い相談をされるんじゃないかってことですね。

――
シェイドゥラエフの相手はAJマッキーというビッグサプライズでしたけど。7月に入ってから、まとめたってヤバくないですか? シェイドゥラエフ、彼のマネジメントのドミネンスMMA、PFL、AJマッキーの4方向と交渉しないといけないですから。

笹原
 柏木さんがやっぱりすごいですよ。柏木さんじゃなかったら、まとめられてないと思います。あの交渉力はヘビー級です(笑)。

――
笹原さんはAJの交渉は、まとまると思いました?

笹原
 絶対無理だと思ってました(笑)。

――AJマッキーといえば、ファイトマネーがムチャクチャ高い。基本給はUFC王者以上とも聞いてますけど、そこも壁だったんですか?

笹原 そこは京セラドームという大箱だったことで、なんとか成立したところはありますね。

――
要は3万人4万人のキャパが満員になれば、採算的にAJを呼べると。これが5000人規模の仙台ゼビオアリーナだったら、ちょっと無理なわけですね。

笹原
 相撲みたいに15日開催するんだったらできますけど(笑)。

――ハハハハハハ。いくら榊原さんが金額面でGOサインを出しても、会見までに間に合うかどうかの時間の壁があったわけですね。

笹原 しかも交渉の過程で社長が「どうせだったら両方ともベルトを懸けたほうが面白いんじゃないの?」と言い出したんですよ(笑)。

――
ハハハハハハ!ただでさえ厄介な交渉事なのに(笑)。PFLのフェザー級王座って空位だから王座決定戦になるんですけど、ダブルタイトルマッチの王座決定戦って聞いたことないです!

笹原 そこは当然、PFL側の意向もありますからね。柏木さんは頭を抱えてましたし、広島大会の当日もため息ばっかりついてましたから(笑)。

――
広島大会の仕事をしながら、PFLとの交渉を進めていた(笑)。

笹原
 決まったのは広島大会の当日とかじゃないかなあ。本当にギリギリだったんですけど、これまでベラトールやPFLと関係を築いていたことで、ちゃんと話ができる環境だった。あとはRIZINというブランドの力もあると思います。RIZINと絡むことでプラスになると考えている人たちがPFLの中にいるわけですよね。

――
要は「お金を出しますから、AJマッキーを貸してください」では済まない。いままでRIZINが積み重ねてきたものが効いているわけですね。たとえばRIZINvsベラトール5対5の対抗戦とか。

笹原
 それは間違いなくあると思います。

――
メイウェザーやパッキャオを呼んだりとか。

笹原
 それはマイナスかもしれないですけども(笑)。

――
ハハハハハハ! レジェンドボクサーを上げてるんだから、いい意味で得体がしれないですよ。

笹原
 あとはUFCですよね。UFCがホワイトハウス大会やコナー・マクレガーの復帰戦をやりましたけど、政治にあまりにも近過ぎたり、「ちょっと大丈夫?」みたいな内容だったりしたじゃないですか。だからPFLからするとハードコア路線に振ろうと。「本当の強い奴はここにいる」ってことを見せるチャンスだった。いま非UFCフェザー級の中では間違いなく最強だと言われているシェイドゥラエフとAJを絡ませるのは、UFCにはできないことと思ってくれたんじゃないかなと。柏木さんもそういうプレゼンをしたと思います。

――
いまのUFCはローコスト路線だったり、NetflixMMAもいかに視聴者数を取るゲームになってますけど。シェイドゥラエフvsAJは団体のしがらみを超えて、格闘技のコアな部分を追求するカードですよね。

笹原
 かつて堀口恭司vsコールドウェルをRIZIN、ベラトールでそれぞれでやったときは、片方のベルトを懸けましたけど。ルールやレギュレーションが違うのにダブルタイトルマッチをするのはMMAでは初めての試みだと思います。全日本プロレスの三冠統一戦くらいすごいことですよ!

――RIZINファンには届かないたとえです(笑)。シェイドゥラエフの相手がAJマッキーに決まらなかったら、別のプランがあったってことですね。

笹原
 ありました。その相手が誰かは言えないですけどね。

――
今回カードを発表したときに歓声が一番すごかったのは、AJだったんですよね。

笹原
 ああ、AJに対する声援が一番でかかったですねぇ。

――
AJ参戦にはホントにびっくりしたと思うんですよ。事前に誰が出てくるかは把握できていたけど、AJが出てくると思ってなかったので

笹原
 AJの名前がSNSでちょこちょこ上がっていましたけど、それは噂というか願望ですもんね。まさか本当にAJが来るとは思ってなかったでしょうね。

――こんなことをいうと怒られますけど、AJはアメリカでこんなに大歓迎はされてないですからね(笑)。ベラトールってメジャー2位団体と言われましたけど、UFCとはだいぶ開きがあるから「Bリーグ」という蔑称がつけられたくらいで。

笹原 こんなに大歓迎されたら、2つ目の兜を買っちゃいますよ(笑)。

――
AJは前回RIZINに出たときに、事前に購入した1000万円の兜を装着して入場したんですよね(笑)。

笹原
 今回の記者会見でも、AJが「紋付袴を着たい」って言い出して担当スタッフが困っていたんですよ。なので「モハメド・アリ戦の記者会見で猪木さんが紋付袴だったことをAJは意識してるんですよぉぉ!」とそのスタッフに伝えたら完無視されましたよ!

――
無視されて当然です(笑)。

笹原
 いやでもAJは普段のままのほうがカッコいいじゃないですか。なのでそれを伝えてもらい、今回の格好での登場になったんですよ。

――
これが紋付袴だったら、よくいる観光外国人ですよ(笑)。ちょっと前のシェイドゥラエフは来年UFCに行っちゃうんじゃないかみたいな話がありますけど、勝てばPFLに出るかもしれないし、このままRIZIN残留もありえる。結果次第でいろんなことが起こりえるわけですね。

笹原
 すべては試合結果次第ではありますけど。やってるボクもどうなるかはわからないです(笑)。それぞれの団体で防衛していくにしても、けっこう大変なことですよ。

――AJのギャラも高いから頻繁に呼ぶわけにもいかないし。

笹原
 5年に1回ぐらい防衛戦をしてもらいますよ(笑)。

――
ハハハハハハ!

笹原
 社長や柏木さんとは、いろんな懸念点をたくさん話しました。どっちが勝っても、いろんなマイナス面を当然想定はしましたけど、「やっちゃおう!」と。

――
とりあえずロマンを転がしてみようと。そこから何かが生まれるかもしれない。

笹原
 だって、このまま指をくわえてても、UFCの独走を許すのも、しゃくな話ですからね。

――朝倉未来vs青木真也いつくらいから動き出したんですか?

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https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/202607



 
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吉田豪が語る「スマッシング・マシーンとPRIDE、紙プロの狂った時代」<後編18000字>です!(聞き手/ジャン斉藤)

配信版も会員になれば見れます!  読んでから見るか、見てから読むか?
https://live.nicovideo.jp/watch/lv350299814

前編はこちら!
https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2235085




──
『紙プロ』は旧パンクラスの単行本『矛』『盾』も作ってましたけど、ボクが入ったときはパンクラスは取材拒否状態。何があったんですか?

吉田 『矛』『盾』の前からギクシャクしてて、本を作ったときには和解に向かったけど、単純に『紙プロ』がリングスについたからでしょ。前田日明のインタビューが毎回パンクラスに対して挑発的な内容だったし。パンクラスの社長だった尾﨑(允実)さんは芸能の出身だから、そのへんはプロレス的な戦いには持ちこまず、普通に裁判に持っていくし。

──
前田さんがインタビューでいろいろと言い過ぎることによって、安生(洋二)さんの襲撃事件が起きちゃうわけですけど。あれは事前に噂は聞いてたんですか?

吉田
 聞くわけはないけど、山口日昇が多少警戒してたよね。だからチョロには「何か起こるかもしれないから見張っておけ」と命令していた。

──
山口さんですら警戒していたのに、前田さんが何も知らないって怖くないですか?

吉田 それくらい前田さんは孤立していたってことだし、安生さんの件は伏線なしで語られすぎだよね。サムライTVの開局パーティーで、前田さんが安生さんを小突いた件にしても、いまは前田日明がただ暴力を振るったと思われるでしょ。あれはUWFの先輩・後輩の関係がありながら、Uインターが宮戸優光プロデュースで各方面にケンカを売ってきたという伏線があって。1億円トーナメント招待で各団体が無視している中、リングスだけがやってもいいと。シュートをやらせたら強い外国人選手を出そうとしたらUインターが断ってきて。

――宮戸さんが 「どこの馬の骨かわからない選手とはできない」と発言して前田さんが激怒したんですよね。

吉田 安生さんのヒクソン道場破りの失敗もあり、各団体からヒートを買っていたこともあって、前田さんが先輩として諌めなきゃいけないというモードになったときにサムライのパーティーがあった。安生さんは鉄砲玉みたいなものだったから、そういう流れに持っていった宮戸さんが悪いとも言えるし。

──
当時はひとつのコメント、ひとつのインタビューで業界が震撼することがたびたびありましたよね。高田さんがマスコミのインタビューに対して警戒心を抱くことになったのは、吉田さんがやった『smart』のインタビューで。

吉田
 正確には、『smart』と『SPA!』で2回やってる。最初に『smart』で取材したらジャイアント馬場批判とかですごい盛り上がって、それで会長に「いまの高田は最高に面白いですよ」と『紙プロ』での取材を勧めたんだよね。

――2回目のヒクソン戦が終わったあたりですね。

吉田 すぐに『紙プロ』でもやった結果、そこでもジャイアント馬場の悪口をガンガン言ったんだよね。高田がヒクソンに負けたあとに猪木さんをはじめとして、いろんな人が高田批判をしたんだけど、「馬場にだけは言われたくはない」と。「馬場」って呼び捨てなんだよ(笑)。

──
「馬場!」って呼び捨てなのは越中詩郎くらいですよ(笑)。

吉田
 「馬場じゃなくてアッポーでもいい」と。

──酷い(笑)。

吉田
 馬場さんは高田のことを「芸能人になりたい人がプロレスの代表みたいに言われるのは感心しない」的なことを言ったんだけど、「馬場のほうが芸能人になろうとしてるだろう」と。非常に正論なんだよね(笑)。

──
馬場さんは「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」に出てますし(笑)。

吉田
 非常に正しい反論をしたんだけど、タイミング悪く馬場さんが死んじゃったんだよねぇ。

──
死んだ直後に、そのインタビューが掲載されている本が出てしまった。

吉田
 「故人にこんなこというとは何事だ!」みたいに批判されて、『紙プロ』が全日出禁になったのかな。

──
NOAHになって三沢光晴さんたちを取材できるようになったんですけど、しばらくして出禁になって。これも吉田さんが関わってて……。

吉田
 ミスター高橋本でしょ?

──
そうです。ミスター高橋を唯一取り上げたプロレスマスコミはRADICALだけで。それで堀江さんが仲田龍に呼び出されて「そちらが何を取り上げようがいいんだけども、同じ雑誌に載せるとNOAHのファンが誤解する」とかで取材できなくなりましたね。

吉田 まあ、NOAH側の気持ちもよくわかりますよ。全然間違ってない。

──
あの頃と比べたら、いまのケーフェイはかなり緩いですよ。そこは『紙プロ』がチャレンジしていったからだと思います。

吉田
 勝手な実験ずっとしてたからね。RADICAL2号でボクが「プロレスファンは八百長論議と戦え!」みたいな原稿を書いたんだけど、一般書物に載っている「プロレスは八百長だ」みたいな発言を抜き出して「こんなことを書いてる奴を許すな!」と怒るていでヤバイ発言を載せるという企画だった(笑)。

──
あくまで怒る側に立って!(笑)。

吉田
 「こいつはプロレスをなんだと思ってるんだ!?」と怒りながら、よけいなことを載せ続けたんだよね(笑)。

──
フォローするわけじゃないですけど、『紙プロ』のケーフェイトークって単なる暴露ではなく、裏を明かすことでよりプロレスは面白くなりますよ、というもので。それも言い訳かもしれないですけど。

吉田 いや、その線引きにはこだわっていたと思うよ。そもそも、ずっと書評はやってたけど、タダシ☆タナカのデビュー作(『プロレス・格闘技、縦横無尽』)は扱ってないからね。

──
なるほど(笑)。あれも情報公開前提の本でしたね。

吉田
 そのへんは面倒くさいから触れないでおこうみたいな線引きがあったんだよ。

──
馬場さんが亡くなった1月に橋本真也vs小川直也の通称1・4事変で起きて。あの事件をRADICALが徹底的に深堀りしたことで、雑誌としてブランドが上がった印象がありましたね。


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吉田豪が語る「スマッシング・マシーンとPRIDE、紙プロの狂った時代」<前編18000字>です!(聞き手/ジャン斉藤)

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──
Dropkickのジャン斉藤です。今日はですね、元『紙のプロレス』スーパーバイザーの吉田さんをお迎えして、当時の『紙プロ』や先日公開された映画『スマッシング・マシーン』の話を聞きたいと思います!

吉田 え! 『紙プロ』がまず先なの?

──
あ、『スマッシング・マシーン』のほうが先ですね(笑)。

吉田
 この配信には『スマッシング・マシーン』についてあれこれ聞きたい人が集まってるはずだから。ただ、タイムラインとか見るかぎり映画の評判はあまり良くないんだよね。

──
そうなんです! ボクも試写会で見たときに「これは超微妙だな……」と。吉田さんはどうだったんですか?

吉田
 試写会で映画会社の人に感想を聞かれて「面白かった」とは答えた。それはいろんな意味で語りがいがあっておもしろいし、思わず間違い探しをしたくなるって意味で。ちゃんと作ってるからこそ、「ここが事実と違う!」「あのキャスティングは酷い!」という話で盛り上がるんだろうなと。で、ついでだから映画で描かれていない余計な事実を、会ったばかりの映画会社の人に教え込んだりした(笑)。

──
ボクはとりあえず「再現度がすごい!」しか言わなかったんですよ。

吉田
 そう、そこはちゃんとお金をかけて頑張っていることはわかったよね。

──あと当時PRIDEに熱狂していた人、たとえば大槻ケンヂさんやハチミツ二郎さんでも「なぜマーク・ケアーが主人公の映画が作られたのかが最後まで見てもわからない」という声がありましたね。

吉田
 それはもともとケアーのドキュメンタリー作品があったという前提を知らないと意味がわからないところだから、大槻さんにはDMでそれを伝えておいた。この映画を見ると、当時のPRIDEでマーク・ケアーが大スターだったかのように錯覚するけど、そもそも日本でいい試合はひとつもなかったからね。PRIDEデビュー戦で、つまづいちゃったところも大きいけど。

──
ホイス・グレイシー戦の予定がケガでシカティックに変わり、その試合もシカティックのロープつかみによる反則勝ちの消化不良決着でしたね。今日はそのへんを含めていろいろと語りたいですが、ボクと吉田さんの関係がわからない人のほうが多い時代になってまして。

吉田
 コメントで、「ロフトでやった『紙プロ』同窓会の配信にもジャン斉藤はいなかった」ってあるけど、2回目には出てるんだよね。

──あのときはボクだけリモートで。こうして面と向かって吉田さんと話すのは、21年ぶりぐらいですね。吉田さんが『紙プロ』のインタビュー集を出したんですが、あのときはボクが担当だったので。

吉田
 (松澤)チョロ経由で斉藤くんに、ある格闘技本を渡したために、後日警察に呼び出されるという事件もあったけどね。貴重な本を借りパクされた上に取り調べを受けたという(笑)。

──
あー、その話はめちゃくちゃ長くなるので、やめておきましょう(笑)。いまは『紙プロ』も知らないプロレス格闘技ファンが多くなってるんです。正式名称は『紙のプロレスRADICAL』(のちに『Kamipro』に誌名変更)という雑誌があって、ボクはそこの編集者だったんですけど。吉田さんは同誌のスーパーバイザーでした。

吉田
 『紙のプロレスRADICAL』の前が『紙のプロレス』というミニコミ誌的な雑誌で。もともとボクはその『紙プロ』の編集スタッフだったわけですよ。

──「小さい頃の『紙プロ』」と呼ばれていましたね。

吉田
 その『紙プロ』が分裂して。編集長だった会長(山口日昇)以外のスタッフは、ファイティングTVサムライの設立に関わったり、『SRS-DX』という格闘技雑誌をやったりしたけど、K-1の運営にもがっつり噛んでいたという。

──
そこを仕切っていたのが『紙プロ』の発行人だった柳沢忠之さん。いわゆるローデス一派。

吉田
 ローデス組と『紙プロ』組に分かれて。ボクは両方で仕事をしたいから、フリーとして両方に顔を出していて。結果的に『紙プロ』の事務所に机を置いて、山口日昇をサポートするような流れになったんだけど。山口日昇は失踪しがちだったから、その穴埋めをしていたことでスーパーバイザーの肩書がついたんだと思う。

──山口さんが失踪して編集業務に一切、関わってないことが頻繁にありましたよね。

吉田
 ホントにどこかに失踪したわけではなく、家に閉じこもって連絡がつかない状態。まあ鬱だったわけだよね。結局、いまと違って当時は鬱にそれほど理解がない時代で。山口日昇は通院もしてなかったし、薬も飲んでなかったはずで。だから現場もホントに大変で、編集長というすべての責任を取る人間が月の半分近くは現場にいない。企画会議で何を取材するかと決めたあとにいなくなって、山口日昇が取材まではしていることもあれば、何もしてないこともあったりで。

──締め切り2日前ぐらいに突然山口日昇が戻ってきて、表紙や企画をやり直したりすることもありました。

吉田 『紙プロ』勢がUWFに感情移入しがちなのは、そういう理由もあるんじゃないかっていう。道場に来ない前田日明との間の溝が深まって、宮戸優光や安生洋二が決起したことで第3次UWFは幻に終わったわけだから。

──
山口さんの本名は「山口昇」だけど、前田明を「前田日明」に変えたように「日」を付けましたね。

吉田
 そもそもRADICALはリングスと同じ一人ぼっちの旗揚げだから。

──
それなのに山口さんは、別れたローデス一派との交流は続いてましたね。

吉田
 そこは感情的にこじれての分裂ではなかったからね。

──
ローデスはこのあと、もっと深い話になるのであとにするとして……吉田さんがスーパーバイザーだったけど、あくまでフリーで編集部所属ではなかったですよね。

吉田
 事務所を間借りしていただけで、家賃が月2~3万だったかな。そのぶんRADICALを手伝うっていうルールだったんだけど、書評連載+インタビュー1本以上は毎月やっていたから。

──多いときには月にインタビュー2本やったうえに座談会に出たり。

吉田
 それプラス全員の原稿チェックしたり。取材で誰も編集部にいないことが多いから電話番も留守番もやってたし、誰よりも早く出社しがちでもあったし。

──
吉田さんに自覚があるかはわからないですけども、吉田さんに原稿を見られるのがすごいイヤだったんですよ(笑)。

吉田
 わかるよ。キッチリとダメ出しはするからね。

──
当時はデザイナーからFAXでゲラが送られてくるんですけど、松澤さんは吉田さんに見られる前に隠すじゃないですけど(笑)。

吉田 そんなことしようが最終的には見るんだけど、そのうえでちゃんと正確な直し方まで教えたり、面白くなるようにアドバイスをしたからね。

──
それで『紙プロ』の編集部は鍛えられたところはありますね。ボクも編集作業は素人。『紙プロ』編集部に履歴書持参でアポなしで訪問した前日に、編集者が失踪したことで運良く採用されただけでした。

吉田
 基本、『紙プロ』って野良の人が集まってて、ボクと山口日昇だけが編集者としての経験があったから。

──
素人のボクが幸運だったのは山口さんと吉田さんのインタビュー原稿の担当だったことで、原稿のまとめ方を教わったことですね。あとレジェンドレスラーの取材現場に立ち会えたことなんですけど、一番思い出深いのはストロング小林さんの自宅訪問です。

吉田
 小林さんには非常にお世話になりましたよ。本当にかわいらしい人で最高の思い出。マニアな視点でストロング小林さんを取材する人たちはいたけど、呑気な感じでいったら想像以上のかわいらしさ全開インタビューですごく盛り上がって。当時出版されたスタン・ハンセンの自伝に、ストロング小林にボディスラムをやろうとすると、高等テクニックで俺の股間を掴んでくるから力が出なくなって……みたいなことが書いてあって(笑)。

──
どんな高等テクニックなんですかね(笑)。

吉田
 そのことを小林さんにぶつけたら「そんなことするわけないじゃない。オカマじゃないんだから!」って肩を叩かれて(笑)。「なんだ、この完璧な返しは!」ってすべてが面白かったんだよね。原稿でも、とにかくかわいらしい口調をそのまま活かして、本人の原稿チェックでも削られることもなく。唯一削られたのが当時『元気が出るテレビ』で結婚相手募集の企画をやったという箇所だけ。「そこがNGなんだ!」って。

──
あのとき小林さんが吉田さんのことをめちゃくちゃ気に入ってましたね。

吉田
 そうそう。取材が異常に盛り上がって「原稿チェックはどうしますか」って聞いたら「FAXがないから直接、あなたが持ってきてちょうだい」って言われて。その日は小林さんの自宅の1階で取材してたんだけど、「今度は2階にあるプロレスグッズを見せてあげるから」って。ぜひ2階にも行ってみたいけど、また来るのはキツイから斉藤くんに頼んだんだよね。「海外出張で行けません」と嘘をついて。パスポートも持ってないのに(笑)。

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