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プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長 小佐野景浩 の「プロレス歴史発見」――。今回は 令和の横アリ大実験!新日本vsノア対抗戦 です
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―― 今回、突然発表された新日本プロレスとノアの対抗戦ですが、率直に小佐野さんはどう思われました?
小佐野 本当に唐突だなと思うよね。あの日、俺は一日中外出していたからネットも何も見てなくて、家に帰ってメールをチェックしたら、新日本からもノアからもリリースが届いてたんだけど、その会見場が同じ場所だったから「……ということは」と。
―― このタイミングで対抗戦は本当にビックリですよね。
小佐野 ただ、冷静に考えれば、ノアの親会社であるABEMAというのはテレ朝関連の会社だからね。いまABEMAでも新日本の放送もやってるはずだから対抗戦をやってもおかしくはないんだけど、いままでの両団体の関係からすると、2016年には新日本から派遣されていた鈴木軍のノア撤退があり、そこからノアも会社が大きく変わって、新日本とは絶縁みたいなムードがあったから。いまのノアはサイバーファイトグループの団体として、DDTと共に「新日本を追い抜く」というスロガーンがある。それが急に興行的には手を握るわけだから意外といえば意外だよね。
―― 正直、なぜこうなったのかというのは見えづらいし、いろいろと語りがいのあるドッキングです。
小佐野 あり得ないことが起きるということでは、これが本当のサプライズなんじゃないかな。そういう意味でのインパクトはあったと思う。
―― そもそも新日本が1月8日の横浜アリーナを押さえた段階で計画があったのか、もしくはそこに間に合わせたのか……そういうことも勘ぐりたくなりますね。
小佐野 でも、新日本とノアは全日本も含めてコロナになってから馳浩先生のところに陳情に行ったりして、プロレス界は足並み揃えてやってたからね。興行会社としての競争はあるだろうけど、馬場・猪木時代の新日本と全日本のような対抗の仕方をしているわけじゃないから。当時は本当に仁義なき戦いというか、たとえば全日本が創立10周年記念興行を蔵前でやりますと発表したら、新日本がその前日に蔵前を押さえて先に大会をやっちゃうとかさ(笑)。
―― ホントにヒドいですね(笑)。
小佐野 昔はそういうヒドいことをやってたけど、いまは紳士的な競争をしている。
―― 両団体とも話題性としてメリットは充分あると思うんですけど、新日本は1・4と1・5の東京ドーム大会2連戦、ノアは1・1の武道館もあるじゃないですか。そこで、1・8にこの興行を持ってくるのは対抗戦に話題を食われてしまうデメリットもありますよね?
小佐野 内藤(哲也)なんかは「いまワールドタッグリーグをやってる」のにって不満を漏らしてるよね。それにスーパージュニアもやってるから、高橋ヒロムなんかも「なんでこの時期にやるの?いま大事なシリーズをやってるときに、なぜそれが吹っ飛ぶようなことをやるの?」と。その気持ちもわかるよね。1・8のカードも当然発表しなきゃいけないわけだけど、元旦やドーム大会で打ち消しあっちゃったら意味がないわけだし。
―― そして、この動きは継続的にやっていくのかどうなのか。
小佐野 新日本とノアにしてみたら、とにかく一発やってみないことには何が起こるかわからないわけじゃない。やっぱりファンの反応もあるし、そもそも「交流戦」なのか「対抗戦」なのかという話にもなっているわけだし。逆に、「ここまで対抗戦の日程が決まってます」というのもおかしなことですよ。
―― 交流戦ならともかく対抗戦は先が見えたら緊張感がなくなりますね。
小佐野 やっぱり1・8の内容、客入り、評判、そういうものが大切になってくるし、「なんだ、まだ先があるんじゃん」となると、その時点で緊張感は途切れちゃうから。あとは、今回どんなカードが出てくるのかもわからないしね。
―― まだカードは何も発表されてないですね。
小佐野 で、こういうことをやるときは団体同士は信頼関係を持ってやらないといけないけど、レスラー同士はそうはいかない。
―― そこなんですよね、面白いところは。
小佐野 そうじゃなきゃ対抗戦は意味がないですよ。そこで「仲良くやりましょう」ではダメ。選手たちが対抗戦モードに入ってるのはいいことだと思うし、みんなけっこうヒリヒリしてるでしょ?
―― どちらかというと新日本側は対抗戦の煽りが何たるかというのがわかってる感じが凄く伝わってきますよね。
小佐野 オカダ・カズチカの上から目線だったりね。
―― 棚橋(弘至)も、以前DDTでHARASHIMAとやって物議を醸したときみたいに、やっぱりメジャーとしての意識が凄く強いから面白いですね。
小佐野 やっぱり、プロレス業界を世間に響かせようという思いもあるだろうし。業界自体を活性化させようという起爆剤の一つだと思うよ。00年代のノアって業界の盟主と呼ばれるくらいの勢いがあって現場を仕切っていた仲田龍氏は新日本に敵愾心を燃やしていたんだけど、新日本が苦しんでいた時期に選手を派遣した。それは「新日本の1・4がなくなったらプロレス業界は終わり、業界全部が沈むから、新日本が沈むと困る。だから協力するんだよ」と。
―― じつはプロレス業界ってそうやってフォローしあうことが多いですよね。前向きに向き合ってくれるんだったら協力は惜しまない。
小佐野 それが、馬場さんと猪木さんの時代だったら、本当に拮抗しているから潰し合いになっちゃうんだろうけど、いまは運命共同体みたいなところがあるからね。
―― 1990年2月10日、新日本の東京ドーム大会に全日本税が参戦したときもまさにそうで。
小佐野 スタン・ハンセンや天龍(源一郎)さんが出た興行ね。あの対抗戦も唐突に決まったからね。まるっきり話題にもなってないところにポンと出したから。
―― ホントにビックリしましたね。
小佐野 あの当時の新日本は坂口(征二)体制になって、年初めに馬場さんと坂口さんが一緒に記者会見をやって「今年は仲良くやっていきますよ」ということで、スティーブ・ウイリアムスが全日本に円満移籍してきたりね。その代わり、全日本が権利を持つリック・フレアーは「新日本の東京ドームでグレート・ムタとNWA世界戦をやってください」という交流ムードはあったんですよ。とはいえね。
―― 天龍さんを新日本に貸し出すことはありえない。
小佐野 あのときも1月のシリーズ中に急に発表されたから、天龍さんにコメントを求めたら「大事なシリーズ中に他団体のコメントなんかできるか」とコメントしなかったんだから。つまり、いまの内藤や高橋と一緒だよね。
―― そ選手の急な貸し借りといえば、全日本の川田利明のUインター参戦とかもありました。馬場さんは「助けてくれ」と言われれば助けるという。
小佐野 まあ、ただ単に助けるわけじゃないんだろうけど、あの人の場合は(笑)。やっぱりビジネスマンだからね。でも、結局2・10は本当に坂口さんとしては「馬場さんありがとうございます」で、馬場さんも「坂口は信用できる男だからカードも一任するよ」と言ってたんだけど……。土壇場になるといろいろと変わっていくという(苦笑)。
―― 最初は長州力&小林邦昭vs天龍源一郎&川田利明だったのが、小林さんがトンパチでお馴染みのジョージ高野さんに変わってしまって(笑)。
小佐野 だから、全日本側も川田を三沢タイガーに変えたでしょ。
―― 昔は「なぜ、ジョージ高野と三沢タイガーがパートナーなんだろう」とピンとこなかったんですよ。当然、長州力のパートナーは小林邦昭が合ってるし、天龍源一郎のパートナーは川田利明のほうがいいだろうと。
小佐野 たしかに、維新軍と天龍同盟になるからバランスとしては凄くいいんだけど、あそこでジョージに急に変えるところが長州力のセンスなんだろうね。
―― つまり「ジョージは何がするかわからないぞ」ということですよね(笑)。
小佐野 そしたら、やっぱり全日本だって……。まあ、ジョージがどんな人かは知らないだろうけど、絶対に「これは何かあるな」と不穏な空気を感じるわけだから。そうしたら、神経が図太い三沢のほうがいいだろうということになるよね。あとは、三沢タイガーを新日本のファンに見せたいというのもあっただろうし。で、三沢は前の年の春にヒザの手術をしたばかりだったんだけど、年明けの1月シリーズからカムバックだったんだよね。
―― 復帰直後にあんな対抗戦に駆り出される。
小佐野 で、あの日は馬場さんは東京ドームに行ってないんだけど、(ザ・グレート・)カブキさんをお目付役で行かせて「何かあったら帰ってこい」と。
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