kiki1さん のコメント
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UFC、中村倫也から木村健悟まで語る 岡見勇信 15000字インタビュー!(聞き手/ジャン斉藤) 【1記事から購入できるバックナンバー】 ・ “修斗伝承者”中村倫也 日本格闘技界の歴史と未来を背負う男
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―― 岡見さんが指導に携わるLDH martial artsの中村倫也選手がROADtoUFCの切符を勝ち取りました。中村選手はまだプロ3戦(全勝)ですが、その怪物ぶりは凄まじいですね。
岡見 強いですよねぇ。倫也に関してはボクは見守ってるほうではあるんですけど、間近で見た倫也の強さであったりとかをお伝えできたらな、とは思っていて。
―― 岡見さんが育った時代はMMA黎明期で、いまのように環境が整備されてない時代でしたよね。
岡見 そうですねぇ。デビューしたのは22年前。懐かしいですね。
―― いまの練習環境は羨ましかったりするんじゃないですか。
岡見 まあ、あの頃はあの頃で、ならではの面白さがあったんですけどね。いまはMMAというものがある程度、確立されているんですけど。当時は何もわからない状況だったことの面白さはあって。羨ましさはとくには……時代が違うんで、なんとも言えないんですけど。
―― ABEMAで放映された『FIGHTER BATTLE AUDITION』でも和術慧舟會時代の特訓を取り入れてますけど、あくまでスペシャルメニューって扱いですよね。
岡見 そうですね(笑)。補強や階段走りとかの根性練習。久保(豊喜)社長や守山(竜介)さんの指導は拓大柔道のエッセンスですよね。
―― いわゆる柔道の鬼・木村政彦イズムですよね(笑)。
岡見 はい(笑)。いま思うと、あの根性練習がなければ、いまの自分はなかったと思うので。だから『FIGHTER BATTLE AUDITION』の合宿では、そのエッセンスを存分に入れたり。普段の練習では、またちょっと全然違うかたちなんですけど。
―― 根性練習は必要だけど、基本は合理的な練習ってことですね。
岡見 根性練習ばっかりだと厳しいってことは経験上わかっているので。自分が経験したことや、高谷(裕之)さんが経験したことも……高谷さんは慧舟會以外では、田中塾で揉まれてきたので。
―― 初代シューター・田中健一さんの格闘結社田中塾!和術慧舟會と田中塾のエッセンスがLDHに紛れ込むってすごい話ですね(笑)。
岡見 ハハハハハハハハ。高谷さんから話を聞くと、田中塾の練習は合理的だったみたいで。だからあんなに田中塾からトップ選手が出てきたと思うんですよね。
―― そんな中から輩出された中村倫也というファイターはどう見てるんですか?
岡見 倫也のレスリングの実績はピカイチですし、そもそも彼のバックボーンはホントにMMAをやるために生まれてきたようなものですから。
―― パウンド解禁前後の修斗から総合格闘技に触れ続けてきたサラブレットですよね。
©SUSTAIN/SUSUMU NAGAO 岡見 彼の練習を初めて見たときにビックリしたんですよね。その身体能力の高さに衝撃を受けたというか、「これはすごいな……」と。ボクとは体格が違うので、なんとも言えない部分もあったんですけど。ちょっと組んで見みた感じ、単なるトップのレスラーでは収まらないものがあるなと。
―― 「単なるトップのレスラー」でも充分すごいですけど。(笑)
岡見 倫也は他の練習仲間を圧倒するんですけど。倫也はいろいろなところに出稽古に行ってたので「練習で誰にやられるの?」「誰がイヤ?」って聞いたんですよ。そういう質問するぐらいの強さが伝わってきたんで。
―― ちなみに中村選手はその質問になんと答えたんですか?
岡見 そのとき答えたのは「上久保(周哉)選手がちょっとやりづらいですね。強いですね」って。
―― まあ、上久保選手は誰もがやりずらそうですけど(笑)。
岡見 そんな質問をしちゃうぐらいの衝撃で。彼の場合、昔から寝技を練習してただろうから。いろいろ培っていた中にレスリングが入ってたんだろうなって感じですよね。
―― 中村選手はデビュー戦のマッチメイクから、見ようによってはチャレンジ的なマッチメイクですよね。
岡見 最初は修斗で論田愛空隆ですよね。
―― 論田選手とはかなりキャリア差がありましたが、周囲もデビュー戦から自信があったってことですか?
岡見 倫也のデビュー戦の相手については高谷さんやLDHの方々がいろいろと話をしていて。ただ「いきなり論田愛空隆か……」とは正直思いました。愛空隆がプロになる前ですけど、サンディエゴのほうで一緒に練習したことがあって。彼の試合を見ていたり応援はしていたので、実力や実績はわかっていたので。ただ、これは愛空隆とか相手は関係なく、倫也が負ける姿が想像できなかったんですよ。
―― はっはー!デビュー戦から。
岡見 ちょっとイタズラな気持ちを加えれば、「倫也はどうなったら劣勢になってしまうのか」と。そういった部分もちょっと見てみたいなと感じさせるぐらいの強さ。
―― 岡見さんがそう思っちゃうくらいですか!
岡見 最初から強かったんですよねぇ(しみじみと)。
―― 練習では強くても本番になってみると……ってケースもよくありますよね。
岡見 その怖さはすごくありましたね。負けるとしたら、パンチをタイミングでもらってしまって、何か起きちゃうのかなって。それはどんな選手にもあることですけど、逆に倫也が負けるとすれば、それぐらいなのかなっていうイメージがボクの中ではあって。変な話、ボクも同じ体格だったら、倫也とガチガチやってみたかったなって(笑)。
―― 中村倫也を試してみたい。
岡見 正直、そう思いましたよ。倫也とガチガチ勝負してみてえなって。強さに触れてみたい。見てるだけでもわかるんですけど、本気でぶつかり合ったとき一番わかるんで。「あ、これかあ」みたいな。
―― そういう期待が飛び級のマッチメイクにも現われていたってことですね。
岡見 高谷さんが中心となって倫也を教えて、高谷さんが感じる倫也の強さや弱点であったりをわかってて。最終的にはデビュー戦は論田愛空隆で行こうと。ボクはさっきも言ったように「論田愛空隆かあ。怖いなあ」って。勝つとは思ってたんですけど、ハイキックで……。ああいったフィニッシュシーンはボクの中ではイメージしてなくて。だけど、まあ本人の中ではしっかりとイメージできてた、狙ってたっていうふうにいってたんで。そうだったのか、やっぱり見えてるところがちょっと1つ違うんだなって。
―― デビュー戦から怪物ぶりを感じたんですね。
岡見 あんな勝ち方をデビュー戦でするんですから、倫也のすごさをあらためて感じましたね。
―― 2戦目もパウンドにより25秒でTKO勝ち。
岡見 あのときはケガをしたり、コンディションを崩してて、ちゃんとした練習を積めなかった部分があったんですよね。本人の中でもすごい不安だったっていうふうに言ってたんですけど。試合開始早々、相手が飛び込んできたところをパンチで合わせて倒す。あれは倫也と高谷さんの中で突っ込んでくるっていうのがわかったみたいで。だからって狙ってできるようなもんじゃないんですけど(笑)。ボクとしてはアッパレとしか言いようがなかったです。いったい倫也はどうやって弱ったり、追い込まれるかたちになるのかを見てみたい。日本の枠では、彼はそういう姿は見せることはないんじゃないかなって思ってました。
―― そしてLDH主催のイベントPOUNDSTORM両国大会で、初の国際戦に挑みましたね。
岡見 あの相手(アリアンドロ・カエタノ)で正直、それが見れると思ったんですよ。
―― 中村倫也が追い込まれる姿が。
岡見 カエタノはそれぐらいの相手ですよね。今回の相手を決めるのもけっこう悩んだんですよね。海外の選手で何人か候補がいてですね、Aランク、Bランク、ランクで分けてあって、カエタノはもちろんAランク。カエタノの映像を見て「倫也はちょっと相性が悪いな」と思ったんですよ。レスリングがいいかたちで通用しないというか。下からの関節、サブミッションが得意な選手。打撃も荒くてアブレシプだったので、ちょっとこのクラスはまだ早いかなって思ってたんですけど、倫也の中では視野に入ってて驚いたんですけど。
―― 中村選手自身は行けると。
岡見 実績がもちろんある相手なので、勝てばUFCがかなり近づくというのはわかるんですけど。「ちょっと大丈夫かな」って周りもすごい不安だったので。もう1回考え直しましょうという話もあったんですけど、倫也が「いや、大丈夫です」と。
―― 中村選手が決断したんですね。
岡見 今回もコンディション的にはケガもあったので、万全の状態ではなかったんですけど、それでもあれくらいの試合はしますから。カットはしたにせよ、追い詰められた姿は見せなかったっていうのがボクの中での印象ですね。しっかり勝ち切ったっていう。
―― カットして血が流れてるから苦戦してる感はあったけど。
岡見 パンチのカウンターで交錯したのは危なかったんですけど。結局危ないシーンはあそこぐらいで、あとは寝技でコントロールして。カエタノのレベルでも劣勢になる姿を見せなかったんだな、と。実績や経験もあった選手なんですけど。あの落ち着いた戦いぶりは、ホントにデビュー3戦目の選手なのかっていう驚きがあります。身内だから褒めてるんだろうと思われそうですけど(苦笑)。
―― いや、それくらいの勝ち上がりぶりですね(笑)。
©SUSTAIN/SUSUMU NAGAO 岡見 並のファイターならあんだけ血が出てたら焦るし、自分の得意なテイクダウンに固執しちゃったりすると思うんですけど、落ち着いてて。いま思うとホントに重なったのはGSPだったんですよ。
―― 元UFCウェルター級王者のスーパースター!
岡見 落ち着いて打撃を作って、距離を作って、相手がぶれたところにタックルを合わせてテイクダウンをしっかり取り、そしてそこから安定した寝技、グラウンドでコントロールして勝つ。その落ち着きぶりと、戦いの作り方がGSPを見てるかのような試合ぶりだったんで。身内だからこんなに褒めてるんじゃないかって周りの方は思うかもしれないですけど(笑)。
―― 3戦すべてキャリア上の選手とやったら、どこかで劣勢な場面は出てくるはずですよね。
岡見 普通は出ますね。ホント唯一カエタノのパンチでカットした部分ぐらいですね。
―― カエタノは下から中村選手の首をずっとホールドするだけだったじゃないですか。あれって何を狙ってたと思いますか?
岡見 ああなるとあそこからは何もできないんです。できないので、ああせざるをえなかった。あと血が出てるのがわかったと思うんで、首を抱えることで圧迫して、出血を狙ってたのかなと。
―― 派手に血が流れたのは首を圧迫したせいもあるんでしょうね。
岡見 血が出てなければあまりにも無意味な動きだったので、それを狙っていたのかなって。あんなに血が出るから、これはもしかしたら止められちゃうかなって正直思ったんですけど。
―― 血のわりにはそこまで傷口は深くなく、って感じで。
岡見 カエタノの試合映像を見るかぎり、下からギロチン、十字、三角がすごくアグレッシブでいい選手だったので。倫也も寝技が強いのは知ってるんですけど、ひとつもピンチはなかったんじゃないですかね。大したもんだなって純粋にそう思ってるんですよ。身内贔屓だと絶対に思われますけど(笑)。
―― それ、3回目です(笑)。
岡見 ボクが倫也の練習を見てるのは、自分の勉強のためでもあるんですよね。彼のアップの仕方からして、すごいんですよ。レスリングで培ってきた身体能力があるから、すさまじい動きでアップしたり。いろんなことを考えて練習をやっているし、ここまで考えて格闘技に向き合ってるんだなと。そういう人間には、なかなか出会ったことがなかったので、彼に教えるというわけではなく、自分が勉強させてもらってるというか。
―― そして6月からのROAD toUFCに参加すると。
岡見 このタイミングでROAD toUFCがあるのがすごいですよね。ここ最近のUFCはコロナもあってアジアというか日本に対して興味を持ってもらえなかった中で、ROAD toUFCというイベントが開かれる。そこはいままで彼が努力して厳しい試練を乗り越えてきたってことでいえば、神様からのギフトだなっていう。そういったものはすごく感じますね。
―― ROAD toUFCHA3試合のトーナメントですね。
岡見 出る選手のレベルがまだわからないので、なんとも言えないんですけど。ただまあ、いまの戦い方であったり、倫也のコンディションを見ると……厳しい展開はどっか出てくる可能性はあると思うんですけど、充分に優勝する実力はいまの段階であるのかなと。1戦1戦勝負ではあるんですけど、年末までじっくり3試合をかけてやるのは、倫也にとってもプラスなのかなって。最近だとUFCと契約するために、どういった道に進んでいいのかわからなかったじゃないですか。ここで勝てばUFCに行けますっていうのが、なかなか見づらい時代だったので。
―― 今回のROAD toUFCは勝ち続ければいいわけですもんね。
岡見 その道筋は完全にわかっているので、UFCを目指す選手からすると、こういう舞台が整ったのはありがたいでしょうね。これが来年だったらちょっと遅かったと思うんですよね。コロナがもうすぐ明けるとは思うんですけど、海外でなかなか試合できないという状況もあるでしょうから。また日本で試合を何試合か積むことになるだろうし……。このタイミングはベストなのかなって思ってます。
―― 中村選手は27歳という年齢ですし。
岡見 そのあたりは倫也も焦りは持ってるんで。『格闘DREAMERS』やLDH所属のファイターたちはみんな若いんで。高校生から20代前半の子たちも多いので、倫也が年長になりますからね。
―― こうやって中村選手がUFCと契約できれば、あとに続く若い選手の励みになりますね。
岡見 それは大きいですけど、流れが早いですよね。もうUFCへの挑戦が始まるのかと思うと、ボク自身ついていけない部分も……この前オーディションやってたよな、みたいな(笑)。それは彼が掴み取ったものだし、前回のカエタノはかなり飛び級の相手だったので、そこのジャンプアップは大きかったかなと思います。
―― 最近「vs世界」で日本人はなかなか勝てないと言われています。UFCのミドル級で勝ち続けて14勝を挙げ、タイトルマッチも経験した岡見さんからすると、何か思うところってあります? ・岡見勇信が語る世界に勝つ方法 ・選手育成システムを築き上げた和術慧舟會の強み ・新日本プロレス・木村健悟からの電話……などなど15000字インタビューは続く
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