たかはしさん のコメント
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グラップラー&MMAファイターにして論客・ 高橋“SUBMISSION”雄己 が語るQUINTET、グラップリングのドーピング事情!(聞き手/ジャン斉藤) 【1記事から購入できるバックナンバー】 ・ 【MMAミステリー】牛久絢太郎はなぜ引き込んだのか? ■セコンド横田一則 ・ サトシ・ソウザ 人生はたまに負けるのがちょうどいい ・黒いパンツのプロレスラー中村大介「“UWFごっこ”にはしたくない」
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―― 高橋“SUBMISSION”雄己選手にグラップリングのあれこれについて伺いにきました!
高橋 よろしくお願いします!
―― グラップリングぼんやり層なので初歩的なことから、もしかしたらタブーなことも聞いちゃうかもしれないですけど。
高橋 全然大丈夫です。気にせず話したら誰かの逆鱗に触れそうな気がするけど(苦笑)。
―― いきなりな質問なんですけど、日本のグラップリングシーンにも派閥はあるわけですよね?
高橋 いやあ、そんな派閥ってほどでもないですけどね。練習仲間だったり、グラップリグ絡みの仕事を一緒にしている人たちが多いですし、そこに相性いい悪いは人間誰しもある感じじゃないですか。海外だと新しい技術が出たとして、その技術を教則動画とかで売りたいから著作権の奪い合いになってケンカになることもあるんですけど。日本はべつにそんな感じではないですね。
―― なんでこんな質問をしたかといえば、QUINTETがあると毎度、辛口な意見が多いなって思っていたんですね。
高橋 ああ、とくに界隈の中からそういう声が出ると。QUINTETに関してはルールがグラップリングとしてはだいぶ邪道というところもあるのかなと。
―― へえ、QUINTETは邪道ですか!
高橋 みんながよく言ってるのは、まあボクも言ってるんですけど、QUINTETはヒールフックが禁止なんです。足関節技の中でヒールフックが禁止だと、グラップリングの技術体系としてだいぶおかしくなってきちゃうんですよね。たとえば今回のQUINTETでクレイグ・ジョーンズとカイル・ベイムが試合をしたときに、お互いにヒールフックの名手なんですけど、足関節が取れるポジションに入ったのにも関わらず、ヒールがないからどうにも極めようもなく、逃げようとするわけでもなく、あげくのはてにはセコンドの指示に対して声をかけ直す一幕もあったりして。そういうところがボク含む業界の人には引っかかってるし、日本のこれだけの舞台でいいカードを揃えているんだったら、ヒールありでちゃんと見たいよねってのが業界からの声なんですね。
―― そういうことだったんですね。ヒールフックがないグラップリングはMMAでいうと何が禁止された状態なんですか?
高橋 MMAでいうと難しいなあ。そもそも昨今の技術の流れとして、数年前にジョン・ダナハーによって足関節は体系化されたんですよ。
―― ジョン・ダナハーの名前は、ぼんやり層のボクでも聞いたことがあります!
高橋 そこから足関節がバシバシ極まりまくる時代が訪れて、みんながあたりまえにできるようになってきてるから、いまは足関節そんなに極まらない流れなんですけど。とはいえ決まり手としてバックチョークと並んでヒールフックは多い。大げさにいうと、ボクシングでいうと左フック禁止みたいな感じですよね(笑)。
―― 左フック禁止のボクシングはKOが出ないですね(笑)。
高橋 だから、いまのQUINTETも一本勝ちが出づらくなってるんです。5年前のQUINTETってバンバン一本勝ちがあったじゃないですか。いまのグラップリングって技術が先鋭化されてきて、ヒールなしだとなかなか極まりづらくなってるんですよね。
―― それはヒールフックありの前提で組み立てているからですね。
高橋 そうですね。ボクも一度だけQUINTETのワンマッチにお声がけいただいたんですが、QUINTET用の練習はしましたけど、普段からヒールなしを想定する練習はしてないです。あとQUINTETはブレイクが早いのがポイントで。ポジションを取っても動きがないからってことですぐにブレイクをかけちゃうと、逆に極めづらくなってくるんですよね。
―― 展開を作るためのブレイクがアダになっていると?
高橋 はい。いまのグラップリングシーンでトップ選手たちが固まっている相手に対して何をやるかというと、自分の胸や首で相手の口と鼻をグッと抑えたりして呼吸できなくする。まず極める前にスタミナを削るんです。で、それを嫌がって相手が縮めてる手を出してきたときに取る。でも、QUINTETみたいに「マウント取りました、でも、速攻極めに行かないとブレイクです」のルールだと、みんな極められない。昔と違って、いまのQUINTETの引き分けが連発されたロジックはこれなんです。
―― QUINTETが休止しているあいだにグラップリングの技術が進化していたってことですね。
高橋 ヒールフック禁止は桜庭さんの意見とこだわりらしくて、なぜ禁止なのかは憶測では言えないんですけど……。
―― 昔の日本には足関の達人みたいな人がたくさんいましたが、ここにきてシステム化されたのはどういうことなんですか?
高橋 足関って今成(正和)さんなんかは何にも名前つけず、我流で正しいことをやってたんですけど、相手の足にしがみついてひねるという感じだったじゃないですか。そこでジョン・ダナハーが「足関節もいわゆる技なんだからポジションがあるよね」ってことで。たとえばまずバックを取らないとバックチョークは極まらないし、腕十字とか他の技も形ってあるじゃないですか。ジョン・ダナハーが足関節を取るためのシステムを作ったんです。みんなにゴリゴリに普及し始めたのは5年前とかですね。
―― 意外と最近! それまで言語化されてなかったってことですね。
高橋 みんな極め技としてはインプットしてたんですよ。それまではレックポジションっていう概念が曖昧で、とりあえず相手の足にしがみつくためのエントリーをして、足を抱えることができたら、ひねる。逃げ方や攻め方も体系化されてなかったのがジョン・ダナハー以前のグラップリングなんですよね。
そこからすごい勢いで進化してるんです。前のQUINTETのときもトップ選手はやっていたんですけど、まだまだ浸透はしてなくて。QUINTETが休止してるあいだにあたりまえの状況になったということですね。
―― だからこそグラップリングに足関がないのはおかしいと。
高橋 そうです。5年前と比べてヒールなしに対する疑問の声がすごく多いと思うんですよね。あと審判団もブレイクをかけるのはイヤなんじゃないかって。選手からすれば「早くない?」ってめちゃくちゃイヤな顔をすると思いますからね。
―― どっちも渋い顔(笑)。しかし、膠着を少なくしようするブレイクが逆効果って面白いですねぇ。
高橋 相手のスタミナを削ってたり、極めるためにジリジリやってる時間も、一般層からすれば止まってる時間じゃないですか。わかりやすくするために、どんどん動かして一本勝ちを呼び込むっていうのがコンセプトだから、それを膠着と見なしてブレイクかけちゃうっていう考え方なんでしょうけど。むしろ一本勝ちが生まれなくなっちゃうというジレンマですよね。いまのグラップリングだと技術的に逆効果なんですよ。
―― だからQUINTETはいまのグラップリングシーンとは別世界ってことなんですね
高橋 QUINTETはけっこう新しいことをやろうとしてて、他とは違うところへ向かってるからそうなるんだと思うんですけど。業界としては完全にこっちの畑ではあるんですよ。呼んでる選手もグラップリングの世界で名前のある人たちだし。でも、ルール的にはそれをグラップリングと言ってしまうのであれば、足関はありにしたほうがまっとうだと思います。ただ、QUINTETはグラップリングと言い切れないところがあるじゃないですか。俺たちはQUINTETだから、QUINTETっていう競技だから、これでいいんだと。だったら、いまのかたちでも全然ありだと思うんですよ。やっぱりグラップリングという枠組みの中でやり続けても、絶対に到達できない地点はあると思ってて。グラップリングって結局難しいから、ジャンさんも技術的なところはべつにそんなに興味ないわけじゃないですか。
―― 正直、あまりないです(笑)。枠組みの話が大好きだから、ダナハーのシステムがグラップリングシーンを変えたことには興味はありますけど。
高橋 ほとんどの人もそうだと思うんですね。技術が好きな人がフォーカスして、狭い畑の中で発展していくものだから、どこまで流行ってもそれってサブカルの枠を出ないものなんですよね。でも、QUINTETがやってることはメジャーにしていこうっていう話じゃないですか。となるとグラップリングとしてはおかしくていい。グラップリングとしては必要なプロセスを省いて叩かれようが、世間の人に楽しんでもらえる組技のフォーマットを生み出してくれるんじゃないかという期待感はあります。格闘技としての本質から離れちゃってるのかもしれないけど、そこから離れてみることによってグラップリングというものが普及する、ブレイクスルーする活路を見出してくれる可能性はなくはないなと感じます。ただ、グラップリングじゃなくてQUINTETで言い切るのであれば、グラップリングの選手だけを集めるのをやめて、グラップリングとは違う志向のQUINTETファイターを集めてもいいのかなと。 <グラップリング驚愕ドーピングの実態など、1万字インタビューはまだまだ続く>
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オーディエンスが楽しめるグラップリングを追求した結果、技術的に置いていかれたという見解は秀逸
個人的にはKOを誘発するために肘・膝を封印した結果衰退していったK-1を思い出した
ドーピングの話しも興味深い
桜庭(&中村大介、所)はちゃんとアジャストしていってくれるんじゃないかと期待しています。
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