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ジャン斉藤が語る映画『アントニオ猪木をさがして』について(ニコ生配信したものを再編集した記事です)
【1記事から購入できるバックナンバー】 ・ 「怒りとプロレス」……中邑真輔、アントニオ猪木を語る
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『アントニオ猪木をさがして』は評判の悪さもあって気乗りしなかったんですよ。登場人物や構成を聞くにつれ、見たら絶対に文句を言うだろうな……って。そもそも猪木さんのプロレスラー人生が2時間程度で収まるわけないから「アントニオ猪木がちゃんと描かれていない!!」って文句を言いたくなるに決まってる。最初から愚痴る気満々モードで見に行ったんですけども……まあ、これはこれで面白かったんですよ。いい映画です!
ただ、「こんな内容、納得いかない!」って怒る人もいるのはわからないでもないんです。ボクが考えるにこの映画を批判する人は2000年代以前の猪木さん、要するに70年代から90年代にかけてのアントニオ猪木に魅了された人たちで。逆に2000年代以降のプロレスをこんにちまで見続けたファン、それは棚橋弘至や中邑真輔、オカダ・カズチカなんかを通して暗黒時代を潜り抜けてきた人はそれなりに見られたんじゃないかなと。だからって前者は「プロレスファンとしてダメ」とか「いまのプロレスをわかってない」ということじゃなくて。昭和の猪木ファンにとって2000年代以降は「失われた20年」だったと思うんですね。
以前の配信でも触れたんですけど、名だたる文化人が寄稿した『アントニオ猪木は何だったか』という本は、基本的にデビューから引退するまでの猪木さんを綴ったもので、引退以降「プロレスファンからホントに嫌われたアントニオ猪木」の匂いがまるでしないんですね。あの頃、現場介入を繰り返して新日本をめちゃくちゃにしてプロレスファンから邪魔者扱いされた悪のオーナー猪木の姿は確実にあった。2000年代以降の猪木さんってすごく語りづらいから、どうしても昭和の猪木を求めるし、そこが焦点ではない『アントニオ猪木をさがして』には当然文句は出るんだろうなと。ボクも上映開始前は「ちゃんと満足させられるのか?」ぐらいのスタンスだったし、映画の構成自体は酷いなって思いました。それは詰め込むものが多すぎて、そうなっちゃったのかもしれないんですけど。
福山雅治のナレーションの起用に関しても批判があるんですけど。福山雅治と猪木さんの接点は映画の最後に明かされるんですが、ラジオでときおりプロレスの話題が出てくるし、2020年にはB’zの稲葉浩志と重度のUFCマニア対談をしている。じつは2010年代にUFCが日本進出するもまったく客が入らなかった頃にも両者はUFCをテーマに対談をやってるんですよ。あの時期にわざわざPRに協力するってホントの格闘技好きだし、2人とも「猪木発UWF経由PRIDE、終点UFC」という王道ルート。だから安心感はあったし、福山雅治の声があることで猪木さんの映画にふさわしいメジャー感が出たと思うんですよね。 こうして始まった映画ですが、最初のブラジル移民編がものすごく泣けるんです。当時の猪木さんをよく知る日本人関係者が共に過ごしたサンパウロの市場や農園を訪ね歩く。あの頃を懐かしむ姿から、青年時代の猪木さんが浮かび上がってくるようで……。ただ、そこから雲行きがどんどん怪しくなってくるんですよ。
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