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フューリーvsガヌー“不平等の克服”のドラマ(文・ジャン斉藤) 【1記事から購入できるバックナンバー】 ・評判の悪い映画『アントニオ猪木をさがして』について
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・UFC☓USADAの提携解消とは何か
・QUINTETは邪道?/ドーピング驚愕の実態■高橋“SUBMISSION”雄己
あの男の恐るべき強さを知り尽くしているはずのMMAファンでさえ目を疑う光景だった。元UFCヘビー級王者フランシス・ガヌーがボクシングデビュー戦において、ボクシングWBCヘビー級王者タイソン・フューリーからダウンを奪い、最終的に敗れはしたもののスプリットの判定まで追い詰めたのだ。
戦前の下馬評ではガヌーの圧倒的不利だった。総合格闘家の技術がいくら進化しようが、デビュー戦で世界王者に勝つなんて無理に決まっている。フューリーは「卓球選手がテニスのウィンブルドン決勝でノバク・ジョコビッチと対戦するようなものだ」と嘲笑った。このたとえに反論できる者はいなかったが、中東リヤドで起きた現実は、卓球選手の強烈なサーブにジョコビッチがコートに這いつくばるものだった。
「MMAvsボクシング」の原典ともいえる1976年のアントニオ猪木vsモハメド・アリでは、猪木はリングに寝そべりながらボクサーの打撃に立ち向かった。2023年のガヌーvsフューリーではMMA側がパンチでボクサーをマットに寝かせた。 猪木vsアリから43年――“なんでもあり”という競技の進化を象徴するシーンである。MMAが存在しなかった時代であればボクシングに飛び込んでいたはずのガヌーという怪物が偶然にもMMAに取り組むことになったことは、ジャンルの間口の広がりを確認できる。MMAは人材流動の面でも格闘技の王様ボクシングを脅かしたといえた。
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