keentfさん のコメント
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鈴木秀樹 が16,000字で語る「プロレスラーの強さとは何か」(聞き手/ジャン斉藤) *Dropkick配信されたものを再構成したものです 【1記事から購入できるバックナンバー】 ・TAJIRIかく語りき「奇跡のプロレスから離れて」
・夢とトラウマを与えたアントニオ猪木の「死」■菊地成孔
・【リングス退団編】俺はそんなことを絶対に言っていない■長井満也
・【バチバチ最終回】臼田勝美「ありがとうバトラーツ」
―― 今日の配信のゲストはプロレスラーの鈴木秀樹選手です。鈴木さん、よろしくお願いします!
鈴木 よろしくお願いします。こうしてZOOMで取材されるのは、なんかすごく久しぶりな感じがする。これはZOOMじゃないですけどね。
―― ボクが鈴木さんを取材するのは猪木さんが亡くなったあとくらいですかね。
鈴木 亡くなられてからちょっとあとくらいですね。
―― 今日は何かテーマは決まってるわけじゃないんですけど……。
鈴木 まあ雑談ですよね(笑)。
―― 先ほど鈴木さんのツイートを見ていたら、猪木さんと肌を合わせている写真のポストにコメントされてましたね
鈴木 あれは2017年頃に「ISM」という大会があったんですけど、猪木さんがお客さんに技をかけるという企画があったんですね。それの取材兼練習にボクが呼ばれて、アキレス腱固めとフェイスロックの写真を撮ったんですよ。
―― 鈴木さんは猪木さんに技をかけられたんですね。
鈴木 猪木さんからいきなり「俺は現役とはやらねえんだよ」と言い出して。「なんだろう??」と思いながら、アキレス腱固めをかけられたんですよ。これって動画じゃなくて写真だけの撮影ですよ。変な話、形だけでいいじゃないですか。でもまあしっかり極めてくるんですよね(笑)。
―― 形だけでは許さない!(笑)。
鈴木 あの頃の猪木さん、何歳だったんだろう。さすがに身体も少し弱くなっていたと思うんですよね。アキレス腱固めって、1回でガッチリと取らないとなかなか極まるものでもない。ポイントには入ったんですけど、猪木さんの力も少し弱まってたからすぐには極まらなかったんですよね。だんだんと力が入ってきたから、ちょっと早めにタップしたんです。その日の夜に試合もあったから痛めたくないじゃないですか(笑)。
―― 撮影でガマンしてケガしたくないですよね(笑)。力が落ちていることを自分でわかっているから「俺は現役とはやらねえんだよ」と言ったんですかね……。
鈴木 猪木さんはボクの対応もわかったでしょうね。フェイスロックのときはおもいきり顔を締め上げたら「パキッ!」って音が鳴って(笑)。
―― ハハハハハハハハハ!
鈴木 「おい、音が鳴ったけど大丈夫か?」って心配するんですけど、その顔がすごい満足してるんですよね(笑)。ナメられて手心を加えられたと感じたから、今度はがっちりやったんじゃないかなと思います(笑)。
―― 鈴木さんは猪木さんとけっこう肌を合わせてるんじゃないですか?
鈴木 ボクは数回なんですよね。猪木さんがガッチリ触ったのはギリギリUFOのときの選手じゃないですか。
―― 引退直後の猪木さんが小川直也さんや佐山聡さんと一緒にやっていた頃。
鈴木 藤田(和之)さんやカシンとか。ボクはもう本当に数えるくらいですよ。だから闘魂を理解できるレベルにはいないです。わかっていたらアントニオ猪木的な人物になれてると思うんですよね。なれてないからたぶんわかってない。
―― 猪木さんとスパーした人間は数知れないですけど、疑ってかかった選手は少ないと思うんですよ。フェイスロックを全力でやってきたのは“前科”があったからじゃないかなと(笑)。
鈴木 ああ、ありましたね。猪木さんがIGF道場に来られたときに、横四方の抑え込みを見せてくれたんですよ。ボクが脇で見ていたら、猪木さんは「オマエは信用してねえだろ?」と。要は抑え込まれてるほうが遠慮してると思ってんだろってことですね。だから「はい。やってもらっていいですか?」と。
―― そこでそう言っちゃう鈴木さんも面白いですよ(笑)。
鈴木 ハハハハハ。猪木さん、おもいきり抑えこんできたんですけど、力がやっぱり強い。ボクは下から猪木さんの顔や髪を掴んで引き剥がそうとしたんです。目に指を入れるまでじゃないですけど……。
―― ハハハハハハハ! とんでもないですよ!
鈴木 そうしたら、アゴでその手を押さえこんできて。あのアゴも凶器なんですよ(笑)。で、ボクの顔面にヒジを押し付けてくるのがめっちゃ痛くて。終わったあと猪木さんの髪の毛はぐちゃぐちゃのまま「どうだ、ウソじゃねえだろ?」と言われたので「負けました。すいませんでした」と謝りました。
―― 髪の毛がぐちゃぐちゃなのがリアリティがあって最高です(笑)。猪木さんも跳ね返ってくる若手のほうがやりがいはあるというか。
鈴木 やっぱり猪木さんは本当に強かったわけじゃないですか。もちろん年齢的に一番のピークではないんですけど、ちょっとでもその強さを知れたらいいなと思って。猪木さん以外のレジェンド系も受けてましたね。
―― 他に誰とぶつかったんですか?
鈴木 たとえば藤原(喜明)組長ですね。なんの試合だったかは覚えてないですけど、6人タッグで先発がボクと藤原さん。組んでレスリングになって、ボクが下になったのかな。何をしてくるのかと思ったら、いきなり顔にパコーンってパンチを入れてきて。
―― ハハハハハハハ!
鈴木 「この野郎!」ってボクも殴り返したんですよ。6人タッグなんですけど、そこからお互いに殴り合いですよ(笑)。さすがに顔は反則だからボディを打ちましたけど。
―― そこは一線を守るんですね。
鈴木 組長は顔にも打ってきましたよ、ギリギリだったけど。こっちの対応がマズかったら、アゴ行かれるなと思いました(笑)。組長もあのときいくつだったのかなあ。60代後半だったんですけど、「同じの年齢だったら、どれくらい強かったんだろう?」って想像するのが好きですね。
―― 組長が新日本の前座でやった頃、キラー・カーンさんと仲が悪かったのかな。どこかの地方でシングルマッチが組まれたときに試合前に体育館の緞帳をサンドバック代わりにしてボクシングの練習をしていたと。関節技の鬼だけど、仕留めるときはボクシングなんだなって(笑)。
鈴木 殴り合いになったら殴ったほうが早いってことじゃないですか(笑)。プロレスは殴っちゃいけないってルールはないですから。昔ビル・ロビンソンも言ってましたよ。PRIDEの試合を見ながら「このルールだったら上に乗って関節を取るよりは殴ったほうが早い」と。MMAルールならそうですよね。下にならずに殴ったほうが早い。だから下にならないようにする。ロビンソンが現役のときはMMAはやってなかったですけど、プロレスというジャンルでそれなりにやってきた人だから、その戦いができるかできないかは別として、想像力を働かせればそういう言葉が出てくるんだと思います。ロビンソンの時代のプロレスはテレビもなかったし、けっこう悲惨な試合はあったと思うんですよね(苦笑)。
―― 悲惨な試合!(笑)。
鈴木 そこはロビンソンに限らずですけど、そういう中で生き残ってきた人たちは何か戦いのコツを知っているはずだし。一線のところでも引かないで勝負できるから残ってきたんでしょうね。
―― プロレスは一線を越えてはいけないところはあるけども、その線が消えたときに対応できる力も問われる。
鈴木 とくにロビンソンは、アヤフヤな時代だったからこそなんでしょうね。猪木さんだって“いろんな試合”があったわけですから。それはプロレスが単なる競技じゃなかったからこその強さですよね。プロレスの競技的なところはMMAというものと合わさったんですけど。こういうことをいうと「夢がない」と思われるかもしれないけど、どんな競技もそのルールでずっとやってきた人が強いんじゃないですかね。亡くなられましたけど、横綱の曙さんに仕切りをやってもらったことがあるんですよ。
―― 相撲の立会いですね。
鈴木 いやあ、あれは怖かったですねぇ。相撲って絶対に前進するじゃないですか。下がったら終わりが前提の競技で、そこまで大きくない土俵の中に200キロ近い相手が目の前にいるんですからね。これは勝てないですよ。でも、これがグラップリングで1センチ後ろに下がってもいいとなると全然違ってくるんです。だから競技の強さはルールの違いに関わってきますよね。
―― 猪木さんの凄さはよく語られますけど、競技的な強さだけではなく修羅場で立ち回れる勝負度胸はすごいなと。“敵地”だろうが関係なくギリギリの戦いができるじゃないですか。 ・命懸けだったアントニオ猪木
・中嶋勝彦の闘魂スタイル騒動
・闘魂をわかったふりをしていたIGF
・世界一の日本のプロレス道場システム
・WWE/NXTのコーチ時代 ・裏投げ問題は単なる技術不足
・ロビンソンの教え
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