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――福田選手は京都の山奥にお住まいで、電波も届いてるか怪しいとか。
――京都に“陸の孤島”!(笑)。
福田 まあまあ停電が普通に起きるんですよ。大雨や大雪なんかで普通に起きちゃうから、けっこう定期的にね。だから圏外にいることが多いですね。
――いまの世の中、圏外になったら超不便じゃないですか?
福田 なんか焦らんっすね、べつに。俺のこと、知ってる人はみんな思ってるかもしれないですけど、めっちゃレスポンス遅いんですよ(笑)。圏外にいるから時間差になるんです。
――LINEだと既読したのかはわかるから、返信が義務になりがちですけど、そこから解放されているわけですね(笑)。
福田 そうなんですよ。なかなか大変な時代やなと思いますね、ハハハハハハ。
――今日はそんな山奥からいろいろと伺いたいと思います。
――福田選手は気づいてなかったかもしれないですけど、ちょっと前に福田選手のことをお見かけしまして。
福田 ……マジで? どこですか?
――変な場所じゃないですよ(笑)。DEEPの計量会場で佐伯(繁)さんから大晦日の芦澤竜誠戦のオファーをされたときに、じつは近くにいまして。
福田 あー、いたんや。(青井)人の計量についていったときやな。
――そのあと佐伯さんと話しまして「ちょっと怒ってたから、芦澤戦はやらんわ」みたいな感じで言っていて。
福田 そのこと言ってました?(笑)。いや、怒ってはないんですけどね。なんかびっくりしたというか。もともと大晦日のRIZINは「あるかも、ないかも」みたいな状態だったんですよ。
――マッチメイクが難航していたと。
福田 「あるかも」って言われて「やっぱりないわー」と言われて、そうしたら「このカードやったらあるかも……」って話になったけど、「やっぱなかったわ」と。
――二転三転したわけですね(笑)。
福田 そうなんですよ。で、「あー、大晦日はないか」ってことで、人の試合があるから東京に来たら、佐伯さんを通してオファーがあってびっくりしちゃいまして。しかも想像してへんかった相手やったんで「マジで?」が率直な感想。だから怒ってるようには見えたかもしんないし、「勝負論あります?」って聞きましたし。
――芦澤選手はMMAキャリア2戦ですね。
福田 向こうは勢いあって見せ方の上手な方。ボクは地道に試合内容で積み重ねてるタイプやけど、それが入り混じる時代なんですけど、「勝負論あんの?」みたいな。で、佐伯さんは「やるんだったら絶対にMMAで勝負してね」と言ってくるんですよ。それもまた自分の中で火がついたというか。「俺が負けると思ってんすか?」みたいな。
――芦澤選手は打撃が本職だから、相手の土俵は勝負しないでほしいって意味ですかね。
福田 そうなんですよ。佐伯さん、計量のときも言ってきはったから「ほんま、めっちゃ心配してますやん」みたいな(笑)。まあMMAって絶対がない競技やから、万が一負けたらすごいDEEPの株をすごく下げてしまうことになるんで。まあまあ、そういうことも踏まえてオファーがあったときは、びっくりしたんですよ。
――マッチメイクは「二転三転した」ということは、何パターンかあったわけですよね。ボクもいろいろ噂は聞いてるんですけど、びっくりするカードがあって。
福田 そうなんです。オファーはいただいて、それはかたちにならんかったんで、口外はしないですけど。だからなんというか、自分でもうまいこと把握しきれてへんぐらい「いまそんな話をくんの?」みたいなことが連発してる時期だったんで。自分でも処理が追いついてなくて(笑)。
――圏外にいるから流れについていけない(笑)。
福田 そうそう。流れについていけてないです。
――そして久々に東京に行ったら「芦澤とやってくんないか」と言われるわけですもんね(笑)。
福田 東京に行ったときもいつもビックリしますね。俺の住んでる町の山より、建造物のほうがでかいんですよ。「怖っ!!」ってなります。
福田 そう、高校で初めて東京に行ったときに思いました、「ここは住まれへんなー」って。都会、苦手です。
――結局、芦澤戦を受けたじゃないですか。そこは悩みました?
福田 めっちゃ悩んだっすよ。めっちゃ葛藤したし、ボクの身内からも「やる必要あるの?」っていう人もいるわけですよ。「そこでそんなリスクを背負う必要ある?」「勝ってもあたりまえで終わるやん。勝っても何も得えへんやん」という声もあれば、「知名度も上がるし、おいしいんちゃう?」という声もあるし。ボクとしてはやっぱり家族との生活もあるし、戦いたい気持ちももちろんあるんですけど、そういうことをぐるぐる考えてたら、俺がやらへんとなって「逃げた」って言われるの嫌やなって。
福田 はい。もし断るんやったら「準備期間が短いから無理」みたいな感じで断ることになるみたいな話も聞いたりして。それも自分の中では違うじゃないですか。べつに「来週、試合して?」って言われたら俺はできるし。たった1人にでも逃げたって言われるのが嫌だから、いろいろ考えたうえで出ようと思って。やっぱり格闘家は戦うことでしか証明できないんで。「勝ってあたりまえ」って思われるけど、だから仕留め方にはこだわったって感じです。
――そこは「MMAでやってくれ」という佐伯さんの言葉にも火がついたわけですね。
福田 そうです(笑)。ほんまにぶちかましたろとは思いました。それがDEEPのベルトを持ってる人間として、DEEPの看板を背負って出るからには。「芦澤くんに俺でも勝てるわ」って思ってるDEEPの選手も多いと思います。「おいしい試合を組みおったな」みたいに思われてる人もいるかもしれへんけど、だから倒し方というか、勝ち方にこだわる。漬けて勝つとかやったらイージーやから。それやったらべつにチャンピオンじゃなくてもできると思います。だから絶対ぶちかましたろって、失礼のないように全力で仕上げて臨みました。
――ただ勝つわけではないと。

福田 ほんまに隙を見せたらすぐ狩る。それが打撃やろうが、テイクダウンして起き上がり際にサカボしようが。RIZINやし、4点ヒザありやからグラウンドでガチガチに固めてサイドからヒザでガンガンやってもいいし。他の選手じゃあ、できひんような倒し方で勝ってやろうって思ってました。
福田 いやまぁ、そう思うのは仕方ないかもしれへんけど……「1回じゃあやってみたら俺と?」って(笑)。
――やれないです(笑)。
福田 ほんま、そんな感じっすよ。普段からキックボクサーと殴り合いはいっぱいするし、WIZARD(京都のキックボクシングジム)にもたまに遊びに行くんですよ。そこにはKrushのチャンピオンとか、トップの子がいたりして、選手はめっちゃ集まるし、そんなところでみんなとヒリヒリしてるんでね。ボクを知ってる人は「打撃になったらヤバイ」と思ってた人は少ないんちゃうかな。
――あの日の大晦日ってキック転向組が全員負けちゃったんですけども。それ以前って転向組がそこそこ勝ってたんで「日本のMMAファイターの打撃はレベルが低い。キック転向組がテイクダウンをおぼえたら4~5年でトップに立てる」みたいな意見が賛同を集めていて。
福田 そうなんですか(苦笑)。MMAがほんまに強かったら、ある程度打撃も強いやろから。MMAで実績を残せる選手は立ち技やっても強いと思います。ムエタイやろうがボクシングやろうが強いと思いますよ。打撃もそれなりにトップいけるようなレベルやと思うし。