
レスリングオリンピック代表からプロレスに転向、新日本プロレス、ジャパンプロレス、全日本プロレス、SWS、SPWF、PRIDE出場……流浪のプロレス人生を送ってきた谷津嘉章がすべてを語るインタビュー連載の第2回! 今回は維新軍、ジャパンプロレス時代を振り返ります!(2016年に掲載されたものです)
前回はこちら
――アメリカ遠征中だった谷津さんは、帰国して維新軍に加入するように新日本プロレスから命じられたんですね。
谷津 俺は日本に帰りたいとは思わなかったんですけどね。それはアメリカの生活が楽しかったから。日本に帰る前に会社からホノルルに寄るように言われたんですよ。「長州が待ってるから」ってことで。それでホノルルで長州に会ったら「おまえはよ、俺のところに入るんだよ」って。要は俺のことを維新軍に誘いに来たっていう表向きなんですよね。
――谷津さんは維新軍団入りを知らされてなかったんですね。
谷津 うん。マスコミ的には「長州と谷津がホノルルで共闘!」って書くんでしょうけど。会社としては長州にパートーナーがほしかったんでしょうね。(アニマル)浜口さんはいたんだけど。
――当時の長州さんは維新軍団として上り調子でしたし、谷津さんとしてもやる気が出てきたんじゃないですか?
谷津 うーん、「入団したときは主流派だったのになあ……」って感じでしたよね(笑)。
――イマイチですか(笑)。
谷津 俺は会社と契約してるから命令に従わないといけないんだけど。会社としては長州力と同じレスリング出身だし、いいアイデアだと思ったんでしょう。新日本に入った当初も旅館では長州さんと同じ部屋だったんですよ。そこは会社からの配慮。レスリング同士で話が合うだろう、と。
――実際に長州さんと話は合ったんですか?
谷津 話が合うというか、レスリングという共通点はありますからね。ただ、それまで長州力なんて知らなかったんですよ。吉田光雄という名前は知っていたけど。
――それくらいプロレスのことはよく知らなかったんですね。
谷津 それに同部屋といってもね、シリーズ中、彼は部屋に寝に来るだけなんです。
――えっ、どういうことですか?
谷津 長州力はね、とにかくパチンコが好きだったんですよ。シリーズ中に「おい、谷津。金を持ってないか? 負けが込んでるんだよ」って金を借りにきたり。
――パチンコに夢中で部屋にいない。
谷津 俺はやりませんでしたよ。入ったばっかで遊んでらんないという理由もありましたけど、人生そのものが博打というかさ(笑)。みんなはパチンコ以外の博打も好きでね。坂口征二や倍賞鉄夫たちと麻雀や花札、ポーカーもやってたね。日本のプロレス界は博打好きな相撲取りが作ったんですから、みんな当然博打好きになるんですよ。
――安田忠夫さんもその流れですね(笑)。
谷津 博打が原因でケンカも始まりましたからね。「金返せコノヤロー!!(怒)」って。誰とは言わないけど、相撲取り出身同士のケンカ。金の貸し借りでトラブルになったんじゃなくて、先輩がインチキしたんですよ。それがバレちゃった。
――まるでカイジの帝愛地下編だ(笑)。
谷津 そうなったら上下関係なんかないから後輩が怒った怒った。面白いよね(笑)。
――話は維新軍に戻りますが、維新軍には専用の巡業バスが用意されてたんですよね。
谷津 あった。それまでは外国人と日本人のバスが2台でしょ。だけど、維新軍になってからバスは3台になったの。俺たちは小さいなマイクロバスだけど、重苦しいアントニオ猪木が乗ってるバスと、わけのわからない外国人たちが乗ってるバスと違って楽しいんですよ(笑)。
――維新軍のバスは自由なんですね。
谷津 俺はずっと寝てますから。キラー・カンたちはひたすら博打をやってるしさあ。
――どこでも博打やってますね(笑)。猪木さんが乗ってるバスではバカはできないもんですか?
谷津 そりゃあできないですよ。俺はあとで全日本に移りますけど、馬場さんのほうが楽。馬場さんは運転席の後ろの次くらいに座るんですけど、猪木さは真ん中よりちょっと前に出るんですよ。
――それは全方位にプレッシャーかかりますね(笑)。
谷津 イヤなもんですよ。それに猪木さんの隣に外国人の男が乗ってるんだけど、それは猪木さんが雇った英会話の先生。バスの中で英語の勉強してるんですからね(笑)。
――猪木さん、勉強熱心ですねぇ。
谷津 あと猪木さんはいろいろと事業をやってたでしょ。プロレス以外の人間と打ち合わせしてたりね。でも、猪木さんはいつもバスに乗ってるわけじゃないんだよ。打ち合わせかなんかで東京に帰って飛行機で巡業に戻ってきたりしてて。猪木さんがいないときのバスの雰囲気はまだいいんですよ。坂口征二が録画して持ち込んだ火曜サスペンス劇場やモノマネ番組を見たりね。「ま〜た見るのかよ」って内心呆れていたけど(笑)。
――そんな本隊からすると、維新軍バスは天国なんですね。
谷津 自由にできるから。上下関係はいちおうあるけど、猪木さんみたいな重苦しい人間はいませんから。だってオーナーと一緒だといろいろと気を遣うでしょ。
――馬場さんもオーナーですよね?
谷津 猪木さんはプライドが高くてとっつきにくいけど、馬場さんは人間味があるから。試合前に馬場さんは「おい、まんじゅうでも食えよ」って。「試合前にまんじゅうかよ」って話だけど(笑)。
――試合前にまんじゅうを食ってたら猪木さんなら殴りそう(笑)。
谷津 馬場さんはね、どっかのデパ地下で甘いものを買ってこさせんですよ。で、自分が食べきれなくなったやつを翌日に寄越すんです。まんじゅうも固くなっちゃってね(笑)。
――うーん、馬場さんも面倒(笑)。
谷津 全日本の中には、馬場さんがバスに乗っててイヤだなって思ってた連中がいたかもしれないけど、俺は気にならないですよ。会場に着いたら馬場さんは売店の前で葉巻を吸いながらお客さんにサインしてるし、控室はまあノビノビできるんです。新日本の場合、猪木さんが控室にいると、みんな外に出ますからね。非常階段で着替えたりしてましたよ。
――そんなにイヤなんですか!(笑)。維新軍は宿泊先も本隊や外国人とは別なんですか?
谷津 3つに分かれますよね。外国人選手は旅館の便所が合わないからビジネスホテル。小さい町だとそんなにホテルはないですし、ラブホテルいうわけにはいかないから、必然的に我々は旅館になっちゃうんですよ。で、旅館は部屋が畳だから博打が始まるんですよ。
――また博打!!(笑)。会場入りも別々なんですよね。
谷津 そうだね。俺らは自分の試合が終わると帰っちゃうんですよ。そうしないとお客さんの帰り道で混んじゃうでしょ。本当は親方(猪木)の試合が終わるまで待たないといけないんだけどね。
――どこまでも自由だったんですねぇ。
谷津 維新軍はブレイクしてたから会社はなんでも言うことを聞いたんですよ。ドル箱ですから長州さんもいろいろと会社に要求してたと思いますよ。
――ギャラもよかったんですよね?
谷津 給料は1試合いくらって決まってましたしね。
――谷津さんは1試合いくらだったんですか?
谷津 うーん、10万くらいだったかなあ。150試合やったら年間1500万。あとグッズの売り上げ、サイン会、パチンコの営業周りは別でもらえるんで3000万ぐらいあったかもしれないですね。トップはもっと稼いでいたでしょ。でも、面白いもんで、そんだけ稼いでも手元に残らないんですよね。
――バーっと使っちゃうんですね(笑)。
谷津 使っちゃう、とくに独身はね。プロレスラーってほとんどアンポンタンが多いでしょ。
――ハハハハハ。
谷津 でも、結婚してる奴は堅実なんですよ。それはプロスポーツ選手にも言えることなんですけど、早く結婚したほうがいいんですよ。プロレスラーは身体が大きいけど、子供なんですよ。社会人であって社会人じゃない特殊な職業だから。マネジメントできる女性がいないと全部使っちゃうんですよ。
――猪木さんはプロレス以外の事業に稼いだ金を突っ込みましたね。とくに夢のバイオテクノロジー事業アントンハイセルに。
谷津 アントンハイセルに酷い目に遭ったなあ(苦笑)。
・アントンハイセルの社債
・馬場と猪木が佐川清と面談
・第1回IWGP決勝戦の猪木舌出し失神事件
・維新軍の新日離脱
・昭和のプロレスの闇、営業
・新日本は早漏、全日本は遅漏
・ジャンボ鶴田は柔軟運動だけ
・SWS移籍の裏側
・カブキを信用してしまった馬場さん……続きは会員ページへ