『シン・ゴジラ』を必ず見なければいけない五つの理由。
四つ目は“見せ場を制限した”という事です。
今回は、“会議室”が見せ場になってるんですね。
これは元々、テレビ版『エヴァンゲリオン』が得意だったんですよ。
テレビ版のエヴァは、面白い事は会議室とか室内で起こってるんです。
ときどき戦闘シーンとか出てくるから、面白かったんですね。
昔のウルトラマンとか特撮映画には弱点があった。
面白いのは怪獣同士の格闘だった。
ドラマ部分は、たいして面白くないのが、ほとんどだったんです。
『ガンダム』は戦闘シーン以外の面白さが、すごかったんです。
エヴァも戦闘シーン以外の面白さが、すごかったんですね。
だけど、エヴァの面白かった会議室シーンを、『踊る大走査線』にパクられたわけです。
「ちくしょう!うまくエヴァをパクりやがって!」っていうような会議室シーンの連続なんですよ。
ところが今回『シン・ゴジラ』で、ようやくパスが返ってきた。
おかげで、もう「踊る大走査線が面白い」というヤツは、誰もいなくなるだろうと思う。
それぐらい会議室シーンがメチャクチャ面白い。
コピー機を並べるだけで、あんなに燃えるとは思ってなかった。
コピーをみんなに配るだけで、ボールペンやマジックを掴むだけで、あんなにカッコイイ シーンが出来るとは。
それぐらい会議室シーンがカッコいいんですね。
エヴァから、踊る大走査線に行って、またシン・ゴジラ。
行って戻って、さらに良くなった会議室シーンが、素晴らしいと思います。
こんなふうに、見せ場を制限してる事ですね。
あとゴジラのサイズによる見せ方の切り替えが、抜群に上手いです。
元々ロボットものは、『マジンガーZ』とかで、50メートルぐらいのものを出しちゃったわけですね。
その後の『ダンガードA』とかで、100メートルとか200メートル越えになってしまった。
そして『機動戦士ガンダム』では、18メートルのサイズに落としました。
あれも本当は富野由悠季監督は、できれば3メートルぐらいにしたかった。
でも、やっぱりスポンサーとの都合があって、18メートルぐらいになったんですね。
マジンガーも設定では18メートルでしたけど、アニメの中では全然18メートルじゃ無いですよね(笑)
『ボトムズ』で小さくしたんですけども、あれは小さくし過ぎたんですよね。
ロボットアニメとして描いて面白いサイズっていうのは、パトレイバーぐらいですね。
8メートルから12メートルぐらい。
やっぱりジャストのサイズ感っていうのがあるんですよね。
大きさが小さければ、リアルな怖さが出せる。
たとえば『空の大怪獣ラドン』には“メガヌロン”という4メートルぐらいの怪獣がいるんですね。
ラドンが出てくる前に民家を襲うシーンがあって、これが やたらと怖いんですよ。
そのメガヌロンをラドンが食べているシーンを出す事によって、巨大感を徐々に出していたんですね。
大怪獣を出しちゃったら、“けれんみ”は出るけれども、リアルじゃない。
でも小怪獣を出しちゃったら、リアルで怖いんだけど、面白いハッタリのある絵が作れない。
このあたりの見せ方が、シン・ゴジラは、めちゃくちゃカッコイイです。
どうカッコイイか言いたけども、ここはガマンですね(笑)
あとは実写に対するコンプレックスを無くした撮り方です。
劇場版のアニメというのは、数分を見たら、ほぼ全カット数が分かるといわれます。
ほとんどのアニメ作家は、3秒間を1カットとして計算するからですね。
だいたい2時間の映画だったら2000カットぐらいで出来ている。
今回のシン・ゴジラも、かなりカット割りが細かいです。
実写だったら、リアリティだったり、役者さんの演技を見せるためにカメラを長く回してしまうんです。
だけどシン・ゴジラは、どんどんカットを短くした。
そうした方が、演出的にスピーディーなんです。
ただ単に言い合うシーンだけでも、あえてカットを割った。
早いところでは2秒とか1秒ぐらいのインサートシーンをバンバン入れている。
これはあきらかにマンガ的なコマ割りに近いカット割りをしています。
そしてテロップは読めなくてもいいと考えてます。
人が出るたびに、下にテロップが出て来てるんですね。
この人は何の役職かと。
主人公の立場が変わったり、出世するたびに、すっごい長いテロップが出るんです。
けども、これが1秒ぐらいしか出ないんですね。
テロップは読めなくてもいい。
セリフも、理解できなくてもいい。
ゴジラ映画に引っかかっている人、特に女の人は、「セリフの意味が難しくて、入り込めなかった」って言うんです。
でも、ゴジラ映画のセリフはラップなんですよ。
おう、怪獣でてきたよ♪
日本政府、どうする?♪
防衛出動、行っちゃえ、ゴー♪
防衛出動、出来ない。♪
なぜかというと、自衛隊、災害出動しかできませーん♪
じゃあ、威力行為どうだ?♪
威力出動するために、敵国の定義、必要♪
ゴジラ、敵国でありませーん♪
そんなラップをやってると思えばいいんです。
セリフ自体に、ほとんど意味は無いんですよ。
カッコイイ四文字熟語をならべているだけなんです。
それを音楽やミュージカルだと思って見ればいいんですよ。
オタクの人たちは、すごい早さで脳内変換して「こんなセリフを言ってる」って分かるんです。
まるで英語が分かる人が洋楽を聞いてるときの優越感みたいなもの。
だからゴジラって、見てると頭が良くなった気がしてくる不思議な怪獣映画なんです。
実は別に、まったく頭は良くないんですけどね(笑)
でもセリフに意味がない事を、キチンとした映画では嫌うんです。
もっとセリフにタメがあって、役者さんの見せ場を作るんです。
だけど庵野秀明は、とことんワガママで、役者には何一つ見せ場を与えてない。
そんなワガママな演出方法で、今回は統一している。
“見せ場を制限した”とは、そういう事なんです。
会議室の中を面白くした。
ゴジラのサイズをいろいろと割り切った。
あとは長回しをやめて、アニメカットにした。
セリフもすべて、役者さんが言いたがるようなセリフではない。
そんな、やり方です。
すごいでしょ?
ネタバレなしで、ちゃんとシン・ゴジラを褒めてるでしょ?
誰も褒めてくれないから、自分で自分を褒めてるよ(笑)
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