この本は税込みで780円ぐらい。
内容から考えると、めちゃくちゃ安いです。
この本って、“アンチ・バクマン”なんですよね。
『バクマン』や『アオイホノオ』を読んで「漫画家になりたい!」などと言っている人に正義の鉄拳を食らわせる感じの内容です。
書いてあることが、本当に面白いんですよ。
藤田さんのスタジオの中には、「無言禁止」という張り紙があるそうなんです。
「アシスタントとして入ってきた人間は、絶対に会話をしろ!」と言われてるんですよ。
たとえば、「何にも話すネタがなかったら、『何してるんですか?』と聞け!」とか。
先生が仕事してたら、「先生、何を描いてるんですか?」って聞け。
先輩が仕事してたら、「先輩、何してるんですか?」って聞けって。
このスタジオの中で無言で通そうとするようなヤツ。
聞かれたことに最低限しか答えないようなヤツ。
「そんなヤツは、その場でクビにする!」と言っているんですよ。
絵は上手くなくてもいい。
漫画は下手でもいい。
でも会話のキャッチボールが出来ないヤツは、いらない。
そういうヤツは、最終的にクリエイターになれない。
そんな実践的なことが、書いてあるんです。
言われてみれば漫画家になってる人は、ちゃんと話が出来る人や、会話が面白い人なんですよね。
「人と話をしたくないから絵を描いてる」って人も、多いと思うんですよ。
しかし、そういう人に「漫画を描くな」とは言ってないんです。
「俺のスタジオに来るな」とも書いてない。
単にスタジオに「無言禁止」って書いてるだけなんですよ。
つまり、「コミュ障だったら、覚悟して来いよ」と。
最終的に漫画家は、人や編集者と対話をして、その中で作品を作っていくもの。
だから、絵が下手な事と同じように、コミュ障はハンディキャップだと言ってるんです。
絵が下手でも努力すれば漫画家になれる。
コミュ障でも努力すれば漫画家になれる。
そう、きっちり書いてあるんです。
ただ、「『漫画家だったら、コミュ障の自分を守ってくれる』っていうのは大きな間違いだ!」って、ドーンと書いてるんですよ。
その次に求められるのが、「俺と一緒に映画を見ろ!」です。
無言禁止だからといって、無駄な会話をやっていてもしょうがない。
そうじゃなくて、一緒に映画を見て、その映画が好きか嫌いかを語り合う。
相手に無理に合わさなくてもいい。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を好きなんだったら、好きな理由を聞いた時に「それは、こうだからです」と返せと。
俺が好きな映画をお前が嫌いでも、俺は絶対に文句は言わない。
その代わり、「なんでお前は、あの映画が嫌いなんだ?」と必ず聞く。
その時には、「こういう理由で嫌いです」と返せと言ってるんです。
「好き」も「嫌い」も、必ず理由をつけて返すこと。
それが、後で“ため”になる。
これは“自分の作品”と“自分”とを分ける訓練になる。
人はネームや漫画を描いて「ここがダメだ」と言われたら、最初は人格を全否定されたような気になって落ち込んじゃう。
一生懸命に作品を描いたら、「この作品は俺だ!」と思い込んじゃう。
それを引っぺがさなきゃいけない。
でもそれは、すごく難しいので、まずは他の人の作品でやるんです。
“俺の好きな作品”と“俺”とは別です。
だから、俺の好きな作品を「嫌い」と言われても、怒らない。
他人の好きな作品を「嫌い」と言っても、かまわない。
この関係を作った上で、初めて自分の作品について語り合えるベースができる。
これも、すごく大事なことなんです。
それを一流の漫画家が、こんなにも分かりやすい言葉で文字として書いてる。
すっごい面白い。
読んでも読んでも止まらない。
もう本当に脱帽ですよ。
コメント
コメントを書くどのあたりがアンチバクマンなんでしょ?
自分の「意見」を言えるのは大切だと思います。 ただ、誤解されるのは「何で意見を言うのか?」という部分。 意見を言うのは「物事を今より良くする」為に言うのであって「ケチつける」事ではない。 だから「褒めたり貶したりしながら」事を進めると思うんです。 失礼な事を書くと「どのあたりがアンチバクマン?」って、そういうのは「自分で考えましょうね」てものだと思うのです。 物事を進めよう!とか建設的に行こう!とか「前に進もうよ」て事がないんです。 残念に思います。 岡田さんの番組で学校の「演劇性?」がなくなったと語っていた影響って大きいなと思います。