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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「なぜアニメの製作本数は増えているのに、現場は貧乏なのか? 後編」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「なぜアニメの製作本数は増えているのに、現場は貧乏なのか? 後編」

2017-01-09 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/01/09
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    おはよう! 岡田斗司夫です。

    今回はアニメ界の問題点の解説・後編をお届けします。


    今回の記事はニコ生ゼミ12月25日分より一部抜粋しました。

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    「なぜアニメの製作本数は増えているのに、現場は貧乏なのか? 後編」


    (前編からの続き)


     あるオモチャ会社がアニメ映画に出資しようとしたけど、フィギュアの売り上げを試算したら1000万円しか出資できなかった。

     その場合、他の国だったらそのオモチャ会社は1000万円を出資して、他のオモチャ会社も出資して、合計数億円になる。
     ところが日本は特殊で、“一業種一社”いう業界慣例があるんだよね。

     これがアメリカとかだと、三社のオモチャ会社が出資を持ち込んできたら、ぜんぶ受けるんだよ。
     その上で、それぞれの出資額を割って分けるんだ。

     ところが日本は、そういう製作委員会の中の揉め事を極端に嫌うんだよね。
     お金を出した偉いオジサン達は、顔が潰れるのを極端に嫌ってる。

     よそから出たオモチャが、自分の社のオモチャよりもヒットしたら、その担当の顔が潰れちゃうから“一業種一社”という不思議な取り決めをしちゃった。

     そうすると、製作委員会の人数はこじんまりして、いつも同じようなメンツになる。
     みんなが出せる金額もお互いに分かってくるから、そうなると一つのアニメの予算なんて上限が決まっちゃうんだよね。

     ここで、もし中国の会社が「10億円を出す」と言ってきたらどうなるのか?

     それを断ったりはしないんだよね。
     リスクが減るから、ありがたいし。

     しかし、その10億円を本当にそのまま出してしまうと、中国の会社が全額出資できちゃうわけでしょ。
     そうなると、製作委員会のオジサンたちの旨味が無くなる。

     だから、その10億円を全額つかおうとはしないんだよね。
     その10億円を20口に分割して、5000万円×20口にするんだよ。

     それで1口5000万円の出資という事で、他の作品の中に混ぜちゃうわけだよね。
     そうすると20個の企画が増えていく。

     それで中国の会社の出資率を30%ぐらいに抑える事が出来る。

     これが今、アニメーションがひたすら増えている原因なんだ。 


     予算は無い。
     現場は「苦しい」と言っている。
     
     なのに何でアニメの製作本数がこんなに増えるのかというと、実は日本のアニメはヒットするのが分かっているから、世界中から出資が集まっているんだ。

     しかしその集まった出資で1本あたりの製作予算を増やしちゃうと、海外の出資配分が多くなっちゃう。
     1本あたりのアニメの6~7割が海外資本になっちゃう。

     別に現場は ぜんぜん困らないんだよ。

     これまで すごく貧乏してたんだから、お金を出すのがアラブだろうがドバイだろうが中国だろうがインドだろうが、とにかくまともなギャラが欲しいわけだよ(笑)。

     でも、そうじゃなくて、それを分割して日本の制作会社が簡単にハンドリングできる予算に天井を決めちゃってる。

     「これまで1000万円でアニメを作ってたんだから、1000万円で作れるだろ」といって、チャイナマネーを使ってリスクだけ減らすようにしてるんだ。

     つまり、これまで2000万円だった予算を、3000万円とかに上げたりしないんだよ。

     そうじゃなくて、これまでの2000万円の予算の中で、1000万円分を中国から来た出資で割ってリスク負担をさせてる。
     
     そして残り1000万円で自分たちの費用分担を減らそうとするんだよね。

     それによって、もっと他の企画にお金を出そうとしちゃうんだよね。
     結果、ひたすらアニメーションの企画が増える。

     出資すべきお金はいっぱいあるんだ。 
     だけど1本あたりのアニメーションには、ぜんぜんお金が増えない。

     そしてお金が横にばかり流れて、奥のスタッフの方には行かない。
     それで上の方にだけ滞留する事になってしまう。


     アニメーションというのは儲かるし、将来性があるから、世界中からお金が集まる。
     だけど1本の作品の予算が上がる事は無い。

     「アニメはこれぐらいの値段で作れる」って、製作委員会のオジサンたちが勝手に決めてるからね。

     有能なプロデューサであるほど、この仕組みが分かってる。

     でもプロデューサーには「自分が集められるお金の限度」があって、そのお金で出資率3~4割をキープしないと、絶対に他の製作委員会のメンバーの声が大きくなっちゃう。

     そうなると、企画のコントロールが取れなくなっちゃうんだよね。

     自分が総合プロデューサーとしてハンドリングするためには、自分の会社の予算で出資率3~4割を取らなきゃいけない。

     それが、アニメを数億円で作らなきゃいけない苦しい事情だと思うんだよね。

     ぶっちゃけると、日本のアニメのプロデューサーが個人経営レベルで5~10億円を動かせるようになると、15億円ぐらいのバジェットのアニメーションが作れるようになる。

     でも、日本の個人プロデューサーは、そこまでのお金を持ってない。

     なのでお金を出資する人は世界中たくさんいるんだけども、日本のアニメ予算は天井が決まってしまっている。

     それは談合で決める常連のオジサンたちが、アニメ予算の天井を決めちゃってるから。

     それを越えそうになったら、アニメ予算を増やさずに企画を割ってしまうからなんだよね。

     10億円が出資されても、それを現場に回す作品を作ろうとはまったく考えない。
     それよりも、その10億円を割って10本の映画を作ろうと考えてしまう。

     だからアニメの本数だけ増えて、現場の予算はまったく上がらない。

     製作委員会方式が良くないとは聞くんだけども、その代わり、このメカニズムのおかげで、かなりいい加減なアニメの企画も通りやすいんだよね(笑)。

     「こんなアニメに2000万円も出すべきじゃないよ!」という企画も通っちゃうから、それも良し悪しなんだけどね。


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