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以前より岡田さんが語っていた、一部の優秀なクリエイターのみが稼ぐことができて、それ以外は全て無償化、中間が存在しないような世の中が現実のものとなってきたのだと思います。
炎上騒ぎの渦中には、その中間層の人たちも多くいるのだと思いますが、その人達は今後どのように生きていくべきなのでしょうか?
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(前回の続きから)
西野君の炎上問題には、ポイントがいくつもあるよ。
たとえば「ベストセラーにしたいから1万冊を自腹で購入しました」が、問題のスタート地点じゃん。
でも実は、これは僕の入れ智恵なんだよ。
調べてみたら、2016年9月20日くらいに僕が「自分で1万部を買え」と言ってるんだよね(笑)
「それぐらいしないと、出版社は本なんて刷ってくれないよ」って。
10万部~20万部を売りたいんだったら、最初から“本屋に平積み”という状況を作らないとしょうがないんだから。
平積みという状況を作りたかったら、本屋さんの営業部が「これくらい売れる」という数ではなくて「売らざるを得ない」部数にするしかない。
たとえば村上春樹の新刊だったら、絶対に平積みになるでしょ?
そんな感じで、自腹で1万部くらい買い取ってしまって、それを自分で売るって宣言する。
そしたら出版社は、自社のプライドにかけて「これはもう売らなきゃいけない」となるから。
出版社はこれを、すごく嫌がるんだけどね。
出版社は「社内の事情だけで動きたい」という思いがあるから。
「でも西野君だったらやれるんじゃないかな?」と思ったら、本当にやってしまった。
そしたら、そういう宣伝効果もあって23万部くらいにはなったと思う。
その次は、お金の奴隷解放宣言。
ここで炎上したわけだよな。
炎上の原因として、“自腹で1万部買うような裏技を使う卑怯なやつ”“1万部=2000万円で自分の本を買えてしまうお金持ち”など、いろんな反感がベースとしてあるわけだよ。
そこに、“お金の奴隷解放宣言”という言葉。
みんなは、それを読んだ瞬間にカーッときちゃうわけだよね。
僕は1995年に朝日新聞社から『僕たちの洗脳社会』という本を出したんだよ。
その中では“お金の奴隷解放宣言”なんて偉そうなことは言わなかった。
「僕のブログで読めます。お金が惜しい人や貧乏な人は、ブログで読んでください。マテリアルとして本が欲しい人は、買ってくれればありがたいです。タダで読めますから、どうぞ」と初版のあとがきに書いてあるんだ。
西野君のやったことは、僕の20年あとを走ってるわけだ(笑)
まあ西野君が真似してくれたから、こういう考え方もメジャーになってきた。
ようやく評価経済も「思想」でなくて「実践」、マーケティングとかマネジメントとして使えるようになってきた。
なので、僕としてはアリなのだろうなと思う。
ただこれは、劇薬。
社会の中で使えるようになってきたのだけども、注意がいるよね。
本来の彼の言っている“お金の奴隷解放宣言”というのは「作品を、お客さん(特に子供)が見れない理由が“お金がない”だけだったら、つまんないよね」というニュアンスなんだよ。
ただ、それを「もう僕はお金の奴隷ではありません。西野はお金の奴隷ではありません。なぜかと言うと、この本がこんなに売れたからです。お金の奴隷解放宣言です」と読んじゃう人もいる。
「タイトルと内容をちゃんと見ろよ」と言っても、それはファクトチェックなんだよ。
怒ってる人に、いかにファクトチェックを訴えても無駄なんだよね。
おまけに西野君のブログが、長いんだよな。
本来は、あんな炎上している時のブログって、短くてもいいのに。
でも同じことを色んな方面から言って、徹底的に勝とうとしてるから長くなっちゃう。
そんなことをすると、また色んなファクトチェックに引っかかるわけだよ。
なので、炎上に炎上を繰り返してしまう。
もうね、こういう状態になったら、ファクトチェックは無理なんだよね。
おまけに、僕も“お金の奴隷解放宣言”を読んで「これは怒る人がいるは」と思った。
怒ってる人の気持ちが、かなり分かってしまう。
前回の従軍慰安婦問題と同じだよね。
従軍慰安婦像を作った流れは理解はできるんだけど、ムカッてくる日本人の心もすごく分かる。
それと同じように、西野君のあの文章を読んだら、ムカッてくるヤツの気持ちもすごく分かる。
だから炎上をおさめようという気はないのだけども、こうなったらファクトチェックは無理。
単にオピニオンしかないわけだ。
(次回に続きます)