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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/03/14
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おはよう! 岡田斗司夫です。
この間、DMMのラウンジで「良い映画は、いろいろな見方が出来る」という話をしました。

今回は、そのときの内容をお伝えします。

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「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』から学ぶ、良い映画の見方」


 たとえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
 主人公・マーティーの家の変化が、すごく面白いんです。

 これは1985年が舞台の映画なんですよ。
 だけどマーティーの家にある電気製品は、60年代のままなんです。

 テレビもモノクロっぽいし、後ろにあるオーブントースターも古い。

 ビフとマーティーが会話する時の照明器具も1960年代後半に流行ったものなんですね。

 なぜ、そんな物がいっぱいあるのか?
 それはマーティーの家が、15年ぐらい家具や家電製品を変えていないからなんです。

 マーティーのお父さんとお母さんは、高校時代に恋に落ちた。
 そして結婚した。

 それは良かったんだけど、子供が生まれてからは暮らしていくのが精一杯。
 新しい電気製品を買う余裕が、全然なかった。

 それが、映画を見れば分かるんですね。

 主人公たちが座っている椅子も、ビニールで安っぽい。
 これも、1960年代後半に量産されたものなんです。

 だけど、マーティーが1955年に行って、また85年に帰ってきときは、照明は、ぜんぶ間接照明になってた。

 端に置いてあったオルガンが、グランドピアノになって真ん中にドーンと置いてあった。

 ビニール張りだった椅子なんて、建築家・コルビジェがデザインしたスリングチェアになってるんですよ。

 スリングチェアってニューヨーク近代美術館に展示していて、一つ45万ぐらいするんです。
 それが無造作に置いてあって、みんながそこでで朝飯を食べてる。

 “金持ちになった”という事が、絵に描いたように分かりやすい。

 さらに、お母さんのパンツスーツ。
 それも白のパンツスーツという、労働者階級では絶対に履かない衣装を着ているんです。

 アメリカ人でパンツスーツを履いてる女の人って、スタイル維持の為にフィットネスをやっている金持ちと決まってるんですね。

 貧乏人は、ウエストがゴム製のスカートを履いたり、ワンピースを着たりするんですよ。
 そんなディティールを見ると、すごく面白いんですよね。

 マーティーが住んでいる家は新興住宅地ですけど、典型的な“レビットタウン”なんです。

 1950年代には、ウィリアム・レビットという人がいました。
 ベルトコンベアみたいに、次から次へ職人を動かすことによって、家を大量生産したおじさんなんです。

 たとえば、壁に釘を打つだけの職人さん。
 その人が、一日に何十件もの建築現場を回るんです。

 そうやって、同じような家を大量に作ることに成功したんですね。
 こうして作られた町の事を、“レビットタウン”っていうんです。

 マーティーの住んでる家は、そんな大量生産なんです。
 今の僕達からしたら、味気のない安物の家です。
 だけど当時の人たちには、すごく新しく見えた。

 それまで45万ドルだった建築費が、レビットタウンでは1万ドル以下に抑えられたという資料もあります。

 そういう風俗を見ても、いろいろと分かるんですよ。

 「夢をもって住んだけど、子供が三人も生まれて貧乏になっちゃったんだな」って見方ができる。

 このように、よく出来た映画は、ディティールがものすごく楽しいんです。


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