一般には、ヒット作を連発しているように見えていたジブリ作品。
でも実は、儲かっていた期間は、ごく限られた期間なんです。
具体的に言うと『魔女の宅急便』の1989年から『ハウルの動く城』の2004年までの15年間だけ儲かっていたんです。
それ以後は、かなりやばいことになっていた。
2008年までの4年間は赤字と黒字が交互にきて、2011年の『コクリコ坂』以降はずっと赤字だったんです。
ジブリ作品勝敗表by岡田斗司夫。
かなり正確な数字です。
『風の谷のナウシカ』 制作費4億円 興行収入15億だから、アウト。
『天空の城ラピュタ』 制作費8億に対して興行収入12億。もちろんアウト。
『となりのトトロ』『火垂るの墓』 制作費12億、 興行収入12億でアウト。
「高畑さんが金を使いすぎたからだ!」と宮崎さんは言うのだけれど、別に『トトロ』だけでも赤字なんですよ。
『魔女の宅急便』からジブリの黒字が始まるんです。
制作4億に対して興行収入37億。
グレイト!
『紅の豚』
制作費9億。
興行収入54億。
グレイト!
『もののけ姫』
制作費21億。
興行収入193億。
グレイト!
おそらく、この『もののけ姫』でジブリは大作主義になってしまった。
ハリウッドの映画会社も1950~60年代に大作主義になって、バンバン倒産するようになったんです。
なんでハリウッドがそうなっちゃったのかというと、それぞれの映画会社が豪華な作品を作って、どんどん大作主義になっていってしまった。
10年くらい前のゲーム市場みたいな感じ。
みんなFFみたいな大作ばっかり作りすぎて、ゲーム会社の体力なくなってしまった。
あれと似たような状況。
ジブリも『魔女の宅急便』と『紅の豚』でヒットしたものですから、そこに入っちゃったんですよね。
『もののけ姫』でそれまで4億円~9億円だった予算を、一気に21億円に引き上げた。
そうすると興行収入193億円。
いまだに歴代2位がなんかの数字ですよね。
その次の『千と千尋の神隠し』で制作費20億円のままで、興行304億円。
アメイジングです。
『ハウルの動く城』で予算がちょっと上がっちゃって制作24億円で興行196億円。
ここで宮崎さんが「俺はもう引退だ」って言ったんです。
確か、この時は2回目の引退宣言だったと思うんですけどね。
この時、僕も大好きな宮崎吾朗くんが出てきます。
『ゲド戦記』は制作費22億円に対し、興行収入77億円。
77億円って、すごくがんばったんですよ。
新人のアニメ監督ならまちがいなく合格なんですけど、ここはジブリなんですよね。
ジブリって、お金がかかっちゃうんです。
押井守さんが鈴木さんに「ジブリどうするの?」って聞いたんですよ。
あんたこれからジブリのアニメーター、リストラするんだろ?
リストラしても俺のI.Gはジブリのアニメーターなんか引き取らないよ。
ジブリのアニメーターなんて、金ばっかり取って、ちっとも働かないじゃないか。
正確に言うと、すごい優秀なんだけど、別に“日本で、ただ一人”という優秀さではない。
高坂希太郎は凄く優秀なので、彼だけだったら欲しい。
でも他のジブリのアニメータークラスのやつは、ジブリの払ってる三分の一くらいの金で手に入る。
だからそんなに欲しくない。
『ゲド戦記』をよその会社で作ったら、10億円くらいでできる。
でもジブリだから22億円かかって興行成績が77億円だった。
当然、アウト! です。