映画の『メッセージ』だけど、結論から言うと面白いから見たほうがいいよ。
ただ、「どれぐらい映画を見慣れているか?」とか「どれだけ複雑な話を頭に入れながら見られるか」によって、面白さが違うんだよね。
だから映画ドットコムとかのレビューを見ると分かるんだけど、点数の上下差が凄い。
「こんなのはサブカル好きが高い点数をつけているだけ」
「SF映画としてはダメだ」
「原作を読まないと分からない」
そんな意見もあるけども、そんな事は無いんだ。
僕は原作を完全に忘れてたけど、そんな事は関係が無かった。
それよりは、「何を面白がれるか」という面白さがあるのが『メッセージ』という作品なんだ。
とにかく絵が良いんだよ。
SF映画の絵の面白さというのは、CGで作った絵じゃないよ。
そのCGを入れ込むための大自然とかを、どれぐらい美しく撮れるかなんだ。
この映画は“モンタナ州”というアメリカで最も美しい州で撮影してる。
そこのロッキー山脈の平原の真ん中に、500メートルぐらいの飛行物体がドーンと浮いているんだけども、これを見せるときの手順が凄い。
草原の真ん中のフリーウェイに、車がガーッと乗り捨てられている。
つまり宇宙船が着陸したんで、近所の人が慌てて逃げて乗り捨てた車が、長いフリーウェイに詰まってる。
ここまでの絵は、他のSFでも見た事がある。
ところが宇宙船が近づくにつれて、車が詰まってきて、その周りに何千人って野次馬が集まってるんだ。
そして、ある境界線から、人と車が まったくいなくなるんだ。
そこに軍隊がいるわけじゃない。
だけど、その位置から報道管制・軍事管制が引かれていて、「入ってはいけない領域に行ったんだな」というのが空撮のワンカットだけで分かるんだ。
向こうにあるのは、山から降りてきた霧が雲になってくる、とてつもなく美しい風景。
そのど真ん中に、異星人の宇宙船がドーンとあるんだよ。
これをワンカットで見せられたときの衝撃は、なかなか凄いよ。
絵の凄さというのは、予算とか手間じゃなくて“イメージ”なんだよ。
「アメリカは美しい」
「アメリカの大自然は美しい」
そんな事を自信を持って映せるかどうかなんだよね。
『君の名は。』が素晴らしいのは、監督の新海さんがちゃんと「新宿は美しい」と思っているから、カッコいい新宿が撮れたんだよ。
この“美しく描く”という感性がある人間が作った映画は“風格”があるんだよね。
映画『メッセージ』には、この“風格”がそこらじゅうにあった。
なので、すごくカッコいい映画だった。
映画を見るときって、どういう教養を持っているのかによって見え方が違うんだ。
だから、原作を見る必要は全然ありませんよ。