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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『メアリと魔女の花』を一言でいうと“薄め過ぎたカルピス”みたいな作品」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『メアリと魔女の花』を一言でいうと“薄め過ぎたカルピス”みたいな作品」

2017-08-14 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/08/14
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    おはようございます。

    今回の記事はニコ生ゼミ8/6(#190)より一部抜粋しました。

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    『メアリと魔女の花』を一言でいうと“薄め過ぎたカルピス”みたいな作品


     見て来ちゃったんですよ、『メアリと魔女の花』。

     いや、「ダメだ」という噂は、もうみんなも聞いてるじゃん?
     だけど、その“ダメさのレベル”がわからなかったんだよね。
     
     つまり、ジブリの新作を期待して見るとダメなのか?
     「いやいや、ハヤオにはとても及ばないよ」という意味でのダメなのか?
     それとも『ゲド戦記』並みにダメなのか?(笑)

     世の中にはダメのレベルがいろいろあるんだけどもさ。

     なんかね、『メアリと魔女の花』ってさ、“薄めすぎたカルピス”なんだよ。
     もちろん、「ジブリの宮崎駿の作品よりは薄まっているだろうな」っていうのは予想してたんだよ。

     だから、「カルピスとは、どれくらい薄めて飲んでも美味しいのか?」の確認のつもりで見に行ったんだけど。
     だけど、もうね、薄めすぎて、そろそろ「これだったら普通の水の方がいいわ」になってきているのが、メアリと魔女の花なんだよね。

     ・・・

     たとえて言えば、よく言われている通り“見たことあるようなシーン”ばっかりなんだよ。

     まあ、そんな中でも、「出てくる液体 全部に“ネチョネチョ感”が出てて、ジブリっぽさが出てた」と言う人がいるんだけども。

     確かに、涙にしても何にしても、『メアリと魔女の花』に出てくる液体というのは、全て、ネチョネチョしてるんだよ。

     このネチョネチョした液体の表現というのは、『千と千尋の神隠し』のカオナシが風呂に入るシーンの辺りから使われだして、『崖の上のポニョ』でほぼ完成したジブリ独特のアニメ―ション表現なんだ。

     そして、『風立ちぬ』ではその応用までやった。

     ポニョで頂点に達したこの独特な液体表現を、風立ちぬでは「画面に映る全てを高いリアリティレベルで作画しつつ、主人公の二郎の目からメガネ越しに溢れ出る涙だけネチョネチョの液体にする」という使い方をしているんだよね。

     つまり、「高い現実感を持った世界の中、感情表現の部分だけにネチョネチョした抽象的な液体表現を用いることで際立たせる」という使い方。

     宮崎駿は最後の作品の中で、そういうかなり複雑な表現をやってるんだよ。

     でもね、メアリの中では、そういう使い分けをせずに、ただ単に「ジブリで学んできた秘伝のアニメ技術をそこで再現しているだけ」なんだよね。


     なんかね、このメアリってさ、ジブリがなくなったあと、(正確には、まだなくなってないんだけど)スタジオ・ポノックというのが作られて、「彼こそが宮崎駿の正当な後継者だ!」みたいな流れで紹介されてるじゃん。

     でもね、そこでやってることって「本家の店が潰れたから、秘伝のタレだけを持ってきて、別の料理に塗ってみました」みたいな感じでさ。

     「薄めすぎたカルピス」とか「秘伝のタレ」とか、たとえが全部 食い物になっちゃってもうしわけないんだけども(笑)。

     俺、そんな感じがしちゃうんだよね。

    ・・・

     中身の話で言うとね、「登場するキャラが、まあ少ない」。

     主人公のメアリと、彼女と一緒に住んでいるおばさまと、家政婦さんと、庭師。
     あと、彼氏みたいなやつ。
     それと、メアリをさらうマダムという魔女と、その隣にいるドクター。

     この7人だけで、1時間40分の間、話を回すんだ。


     途中で、メアリが間違われて魔法大学に入学するんだけどさ、その魔法大学にいるヤツらが、全員“お面”をつけてるんだよ。

     だからといって、別に不気味なキャラクターというわけではなくて……みんなで学生食堂で飯を食うシーンとかがあるんだけどさ(笑)。

     つまり、単に「みんな表情がないだけ」なんだよね。

     これ、どういうことかと言ったら、たぶん、「描きたくない」んだよね。
     「この7人以外の話を増やしたくない」というのが、もう丸わかりなの。


     メアリが街におつかいに行くシーンでも、行った先の街に人の気配が全くなくって。
     そこでピーターという彼氏みたいなヤツとすれ違うんだけど、「他に人がいない街でのすれ違い」なんだよな。

     他にも、途中で「魔女のマダムとおばさまの間には実は因縁があって~」みたいな話があるにも関わらず、魔女が追いかけて来る時に、マダムと叔母様はエンカウントしないんだよね。

     久しぶりの再会のはずなのに。


     もう、これはね「監督が人間嫌い」なんだよ。

     手抜きとか、そんなんじゃないんだよ。
     作画なんて、ものすごい手間が掛かってるんだよ?
     クライマックスの『ジュマンジ』みたいな感じで動物とかがワーッと溢れてくるシーンがあるし。

     そういう作画の本流を見ていると、余計に、この監督の“病的な感じ”が浮き上がってくるんだよね。
     
     「俺、人間嫌いですから!」っていうのが(笑)。


     『思い出のマーニー』とか『借りぐらしのアリエッティ』を振り返ったら、やっとわかるんだよ。
     この監督、人間が嫌いなんだ。

     マーニーとかアリエッティで感じていた、あの不思議な感じって、実はそれだったんだよね。

     まあ、こういう不思議な感じは、あの作品の世界観の中だったから良かったんだけど。
     じゃあこれが、いよいよ「ジブリのメインストリームを手掛けた同じ大物監督を使います!」って作品を作らせた時に、この「監督の人間嫌い」というのがまともに出ちゃったんだよな。

    ・・・

     だから、これ、改善策としてはね『おそ松さん』にすればよかったんだよ。

     もし仮に、おそ松さんの新作をこのまんまの設定でやったら、「キャラの少なさ」とか、「大仰なお話」とか、「魔法世界」とか、「モブのキャラクターはみんな仮面みたいなのを付けていて表情が見えない」という要素が、全て長所に変換されちゃうんだよね。

     ジブリっぽい、ネチョネチョの液体表現とかも、「秘伝のタレを盗んできたような感じ」ではなく、「よくぞパロディーをここまでの作画でやった!」ということで、みんな誉めるし。

     たぶんね、全く同じ話でも、メインキャラクターをおそ松さんにするだけで、ものすごい評価が上がったと思う。

     メアリ、おばさま、マダムというこの三人は、実は「魔法というものに対して、どのように生きていくのか?」という、一人のキャラクターを3つに分裂させただけのキャラクターなんだけど。

     これもね、おそ松、から松、ちょろ松とかに分けちゃえばよかったんだよね(笑)。


     途中で博士みたいなのが出てくるんだけど、その博士はもうデカパンでいいし、ピーターっていう恋人もチビ太でOK。

     昔の美少女時代のおばさまはトト子ちゃんで大丈夫。
     
     本当にね、「メアリと魔女の花って、おそ松さんでやってたら世紀の大名作になったのに、もったいないことをしたなあ」というのが俺の感想なんだよね。


     「イヤミは?」(コメント)


     イヤミの使いどころ、わりとなかったんだよ。
     俺も考えたんだけど。

    ・・・

     ところで、映画が始まったら「スタジオポノック第1回作品」って出るんだけどさ。
     ここで、その隣に象徴的に“メアリの横顔のペンシル画”が出てくるんだよ。

     いわゆる、ジブリ作品でいうところのトトロの顔と同じなんだけど。

     俺、それ見て、もう「正気か!?」と思ったよ。

     だって、こんなことをしてしまったら、ここから先、延々、ポノックが何を作ろうが、みんなメアリを思い出してしまうことになるじゃん。


     ジブリの場合、それまでに散々いろんな作品を当ててたから、あれがアリになったんだよ?
     だけど、第一作目からそんなことして「大丈夫か!?」と。

     で、また、ラストのスタッフクレジットを見たらさ、ディズニーがちゃんと出資してるんだよね。
     「ディズニー大丈夫か!?」と。

     「ハヤオが帰ってきたから、もう資本はポノックから引き上げて、ジブリに入れた方が良いんじゃないか!?」と(笑)。

     さらには、もうね、いろいろなところで書かれているんだけど、スタッフクレジットの最後に「感謝:高畑勲・宮崎駿・鈴木敏夫」って出てくるんだよ。

     ……「感謝」って!


     いや、「スペシャルサンクス」っていうのは、他の映画でも時々見るんだけど、「感謝」なんて、今まで見たことないよ!(笑)


     昔、ジブリで『ゲド戦記』をやった時に、鈴木敏夫が、なにがなんでもスタッフクレジットの中に「宮崎駿」という名前を入れようとしたことがあったんだ。

     で、色々な名目を考えるんだけど。

     鈴木敏夫が「レイアウト:宮﨑駿」でどうかと言うと、宮﨑駿は「そんなこと、俺はやってない」と言う。

     「原作協力:宮﨑駿」でどうかと言うと、「やってない」と言う。

     じゃあ、なんか「企画協力:宮﨑駿」でどうだろうかと言っても、「そんなもん俺はやってない!」というふうに、全部反対された。


     困った鈴木敏夫が、そこで最後に出したアイディアというのが、「父親:宮崎駿」っていうやつで。
     映画のクレジットとして「父親」というを出そうとしたっていう話があるんだけど。

     まあ、それは当然オジャンになったんだけどもさ(笑)。

     いやあ、あの「父親:宮崎駿」を超えるスタッフリストはないだろうけども、今回の「感謝」というのには、なかなかひっくり返ったよ。

    ・・・

     要するに、『メアリと魔女の花』は「カルピスを薄め過ぎているようで良くない」という話なんだ。
     だけど、まあ、薄くてもカルピスはカルピスなんだよ。

     売っている飲み物だし、「これくらいの薄味の方が好き」という人もいる。

     現に、俺の隣にいた小学生の女の子二人は、ちゃんと途中で「怖い怖い!」って言ってたし、最後、すごい喜んで泣いていたりしてたから、子供には美味しいのかもしれない。

     だから、「これは薄めすぎ!」っていうのは、俺のようなおじさんのオタクだからこそ出てくる文句かもわからないんだけどね。
     

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