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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「日本に漫画を普及させたのは“シャーペン”? “著作権”? “おこづかい”? みなもと太郎先生と語る漫画のルーツ」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「日本に漫画を普及させたのは“シャーペン”? “著作権”? “おこづかい”? みなもと太郎先生と語る漫画のルーツ」

2017-08-28 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/08/28
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    今回の記事はニコ生ゼミ8/20(#192)よりハイライトでお送りします。


    ※今回は日本漫画界の生き字引である、みなもと太郎先生との対談の内容を一部抜粋してお届けいたします。

     日本漫画の発展の歴史について、より詳しいお話は、みなもと太郎著『岩崎調べる学習新書 (1) マンガの歴史 1』(https://goo.gl/eH6PHB)をご参照ください。


    動画や全文が気になった方、【ブロマガチャンネル】メルマガ専用 岡田斗司夫アーカイブ(月額2,160円)のご入会はこちらから!

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    「日本に漫画を普及させたのは“シャーペン”? “著作権”? “おこづかい”? みなもと太郎先生と語る漫画のルーツ」

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    岡田:
     今日、ちょっとお伺いしたかった1つ目の質問なんですけど。
     なにが、漫画を日本に普及させたんでしょうか?

     日本だけ……ということはないんですけど。

     フランスやベルギーみたいな“バンド・デシネ”先進国もあれば、アメリカみたいにアメリカンコミックがある国もあるんですけども。
     
     でも、日本人だけが、なんでこんなに漫画を読むだけでなく、描くという特殊な形になったんでしょうか?


    みなもと:
     もともと、紙の文化だったからです。紙が安かったんです。

     それも、奈良時代からずっと。


    岡田:
     奈良時代からずっと!


    みなもと:
     割合、他所の国よりも、紙は潤沢(じゅんたく)だったようです。

     だから、当然、江戸時代なんかでも、他所の国では人形劇が発達していくところが、日本では紙を使った娯楽が発達していったようで。

     たとえば、“挿絵”であるとか、浮世絵の中にも子供のための“玩具遊び絵”なんてのがありますよね?
     あとは、もうちょっと後の時代になりますが“すごろく”とか。

     要するに「紙で楽しむ」という文化が日本にはずーっとあるんです。それが1つです。

     それと、もう1つは「物語を紙で楽しもう」という感覚が、これが本当に、いまだに謎なんですが、日本には最初っからあるんですよ。

     たとえば、“絵巻物”ってあるでしょ?


    岡田:
     先生の書かれた『マンガの歴史』という本を読んで、僕も初めて知ったけど、絵巻物って日本人の発明だそうですね。


    みなもと:
     まあ、“発明”とまでは私は断言できませんが。

     とにかく、私が素人考えでいた頃には「絵巻物も、どうせ中国にルーツがあって、向こうには、いっぱい古い絵巻物があるんだろうな」と思っていたんです。

     しかし、中国人の漫画マニアの人なんかと知り合って聞いてみると、「そんなものはない」と。


     確かにそれから専門的な本を調べてみても、ないんですよね、絵巻物が。

     だけど、日本人は「絵巻物のような形式でストーリーを描き表していく」ということを、奈良時代からすでにやり始めているので、「なんなんだ、これは!?」と。

     この理由については、私もわかりません。
     
     だから、『鳥獣戯画』という、カエルとウサギの相撲だけを漫画のルーツと考えるんじゃなくて、日本人は「連続した絵を使ってストーリーを追いかけて行く」という発想を、もう最初から持っていたんですよね。

     他の国に、まだそんなものがない時代に。


    岡田:
     僕、何か月か前から“ゴシック建築”にやたらハマってしまって、ヨーロッパに行って、ゴシックの教会とかを見ているんですけど。

     ゴシックって、建物の中にある彫刻とかを使って世界観を見せますよね。

     たとえば、「キリスト誕生の瞬間」とか、「マグダラのマリアがこんなことを言った」という、細かいエピソードを1枚の絵で見せることはやりますけども、それを連続性を持った絵ではやらない。

     西洋人は、むしろ、それらを同時にいっぱい見せることによって、渾然一体とした世界を作りますよね。

     だけど、1つの大きい流れというのはわりと作らない。

     あの辺、なんかヨーロッパ人って面白いですよね(笑)。


    みなもと:
     あっちでは、そういう流れというのを“音楽”で代用していたのかもしれないね。

     盛り上がったり、盛り下がったり、静かなところから突然、ドラマティックになったりするじゃないですか、交響楽団っていうのは。

     とにかく、日本は見る文化なんですよ。

     “紙芝居”だって、当然、外国にあると思っていたら、ないんだもの!
     「え!?」って思うでしょ。


    岡田:
     人形劇はあるけど、紙芝居はないんですよね。


    みなもと:
     「世界には紙芝居がない」っていうのを知った時、本当に「なんなんだ、この国は!?」って、逆にびっくりしたよ。

    ・・・

    岡田:
     この「何が漫画を普及させたのか?」という理由について、フレデリック・ショックの「漢字とシャーペン説」っていうのがあるんですよ。

     まず「俺らが知っている“シャープペンシル”っていうのは日本人の発明だった」と。

     「日本人は、子供の頃から、漢字の書き取りっていうのをシャーペンでする。おかげで彼らの指先はすごく速く細かく動く。だから、あの民族が絵を描くのが上手いのは、当たり前だ!」って言ってて。


    みなもと:
     それは違う、違う!
     俺が子供の頃には、シャープペンシルなんて、高かった高かった!

     鉛筆を“肥後守”で削るのがどんなに大変だったか!


    岡田: 
     アハハ(笑)。

     フレデリック・ショットが言うにはですね、「日本人が持っているひらがな、カタカナ、漢字っていう曲線、直線、あと細かい凸凹の真ん中をなぞらなければいけないという、こういうルールの数々が、彼らが精密な絵を描くのを子供の頃から鍛えている」と言ってます。


    みなもと:
     漢字については、俺は“ルビ”がそうだと思うけどね。

     ルビを使って、わざわざ「漢字だけではいけないから、ここにちょっと説明を入れましょう」という、この発想はね、漫画にそのまま繋がっている。


    岡田:
     なるほど。
     というのが1つ目の説です。

    ・・・

    岡田:
     あとは、トーレン・スミスの説もあります。
     これはちょっと奇をてらった説かもしれないですけど、「著作権親告罪説」というもので。

     極端なことをいえば、アメリカでは、たとえば、スヌーピーとかのキャラクターを勝手に描いたら、FBIがそのまま飛んでくるんですね。

     それはなぜかというと、日本みたいに、著作権が「著作権者が訴えて初めて罪になる」のではなく、市民の誰かが通報した瞬間に、逮捕されることはなくても、犯罪になってしまうような“いけないこと”だから。

     なので、何かを描く時にはオリジナルを描かなければいけない。

     「同人誌という文化がアメリカで根付きにくいのは、どうやってもこれが著作権法に引っかかってしまうからだ!」という説なんですが。


    みなもと:
     「昔、おとっつぁんが子供を喜ばせようと思って、家の壁にディズニーキャラクターを描いて訴えられた」というので問題になった事件があったわね。

     でも、「それが問題になった」ということと、「おとっつぁんがそれを悪気なくやった」ということからわかる通り、その前の時代では、そういうことが許されていたはずなんだ。

     だから、それもね、割合、最近になってからのことであって、基本的なものとは言えないと思うな、俺は。


    岡田:
     一応、トーレン・スミスが言うには、「フランスを見てみろ!」と。

     「彼らには“パロディー法”という法律がある! 国家としてパロディーを容認している! だから、フランスやベルギーでは、バンド・デシネというコミックが盛んである! つまり、何かあったら、まずパロディーを描くとか、コピーするということを認めた上での創作があるからこそ、日本は豊かなんだ!」って。


    みなもと:
     それも、俺はイヤなんだ。

     「パロディーを描いてもいいよ」なんて言われた時点で、「そんな“他人から許されるもの”なんて描くかい!」と思わなきゃいけないんです。

     俺が『ホモホモ7』を描いたのは、当時、“漫画の描き方”みたいな本が出て、「この絵にはこういう背景を描きなさい」と書いてあるのを読んだ時に、「バカか貴様ら!」と思ったんからなんですよ。

     どんな絵にどんな背景が書こうが、そんなことをてめえらに言われる筋合いねえ! 漫画家が自分で考えてそれをやるのはいいけれど、「こう描き“なさい”」だって? ……バカかっ! って。


    岡田:
     反骨魂ですね(笑)。

    ・・・

    岡田:
     じゃあ、3つ目の説ですね。


     ……この、どんどん否定されている流れで言うのはイヤなんですけど、岡田斗司夫の「おこづかい文化説」。

     つまり、アジア圏、特に日本だけが“子供にお小遣いを与える文化”なんですよ。

     基本的に、ヨーロッパとかアメリカでは、子供が漫画のような自分の好きなものを買う時は、親に頼んで、親が買い与えるものなんです。

     つまり、親が許可したものだけが与えられるようになる。


    みなもと:
     日本でも、戦前のお金持ちの家はそうだけどな。


    岡田:
     ところが、日本においては、親が子供に「お金 = 決定権」を与える。

     なんでヨーロッパ人が子供にお小遣いを与えないのかというと、お金というのはパワーであって武器であるから。

     だから、「子供に武器を与えるバカはいないよ。だって、10ドルというお金は、大人が使っても子供が使っても同じ価値なんだから。そんな危険なものを子供に与えるなんて、ちょっと日本人はおかしいんじゃないのか?」っていう発想になる。


    みなもと:
     だけど、店のおばちゃんが「あんたはこれを買っちゃいけないよ」とか、そういうコミュニケーションがあったからね、日本にはね。


    岡田:
     で、一応、自分のこの仮説が正しいんじゃないかと思った事例があるんですけどね。

     フランスの婚姻制度で“事実婚”が認められるようになったんです。
     
     そして、フランスは年金を貰うようになったおじいちゃんおばあちゃんが、子供にお小遣いをあげるようになった。

     つまり、20年くらい前から、実はフランスもお小遣い文化に突入したんです。すると、面白いことに、フランスでは今、日本のアニメブームが起こっている、と。

     つまり、子供に意思決定権が与えられた国のみで、コミックや漫画の文化というのが広がるんじゃないのかと。


    みなもと:
     面白いな。
     それはありうる。
     それはありうる。

     まあ、戦前の漫画は“親が与えていたもの”だったから、お上品な漫画ばっかりだったということもあるし、それは、ある程度は認める。


    岡田:
     やったー!

     ……いや、「やったー!」ではないんですけど。

     さっきのみなもと先生が仰った、「そんなもん、俺が背景を決めるんだ!」というのと同じように、「俺の仮説に文句は言わせねえ!」というのが正しいんですけども。

     否定されると、なんとなく心細いので(笑)。

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