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「『スター・ウォーズ』EP1~7をザックリ解説!・前編」
スター・ウォーズの『帝国の逆襲』、『ジェダイの帰還』、『フォースの覚醒』が、12月1日、8日、15日と3回連続で金曜ロードショーでやるんですけども。
それも、『フラッシュ・ゴードン』っていう、モノクロ映画時代の短編SF映画を目指していた。
これは、映画館で毎週上映される“シリアルムービー”っていうジャンルの作品なんですけど、そこを目指していたんだと思うんです。
もう、スティーブン・スピルバーグもそうですし、ジョー・ダンテもそうだし、みんなやりたがってたんです。
というか、低予算映画としてならOKも出るんですけども、「もう少し予算をかけて、せめて、戦争映画風に撮りたい」というふうな要望があったんですね。
ダン・オバノンも、『エイリアン』を作る時に、かなり金の掛かる映画として考えていたんですけど、なかなか映画会社のOKが出なかった。
その前に、ジョージ・ルーカスがやっちゃった形になるんですね。
まあ、低予算といっても、『スター・ウォーズ』というのは、かなり金の掛かった映画ではあるんですけど。
ところが、20世紀フォックスからは「1本しか契約しない」って言われたんですね。
ジョージ・ルーカスは、絶対にヒットするって思ってたんですけども。1本目がヒットしないと、2本目3本目には繋がらない。
普通、映画監督というのは、決まった額の監督料をいっぱいとる。
そして、続編の契約なんかしないんですよ。
なぜかというと同じ映画なんて作りたくないから。
「ヒットしたから続編を作らされる」というイメージがあったからなんですね。
「パート2、パート3の監督というのは格落ちする」なんてことは、今も昔もハリウッドの常識なんですよ。
ところが、ジョージ・ルーカスは、なんと続編の製作権というのを交渉の上勝ち取ったんです。
20世紀フォックスと交渉する時に、「監督料はそんなにくれなくていいよ。そうじゃなくて、公開した時の売り上げからパーセンテージで金をくれ。次に続編の製作権を俺にくれ。更に、映画のオモチャとかのマーチャンダイジング権(商品化権)を俺にくれ」って言ったんですね。
それを聞いた20世紀フォックスは呆れたそうです。
まず、あの時代……というか、今でもそうなんですけど、「パート2の製作権をくれ」と言う監督なんて、いないんですよ。
「もしヒットしても。そんなことやりたくないに決まってる」というのが映画会社の考え方なんですけど。
次に、世界に配給した際の収益からパーセンテージについても、「えっ? それでいいの?」と。
普通、ハリウッド映画では監督料の方が高いんですね。「収益の数パーセントなんていったって、微々たる金額じゃないか」と思ったんですけど、ジョージ・ルーカスはそれを交渉した。
更に、商品化権って。
もうね、映画というのは、アメリカでもたったの5週間くらいしか公開されないものだから、その公開時期に合わせた商品展開なんて出来るはずがないんですよ。
なので、『スター・ウォーズ』のグッズについても、一番最初に手を挙げたメーカーは、当時としては中規模の“ケナー社”くらいだったんですよ。
ここは、そのおかげで後に大きくなるんですけど。
それが後に、1~3部を「アナキン・スカイウォーカーの物語」、4~6部を「ルーク・スカイウォーカーの冒険」、そして、今やっている7~9部という、3つのブロックに別れるようになりました。
この3つ目については、まだ名付けられてないブロックなんですけど、おそらく「スカイウォーカー家のお家騒動」みたいなものをやろうとしているんでしょうね。
これがエピソード1~3の概要なんです。
まずは、エピソード1の『ファントム・メナス(見えない脅威)』。
次に、エピソード2の『クローンの攻撃』。
そして、エピソード3の『シスの復讐』という3部で構成されています。
彼は“フォースにバランスをもたらす者”として、処女生殖で生まれたんですね。
つまり、「父親がいなくて、お母さんがいつの間にか身ごもって子供を出産した」という、なんだか実に、いろんな捉え方ができる生まれ方をした。
そうやって生まれてきたアナキン・スカイウォーカー君は、幼児なんですけども、砂だらけの惑星タトゥイーンというところで、少年奴隷として暮らしていたました。
しかし、彼は人と交わり、ジェダイに入隊し、活動する中で、愛と憎しみを覚えてしまう。
ジェダイとは、本当は1歳とか0歳児くらいの時に入隊して、その中で徹底的に訓練されなきゃいけない。
だけども、アナキン君は、わりと成長しちゃった6~7歳時くらい時期に入隊しちゃったんですね。
その結果、暗黒面に落ちてしまう。
お母さんが死ぬ時に“憎しみ”を持ってしまった。
自分が助けた王女様を好きになって“愛”を知ってしまった。
そして、この2つの感情を知ってしまったゆえに、暗黒面に落ちる、と。
これは、ハリウッド映画としては、すごく珍しい構造です。
こんなに予算をかけたメジャーな映画のはずなのに、人間のエモーショナルな部分を否定している。
そんな作品なんて、ないんですよ。
ピクサーの『インサイド・ヘッド』っていう映画でも、「人間の感情といういうのは全て必要なものである」と描かれている。
「感情がなく育てられた人間が、人間らしい感情を持つようになることこそが人間の成長であり、勝利だ」というふうに、普通は描かれるんです。
けども『スター・ウォーズ』シリーズでの描き方っていうのは、全く逆なんですね。
「そういう感情を持ってしまったことが、諸悪の根源だ」と。
いわゆる、キリスト教の原罪思想みたいなものを描いてるんですね。
「アダムとイブが林檎の実を食べて知恵を身に着けたことで、恥じることを覚えた」というのと同じように。
そういった僕らが「当たり前だ」と思っている人間的なものを身に付けることによって、堕落して、エデンの園から追放される。
そういう話が第1ブロックです。
そして、アナキン・スカイウォーカー君は、ダース・ベイダ―という悪の化身のような存在になってしまうのだった。
そういう、1人の男の子の成長と堕落による悲劇というのが第1ブロックです。
もちろん、現在の『スター・ウォーズ』の人気を作ってると言えないこともないんですけども。
なぜかというと、この第1ブロックは、わりと暗い話だからなんですね。
画面上に出てくる映像の中にデジタルなものがあんまりなくて、ほとんどがミニチュアワークであったり、旧来の技術で作られているところですね。
ヨーダなんかも、下から手を入れて動かす感じ。
NHKでやってる『ねほりんぱほりん』の人形劇と、ほぼ同じ方法で作られています。
違いがあるとすれば、『ねほりんぱほりん』のブタは3人がかりなんだけども、ヨーダは8人がかりっていうところ。
だけど、こういう技術で作られているヨーダっていうのが、実に表情深いんです。
ヨーダの表情の作り方っていうのは、どういうものかというと、結局、人形だから、目や口などのパーツ単位では動くんですけども、顔の表情全体は動かないんですよ。
なので、表情をつけるときには、見上げるように見たり、うつむいたり、顔全体を動かすことによってニュアンスを付けるんですね。
今のCGだったら、何かニュアンスを付けたい時には、顔全体を自然に動かせちゃうんですよ。
でも、そうじゃなくて、ちょっと顔を傾けることによって、光の当たり方とかを変えて、キャラクターの表情というもの作り出しています。
ここら辺は、フランク・オズ名人の見事なパペット使いで表現しているんですね。
そして、エピソード5の『帝国の逆襲』、エピソード6の『ジェダイの帰還』この3部作になっています。
この真ん中のブロックの3部作を一言で言うと、「ルーク・スカイウォーカーの冒険」。
ルーク・スカイウォーカーっていう高校生くらいの男の子が大冒険するという、わかりやすい話なんですね。
簡単に説明すると、アナキンの息子であるルーク・スカイウォーカーは、育ての親を殺され、ジェダイの師匠であるオビ=ワン・ケノービをも殺した、悪のダース・ベイダーに復讐を誓う。
これがエピソード4です。
続くエピソード5では、ジェダイの大マスターであるヨーダからフォースを学び、宿敵と対決するも、ダース・ベイダーこそが自分の父・アナキンであると知って大ショック。
ここまでがエピソード5の『帝国の逆襲』。
そして、ついに銀河皇帝を倒し、父の魂を暗黒面から取り返す。
ヨーダは死んで、ルークはジェダイただ1人の生き残りになったのであった、というのがエピソード6の『ジェダイの帰還』ですね。
これだけのシンプルな話に、適当に枝葉を加えながら、面白く面白く話を盛りあげてるのが『スター・ウォーズ』の真ん中のブロックの特徴なんですね。
だから、中心に使われる音楽も、有名な“スター・ウォーズマーチ”じゃなく、悲しい情感のあるメロディなんです。
これが、第1ブロックの音楽の特徴なんですね。
それに対して、第2ブロックの音楽は、スターウォーズマーチとダース・ベイダーマーチを中心に使っている。
つまり、正義と悪とがシンプルに戦うという話に特化してるんですね。
なんせ、第1ブロックは「正義か悪かわからないものが、悪の道に落ちていく」というもので、第2ブロックは「息子が父の魂を悪の面から取り返して、火葬にふす」というものだから。
これについても、カソリック、プロテスタント含めて、キリスト教圏内では、わりと珍しい埋葬の仕方なんですよね。
そうやって、銀河帝国は解体されて、もう一度、共和国に戻ると思いきや、話は全くそうではないんですよね。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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