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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『カリオストロの城』前史 【1】 TV版『ルパン三世』の徹底改造」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『カリオストロの城』前史 【1】 TV版『ルパン三世』の徹底改造」

2018-03-19 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/03/19
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    今回は、ニコ生ゼミ3月11日(#221)から、ハイライトをお届けいたします。

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     『カリオストロの城』前史 【1】  TV版『ルパン三世』の徹底改造


     そこで、藤岡さんが目をつけたのが宮崎駿と高畑勲だったんです。

     ちょうどその頃、『長くつ下のピッピ』の原作者からNOが出ていたこともあって、東京ムービーというのは まさに倒産寸前の状態にあったんです。

     「準備に3年間も掛けた『ルパン三世』が視聴率6%になってしまった上に、長編としてやるはずだった『長くつ下のピッピ』は原作者のNOが出た。どうすればいいかわからないが、とりあえず、今ある駒でなんとかするしかない!」

     ということで、手の空いてしまった高畑・宮崎を、無理矢理『ルパン三世』第1シリーズのテコ入れとして投入します。

     たぶん、視聴率を稼ぐためのテコ入れとしては、歴史上、最も向いていない2人だと思うんですけども(笑)。

     その結果、まあ、2人とも真面目だから、仕事をするわけですね。

    ・・・

     宮崎駿は、そこで『ルパン三世』というのを徹底的に改造しようとします。

     どうするのかというと、ルパン三世の設定を「金持ちで退屈しているから遊びとして盗みをやっている退廃したフランス貴族の末裔」から、「常にスカンピンで、何か自分の渇きを満たしてくれるような面白いことはないかと目をギョロつかせている、イタリア系の貧乏人」に入れ替えちゃったんです。

     この時の設定変更としてわかりやすいのが、ルパンの愛車なんですよ。

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     これは第1シリーズでルパンが乗っていた “ベンツSSK” という自動車なんですけども、この車はメチャクチャ高価なんですよ。

     なぜかというと、確か、世界で30台くらいしか作られていないからなんですね。

     おまけに、ルパン三世が乗っているSSKは、フェラーリの12気筒エンジンを積んでいるので、エンジンの価格を含めたら15億円くらいする自動車なんです。


     「ルパンがこんな車に乗ってるはずがない! ルパン三世が貴族であるならば、こういう贅沢を今まで散々やってきたはずで、もう飽きているんです! そんなルパンが乗っている車は “動けばいい” というような車なんですよ! たとえば、あのポンコツみたいに!」と言って、宮崎駿が窓の外に駐車してあった車を指差したところ、それを聞いていた大塚康生さんが「宮崎さん、あれは俺の車だよ……」と。

     それが、大塚さんの愛車のフィアット500だったそうです(笑)。

     そんなやり取りがあって、結局、ルパンの愛車はフィアットになったんです。


     ちなみに、このフィアットは、『ルパン三世』の第1シリーズの16話「宝石横取り作戦」の最後で、不二子が乗ってきたこの車をルパンがそのまま乗って逃げるということがあって以降、ルパンの愛車ということになるんですよ。

     つまり、フィアットというのは、『カリオストロの城』から使われたわけではなく、1971年に宮崎駿がテコ入れした時から、ルパンの愛車はこれだと言うことになっていたんですね。


     さらに、宮崎駿は、ルパンの愛銃として設定されていた“ワルサーP38”にも噛みつきます。

     「ワルサーP38というのは、ドイツ軍が正式採用した拳銃であって、何十万丁、何百万丁も作られたものだ! フランスの貴族でブランド主義の男なら、そんな量産品の安物拳銃を使っているはずがねえだろ!」と文句を付けていたそうです(笑)。

    ・・・

     他にも、「当初 作られた設定では、登場人物に深みがない」という部分についても、宮崎駿はすごく攻撃しました。

     もともとの設定を考えた大隅さんは「『ルパン三世』というのは、トムとジェリーだ」と言っていたんですね。

     「トムとジェリー仲良く喧嘩しな」というように、ジェリーというネズミが逃げて、トムという猫がムキになって追いかける。

     それと同じく、ルパンが逃げて、銭形がムキになって追いかけるというコメディをやろうとしたんですけど。

     宮崎駿はこれも大嫌いでした。


     「そんな当たり前のことを今更やってどうするんだ!? 5分のアニメを1本や2本作るだけならともかく、それでTVシリーズが何本も作れるわけがない! なにより、そんなものを作るために、俺や高畑勲が青春を燃やすことが出来るはずがない!」と。

     この辺の「人物に深みが生まれないから、単なる追いかけっこはダメだ」というのは、『カリオストロの城』以前にも、すでに1971年の段階で、宮崎駿はすごく強く主張してたんですね。

     この時に、宮崎駿ははっきりと「ルパンが面白かったのは、1968年の原作漫画が連載されていた当時であって、1971年となった今、もう彼の居場所はどこにもない」と語っています。

     これは、企画書にも書いているくらいです。


     つまり、「いつまでも、シャンパンみたいな高級な酒を飲んで、世界に何台しかない名車を乗りまわすなんていうルパン像はダサくてしょうがない。そうじゃなくて、ポンコツ車に乗っているハングリーなルパンというのを描きたい」と。

     宮崎駿のこういった思いもあって、視聴率が低迷していた『ルパン三世』は、第1シリーズの途中で路線変更することになりました。

     まあ、最初に決めたフランス貴族という設定も、なんだかんだ残り続けたんですけど。


     だからこそ、『ルパン三世』の第1シリーズというのは、それらが上手いこと ごちゃまぜになった不思議な魅力があるんですよね。

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