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「『カリオストロの城』前史 【1】 TV版『ルパン三世』の徹底改造」
ということで、手の空いてしまった高畑・宮崎を、無理矢理『ルパン三世』第1シリーズのテコ入れとして投入します。
その結果、まあ、2人とも真面目だから、仕事をするわけですね。
なぜかというと、確か、世界で30台くらいしか作られていないからなんですね。
おまけに、ルパン三世が乗っているSSKは、フェラーリの12気筒エンジンを積んでいるので、エンジンの価格を含めたら15億円くらいする自動車なんです。
「ルパンがこんな車に乗ってるはずがない! ルパン三世が貴族であるならば、こういう贅沢を今まで散々やってきたはずで、もう飽きているんです! そんなルパンが乗っている車は “動けばいい” というような車なんですよ! たとえば、あのポンコツみたいに!」と言って、宮崎駿が窓の外に駐車してあった車を指差したところ、それを聞いていた大塚康生さんが「宮崎さん、あれは俺の車だよ……」と。
それが、大塚さんの愛車のフィアット500だったそうです(笑)。
そんなやり取りがあって、結局、ルパンの愛車はフィアットになったんです。
ちなみに、このフィアットは、『ルパン三世』の第1シリーズの16話「宝石横取り作戦」の最後で、不二子が乗ってきたこの車をルパンがそのまま乗って逃げるということがあって以降、ルパンの愛車ということになるんですよ。
「ワルサーP38というのは、ドイツ軍が正式採用した拳銃であって、何十万丁、何百万丁も作られたものだ! フランスの貴族でブランド主義の男なら、そんな量産品の安物拳銃を使っているはずがねえだろ!」と文句を付けていたそうです(笑)。
それと同じく、ルパンが逃げて、銭形がムキになって追いかけるというコメディをやろうとしたんですけど。
宮崎駿はこれも大嫌いでした。
「そんな当たり前のことを今更やってどうするんだ!? 5分のアニメを1本や2本作るだけならともかく、それでTVシリーズが何本も作れるわけがない! なにより、そんなものを作るために、俺や高畑勲が青春を燃やすことが出来るはずがない!」と。
これは、企画書にも書いているくらいです。
まあ、最初に決めたフランス貴族という設定も、なんだかんだ残り続けたんですけど。
だからこそ、『ルパン三世』の第1シリーズというのは、それらが上手いこと ごちゃまぜになった不思議な魅力があるんですよね。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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