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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/07/26・臨時増刊号
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この記事は『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』12月公開決定を記念して、『ニコ生ゼミ』から真木プロデューサーとの対談を一部抜粋してお届けします。

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 「『この世界の片隅に』の “完成のためにカットされた30分” と残った ”かけら” 」


 岡田:まず一番 最初に気になったこと。

 片渕監督が愚痴ってるんですよ、(『この世界の片隅に』は2時間半あるはずだったと。
 でも、真木さんに30分切られたと。


 真木:そんなに愚痴ってますかね。


 岡田:愚痴ってる。
 いろんなところで、恨み言いってる。

 この30分をいずれ復活させたい! と言ってるんですけども、30分切ったんですか?


 真木:正確に言うと切ったのは監督です。
 私は予算とスケジュールを縮めたんです。

 結果、その予算とそのスケジュールに合わすためには、すでにあったコンテから、30分近くカットせざるをえなかった。

 というのが現実ですね。


 岡田:そういう場合、片渕監督はそりゃ、切れって言われたら切るしかないです。
 でも、そこを守るのが丸山さんの役割でもあるわけでしょ? 

 たとえば『オネアミスの翼』の場合で僕、考えたんですけどね。

 真木さんの立場にいるのがバンダイにいる渡辺さんという人。
 で、僕が丸山さんみたいなラインプロデューサーですよね。

 僕、それで渡辺さんとその後、10年会えないほどの大げんかをすることになったんですよ。

 丸山さんはなんもしなかったんですか?
 30分切ってくれと言うのに対して。


 真木:それはちょっと経緯が違っていてね、もともとこの作品というのはお金が集まらなかったんです。


 岡田:そっからか。お金が集まらなかった。


 真木:そうなんですよ。


 岡田:すごく大事なことをすごくさらっと言いますよね。


 真木:集まんない期間が長かったんです。

 実は僕、途中から丸山さんに呼ばれて、一緒にやって欲しいということで。
 僕がジョイン(合流)したときにはコンテができていた。


 岡田:2時間半バージョン。


 真木:2時間半バージョン。

 クレジットがないんで、今劇場公開しているのはクレジットを除くと、大体120分ですから、約30分多いコンテができていました。

 このコンテに従って制作費を計算すると、4億円だったんだよね、当時は。
 丸山さんも僕も、4億円を集めに行ったんですよ。

 僕が入ってから1年半くらいかけましたけど、4億円が集まらなかった。

 どうするんだ、という会議になって、これは2億5千万円にしましょうと。


 岡田:2億5千万。
 2億5千万も、結構、思い切った予算ですよね。


 真木:2億5千万も集めて来れるのかっていう話になって。

 そりゃまぁ、集めてきますよ。
 集めましょうと。

 じゃあ2億5千万をベースにしてやりましょうということになったんです。


 岡田:結局

 
 真木:結局、できなければ意味がないでしょ?
 完成しなければ、意味がないでしょ?という。

 どっちを取るかということですよね。

 だからお金を2億5千万円にして、スケジュールも決めて、予算を縮めれば、スケジュールと作業量は切らざるをえないですよね。


 岡田:じゃ、真木さんが切ったのは、あくまで予算4億必要だろうというバジェットを、2億5千万に収めてくれと、


 真木:そうです。


 岡田:スケジュールも、いえば2016年の夏、もしくは秋に収まるようにしてくれ、みたいな話だったわけですよね。


 真木:そうですね。


 岡田:こっから先は、丸山さんなり片渕さんのさじ加減で2億5千万で、2時間半の映画を作るという方法もあったかもしれないわけ?


 真木:あったかもしれない。

 あったかもしれないけれども、実際、現実的にはやっぱりカットをして作り上げたってことになりますね。


 岡田:フィルムの、今現状でやってるフィルムのなかで2時間半、幻の2時間半バージョンの ”かけら” みたいなのって、結構、残ってるんですか。


 真木:”かけら” って、どういう意味ですか。


 岡田:具体的に言うとですね。
 
 すずが憲兵に取り上げられるじゃないですか、微妙なネタバレになりますけど。
 その時に、だんなさんがこれ使えって言って渡したノートの裏4分の1がカットされてますよね、あれって ”かけら” じゃないかな、と。


 真木:はい、そうですね。
 おっしゃる通りですね。


 岡田:つまり、あのあたりから連想されるもう一つの人間関係みたいなのが、原作版からばっさりカットされてますよね。


 真木:いや、これもう、こうの先生の原作がありますから、映画と見比べると、どこのシーンを切ったかっていうのはよくわかるわけですね。

 そういうことでいうと、リンさんという下りが、かなり多くカットされてますね。


 岡田:真木さんとしては、こんなこと言ってもしょうがないんでしょうけども、カットして良かった?


 真木:できたからね。

 
 岡田:できたから。
 たぶんそれ、2時間半に拘っていたら、できないままだった。


 真木:まあ、4億に拘っていたら、結果的にはあの当時は出来なかったと思いますね。

 ただまあ、ここまでクラウドファンディングもあったし、みなさんに評価いただいて、今、多くの方々に観ていただくということからすると、監督に対してはごめんなさいっていう気持ちはやっぱり出ますよね。

 結果論だけどね。


 岡田:これ、30分足して完全版ってやろうと思います?
 10億超えたら。


 真木:あーそれはね、そういう質問されるとつらいよな。

 でもまあ、監督にその気があればね、やっぱりプロデューサーとしては監督の願いをかなえてあげたいなと思います。


 岡田:10億、興行成績で10億超えると、制作費2億5千万円リクープくらいですよね。
 大体。


 真木:海外に売れたりですとかね、クラウドファンディングのお金もありますので、映画のお金だけではないんですね、収入としては。

 もうリクープ、回収という意味では目途が立ってますね。


 岡田:もう目途が立ちましたか。
 すごいですね。


 真木:ありがとうございます。


 岡田:興行収益4億で、こっから先、


 真木:こっから先がありますから。


 岡田:こっから先が見えているというのもあるですけども、もうリクープ見えたっていうのは、じつはかなり、真木さんのこれまで手がけられた作品のなかでも優等生じゃないですか。


 真木:超優等生ですね、はい。

(中略)

 岡田:僕、なんか、微妙なんですよ。

 先週、ヤマカンさん来た時に、30分切ったからテンポ良くなったし、アニメ版のあのすずさん、すごくいいから、あのままでいいんじゃないかと。

 リドリー・スコットが『ブレードランナー』を完全版完全版といって、どんどんわけわかんなくしていったから、それよりは今のアニメ版のほうが良かったのになって傍から見たら思う時もあるんですけど。

 コンテ見た数少ないプロデューサーの真木さんとしてはどうなんですか。


 真木:それは、完全版があったほうがいいと思います。


 岡田:ホント?


 真木:うん。


 岡田:もっと、すごい?


 真木:もっとすごい。


 岡田:うあー、そうか。クラウドファンディングしようよ。
 じゃもう。


 真木:言っちゃったね。

 今、本編120分でしょ。
 120分でこれだけいいんだから、やっぱり30分足したらね、って思いますね。


 岡田:2億くらいかかる?


 真木:見てみたいですね。
 ただ、スタッフが、


 岡田:一回バラけちゃったし。


 真木:バラけて、違う仕事に行ってますからね。


 岡田:みんな、なんか金出すって言ってるよ。


 真木:今日は、こんな話になると思わなかったなー。


 岡田:ホント?
 僕、すっごい好きなんですよ。

 ホントに。今年の映画で一番いいと言ってもいいですし、生まれてから見たアニメで一番いいですよ。
 絶対に、ホントに。


 真木:ありがとうございます。

 昨日ね、発表されたんですけども、横浜映画祭という映画祭で作品賞を頂きました。
 ありがとうございます。


 岡田:映画祭?
 映画祭でとるのすごいですよね。


 真木:もうひとつは、同時に審査員特別賞というのがあって、それは、主役の のんちゃん がもらったんですね。
 ですから、ダブル受賞ということですね。


 岡田:おー。


 真木:劇場公開中なんで、とても嬉しく思いますし、関係者の方にもお礼を言いたいと思います。


 岡田:カネ集めて、完全版作りましょうよ。


 真木:わかりました。


 岡田:絶対、カネ集まりますよ。


 真木:これ見てると、一番喜ぶのは監督だね。


 岡田:片渕さん、ついにやった。


 真木:ついにやった。


 岡田:だって、片渕さん、30分なにがなんでも作りたいって、いろんなところで言ってるから。


 真木:言ってるでしょ。そうですよね。


 岡田:それがなんでか、僕もよくわからなかったんですけども、コンテ読んだ真木さんが「絶対にそのほうがすごい」っておっしゃったんで、だったらって。


 真木:それはそう思いますね。


 岡田:みんな、1万なら出すって言ってますから。

 1万なら出すって言ってもね、正味、2時間が2億5千万で作れたから、じゃ30分が7千万で作れるかっていったら、そんなもんじゃないんですよね。

 たぶん、1億5千から2億くらいかかっちゃう。


 真木:まあそれはね、映画をやって利益が出たならば、そういうことを考えないといけないと思いますね。

 それは監督の想いですからね。

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