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「【『トトロ』は24時間テレビ用のアニメだった・2 】 アニメ業界には底がない」
そんなもん、間に合うはずがないんですよ、絶対に。
それくらいスケジュールが遅れに遅れたんです。
変な言い方ですけど、手塚先生が倒れてくれれば何とかなったんです。
けども、みんながバタバタ倒れて行く中、誰よりも働いて、おまけに連載漫画も描いていたというのに、手塚治虫だけは倒れなかったんですね。
その結果、どうしたのかというと。
手塚先生が1時間半くらいの仮眠を取っている間に制作進行達が集まって、「これ、どうしよう?」と。
コンテはまだ上がってないけども、脚本はある。
その脚本を読んだら、次がどんなシーンになるのかが、だいたい分かる。
そこで、「もう、こうなったら、コンテが上る前に、我々の方で撮影を済ませてしまおう!」というふうな話になったそうなんです。
まず、完成している背景を、全て机に並べる。
次に、完成しているセルを別の机に並べる。
そして、それらを順列組み合わせで撮影する。
シナリオを読んだら「ああ、ここでこいつが喋る」というのがわかる。
その次は、海底で列車が走っているシーンになる。
その次は、列車の中で事故が起こって追いかけられるシーンだ。
というふうに、大体の流れは脚本を見たらわかるじゃないですか。
なので、これを、背景とセルとを組み合わせて「たぶん、こいつが戦うんじゃないかな?」とか、「たぶん、こういうふうになるんじゃないかな?」と検討をつけて、どんどん撮影に回すんですね。
だけど、僕にしてみれば、この話はあまりにも面白くて。井上さんが帰った後、“ガイナックス講談会” というのを開いて、社長の僕が「いやあ、『マリンエクスプレス』すごかったらしいよ。こんなことがあって~」って話してたら、もう、アニメーターから背景スタッフまで、全員、大爆笑するんですよ(笑)。
「アニメ業界というのは “底が抜けてる” から、下を見たら、そりゃ、いくらでも下はある。だから、絶対に下を見てはいけない。……俺が知る限り、『マリンエクスプレス』が一番の下だけど。でも、噂によれば、俺が辞めた後、手塚プロではもっとすごいことがあったらしい」って(笑)。
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いかがでしたか?
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/09/05
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今回は、ニコ生ゼミ8月26日(#245)から、ハイライトをお届けいたします。
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「【『トトロ』は24時間テレビ用のアニメだった・2 】 アニメ業界には底がない」
この翌年に製作された『海底超特急マリンエクスプレス』は、『バンダーブック』よりも、さらにスケジュールが悪かったと言われています。
というか、“歴代最悪” というふうに噂されているんですけど、これについてはハッキリしたことはわかりません。
なぜかというと、毎回毎回、あまりにツラいので、スタッフがほとんど辞めちゃうからなんです。
「誰一人として、このアニメスペシャルに最後まで付き合った人がいないから、歴代最悪がどの作品なのかはわからない」と言われてるんですよ(笑)。
「誰一人として、このアニメスペシャルに最後まで付き合った人がいないから、歴代最悪がどの作品なのかはわからない」と言われてるんですよ(笑)。
どれくらい歴代最悪のスケジュールだったかというと、噂では…
…と言いながら、僕は、この時に制作をやっていた人から直に聞いたことがあるんですけど。
「手塚先生は、『マリンエクスプレス』のオンエア中に、そのラストシーンのコンテを描いていた」って言われているんですよね。
…と言いながら、僕は、この時に制作をやっていた人から直に聞いたことがあるんですけど。
「手塚先生は、『マリンエクスプレス』のオンエア中に、そのラストシーンのコンテを描いていた」って言われているんですよね。
そんなもん、間に合うはずがないんですよ、絶対に。
それくらいスケジュールが遅れに遅れたんです。
そして、『バンダーブック』の時のような “失踪” は無かったんですけど、デスクや制作担当たアニメーターがバタバタと過労で倒れて行ったそうです。
しかし、そんな中でも、手塚先生だけは倒れないんですよ!
一番ハードに働いているくせに!(笑)
一番ハードに働いているくせに!(笑)
変な言い方ですけど、手塚先生が倒れてくれれば何とかなったんです。
けども、みんながバタバタ倒れて行く中、誰よりも働いて、おまけに連載漫画も描いていたというのに、手塚治虫だけは倒れなかったんですね。
・・・
手塚先生は、もう意地になってしまって、自分でコンテを描くのを絶対に止めようとしないんです。
もう、手塚先生が諦めて、コンテをもっと手の早い人に、たとえば、その時はガンダムをやっていたから無理だったでしょうけど、富野由悠季とか、そういう “職人” といわれるようなコンテマンに回せば、なんとか予定通りに間に合ったかもしれなかったんですよ。
だけど、手塚先生が意地になって抱えちゃってるから、どうしようもない。
その結果、どうしたのかというと。
手塚先生が1時間半くらいの仮眠を取っている間に制作進行達が集まって、「これ、どうしよう?」と。
コンテはまだ上がってないけども、脚本はある。
その脚本を読んだら、次がどんなシーンになるのかが、だいたい分かる。
そこで、「もう、こうなったら、コンテが上る前に、我々の方で撮影を済ませてしまおう!」というふうな話になったそうなんです。
まず、完成している背景を、全て机に並べる。
次に、完成しているセルを別の机に並べる。
そして、それらを順列組み合わせで撮影する。
シナリオを読んだら「ああ、ここでこいつが喋る」というのがわかる。
その次は、海底で列車が走っているシーンになる。
その次は、列車の中で事故が起こって追いかけられるシーンだ。
というふうに、大体の流れは脚本を見たらわかるじゃないですか。
なので、これを、背景とセルとを組み合わせて「たぶん、こいつが戦うんじゃないかな?」とか、「たぶん、こういうふうになるんじゃないかな?」と検討をつけて、どんどん撮影に回すんですね。
あとはもう、手塚先生のコンテが上がって来るのを待って、みんなで「当たった!」とか「外れた!」って言いながら、当たったらそのままアフレコ、外れたら撮影し直して、なんとかはめ込んでいくということを、本当にやってたそうなんです。
・・・
これは、当時の手塚プロにいて、『マリンエクスプレス』の制作スタッフの一番下っ端をやってたはずなのに、次々と先輩たちが倒れたから、結果的に制作デスクまで上がってしまった井上博明さんという、ガイナックスを僕と一緒に作ったプロデューサーから、僕が直に聞いた話です。
井上さんは、これを僕に “怖い話” として聞かせたんですよ。
「岡田くん、山賀や庵野を甘やかしたらダメだ! コンテは早目にやらせろ! シナリオは早目にやらせろ! でないと、こんな恐ろしいことになるぞ!」と。
「岡田くん、山賀や庵野を甘やかしたらダメだ! コンテは早目にやらせろ! シナリオは早目にやらせろ! でないと、こんな恐ろしいことになるぞ!」と。
だけど、僕にしてみれば、この話はあまりにも面白くて。井上さんが帰った後、“ガイナックス講談会” というのを開いて、社長の僕が「いやあ、『マリンエクスプレス』すごかったらしいよ。こんなことがあって~」って話してたら、もう、アニメーターから背景スタッフまで、全員、大爆笑するんですよ(笑)。
そしたら、次の日、井上さんが不機嫌な顔で僕の前に現れて、「岡田くん、あれは笑える話じゃないんだ!」って言うんですけども。
僕はもう、それを含めておかしくておかしくてしょうがなかったんですよね。
僕はもう、それを含めておかしくておかしくてしょうがなかったんですよね。
まあ、すごい怒られたんですけれど。
そこで僕が、「アニメ業界って本当に下を見たらいくらでもあるんですね」と言うと、井上さんはこう言いました。
「アニメ業界というのは “底が抜けてる” から、下を見たら、そりゃ、いくらでも下はある。だから、絶対に下を見てはいけない。……俺が知る限り、『マリンエクスプレス』が一番の下だけど。でも、噂によれば、俺が辞めた後、手塚プロではもっとすごいことがあったらしい」って(笑)。
「放送中に手塚先生が絵コンテを切る」という以上にすごいことって、僕には想像もできないんですけど。
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