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「【『トトロ』は24時間テレビ用のアニメだった・2 】 アニメ業界には底がない」
「誰一人として、このアニメスペシャルに最後まで付き合った人がいないから、歴代最悪がどの作品なのかはわからない」と言われてるんですよ(笑)。
…と言いながら、僕は、この時に制作をやっていた人から直に聞いたことがあるんですけど。
「手塚先生は、『マリンエクスプレス』のオンエア中に、そのラストシーンのコンテを描いていた」って言われているんですよね。
そんなもん、間に合うはずがないんですよ、絶対に。
それくらいスケジュールが遅れに遅れたんです。
一番ハードに働いているくせに!(笑)
変な言い方ですけど、手塚先生が倒れてくれれば何とかなったんです。
けども、みんながバタバタ倒れて行く中、誰よりも働いて、おまけに連載漫画も描いていたというのに、手塚治虫だけは倒れなかったんですね。
その結果、どうしたのかというと。
手塚先生が1時間半くらいの仮眠を取っている間に制作進行達が集まって、「これ、どうしよう?」と。
コンテはまだ上がってないけども、脚本はある。
その脚本を読んだら、次がどんなシーンになるのかが、だいたい分かる。
そこで、「もう、こうなったら、コンテが上る前に、我々の方で撮影を済ませてしまおう!」というふうな話になったそうなんです。
まず、完成している背景を、全て机に並べる。
次に、完成しているセルを別の机に並べる。
そして、それらを順列組み合わせで撮影する。
シナリオを読んだら「ああ、ここでこいつが喋る」というのがわかる。
その次は、海底で列車が走っているシーンになる。
その次は、列車の中で事故が起こって追いかけられるシーンだ。
というふうに、大体の流れは脚本を見たらわかるじゃないですか。
なので、これを、背景とセルとを組み合わせて「たぶん、こいつが戦うんじゃないかな?」とか、「たぶん、こういうふうになるんじゃないかな?」と検討をつけて、どんどん撮影に回すんですね。
「岡田くん、山賀や庵野を甘やかしたらダメだ! コンテは早目にやらせろ! シナリオは早目にやらせろ! でないと、こんな恐ろしいことになるぞ!」と。
だけど、僕にしてみれば、この話はあまりにも面白くて。井上さんが帰った後、“ガイナックス講談会” というのを開いて、社長の僕が「いやあ、『マリンエクスプレス』すごかったらしいよ。こんなことがあって~」って話してたら、もう、アニメーターから背景スタッフまで、全員、大爆笑するんですよ(笑)。
僕はもう、それを含めておかしくておかしくてしょうがなかったんですよね。
「アニメ業界というのは “底が抜けてる” から、下を見たら、そりゃ、いくらでも下はある。だから、絶対に下を見てはいけない。……俺が知る限り、『マリンエクスプレス』が一番の下だけど。でも、噂によれば、俺が辞めた後、手塚プロではもっとすごいことがあったらしい」って(笑)。
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