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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/10/26
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今回は、ニコ生ゼミ10月14日(#252)から、ハイライトをお届けいたします。

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 【Googleへの就職  3 】 各社それぞれクセのあるIT大企業の入社試験


 今まで紹介してきた問題がGoogleの入社試験なんですけど。

 しかし、ビル・ゲイツ、マイクロソフトの入試はどうかというと、これとは全く違うんですよ。

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 最初に説明した通り、この「富士山を動かすには?」というのが、有名なマイクロソフト社の入社試験の問題なんですけど。

 もちろん、今はもう使ってないとは思いますけどね。


 この問題、さっきの問題と何が違うのかというと、たとえば、最初に紹介した答えよりも、もっと “とんち” な回答があるわけですよ。


 どんな山にも “標石” という、山のてっぺんを表す石があります。

 これ自体を動かしちゃえば、山は動いたことになるわけです。


 だって、国土地理院の定義によれば「山のてっぺんにある石が山のシンボル」なんだから、これを動かせばいいじゃん、と。

 あとは、富士山の隣にある山を「富士山」と改名しちゃえばいいよ、と。

 そうすれば地図上での位置は変わるでしょ、と。

 そんなとんちもあるんですけど、これではダメなんですよ。

・・・

 最初に言った通り、この問題には唯一の正解があるんです。

 それは「トラックで富士山を運ぶ場合の過程を全て考えて、試算してコストを出すこと」なんです。


 さっき流れたコメントの中に「トラックを10万台用意して~」というのがありましたけど、それでは足りないんですよ。

 そうではなく、富士山の体積を大まかに計算して、土の比重をフェルミ推論で出して、そのために必要なトラックの台数を計算して「それを24時間稼働させる場合、何人くらいの運転手が、何交代で運べば何日間くらい掛かる」というところまでダーッと話すと、「はい、合格」となるんですよね。

 これはなぜかというと「マイクロソフトが求めているのは “マネージメント能力” だから」なんです。


 Googleが求めているのは “クリエイティビティ” に近いんですよね。

 なので、とんちもアリだし、言い返しもアリ。

 まあ、もちろん、正しい推論があれば一番良いんですけど。


 ところが、マイクロソフトが求めているのは「本当にそれをするためには、どれくらいのコストが掛かるのか? どれくらいの人間がいるのか? その人間はどうやって手配するのか?」という、どストレートな回答なんです。

・・・

 その他にも、マイクロソフトの入社試験として本当にあったものは「ビル・ゲイツのバスルームを設計してください」と言って、その場で口で言わせるという問題なんですね。

 みんな、その場で聞かれるもんだから、パッと答えなきゃいけないんですけども。


 たとえば「家に帰る途中の車の中から命令したら、バスルームに自動的にお湯が溜まって適温になる」という答えもあったそうなんですけども。

 そういう答えを聞くと、面接官はニヤリと笑ってこう言うんです。

 「その機能は、すでにビルの家にはあります」と(笑)。

 ビル・ゲイツの家は、もう15年以上前から、車の中で命令したら風呂にお湯が溜まるそうなんですけど。


 実際の回答で「ああ、それはいいね」と言われたのは「子供が風呂に入ると薬棚が自動的にロックする」という機能だそうです。

 僕ら日本人は、薬というと、台所とか、お茶の間辺りの薬箱にしまっているものなんですけど。

 ハリウッドの映画を見ててもわかる通り、アメリカとか西洋では、だいたいバスルームの洗面台の鏡の裏に薬を並べているのが多いんですよ。

 それを子供が勝手に取ったりしたら、すごく危ないじゃないですか。

 なので、「誰が浴室に入ってきたのか?」をセンサーで読み取って、子供が入った瞬間に、薬瓶とか薬箱にロックを掛けちゃう機能。

 これは「いいね」と言われたそうです。

 これが、マイクロソフトの問題です。

 Googleとは全く発想が違うんですよ。

・・・

 じゃあ、Appleの入社試験はどうなのか?

 これも、クセがあるんです。


 僕も、今年の8月にAppleの本社に行ったんですよ。

 “宇宙船” と呼ばれている新しいAppleのビルの前にビジターセンターがあるんですけども。

 僕が参加したのは、日本人が日本語で説明してくれる6人くらいのツアーだったんですけど。


 Apple社内を日本語で説明された後、外に出ると、すごいフランクな若者たちが肩を抱かんばかりにして近づいてきて「見に来てくれたの? ありがとう! ほら、もっと奥に入りなよ!」とか、「こういうのあるよ!」って言ってくれたんですよ。

 そして、入っていった本社の中にもAppleショップもあって、いろいろ売ってるんですけど。

 全Apple社員がこんな感じなんですよね。

 要するに “Apple愛” がすごいんですよ。


 Appleの入社試験もそれと同じなんです。

 たとえば「2001年、あなたにとって一番大きな出来事は何でしたか?」と。

 これは実際にあったAppleの入社試験の問題です。


 ここで「9.11事件です」みたいな “世間にとっての大事件” を答えたら、もうダメなんですね。

 そんなことを聞かれてるわけではないんですよ。


 正しい答えとしては「iPodが発売されたことです!」とか、「ニューヨークにAppleショップ1号店が出来ました!」というものなんです。

 そういうふうに「僕にとってAppleの公式ショップが出来たことは、すごくデカいんです! iPodが発売されたじゃないですか!」と答えると、「よし! お前のApple愛は本物だ!」と言われて、合格になるんです。

 ……いや、真面目な話、これが正解だそうです。

・・・

 同じIT企業と言われながらも、Apple、マイクロソフト、Googleというのは、もうほとんど落語というか、「こんな時、イギリス人はこうする。フランス人はこうする」みたいなジョークみたいに差があるそうなんですよね。


 まとめると、Googleというのは、創造性と協調性が高い人を求める傾向にある。

 対して、マイクロソフトは、創造性や協調性よりもマネージメントに近い管理能力、現実戦略として勝つための方法を現実化出来る、プロデューサー的な能力というのに、やや重きを置いている。

 もちろん、創造性も協調性も欲しいでしょうけど、重きを置く場所が違うんですね。

 そして、Appleが重きを置いている場所は、なによりも「Appleが好きであること」なんですね。


 これは、それぞれの会社に、そうでなければいけない切実な理由というのがあるんですけど、それについては、もうちょっと後の方で話しましょう。


 ということで、前半はここまでですね。

 後半は「そもそも、なぜ、こんな変な入試問題が始まったのか?」という話をします。


 それについては、実は2004年にハーバード大学前とシリコンバレー近くのハイウェイに掲示された “謎の看板” が発端になっているんですけども。

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 「eの数列に最初に現れる10桁の素数.com」とだけ書かれたこの看板。

 これが大評判になったんですけど、これが全ての始まりだったんです。

 この奇妙なビルボードから、全てが始まったという話をしていこうと思います。

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