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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/11/28
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今回は、ニコ生ゼミ11月18日(#257)から、ハイライトをお届けいたします。

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 もしもハリウッドで『もののけ姫』が特撮映画としてリメイクされたら?

 これは余談というよりは、今回の本編でね。

 『もののけ姫』の時に入らなかった話をちょっとしたいんですけども。


 『もののけ姫』って、「話全体が、どういう お話か?」っていうのが、なかなか分かんないんだよね。

 それで、「どうやったら分かりやすく伝えられるのかな?」ってふうに考えてて、ちょっと掴んだ気がするんだけども。


 あれね、「『もののけ姫』がハリウッドでリメイクされたら、どういうふうになるのか?」って考えると、ちょっとだけ分かりやすくなると思う。

 「もしハリウッドで『もののけ姫』がリメイクされて、アメリカが舞台で、俳優もアメリカ人とかを出したらどうなるのか?」って考えたら、逆に日本の『もののけ姫』っていうのが、どんなとんでもない凄い話だったかっていうのが分かると思います。

・・・

 冒頭はですね、これはアメリカの原住民のインディアンの村。


 インディアンって言うんだけども、これは言葉の正しい意味じゃないのは分かっています。

 ただ “アメリカ原住民” とか “原住部族” よりは “インディアン” って言ったほうが通りがいいから。

 だから今日はもう全部 “インディアン” って言い方で話すね。

 そこら辺は、よろしくお願いします。


 冒頭はアメリカの、もうカナダの果ての方に住んでいるインディアンの村と、そこを襲う巨大なワシ。

 タタリ神と化したワシが、アメリカの北の果てに残っている先住民のインディアンたちの村を襲うわけです。

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 だいたいこんなイメージだと思って。

 こんなイメージのヤツが、アメリカのインディアン村を襲います。

 「あ、あれは西海岸のシャイアン族のトーテムだ!」


 “トーテム” っていうのは守り神だね。

 インディアンの守り神の巨大なワシが村を襲う。


 「なんで!? アイツがタタリ神になるなんて!」

 「東から来たキリスト教の神に追われ、今やインディアンは、わずかに西海岸と北にだけに住んでいるに過ぎない」

 「何か西海岸で不吉な事が起こったに違いない」

 「アシタカよ、その曇りの無い眼(まなこ)で見てくるんじゃ」


 そうやって “アシタカ” という名前のインディアンの少年が、ワシの爪によって呪われてしまった右手を呪いながら村を旅立つ所から映画はスタートするわけだ。

・・・

 途中、インディアンの村を襲う騎兵隊に出会います。

 騎兵隊がインディアンの村を襲っているんですね。

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 それで、この騎兵隊に対して怒りをもったアシタカはですね、先祖伝来のアメリカ大ワシか何かの羽が付いた矢でバーンと射ると。

 そうすると、この騎兵隊の中心で、核爆発のような大爆発が起こる。


 これはね、日本版のアニメ版の『もののけ姫』では首がすっ飛ぶぐらいの表現なんだけども、ハリウッドでは「それぐらいじゃ分からないだろう」と。

 アシタカにかけられた呪いが、どんなものかって分かるには、もうとりあえず火薬を山盛りで大爆発させたほうが分かりやすいから、大爆発させて、それで騎兵隊たちは全滅するんですね。


 こういう話にすると、「『もののけ姫』っていう作品が、実はどんな話だったか?」っていうのが、ちょっと分かりやすくなってくるんだよね。


 それでこの騎兵隊たちを退治した後で、アシタカがさらに西海岸のロッキー山脈を越えていくと、ロッキー山脈の中ほどでセコイアの森がある。

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 ジャイアントセコイアって、木というよりは、たぶん生物としても地球最大なんだよね。

 体積計算したら。

 ジャイアントセコイアの森っていうのは、巨大な森です。


 それの森と、その横で製鉄をしているインディアンの村に出会う。

 「インディアンが鉄を作っているなんて!? まるで白い人間(ヨーロッパ人)みたいじゃないか!」ってアシタカは驚くんだけども、彼らは製鉄してるんだ。


 それでセコイアっていうのは、実はインディアンたちが定期的に切り倒さないと、アメリカ大陸中がこのセコイアに飲み込まれてしまうんだ。

 これは本当の事なんだけど。


 ジャイアントセコイアっていうのは、北米最強の生物なんだ。

 おそらく地球上最強の生物だと思う。


 なんでかっていうと、ジャイアントセコイアっていうのは、だいたい低いヤツで80メートル、高いヤツは100メートルを越えるんだよ。

 これは本当の話で。

 で、なんでそんなに高いのかっていうと、落雷を呼び寄せるためなんだ。

 コイツらは雷を落としたいんだよ。

 ジャイアントセコイアっていうのは。


 それは何でかっていうと、ジャイアントセコイアっていうのは山火事がないと繁殖できないんだ。

 ジャイアントセコイアっていうのは、周りにスポンジ状の硬い表皮があって、山火事の温度に耐えるんだよね。

 中心部が生き抜けるんだよ。


 オマケに被子植物で、山火事の温度でないと、その殻みたいな松ぼっくりがバキッと割れて中の種子が外に出て行かないんだ。

 それで山火事でボーボー燃える山の風を、火事場の風を利用して、種子をそこらじゅうにバラ撒くという恐怖の生物なんだよな(笑)。

 だからインディアンが適当な間隔で木を切り倒さないといけない。


 今はセコイア公園っていうのがあって保護されているんだけども。

 これは人間が繁殖してバーッと伐採したから無事だったんだけども。

 こんなの下手したら、北米大陸で普通に繁殖できるような土地は、ジャイアントセコイアに支配されてても不思議じゃなかったんだよね。


 それで、その山火事を起こすためにジャイアントセコイアは100メートルを越えるわけだよね。

 その100メートルを越える木の高さになる理由っていうのも唯一つ、雷を落として周りを焼き払いたいから。

 それで何で焼払いたいのかっていうと、ジャイアントセコイアって言うのはこの100メートルっていう木の高さに対して、根がメチャクチャ浅いんだ。

 根っこが2メートルぐらいしか地面の底にもぐって行かないんだよ。


 なので他の競合している植物、雑草レベルでもそうなんだけども、雑木林とか、そこらへんの小さい樹木ですらジャイアントセコイアが本来 得たい栄養っていうのを地面から吸ってしまうんだ。

 だからジャイアントセコイアっていうのは、数年に一回 山火事を起こして、ジャイアントセコイア以外の種をすべて焼き払って、それの上で繁殖したいと思っているので、木が高く高く伸びていって山火事を呼ぶという。

 なんか、そういう恐怖の生物(笑)。


 その恐怖の森の近くに住んでいるインディアンは、定期的にジャイアントセコイアを伐採して、それで炭を作って火を起こして生活しているという設定にするわけだよな。

 それで、そういうインディアンの製鉄村に襲い掛かるダイアウルフの生き残り。


 ダイアウルフっていうのは、北米大陸に大昔にいた、もう絶滅してしまった巨大な狼。

 今言われているのでは体調は2~3メートルって言われてるんだけど、今回お話に出てくるのは何せトーテム神だから。

 村のトーテム・守り神のシシ神みたいなヤツラだから、8~10メートルぐらいの狼が出てきます。

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 だいたいイメージとしては、こんな感じかな。

 これは『ランペイジ 巨獣大乱闘』に出てきた巨大狼なんだけども、こんなのが特撮で出てくる。

 もちろん今言ってるのは、全部、特撮映画の話だよ。

 CG特撮でアメリカ大陸に現れると思ってください(笑)。


 こういう狼が現れると。


 それで、銃で部族のトーテムである狼を撃つ “エボシ” という名前のインディアンの女の人がいるんですね。

 しかし、狼に育てられた少女が邪魔をするのであった。


 こういうのが前半の展開になるわけだよね。

・・・

 エボシは、日本のアニメ映画版の『もののけ姫』と似たようなものにするから、インディアンで元奴隷。

 白人の奴隷として捕まったんだけども、見た目が可愛い女の子だったから、そのままスペイン人の愛人になった。

 母国スペインに、ヨーロッパに連れて行ってもらった経験もあった。

 それが南米ペルーに、ご主人であったスペイン人が総督として派遣された時に、夫のスペイン人総督を殺して、他のインディアン奴隷たちと一緒に北米に逃げてきたという設定にします。


 それでエボシはトーテムを倒し、アメリカ中の、巨大なワシとか狼とかそういう守り神たちを退治して、インディアンの共和国を作って、白人に対抗しようとしてるんですね。

 いちおうエボシの目安としては、アメリカ大陸の東海岸側はヨーロッパ人が支配しても構わない。

 でもロッキー山脈の辺りから、いわゆる西側全てはインディアンの共和国として取っておこうという。


 かつてカリフォルニア共和国とか、あとニューメキシコあたりが独立国としてやっていこうというような感じを、エボシは考えているわけですね。


 それで何でトーテムを倒そうとしているのかっていうと。

 トーテムの、あの巨大な生き物の神々たちを倒すと、インディアンたちは「俺たちが信じていたのは単なる迷信であって、巨大な動物を信仰していたに過ぎない。 それよりは銃を取ってエボシと一緒になってヨーロッパ人と戦おう」と考えるようになるから。

 やっぱりインディアンが負けた理由っていうのは、インディアン同士の部族が対立して、共同戦線を張れなかった事なんだよ。

 それで最後に “インディアン戦争” っていのがカリフォルニアであったんだけども、もう時期が遅すぎたんだよね。

 エボシはそれを100年前に持って来ようとしてるんですね。


 こういう話にすると、実は『もののけ姫』って僕が言った話とほとんど同じなんだけども、かなりダイナミックでしょ?

 だから、わりと過激な話っていうのを『もののけ姫』は やろうとしていたんだ。

 ほとんど『ダンス・ウィズ・ウルブズ』に怪獣が合体したようなものをやろうとしてるんだけども。

・・・

 さて、もちろんジゴ坊も出てくるんだ。

 ジゴ坊は何かというと、バチカンから派遣された、エクソシズムを学んだ神父なんだけども(笑)。 


 エボシたちに技術と兵隊を与えるんだよね。

 バチカンの持っている兵隊と、バチカンの持っている大砲を与えるんだ。

 それでエボシは神の中の神・ビッグフットの殺しを決意すると。


 このトーテムたちの一番の親で、巨大なサルのビッグフットってヤツがアメリカにいて、ソイツを殺そうと決意するんだ。

 それで、さっき攻撃されたトーテムの狼のモロは、インディアン文明の終わりをアシタカに予言する。

 「アメリカ大陸は、いずれ我々のような自然の神ではなくて、人が作った神(=キリスト教)に支配されてしまうだろう」と。


 「風とか、雪とか、雨とか、山も、川も、すべて自然からの贈り物で神の世界だった。だけど、おそらく それらは白人たちにとって支配すべき自然 “ウィルダネス(Wilderness)” と定義されてしまうだろう」とモロはアシタカに予言する。

 アシタカは「そんな時代が来るはずが無い!」とか一生懸命に言うんだけども、どんどん自信が無くなっていく。

・・・

 それでハリウッド版シシ神のビッグフットは、こんなヤツ。

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 このビックフットを倒すための最後の戦いが始まると。


 それでカソリックが派遣した十字軍と、エボシたちが組織したインディアンの共同戦線は、連合してこのビッグフットと戦うと。

 それで遂に登場するカソリックの新兵器ガトリング砲!


 そのガトリング砲だけでも強力なのに、そこにペルーの銀山より取り寄せたスペイン銀貨を溶かして、ジゴ坊が神父姿でエクソシズムをやって、その銀貨に祝福を与えて銀の弾丸にするんだ。
 
 神父によって聖別された銀の弾っていうのは、魔物を倒すキリスト教の神の力を得てるので。

 それで祝福を与えられて銀のブリット(銃弾)となった弾をガトリング砲にガーッと詰めて、このガトリング砲でビッグフットをババーッと撃つわけだね。


 それで遂に倒されるビッグフット。

 数千発の銀の弾を撃ち込まれて、遂にビッグフットは倒されるんだけども、倒されたビッグフットは、そこから巨大なキングコングになってしまったと(笑)。

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 さあ、どうなる!?

 という。

・・・
 
 多分、これをハリウッドでやったら、2時間30分ぐらいになる話なんだけども、すごくデタラメで過激な話でしょ?

 これをこのままアメリカで公開したら、アメリカの白人層が凄く反発するのが分かるよね。


 だって、自分たちが持っている「アメリカとは、こういうものだ」「建国神話とは、こういうものだ」っていうのと、わりと違ってる。

 やっぱり「自分たちは侵略民族の末裔で、元々アメリカにいたインディアンたちに何をしたのか?」っていうのが明るみに出てしまうから。

 それで『もののけ姫』って、そんな話なんだよ。


 そんな話であって、「帝が、」とか言ってるやつも、ほとんど今話した映画の中で「バチカンが」って言ってるぐらいの文脈で使ってる。

 だけども、それを巧みに分からないように仕込んでる。


 アメリカを例にしてみて語ってみると、「うわ、その話は かなり過激だな」って僕らは分かるんだけども、『もののけ姫』っていう日本のアニメにされてしまうと、わりと気が付かないようにされている。

 そんな所が宮崎駿のすごい上手い所だし、鈴木敏夫もよく宮崎駿の「もっと描きたい」という気持ちを抑えたなと思うんだけども。


 こんなふうに考えると、『もののけ姫』っていうのは、分かりやすくなるかどうかは分からないんだけども、より面白く見れるんじゃないかなと。

 これは「『もののけ姫』が面白くない」という意味じゃなくて、“横から見る目線” として面白い見方も出来るんじゃないかなと思って紹介してみました(笑)。 
 

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