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今回は、ニコ生ゼミ01月13日(#264)から、ハイライトをお届けいたします。
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「クシャナとナウシカ2人の物語である『風の谷のナウシカ』」
アバンタイトルというのは、アニメのオープニングタイトルの前の部分で展開される、ちょっとしたドラマ部分のことを言うんですけども。
ユパが「また村が1つ腐海に沈んだ」と呟いたあと、「この世界の歴史はこういうふうになってますよ」という文言が表示されます。
これは、布の上に描かれた水彩画です。
実はこれ、アニメ本編が完成した後で作られたんですね。
宮崎さんが、自分の全ての作業が終わってから、水彩絵の具で描いていたそうです。
庵野くんは、自分の作業の分が終わったら、途中で大阪に戻ってしまったので知らなかったんですね。
すると片山さんが、「自分の作業が全部終わってから、俺らが撮出しとかでヒイヒイ言ってる時に、一人一番楽しそうに、鼻歌を歌いながら描いてたよ」と言うんです。
……まあ、そこまで憎々しげに言わなくてもと思うんですけど(笑)。
実はこれ、今言った通り「作業が全て終わった後で描いたもの」なので、宮崎駿としては、アニメを全部作り終えた時点で振り返りながら描いているわけですね。
なので、完成品と絵コンテとの間には、微妙な差があるんです。
ナウシカを象徴する風の谷の世界と、トルメキアを象徴する曲がりくねった2つ頭の蛇がそれぞれ描かれているんですけど。
もしくは、炎を吐いている。こういう印に変更されているんですね。
あんまり大した違いじゃないように見えるんですけど、これね、全然違うんですよ。
どういうことかというと、風の谷を象徴する青い部分には、わかりやすく女の人が描いてあるから「これはナウシカを表している」ということが伝わるんですよ。
つまり「1つの人格を2つに分けた存在だ」と。
「どうしたらいいんだろう?」「こうすればいいだろ!」「いや、でも、そんなことをしたら……」みたいな葛藤というものを映画として伝える場合、実際にセリフや演技にしないと伝わりにくいから、ある人間の内面における悩みというのを、それぞれ1人ずつキャラクターにして、それを戦わせることでドラマというのを作って行くんですね。
ただ単に、紋章として描いていたんですけども。
映画を作り終えて、最後にタペストリーを描く段になってきて、それをすごく意識するようになってきたというわけですね。
これは、クシャナというキャラクターの存在感が、自分の中でどんどん大きくなってきたからです。
ここら辺については、まあ、後半で話をしようと思います。
なぜかというと、宮崎駿自身も「何のためにこの映画を作るのか?」とか、「この映画で何を言いたいのか?」と聞かれた時に、「そんなことがわかったら苦労はないですよ!」って、よく言ってるんですね。
最後、映画を全部作り終わって、タペストリーを描く段になってから、ようやっと「そうか! 俺はナウシカとクシャナの話を作りたかったんだ!」と分かるから、「このタペストリーを逆転させよう!」と言い出すことになるわけなんですけど。
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