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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「物語の『ドラえもん のび太の月面探査記』 ベタの『キャプテン・マーベル』」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「物語の『ドラえもん のび太の月面探査記』 ベタの『キャプテン・マーベル』」

2019-03-25 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/03/25
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    今回は、ニコ生ゼミ03月17日(#273)から、ハイライトをお届けいたします。

    動画や全文が気になった方、【ブロマガチャンネル】メルマガ専用 岡田斗司夫アーカイブ(月額2,160円)のご入会はこちらから!

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     物語の『ドラえもん のび太の月面探査記』 ベタの『キャプテン・マーベル』


     では小芝居を。

     次はオメェ(ドンキーくん)の出番だ。

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    ――――――

    ドンキーくん:
     (低い声)はぁい、ドンキーくんです。

     岡田は『キャプテン・マーベル』と『ドラえもん のび太の月面探査記』は見てきだんだよね?

     今週、映画の感想を教えて~。


    岡田:
     えーとね、キャプテン・マーベルはアベンジャーズ シリーズをまとめている役割で、マーベルファンが映画館中でずーっとクスクスクスクス笑っていたんだよ。

    ――――――

     で、タイトルの、一番最初に “MARVEL” って出るところがあるじゃん。

     これまでだったら、あそこの所にマーベルのいろんなキャラクターがどんどん出てくるんだけどもね。

     それがすべてスタン・リーになってるんだよね。


     スタン・リーっていうのはマーベル映画の製作総指揮をやっている お爺ちゃん で、去年の11月12日にロサンゼルスで肺炎で亡くなったんだ。

     それでスタン・リーは1960年代に『スパイダーマン』とか『X-MEN』の原作を担当してた人だよね。


     元々、スタン・リーっていう爺ちゃんは、1939年に17歳でマーベルに入社した。

     もう本当に戦前だよね。

     それで、もう入社してすぐに『キャプテン・アメリカ』の脚本を書かされたんだけども、やる気に燃えてたんだろうね。

     入社して一年目の18歳で、マーベルコミックの編集長に就任したんだ。


     これは凄い事なのか、マーベルっていう会社がよっぽどダメなのか、よく分かんないんだけど(笑)。

     18歳でマーベルコミックの編集長になって、その後、社長、会長になってですね。

     そのうちに、たとえば日本では東宝と契約して『ゴジラ』のコミック化とかの権利を取って、『ゴジラ』のコミックをマーベルで出したりしたんだよ。


     あと『勇者ライディーン』『コンバトラーV』『ダンガードA』とかをまとめて、いわゆる『ショーグン・ウォリアーズ』というシリーズで、アメリカのマテルからオモチャが発売される時に、それのコミック化とかも企画したりした。

     その時代の人だよね。


     それで、スタン・リーがアメコミにおいて果たした役割で、僕が面白いなぁと思ったのが、“大喜利” 方式でコミックを描いたって事なんだ。

     これは “マーベル・メソッド” というふうに呼ばれているんだけども。


     これが何なのかっていうと、一時期、スタン・リーが脚本を担当していた作品が80本以上あったんだって。

     もうほとんど全てのマーベルコミックのシナリオを担当していたんだけども(笑)。


     それで、もう80本もいちいち全部の原作を書いてられないから、とりあえず大体のお話を考えて、それを漫画家にどんどん渡していた。

     それで漫画家から絵が上がってきたら、“吹き出し” の部分が空いてるんだよ。

     なぜなら大体のお話の流れしか決まってないから。

     それを見たスタン・リーが、絵を見て、吹き出しを見て、中にセリフを入れるっていうね。

     もうほとんど大喜利。


     大喜利であるじゃん、「吹き出しに文字を入れてください」っていうヤツ。

     あんな感じでセリフを入れていってた(笑)。


     それがスタン・リーのセンスなんだろうね。

     そしたら何故か大ヒットしてですね。


     そういう事で、確かに偉大な爺ちゃんで、亡くなって残念なんだけども。

     今回の『キャプテン・マーベル』のオープニングのスタン・リー押しっていうのかな、いろんな時代のスタン・リーがいっぱい出てきてて。

     マンガになったスタン・リーや、アニメになったスタン・リーとかがいっぱい出てくるのは いいんだけども、やり過ぎな感じを 僕は ちょっと感じててね。


     なんでかっていうと、結局 ウォルト・ディズニー・プロダクションが後ろにいるわけじゃん。

     全部 やってるわけじゃん。

     もう今は『スター・ウォーズ』も “マーベル” も、全部 ウォルト・ディズニー・プロダクションが後ろで仕切っているんだよね。

     それでスタン・リーの “ウォルト・ディズニー化” を狙ってるんじゃないかなと。


     だから多分『スター・ウォーズ』もルーカスが死んだら、同じようにするはずなんだよね。

     ルーカスが死んだら、「ルーカスは偉大だった」と言い出して、神格化すると。
     

     やっぱり死んでからだったら、いくらでも神格化できるわけだよね。

     Apple のスティーブ・ジョブズと同じように。


     なので、ウォルト・ディズニー、スタン・リー、ジョージ・ルーカスというような形で、徐々に死んでいった創立者を神格化していく。

     それも、あそこの会社のキャラクタービジネスだと思うんだよね。

     キャラクタービジネスっていうのは、その映画の中に出てくるキャラクターだけではなくて、スタッフの中にレジェンドっていうのを作るっていう。

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    ――――――

    岡田:
     今、コメントのを読んだらえらいのがあったよ。

     見た?


    ドンキーくん:
     (裏声)見た見た。


    岡田:
     お前の声はそれじゃないだろ。


    ドンキーくん:
     (低い声)見た見た。
     “岡田斗司夫” って書いてあったな。


    岡田:
     俺は別に死んでもレジェンドにならないとか(笑)。

     死なないよ!
     まだ60年ぐらい生きるつもりだから!

     そんな事、言わないでください!

    ――――――

     それで映画としての『キャプテン・マーベル』は、ベタな お話 なんだ。

     お話 自体はベタなんだ。

     それで、徹底的にベタな お話 に、絵の面白さっていうので盛り上げて、大作に仕上げたんだよね。

    ・・・

     それと対照的なのが、映画『ドラえもん のび太の月面探査記』なんだ。

     今、2019年に月面探査記をやるっていうのは、もう完全にアポロ着陸50周年にあてた企画なんだけども。

     こっちはもう『キャプテン・マーベル』と本当にまったく逆で、とにかく徹底的に お話 にこだわってる。


     見た限り、本当にシナリオに全く矛盾が無いし。

     あとキャラクターの動きが、演技っていうのかな、メチャクチャ素晴らしいんだよ。


     たとえば今回のドラえもんは、“セリフ” ではなくて “動き” で気持ちを伝えているんだよね。

     ドラえもん映画の中盤でよくあるシーンなんだけども、一回 戦闘の場から日常に帰ってきて、「それでも僕達は行かなきゃいけない」と決意して行くシーンだけども、それがセリフではない。

     本当に行くかどうかは個々人の決心に任されていて、それでドラえもん達は 一回 家に帰るんだけども。

     のび太は部屋の中でパーカーを着るシーンが凄いカッコいいんだよ。


     カメラがそちらにあるとしたら、パーカーを羽織って着る時に、手をカメラの方へ向かってシュッて抜くんだけども、この袖の入れ方だけで のび太 の決意っていうのが伝わってくる。

     「あ、演技で説明してる」って思った。


     あと、しずか は、玄関を出るところで犬を抱きしめる。


     あとジャイアンはね、それまで見た事が無かったんだけど、ジャイアンの家って駄菓子屋さんじゃん。

     その駄菓子屋さんの家を夜にコッソリと抜け出すんだけども、シャッターを本当に下50センチぐらい開けて、そこから抜け出して出る。

     それでちょっと上を見上げて、もう一回 シャッターの中を見つめて、つまり自分の日常だよね、それを見つめて出て行くと。


     あ、あれって八百屋なのかな?

     俺ね、出て行くときにビスケットをポケットにガーッと詰め込んでいるから、「ジャイアンの家って、駄菓子屋だったかな?」と思った。

    ――――――

    ヤムアキ:
     あれは雑貨店です。
     “剛田雑貨店” ですから。

     八百屋はブタゴリラです。

    ――――――

     あぁ、そうか。

     みんな、ヤムアキから修正が入ったよ。

     八百屋はブタゴリラの家だそうです。

     ジャイアンの家は雑貨店なんだ(笑)。


     で、スネ夫が橋の上で迷ってるんだよね。

     いわゆる橋の上で、ずーっと本当に行こうかどうか迷っていて。

     それで迷っているから、スネ夫はやっぱり怖いから下を見ちゃうんだよね。

     それで下を見ると、橋の上だからさ、下が川で、川には月が映っていると。


     月っていうのは、いよいよこれから戦いに行かなきゃいけない場所なんだ。

     それで川だから月が揺れているんだよね。

     それでスネ夫がふっと月が揺れているのを見て、「あぁ、今、俺は月に行くかどうかを、こんなに不安な気持ちだから揺れているんだ」というのに気が付いて、上を見ると月がぱーんと浮いていてっていう。

     この “月の揺れ” っていうのを “スネ夫の気持ち” に重ねる演出がすごい上手かったよね。

    ・・・

     この辺の、黙って動きだけで演技させるっていうのは、劇場版の『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』と同じなんだよね。

     『ヘンダーランド』っていうのは、シリーズ唯一のホラーもので。


     実は僕は『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』が好きは好きなんだけども、ところが作品として名作なのは『ヘンダーランド』が一番だと思ってるんだよ。

     唯一のホラー作品で、とにかく悪役のス・ノーマン・パーというキャラがめちゃくちゃ怖いんだけどもさ。


     それで最後に しんのすけ は、すごい恐怖が待ち受けていると分かっているヘンダーランドに一人で行くんだけどもさ、五歳児が家で準備をして、いよいよヘンダーランドに向かうっていう描写があるんだ。

     それで電車も一人で乗って、電車の切符の買い方を駅員さんに聞いて、ボタンを押して買って、座席に座って。

     それで最後はトラックに乗せてもらってヘンダーランドまで行くんだけども、降りる時に「どうも ありがとうございました」と言って、ちゃんと真面目に挨拶してヘンダーランドに乗り込んでいくと。


     この辺、五歳児が一人前に成長していく所を見せたので、実は『クレヨンしんちゃん』の劇場版って、もうあのヘンダーランドで一回終わってるんだよね。

     あそこまで描いちゃったら、一回終わっちゃって、そのあと ひまわり が生まれてからの劇場版っていうのは、僕の中では いわゆるパート2や続編モノという『Zガンダム』的な役割になってるんだけども。

     まぁ、その中で一時期『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』とか『オトナ帝国』っていう異常な作品が生まれたんだけども。

     ただ、『クレヨンしんちゃん』というお話自体は、もう『ヘンダーランド』で完成しきっているというふうに僕は思ってます。

     
     そんな感じで、今回の『ドラえもん』は他のキャラと絡まずに、一人一人が決意して、一人で行動するスタンスっていうのを見せた、すごい いい作品 だと思います。

    ――――――

    岡田:
     という事で、ドンキーくん、分かったかな?


    ドンキーくん:
     つまり まとめると、世界観は『スパイダーマン:スパイダーバース』がいい。

     それでストーリーは『ドラえもん』がいい。

     それで、ベタな盛り上げは『キャプテン・マーベル』って事だよね?


    岡田:
     そうだね。
     あとは本当に「お好きなのをどうぞ」だよ。

     それでドンキーは結局、どれを見るつもり?


    ドンキー:
     全部!


    岡田:
     おぉ、すげぇな。

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