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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【 知ってるようで意外と知らない『ムーミン』特集 2 】 3つのムーミン」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【 知ってるようで意外と知らない『ムーミン』特集 2 】 3つのムーミン」

2019-05-30 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/05/30
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    今回は、ニコ生ゼミ05月19日(#282)から、ハイライトをお届けいたします。

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     【 知ってるようで意外と知らない『ムーミン』特集 2 】 3つのムーミン


     ええと、今日は3種類のムーミンの話をしようと思ってるんですね。

     まず「トーベ・ヤンソンのムーミン」。

     あと「公式のムーミン」。

     そして「マイムーミン」ですね。この3つの話をしようと思います。


     トーベ・ヤンソンのムーミンというのは何かと言うと。

     これは、一番最初に出た小説なんですけども、『小さなトロールと大きな洪水』という本です。

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     1945年にフィンランドのキヨスク、駅の売店でひっそりと発売されました。


     トーベ・ヤンソンというのは、もともと小説家でもなければ児童文学者でもなくて、画家だったんですね。

     普通に絵を描く画家だったんですけども。

     第2次大戦で、かなりショックを受けて、絵が描けなくなってしまったという、31歳のトーベ・ヤンソンの作品です。

     絵を描けなくなってしまったので、思い切って子供向けの本を書いた。

     その時に描かれた最初期のムーミンがこれです。

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     はい。ムーミントロールとムーミンママですね。

     今とはだいぶ違います。

     鼻が長いんですね。

     これ以外にも、第2次大戦中に政治風刺新聞『GARM(ガルム)』などにトーベが描いたムーミンの絵も残ってるんですけど、言えるのは「とりあえず鼻が長くて、わりと醜い生物」ということなんですね。

     「そんな醜い生物というのが我々の世界の隣に住んでいる」という話です。

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     この『小さなトロールと大きな洪水』にはニョロニョロも出てきます。

     実は初期のニョロニョロはですね足が生えているんですね。

     だから、そんなにムーミン達と変わってる生物でもないんですね。


     ムーミンママは、ハンドバック持ってるからなんとかムーミンママとわかるような感じです。

     この後、『ムーミン谷の彗星』『楽しいムーミン一家』というふうにシリーズが続いて、ようやっとキャラが確立します。

    ・・・

     また、このムーミンシリーズに出てくるキャラクターというのには、トーベ・ヤンソン自身の家族観が投影されてます。

     たとえば、何があっても動じずに、いつも家族の世話をやいているムーミンママというのは、トーベ・ヤンソン自身の母親。

     リトル・ミーというのは…

     …このミーというのは、辛辣で本質を見抜く発言をいつもするんですよ。

     日本のテレビアニメ版だと、わりと乱暴で嫌なキャラクターなんですけど、実は原作のチビのミーというのは、ニヒル系ですごく頭が切れるような存在で、とにかくセリフの一言一言が正鵠を射ているというか、その場で一番正しいことを言うんですね。

     ただ、過激だから他人に聞いてもらえない。

     これはトーベ・ヤンソンにとっての “こうありたかった自分” なんですね。

     トーベ・ヤンソン自身は色々な状況とかに振り回されるんですけど、その中で頑固な自分を保とうとして、自分の意見を持っていた。

     トーベ・ヤンソン自身が一番なりたかった自分というのがチビのミーに投影されています。


     ムーミンパパというのは夢見がちで役に立たないんですけど、これはトーベ・ヤンソン自身の父親が投影されています。

     父親はわりと有名な彫刻家で、国の賞を貰うくらいの人だったんですけど、国の賞を貰ったとしても、彫刻家なんて本当にあんまり仕事がないんですよね。

     おまけに、家族を顧みないことも時々あった人なので、やっぱりそういう自分の父親像がムーミンパパに投影されているというふうに言われています。

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     その中でも、日本で一番人気のあるスナフキン。

     あと、そっくり同じ姿をしたトフスランとビフスランという2人がいるんですけど、その帽子を被ってない方のビフスラン。

     これは、トーベ・ヤンソン自身の彼氏がモデルです。


     スナフキンは、アトス・ヴィルタネンという社会活動家で、後に国会議員になった彼氏がいて、まあ、付き合ってて結婚まで考えて婚約してたんですけど別れちゃいました。

     その人は、いつもボロボロの帽子を被ってて、毎回同じような服を着てて、まあスナフキンのモデルというふうに言われてます。


     ビフスランの方は、ヴィヴィカ・バンドレルというですね舞台監督です。

     この人とトーベ・ヤンソンが付き合ってたから、あの舞台版のムーミンという悪夢のようなムーミンが出来上がっちゃったわけなんですけども。

     この当時のトーベ・ヤンソンは、まあ恋多き女で、いろんな男の人と付き合ってました。

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     この辺りは、この『トーベ・ヤンソン仕事、愛、ムーミン』という本の中に細かく細かく書いてあります。

     有名なんだけど、あまり取り上げられないのが、このおしゃまさんですね。

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     トーベは、90年代に入った辺りくらいだったと思うんですけど、自分自身が同性愛者であることを認めます。

     実は、彼氏とかと付き合ってた頃から、フィンランドでは同性愛というのが犯罪だったんですね。

     このおしゃまさんのモデルになったのが、グラフィックデザイナーのトゥーリッキですね。

     トゥーリッキ・ピエティラという人がいるんですけど、この女性と付き合っていました。


     結局、最後は死ぬまでだったと思うんですけど、50年くらい、このトゥーリッキという女性と付き合っていて。

     クルーヴ・ハルというフィンランドの沖にある島に小屋を建てて、夏の間はそこで2人で暮らしてたんですよ。


     そんなトゥーリッキとのイチャイチャ生活というか、すごく仲がいい2人の生活を撮った8ミリビデオというのが残っていて。

     なぜ残っているのかというと、その8ミリがDVDになってるんですよね。
     (『Haru, The Island of the Solitary ハル、孤独の島』)
     
     僕も持ってて全部見たんですけども。


     もう、最初はね「トゥーリッキとのイチャイチャ生活を撮っただけだから、どうせしょーもないものなんだろうけど、見るしかねえか」と思って見たら、案外カッコいいんですよ、これが(笑)。

     「トーベ・ヤンソンって、映像作家としても才能あったんだ」と。8ミリであんなにカッコいい映画を作れると思ってなくて、自主映画をやってる人はちょっと見た方がいいというか。

     だって、被写体は2人しかいない上に、島で2人だけで暮らしてるから、カメラには必ず1人しか映らないわけですよ。

     それでも、ちゃんと面白い映像とか、カッコいい映像、「島に風が吹いてる」とか「雨が降ってる」とか、もうそれだけなんですけど、案外面白いんですよね。

    ・・・

     このように、トーベ・ヤンソンの中では「ムーミンとは何なのか? ムーミントロールというのはそれぞれ何を象徴しているのか?」っていうのが、わりときちんとあったんですよね。

     だけど、今日の話は、もう一度思い出してください。

     「3つのムーミン」なんですね。


     トーベのムーミンというのは、わりと確立してるんですよ。

     今言ったように、「モデルは誰か?」、「何を言いたいためにこのキャラクターがいるのか?」っていうのが、確立していたんですけど。

     それは、2つ目の “公式のムーミン” とはあまり一致してないんですね。


     公式のムーミンというのは、トーベの遺族たちが作った管理会社 “ムーミンキャラクター社” が認めたムーミンのことです。そこが認めているのが公式のムーミンです。

     そんな公式のムーミン作品として有名なのが、1990年のフィンランドのムーミンの会社が主体になって企画し、日本に外注する形で作った『楽しいムーミン一家』というアニメです。

     アスキーの提供でオンエアされて、あれ、日本のアニメだって思っている人も多いんですけど、フィンランドの会社が他のヨーロッパの会社と合同で作った制作会社が、日本に対して発注を掛けたという形になっています。

     つまり、日本としては下請け会社として作ったわけですね。

     その1990年の2Dのアニメーションから、最近では、去年に作られたCGアニメーションというのが公式のムーミンということになりつつあります。


     たとえば、これは日本のムーミンの公式ページに載っている “ムーミン屋敷” なんですけど。

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     カラーの方は、埼玉県の飯能に今年3月に完成した “ムーミンパーク” にある、ムーミンの実物大の家の写真です。

     正確にはね、これは実物大とは言えないんですけども。

     ここら辺のややこしい話は、ちょっと後半にでもしましょう。

     3階建てでスリムな円筒形の家です。

     アニメでも見慣れた姿ですね。

     これぞムーミン屋敷という感じです。


     僕もこのムーミン屋敷の形が大好きで、ナビスコチップスターの空き箱を利用して、かれこれ15年くらい前に、自分でも作ってみました。

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     こう、ムーミン屋敷になっていて、グルリと裏返すと中が見れるようになってます。

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     材料費は、チップスターの分を入れても400円くらいですね。

     これに関して話すと、もうメチャクチャ長くなるので、後半の限定の方で、細かい部屋ごとの解説とか、どうやって作るのかということを話そうと思いますけども。

     しかし、このムーミン屋敷というのは、あくまで公式設定。

     さっき話したトーベ・ヤンソンのムーミンではなく、公式のムーミンなんですね。

    ・・・

     では、トーベが考えていたムーミン屋敷というのはどういうものなのか?

     これが、『楽しいムーミン一家』の時にトーベが描いたムーミン屋敷の配置図です。

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     部屋数がやたら多くて、トフスランとビフスランの部屋があるし、スノーク達が住んでる部屋もあるし、スニフの部屋もあるし、ムーミンとスナフキンの部屋もある。

     ぶっちゃけ、ムーミン谷にいる人は、ほとんど全員ムーミン屋敷に住んでるんですよ。

     実は、そんな巨大な家だったんですよ。

     あんな細長いスリムな家ではなく。

     丸型は丸型なんですけど、わりと巨大なドーム型の家だというふうに考えてもらえれば正しいのではないでしょうか。


     フィンランドにあるタンペレという街に、トーベ・ヤンソン美術館というのがあるんですけど、そこにトーベ・ヤンソン自身が協力して一緒に作ったドールハウスというのが展示されています。

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     これ、メチャクチャ巨大な、高さが確か3メートル超えてたと思うんですけど、巨大なドールハウスで。

     もう、円筒型という外観にはこだわらず、もうドーム型。円筒は一番上だけにして、すごく巨大なお城みたいな屋敷を考えているんですね。

     つまり、外観よりも「みんなが住める」というコンセプトに忠実に作っている。

     ムーミン谷の住人達、ヘムレンさんにしてもフィリフヨンカにしても、みんなここに住める家というのが、トーベ・ヤンソンのムーミン屋敷なんですよ。


     トーベにとって、ムーミン屋敷というのは「誰でも住める屋敷」のはずだったんですけども。

     でも、公式では違うんですね。

     公式のムーミンでは、あくまでこの細長い、ムーミン一家だけが住んでる家がムーミン屋敷なんです。

     つまり、トーベの家族観と公式の家族観は違うんですね。

     公式の方では一夫一妻制の家族観により近い。

     やっぱり、トーベ・ヤンソン自身が持っている過激な家族観というのは、あんまりこっち側へ反映されていないんです。

     それで作っちゃうと、みんなのムーミンのイメージが狂っちゃうわけなので、こっちの方に統一されているわけです。

     これが公式のムーミンですね。

    ・・・

     じゃあ、3つ目 “マイムーミン” です。

     これは、トーベや公式から離れた、自分自身にとってのムーミンのことなんですけど。

     たとえば、この東京ムービーのアニメをもう一度見てください。

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     スナフキン、ギターを弾いてますよね?

     この「スナフキンがギターを弾いている」っていうのは、日本の初期のアニメだけなんですよ。

     これも、トーベが怒ったことの1つと言われています。


     「スナフキンはギターは弾かない。ハーモニカです」と言ったんですけど、そうなんですよね。

     ギターを弾くスナフキンというのは日本だけで、おまけにスナフキンというのは、原作では、あんまり名言を呟かないんですよ。

     ハーモニカを吹くだけで。

     しかし、スナフキンと言えばギターという人は多いと思います。
     
     実はトーベはこんなふうに思ってたと言っても、「いや違う! 私の中でスナフキンというのは、ギター弾いてカッコいいことを言う人なんだ!」と思ってる人いっぱいいると思うんですね。

     そういう人は、公式でもなければ、トーベのムーミンでもない、マイムーミンというのを持ってる人なんですね。


     僕も同じで、マイムーミンがあるんですよ。

     マイムーミンというのがきっぱりあって。

     僕が一番思い入れがあるのは、子供の頃に買ってもらった『楽しいムーミン一家』と、その次の『ムーミンパパの思い出』なんですよ。


     孤児として孤児院で育てられたムーミンパパは、ハウスを脱走して、川辺で生涯の親友になるフレドリクソンと出逢います。

     彼がその時に作っていたのが “海のオーケストラ号” という船です。

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     海のオーケストラ号というのは、こういう帆船に外輪がついたような船なんですけど。

     フレドリクソンは、この時に動力の概略図を描いています。

     この外輪と後ろのスクリューが歯車で組み合わさっているという設定です。


     この「海のオーケストラ号」という名前は、フレドリクソンのお兄さんが書いた詩集のタイトルが「海のオーケストラ」だったから、この名前がついたんですけども。

     これは海のオーケストラ1世号なんですね。


     この海のオーケストラ号が、『ムーミンパパの思い出』のクライマックスで、王様お抱えの発明士になったフレドリクソンが、王様からの援助を受けて、空を飛ぶ海のオーケストラ2世号を作ります。

     その海のオーケストラ2世号というのがこれです。

     分かりやすいようにジグソーパズルを持って来ました。

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     巨大な翼がついてて、空を飛んで、海の中にも潜れて、気持ちの悪い深海魚とかを照らしてるんですけど。

     これが海のオーケストラ2世号なんですね。

     この海のオーケストラ2世号が、あまりに好きだったので模型を作ってみました。

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     実は、この台座の中には乾電池が入ってて、ライトが光ります。

     原作と同じ場所に乗り込み口があって、こう外れるんですけど、内部構造も作ってあります。

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     これに関しても、話すとメチャクチャ長くなるので、後半で話そうと思います。

     こういうのが、マイムーミンですね。

     自分にとってのムーミンとは何かというと、僕にとっては「こういうものを作りたいと思わせてくれるもの」なんですよ。それが僕にとってのムーミンなんですけども。

    ――――――

    ムーミンパパ:
     それでは、次のコーナーは、ムーミンの中の隠されたエロスについて話をしたいと思います。
     ウンパッパ!


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