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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「DaiGoテレビ出ません宣言、『彼方のアストラ』論争、声優になる方法などなど雑談スペシャル」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「DaiGoテレビ出ません宣言、『彼方のアストラ』論争、声優になる方法などなど雑談スペシャル」

2019-10-12 07:00

    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/10/12

     今日は、2019/09/22配信の岡田斗司夫ゼミ「【雑談スペシャル】“中国製のパチもんレゴ”を作ってみた、最後の『なつぞら』解説などなど」から無料記事全文をお届けします。


    DaiGoにとっての「テレビのメリット」と「宮崎駿の映画」

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    【画像】スタジオから

    タオルくん:おっす、久しぶり! 俺、タオルくん。今日は雑談で、トシオがグダグダ話すそうだよ。よーし、トシオ、行ってみよう!


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    【画像】タオルくん

     はい、どうも岡田斗司夫ゼミです。
     タオルくんの久しぶりの登場なので、声を忘れてしまいまして。アニメ版の『銀河鉄道の夜』のザネリの声で読んでみました。
     「らっこの上着がくるよ」と言う時のザネリなんですけど。もう、40代以上の人しかわからないネタですね(笑)。
     今日は雑談なので、ダラダラ話してみようと思います。なので、最初の話なんかレジュメなしです。

    ・・・

     「メンタリストDaiGoの民放出禁」ということがあって、これが面白かったんですね。
     カジサックの番組で、「テレビで勝手に編集されたことについて、『自分のニコ生で本当のことを話したら出禁にするよ? 赤坂を歩けないようにしてやるぞ! 』と脅されたので、『別に出禁でもいいですよ』と言ったら、本当にテレビ局に出禁になっちゃった」と話していたことが報道されていました。
     これの面白いのは、DaiGoが言ってるのは「テレビ屋さんの上から目線が嫌だ」ということなんです。
     そうなんですよね。テレビ屋さんってね、当たりはすごく腰が低いんですけど、すごい上から目線で、「最終的に編集してやるから」とか、「まあ、どう使うのかは、こちら側の料理次第だ」とか、なんかね、やっぱりそういう目線で見てるんですよね。
     こういう話が報道されると、「DaiGoは最近テレビに出れないから、悔し紛れにそんなことを言ってるんだ」と思う人もいるんですけど、そこは全く逆で。
     たぶん、DaiGoというのは、テレビに出てる有名人の中では、いわゆる音楽系のアーティスト、サザンとかそういうところを除けば、日本で一番稼いでいる芸能人だと思うんですよね。
     だから、「テレビに出る」ということが、もうすでに、なんかこう「貧乏くさくなってきた」というのかな?
     テレビに出る人って、雨上がり決死隊の今回の騒動でもわかる通り、世間のことをずーっと気にしなきゃいけなくて、何かあったら一瞬で干されて、自分で謝ることも出来ない状況に追われちゃうんですけども。
     YouTubeでもニコ生でも何でもいいんですけど、自分のメディアを持っている人というのは、昔でいうと作家みたいなもんですよ。昔の作家というのは、出版社から本が出ているから、自分の食い扶持というのは、自分で得ることが出来たんですよね。YouTubeとかニコ生というのは、それよりも遥かにすごくて。作家はまだ出版社に本を出してもらわなきゃダメなんですけど、「自分の意思で何を話しても大丈夫」っていうところあるじゃないですか。
     それで直に稼げるので、もう、DaiGoはテレビ局が全然怖くないというか、逆に、出てもメリットがないんです。
     この「メリットがない」というのはどういう意味かというと、DaiGoはYouTubeやニコ生で話してる時は、自分で自由に話せるんですよ。好きなことを話せるから、自分が話すことに責任が取れるということなんです。
     いわゆる宮崎駿の映画みたいなもんですね。
     ところが、もし、テレビ局が宮崎駿の映画を好きにカットしたらどうなるのか? 例えば、金曜ロードショーが「60分しか枠がないのに、『もののけ姫』って、何? 2時間以上あるの? じゃあ、うちで適当に60分に切ってオンエアするよ」なんて言ったら、宮崎駿は激怒して「もう金曜ロードショーで俺の作品を流すな!」って言うはずですよね?
     DaiGoが言ってるのはまさにそれなんですよ。「自分が喋ったことの中から、適当に使いやすい部分を切ったり貼ったりして、それで流されたら、とてもやっていけない」ということなんですね。
     「それだと俺の商品価値下がっちゃうじゃん」と。「テレビ局に編集されたことを本当に言ってると思われたら、DaiGoの商品価値が下がるから、テレビには出ない」っていう話なんですね。
     これ、僕みたいに、一応、両方に足を掛けてる人間にとっては、ものすごくわかりやすい話なんですけど。
     メディアを見るだけの人と言うのかな? テレビとかネットとかでしか情報を集めてなかったら、ちょっとそこら辺がわかりにくいんですよね。

    ・・・

     なんでその例として、宮崎駿を出したのかと言うと、昔、宮崎駿のアニメというのは、海外で売る時に勝手にカットされてたんですよね。
     『風の谷のナウシカ』のVHSパッケージなんて、まあ重要な部分が何箇所もカットされた挙げ句、全体を5%の早回しにされて発売されてたんですよ。
     それを知った宮崎駿は……「知った」というか、最初は知らなかったんですよ。宮崎駿自身は、海外で発売されたビデオパッケージというのを貰ってなかったから、知らなかったんですけど。

     昔、僕の知り合いにトーレン・スミスっていう外人がいて。日本のアニメとかマンガを、アメリカに紹介してたやつだったんですけど。
     そいつは、「俺は『風の谷のナウシカ』がすごく好きなのに、英語版の編集があまりにも酷い!」ということを、一生懸命、鈴木敏夫に説明してたんですよね。
     だけど、鈴木さんは、それを宮崎駿に聞かれると「もう海外に売るのはやめる!」と言われるので、ずーっと伏せてたんです。
     僕はそこら辺の事情を知らずに、アニメージュグランプリの時にたまたま呼ばれて行った時、会場にいた宮崎さんに挨拶したついでに「宮崎さん、海外版、酷いことになってますよ?」と、トーレン・スミスから聞いた話をそのまましたんです。
     そしたら、宮崎駿はその場で立ち上がって、鈴木敏夫に詰め寄って怒鳴りだして「俺はもう帰るっ!」っていう事件があって(笑)。
     俺、その後で、ものすごい鈴木さんに怒られたんですけれど。「言わんとすることはわかるが、場所をわきまえろ!」と言われて。いやあ、その通りだったんですけど。
     でも、当時の僕は、宮崎駿の性格を知らなかったから、まさか、あの場で怒鳴りだして帰るとは思わなかったんです(笑)。

     まあまあ、そういうことがあるので、クリエイターというのは、自分の発言がカットされたり、順番を変えられたりすると、全く意味が違ってくるということに、すごく敏感なんですね。
     たぶん、DaiGoも「メンタリストDaiGo」ということでテレビに出始めの時は、「俺はテレビに出ている人間で、小道具の一部みたいなもんだから、編集されて勝手に発言を使われるのもしょうがない」という諦めが絶対にあったと思うんですよ。
     ところが、YouTubeやニコ生で「自分の発言が全部そのまま掲載されて作品になる」という快感を知ってしまったので、快感というか作品性がわかってしまったので、もうたぶん、テレビに出ることがすごく難しくなっているだろうなと思います。
     だから、今、「テレビに出てる人」というのは、逆に言えば「テレビにしか出られない人」か、もしくは「そういうテレビの特性を知った上で、それでも自分にはメリットがあると思っている人」だと思うんです。
     そこら辺のギャップが面白かったのが、このメンタリストDaiGoの出禁事件ですね。

     レジュメがないから、ちょっとグダグダした説明になっちゃってごめんなさい。

    『キングオブコント』どぶろっく優勝とゾフィーの腹話術師ネタ

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    【画像】スタジオから

     あと、次。つい昨日の『キングオブコント』の優勝からの話なんですけど。
     みんな大丈夫? こういうのを話すと「ネタバレ」って言われるんだけど。でも、もう『キングオブコント』の結果はニュースにもなってるから、いいよね?
     『キングオブコント』で、どぶろっくという、下ネタを歌う人たちが……もう本当にコントをやれるとは僕も思わなかったんですけど。それが優勝したんですね。
     やっぱり、ずーっと下ネタだけで勝負している芸人って、なんだかんだ言っても下に見られるわけなんですね。
     お笑いの中では、たぶん、漫才というのが中央にあるとしたら、コントって、それよりちょっと上のイメージがあって、その代わり、あんまりお客さんが入らない。でも熱狂的なファンがつく。それに対して下ネタの歌ネタとかリズムネタというのは、漫才師よりうんと下の地位にいる、みたいな感じなんですけど。
     ところが、そのどぶろっくが、そんな歌ネタで、しかも、いつもの下ネタの歌ネタのまんまをコント仕立てにして、『キングオブコント』で優勝するという夢のような事件が起きて。
     僕は、なんか、思わず目頭が熱くなってしまって。「『なつぞら』でも泣かなかった俺が、どぶろっくの優勝で泣いてるわ」って思ったんですけど(笑)。
     まあ、どぶろっくの話はここまでなんですけど。
     『キングオブコント』の中で、優勝は出来なかったんですけど、ゾフィーというコンビがいて、腹話術師のネタをやってたんですよ。
     これ、メチャメチャ面白いので、皆さん、『キングオブコント』をYouTubeとかで探す時は、ぜひゾフィーの腹話術ネタを見てください。
     あの腹話術ネタを見たらね、もう、俺がやってるタオルくんとかが、もう……なんか今日、恥ずかしくてやりにくかったんですよ。ゾフィーの腹話術ネタの完成度があまりにも高過ぎて。人形がこっちを向く時の目線とかそういうのだけで1つの世界を作っているのがすごくて。
     俺、「うわっ! こっ恥ずかしい!」と思いながら、今日のやつをやったわけです。

     というわけで、レジュメなしの雑談はこんなもんです。
     じゃあ、行きましょうか。

    『なつぞら』の「地味だけどとてつもないシーン」と「なつだけが天才?」

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    【画像】スタジオから

     今週の『なつぞら』から行きましょう。もうね、『なつぞら』も、あと1週間で終わりですから。
     今週は、妹の行方不明の真相がわかる話だったり、離婚の話とかで、アニメ制作にはほとんど進展がなかったんですよ。
     というか、先週の『大草原の少女そら』のオープニングがテレビで流れるところから始まって、それが『なつぞら』のオープニングのアニメにそのまま繫がるというところで、このドラマの中でのアニメの役割は、もう終わっているんですよね。
     事実上、「はい、これでアニメの話は終わりね」って宣言されたようなもので、もうあとここからは「アニメーション制作の現場というのは残業が多い」とか、「家に帰れない」とか、「娘の面倒が見れない」とか、「すごく大変な仕事なんだけど、女性の自立のためには~」みたいなことを、家族の応援もあってやり遂げましたという雰囲気で終わりそうなんですよね。

     そんな中、次週予告で大泉洋が出てきました。
    (パネルを見せる)

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    【画像】大泉洋 ©NHK

     ここに「ミルコス」って書いてあるので。まあ、この服からしてミルコスの社長役なんだと思います。
     昭和40年代の設定だから、実は、ネクタイはもっとワイドでなきゃいけないし。あと、こんなに襟が詰まっているスーツを着ているはずがなく、ラベルがもっと広い、大橋巨泉みたいにな……って、そんな例えがわかる人はいないよな。
     要するに、もっとスーツがダサくなきゃダメなんですけど。偉い人のスーツはダサかった時代なんですよね。
     視聴率が悪くて打ち切り騒動という展開にも、もうあと1週間もないから、ならない感じなんですよね。なので、打ち上げパーティで「これからも良いアニメを作ってください」みたいなことを発言する程度の役回りかな?
     「社内でも打ち切りの声があったけど、私にも開拓者魂が~!」という、例の開拓者魂押しが1回くらいあるかもというのが、僕のささやかな希望でもあります。
     そんな、アニメ的には不作の今週だったんですけど。
     ただね、土曜日の「大樹じいちゃんが、牛小屋を見ている時に、つい、なつの昔の姿を思い出す」というところは、なんかこうグッと来ました。
     グッと来たたんですけど……どぶろっくの優勝の方が、泣けてしまった(笑)。

    ・・・

     でも、今週紹介したい、アニメ的な注目ポイントも、2箇所、発見しました。

     1つが『大草原の少女ソラ』のエンディングですね。
    (パネルを見せる)

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    【画像】『ソラ』エンティング ©NHK

     ソラと友達のレイが、夕日をバックに牛と一緒に歩いて行くシーンなんですけど。これ、すごかったんですよ。というのも、アニメではなかなか見かけない構図で。

     なぜかというと、それもそのはず、「夕日が当たって影が伸びている」んですよ。そして、この影が、3人とも……というか「2人と1匹」なんですけど。歩いてる姿とシンクロして、影が動いているんですね。これが、とてつもなく難しい。
     おまけに、よく見てください。これ、下り斜面なんですよ。夕日の下り斜面だから、影がやや長くなっているんですよ。この「影がやや長くなっている中を、牛という4足動物と人間が、歩調がちょっとバラバラになりながら歩いているところに、影まで伸びてる」という。
     作画的に言うと、かなり気が狂いそうになるというか、地味なんですよね。地味だけど、すごいシーンだと思います。

     坂にしているのは、足の着地点を隠すためです。動物にしても人間にしても、足の着地点まで描くと、歩きの絵を描くのがさらに難しくなるので、描いてないんですね。
     テレビアニメのエンディングという設定だから、これくらいの感じがいいんですよ。
     『ハイジ』でも、よくよく見たら、オープニングとかで飛ぶように歩いているシーンでは足元を草で隠しているんですけど、足の着地点を隠すと、歩いているとか走っているとかの動作がすごいリアルに見えるからなんですね。着地点まで描きながら、地面の上を滑ってない感じに見せるというのは、なかなか難しいので。
     そういう、地味だけど、とてつもないシーンが今週ありました。

    ・・・

     あとは、目玉焼きのシーンですね。
     なつと宮崎駿の役の人(『なつぞら』の神地航也のこと)は、スタジオで何個も卵を焼いて、アニメの中に出て来る目玉焼きのシーンの実験をしていました。
    (パネルを見せる)

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    【画像】目玉焼きシーン ©NHK

     こういう、目玉焼きを焼いて、周りの白身が白く固まっていくところをアニメでやろうとしているわけですね。
     卵がフライパンに落ちる時の動きとか、加熱されていくことで白身が固まって、黄色い黄身の艶がちょっとずつ変わっていく様子を、なんとか作画表現しようとしているんですけど。
     これが、その時に外注さんからなつに渡された原画です。
    (パネルを見せる)

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    【画像】目玉焼き原画 ©NHK

     外注さんが描いた原画を見て、なつが「ちょっとやり直しをしたい」と。……というか、もともと旦那の高畑勲役(『なつぞら』の坂場一久のこと)が「これ、もっと美味しそうに出来ないのか?」って言い出したんですけど。
     何が描いてあるのかというと、ここに棒が描いてあって、ここに線が引っ張ってありますね? 「end」って書いてあって、ここに矢印がある。
     これ、どういう意味かというと、「この卵はこの速度で落ちていく」ということなんです。1枚目、2枚目、3枚目、つまり加速しながら落ちていくわけですね。で、最後はフライパンに当たるから減速するという、これ作画ゲージがついているわけです。
     これだけだったら「卵の中身が殻から落ちて、加速して、フライパンに落ち、落ちる直前に減速する」という、まあちょっとアニメっぽい動きの指示なわけですね。
     これって、なかなか上手くいかなくて、ドラマの中でも苦労してるんですけど。
     こういう卵が加熱されていくシーンの見本というのが『天空の城ラピュタ』の中で、パズーがシータのために朝ごはんを作るシーンなんですね。
    (パネルを見せる)

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    【画像】『ラピュタ』目玉焼き © 1986 Studio Ghibli

     これが、『なつぞら』の卵を焼く作画の見本になるようなシーンなんですよ。
     「ドーラ一家がやってきて時間がないので、この目玉焼きはその場で食べずに、パンに乗せてカバンに入れて持って行った」という場面なんですけど。
     やっぱり、フライパンがちょっと斜めになっていて、油が流れ出して、すでに白身の外側が焦げていて、黄身が少し固まり始めているという、目玉焼きの一番美味しい状態ですね。
     これラピュタのですね、中の卵を焼いている美味しいシーンなんですけども。

     それを超えた「これが完成形です」っていうゴールが、『ハウルの動く城』の卵を焼くシーンの作画ですね。
    (パネルを見せる)

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    【画像】『ハウル』目玉焼き © 2004 Studio Ghibli・NDDMT

     まず、1コマ目では、卵が落下しています。殻が割れて、白身は透明のまま下に落ちています。下には分厚いベーコンからフライパンに油がいっぱい流れてきて、そんな煮えたぎっている油の中に卵が落ちる。
     次に、2コマ目では、油の中で白身が沸き立って加熱されています。
     そして、3コマ目では、あっという間に透明の部分がなくなって、白くなっていくという作画をやっています。

     でも、実際、テレビアニメでは、ここまで緻密な作画とか、特にこういった色指定とかは出来ないんですよね。
     『アルプスの少女ハイジ』の時も、当時のテレビアニメだから、色数が少なかったはずなんです。ヘタしたら最大60色くらいでやらなきゃいけなかったのを特注で色をいっぱい作ってやってたと思うんですけど。それでも、こんなことまでやってたら、本当に200色を超えちゃうんですよね。
     こんなに細かい作画や色指定は出来ないんです。

     なので、結局、『大草原の少女ソラ』の中では、「匂いを嗅ぐシーンを挿入することで、見ている人間の記憶に頼る」ということにしました。
     つまり、「美味しそうに卵を描く」というよりは、「それにリアクションしている人間のカットを入れることで、見ている人自身の記憶を呼び覚まして、美味しそうに見せる」という方法で作っていました。

     でも、もうこれは、完全にイッキュウさん、高畑勲のミスなんですよ。「そんなのは絵コンテ段階でやっとけ!」なんですよ。
     絵コンテ段階で卵を美味しそうに見せなきゃいけないのに、外注から原画が上がって来てから、作画監督に「これ、もっと美味しく描けませんか?」なんて言う演出がいたら、俺がプロデューサーだったら怒鳴ってますよ。「それは演出の仕事だろ!」って。
     絵というのはそういうもんじゃねえだろう。美味しそうに見せるというのは演出の仕事。

     そしたら、美味しそうに見せる方法をなつが思いつくという、とんでもない展開になってきて。相変わらず『なつぞら』は「なつのみが天才で、残りはボンクラ」という設定で、キツいなと思うんですけど(笑)。
     本当は、コンテ上で指示すべきなんですよ。「こういうふうに美味しそうに見せる」というのが演出の仕事ですから。
     俺、「たぶん、マコプロで一番無能なのはイッキュウさんじゃないかな?」って思ってるんですけど。

    ・・・

     でも、プロデューサーとしてのマコさんも、なかなか弱いというか、ダメなんですよね。
     この卵のシーンなんですけど、「外注さんから上がって来た作画をそこまで直せない」と、一旦は言うんですけど。結局はマコさんも、なつの熱意に負けて、そこで「仕方ないわね」と従ってしまってるんです。
     言い負けるのは、プロデューサーとして、制作として、もう大失敗なんですよ。

     納得するのはいいんです。だけど、その時にトレードするのが制作の仕事なんですよね。アニメーションにおいては、スケジュールとスタッフの容量というのが決まってるんだから。
     「スタッフの容量」というのは、テーブルの面積だと思ってください。大きいものを置いたら、それだけテーブルが狭くなるから、他のものを横にどけなきゃいけないんですよ。
     それと同じで、1つのものに作画の手間をかけたら、他の部分は作画の手間を抜かなきゃいけない。このトレードオフというのが、アニメーション制作の本質なんですね。
     なので、1箇所直すためには、他に何箇所か手を抜かなきゃいけないんですよ。

     今回は、卵の作画と、それに続く匂いを嗅ぐ作画を、もう外注に発注済みなのに、追加で入れるということをしちゃったんだから、「組織的に、他のどの部分で手を抜くのか?」ということを、マコさんはあの瞬間に考えるべきなんですね。
     「確かに奥原なつが言うように、この卵の作画は、この話数ではすごく大事なシーンだ。それに私は気が付かなかった。……じゃあ、この卵の作画を面白くして美味しそうに見せるために、他のシーンで、もともと動きの有ったところをBGオンリーにして、作画の負担を減らして、仕上げにも全く回さずに背景だけを見せることにしよう」と。
     そういうふうに考えるのが、本当は制作の仕事なんですけど。なんかね、それをやってくれないんですよね。

     本当は、マコさんとかイッキュウさんが、例えば「卵のシーンの手間が増えるんだったら、その代わりに、乳搾りのシーンで、絞るシーンの作画をなしにしてロングで見せるだけにする」とか、そういう妥協点を探すべきなのに。なんか「なつの熱意に押し切られちゃった」というふうに見せちゃう。
     ここら辺が、このドラマの中でのアニメの見せ方の限界かなと思うんですよ。
     ここで、なつがいくら頑張って作画しても、もうスケジュールはいっぱいいっぱいなんだから。
     「この卵の細かい作画とか、匂い嗅ぐシーンをインサートで入れたとして、じゃあ、本当にそれを次の動画の外注さんが仕上げてくれるのか?」とか。

     セルを塗る外注さんなんていうのは東北のおばさんなんですよ。当時は本当に、年末とかには東北のおばさんとか主婦とかにセル塗りの外注を出してたんですけど。「冬休みが始まると、子供達はずっと家にいるから、セルの仕上がりの能率が落ちた」と言われてるんですね。特に東北の方は、お正月の用意が大変だから、急にセルを上げてくれなくなったりしたんです。
     『なつぞら』の中でのアニメーションは10月放映スタートだから、なかなか危機的な状況なんですよ。
     年を越す辺りっていうのは、本当に「セルが仕上がらない!」って。「寒くてアニメカラーもなかなか乾かない!」とか、逆に「乾燥しているから乾き過ぎる!」とか、いろんな天候とかも重なって。あと「雪が降ったからセルが列車便で届かない!」とか、いろんな状況があるので。

     いや、「朝ドラでそこまでやれ!」とか、そんなバカみたいにマニアックなことを言ってもしょうがないんですけど。
     でも、「1つのことをやったら、その結果、玉突き状態におかしくなっていく」というのがアニメーション制作の本質なので、1つのシーンを頑張ることにしたならば、あそこでマコさんが頭の中で考えるのは「じゃあ、どのように仕上げさんを説得して、これを撮影の方に回すのか?」ってことなんです。
     ここら辺が抜けちゃってるのが、やっぱり、ちょっと残念かな、と。

     まあ、ここら辺は朝ドラでは描けない部分なので、そのうち映画化とかされたり、海外で連続ドラマになった時、NetflixとかAmazonプライムのオリジナルとかで、日本のアニメ業界を扱う時には、是非ともそこをやって欲しいな、と。
     氷川竜介さんとかを監修に入れて、ゴリゴリにやって欲しいなと思います。

     いよいよ最終週ですね。アニメのネタは、さっきも話した通り、「完成してお疲れ様パーティ」くらいしか落とし所はないと思いますけど、最後まで『なつぞら』を応援していますので、楽しみにしています。
     スタッフの皆様、いろいろ言いましたけども、頑張ってください(笑)。

    お便り紹介「アニメや映画の好きな食べ物」と「SF警察とSFレスキュー」

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    【画像】スタジオから

     俺、もう20分くらい話したよな。ヤベえな。
     さて、今回は雑談ですので、お便りがいっぱい来ています。無料では5つ採用したので、それについて話したいと思います。
     まず最初は、ペンネームシャリ炙るさん。

    (パネルを見せる)

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    【画像】アニメや映画の食べ物

    岡田さん! もうすぐ秋です! 秋といえば食欲の秋!
    そこで質問です! 岡田さんがどうしても食べてみたいアニメや映画に登場する食べ物はなんですか?
    私は『ゴッドファーザーⅢ』に出て来るカンノーリと『ルパン三世』のすき焼きが食べてみたいです。


     「『ゴッドファーザー』に出て来るカンノーリ」って書いてあったけど、カンノーリ自体は映画の中には登場していないはずですね。カンノーリっていうセリフがあって、箱しか登場してない。
     『ルパン三世』のすき焼きは、すごくよくわかります。

     僕、アニメとか映画に出てきたものでいえば、気になったのが『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』で、ヨーダが初登場する時、ルーク・スカイウォーカーのXウィングが惑星ダゴバに不時着して、非常用のキットだけを持って出てくるんですよ。これは戦闘機には必ずついてるやつで、現地の通貨とか、サバイバルナイフとか、あとは基本的な薬とか、そういうものが入っている箱を持って出て行くんですけども。
     その中に、なんかカロリーメイトみたいなものが入っているんですね。それをヨーダが取って、「うん?」って言って、パクっと食べる真似するんですけども。あれがやたらと可愛くて、あのヨーダが食べようとしているカロリーメイト食べたいというのと。
     あと、ヨーダの家にルーク・スカイウォーカーが呼ばれた時、ヨーダが作っている煮込みが、なんかすごいグラーシュシチューみたいなイメージで美味そうに見えたので、あれが食べたいと思いました。

     あと、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』というスピルバーグの映画があるんですけど、それのクライマックス辺りで、詐欺師役のディカプリオがトム・ハンクス演じる国際警察の刑事に捕まってしまって、いよいよアメリカに護送されるという時に、トム・ハンクスがですね、エクレアを食べているんですね。
     ディカプリオが「そのエクレア、美味そうだからくれ」って言うと、トム・ハンクスは「やらない!」って言うんですよ。「エクレアをくれたら、俺の秘密を喋る」って言われて、トム・ハンクスがすごい悩むシーンがあるんですけど。
     あれを見た時に、映画館の中で、ものすごくエクレアが食べたかったんですけど。

     今、コメント欄で「『もののけ姫』の味噌汁」って書いてあって。あの味噌汁も美味そうですよね。ジコ坊の煮込みですね。

     あとは、僕が昔から小学校の頃から食べたかったのが、『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』に出てくる、バイラス星の宇宙船に連れ去られた少年2人が「サンドウィッチをくれ」と言ったら、船の自動装置が調理して出してくれたサンドウィッチ。
    (パネルを見せる)

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    【画像】自動装置のサンドウィッチ ©1968 角川映画

     この8角形にカットしたサンドウィッチが美味しそうで、「これが食べたい!」と思ったのと。
     あとは、これの次の『ガメラ対大悪獣ギロン』の時に、地球の反対側を公転しているギロン星に行ったら、そこのお姉さんが出してくれるドーナツが、やたら美味そうだったんですね。
     バーベラとフローベラでしたっけ? 「バーベラ、花のように美しいという意味よ」とか言ってたと思うんですけど。いや、すみません、50年前に聞いたセリフだから、うろ覚えなんですけど(笑)。
     そのドーナツが美味しそうだったので、印象に残ってます。

     あとはもう、本当に、このシャリ炙るさんが言う通り『ルパン三世 死の翼アルバトロス』のすき焼きも美味しそうですよね。
     でも、すき焼きだったら、『異人たちとの夏』という大林宣彦の映画があって、その中で浅草の今半別館というすき焼きの老舗みたいなところに行って食べるすき焼き。
     まあ、「食べる」というか、食べさせようとするんですね。もう死んじゃった両親になぜか会えてしまって、最後にその両親を浅草の今半に連れて行って、「親孝行が全然出来なかったから、食べてくれ」って言うんですけど、2人は「もう行かなきゃいけない」と言って消えていくシーンがあるんですけどね。
     なんかね、すごい頑張って、やっと稼げる人間になった。だから、やっと親孝行みたいなことが出来る。でも、親孝行なんて恥ずかしくて言えないから、すき焼き食いたいんだって自分が言って、今半に行って「さあ煮えてきたから食ってくれ」と言ったら、一口も箸をつけてくれずに両親が消えていくというシーンが、すごく切なくて。
     なんかもう、両親は微笑むだけなんですけど、「うわーっ、いいなあ!」と思って。
     さっそく今半別館に行って、同じものを注文して食べてみたんですけど。なんかね、もう、『異人たちとの夏』が撮られた時代のすき焼きと今の今半のすき焼きは違ってて、ちょっと残念でした。

     というふうに、食い物の話はナンボでも出来ます(笑)。

     次です。ペンネームとんかつさんからのお便りです。

    (パネルを見せる)

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    【画像】SF警察

    私は今期『彼方のアストラ』というアニメを見ています。
    伏線がほつれたコードが一気に解けるような後半のストーリ展開が好きです。
    しかしAmazon Primeで、SF的に矛盾を感じる方からの厳しい星1つレビューがあがってました。
    その議論の中に「SF警察」なる単語が出てきました。
    「SFという定義にこだわりがあり、その定義に合わない作品を批判する人々」を指していると思います。
    もしかしたら、岡田さんもSF警察の方、もしくは関連組織の方なのかもしれない……。
    聞いてみようと思い、メールさせていただきました。
    岡田さんはSF警察なのでしょうか? 宇宙や未来を描いた作品を批判してしまうのはなぜだと思いますか?


     はい、『彼方のアストラ』は、原作マンガはKindleで全部読んだんですけど、面白かったし、特にSFとしての矛盾は、僕は感じなかったんですよね。
     「SFとしての矛盾を感じない」というのは、「科学的に嘘がない」とかそういう意味じゃなくて、「世界観と設定のバランスがいい」という意味なんですよ。
     『仮面ライダー』という作品に対して「SF的におかしい」と誰もツッコまないのはなぜかと言うと、所詮はバイクに乗っているバッタの改造人間が飛び蹴りで敵を倒す話だからなんですよ。そういう世界観があるので、例えば「あれに出てくる蜘蛛男は、ちょっと蜘蛛としては設定がおかしい」と言ってもしょうがないんですよね。
     つまり、世界観のレベルと設定のバランスの問題なんですね。
     で、SF警察というのは、このバランスを全く考慮せずにツッコむ人のことだと思うんですけど。
     自分が好きな作品に対して、「SFとしてダメだ」とか、「科学的に正しくない」っていうのは、言われると、やっぱりカチンとくる人がいっぱいいるんですよ。
     恋愛ドラマをやってる時に、「この男のセリフは、女のセリフは心理学的に正しくない」なんて言う人はいませんよね? あんまり怒る人いない。それはなぜかと言うと、もし「あのセリフは心理学的におかしい」と言う人がいても、「それはツッコミだ」とみんな解釈することが出来るからなんです。遊びとして理解するんです。
     だから、仮にそういうツッコミをした人がいても、「ああ、そういう見方をする人がいるんだ」というくらいで、周りも笑う態勢になっているんです。
     しかし、アニメとかマンガというのは、見ている人も、ツッコむ人も、なんか、まだまだ心が純粋な人が多いんですよ。……まあ、遠回しに言ってますけど、心が子供の人が多いんですよね。
     なので、ツッコミとして楽しめないんですね。だから、SF警察みたいに言われる人も、ムキになって言うし、遊びとして言えない。そして、それを否定する人も、ムキになって否定してしまうんですね。

     僕みたいに年を取っちゃったら、「ああ、そうなの? SFとして矛盾あるの? じゃあ、その矛盾を説明出来る新たな理屈を考えよう」みたいな方に発想が行くんですよ。
     例えば、『ゴッドマーズ』っていうマンガがアニメになった時、『六神合体ゴッドマーズ』っていうタイトルになったんですよ。「6体のロボットが合体する」から「六神合体」なんですけど。これ、合体じゃなくて、デカいロボットのお腹とか胸が開いて、その中に小さいロボットが入っていくだけなんですね(笑)。
     だから、「これ何だよ!? これじゃあ合体じゃなくて、ただ単に箱に収納してるだけじゃん! マトリョーシカじゃん! なんでこれが強いんだよ!?」って文句を言うことも出来るんですけど。
     でも、「いや、あれは箱ではなく、フレーム構造のようなもので、あの箱自体に駆動系が入っているんだ!」という屁理屈を考え出すヤツがいて、それをコミケで売るヤツまでいるわけですよね(笑)。
     本来、SF警察というのは、そういうのを見つけるべきなんですよね。「『六神合体ゴッドマーズ』はSF的にダメだと思ってたんだけど、逆にここが良い」というふうに言える理屈を見つける、と。

     ただ、そんなことを言う僕も、『ガンダム THE ORIGIN』に対しては、そうは言えないのは、「でも、あの世界観の中で、月で6分の1重力でないのは、あまりに無茶だから」なんですよ(笑)。
     それはもう、『仮面ライダー』の中での設定が狂っているのと同じということで、ツッコむんですけども。
     まあ、タケコプターもそうですよね。
     藤子・F・不二雄さんというのは、そういうことがすごく上手くて。
     タケコプターも一番最初はプロペラで飛んでるみたいに書かれてたんですけど、子供から質問が来たら、すぐに「あれは実は無重力で飛んでいて、頭につけることによって、繋がっている部分全体が1つの力場に包まれて、それで浮遊しているんだ。頭の上で回っているのは何かというと、この装置が安全に作動しているというサイン、いわゆるパイロットモニターランプみたいなもので、上でクルクル回っているシンボルに過ぎないんだ」って、ちゃんとF・不二雄先生は説明してて。
     こういうふうに話すことがSF警察……じゃないですね。「SFレスキュー」と呼ぶべきでしょうか。「SF的な設定を助けてくれる」というSFレスキューですね。
     SF警察の裏には、SFレスキューがいるんですけど。議論が白熱して両者ムキになってくると、SF警察は出てくるんですけど、SFレスキューは遠くから見てるだけになっちゃうんですね。「『彼方のアストラ』、揉めてますねえ」と(笑)。
     僕の知り合いも、みんなFacebookで書いてますよ。「『彼方のアストラ』揉めてるけど、程度の低いSF論争してやがるな」とか。
     「SFレスキューの人、行ってあげてよ!」と思うんですけど、なかなか行ってくれないんですよね(笑)。

    ・・・

     じゃあ、ちょっとコーヒーの休憩をします。
     最近ね、コーヒーブレイクを入れるようになってから、ニコ生がすごい楽になったんですよね。
     今日はもう、本当に雑談ですから。
     SFレスキューという組織を本当に誰かが作ってくれて、どこか揉めているところがあったら、「我々はSFレスキューです! 両者、ちょっと落ち着いてください! 『彼方のアストラ』にはこういうことも考えられます!」とか言って、ちょっと混ぜてくれりゃいいんですけどね。

    お便り紹介「声優に必要なもの」と「ゼミの正しい見方」

    nico_190922_04207.jpg
    【画像】スタジオから

     よっしゃ! じゃあ、次に行こうか。
     ハンドルネームぽんぬきさん、25歳です。

    (パネルを見せる)

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    【画像】声優と舞台経験

    私は声優を目指し現在養成所に通っています。よく役者仲間から「舞台を経験した方がいい」と薦められます。
    確かに舞台は良い経験になると思いますが、どうも踏ん切りがつきません。それはチケットノルマです!!
    何人かの友人から「舞台やるから見に来てね!」とよく誘われるのですが、チケット料金が高い!! 大体3000円~5000円!!
    友人の付き合いも兼ねて買っているのですが、ぶっちゃけ9割つまらない!! 下手! 金返せー!!
    一人暮らしで余裕がないので、何度か断ったら、付き合いが無くなった友人もいます。
    自分は友人にこんな思いさせるのなら、やりたくありません。
    けれども、「演技力を向上させるにはやはり舞台をやるのが一番手っ取り早いなぁ……」と思います。
    舞台以外で演技力を上げる方法は何かありますでしょうか?
    岡田さん、よろしくお願い致します。


     えーっ、これに答えるのか。
     いや、「答えるのか」って、自分で選んだんだから、答えるしかないんですけども(笑)。
     正直に答えていいのかな?

     うーんとね、まず、前から言ってるんですけど、声優になるために必要なのはコネであって、養成所で伸ばすのは能力でなくて有力者へのコネ、コネクションなんですね。
     これはどういう意味かというと、「友達の機嫌を取っても無駄だし、先輩の機嫌を取っても無駄」ということなんですよ。周りの友達と仲良くした方が有利かというと、全然そういうことにはならない。自分達よりもちょっと威張っている先輩のコネではなく、既に声優になっている先輩と仲良くしても、やっぱりダメなんですね。
     音響監督に繋がる人に可愛がられなかったら、もう、役なんか回ってこない世界。だって、1人の声優の裏には、1万人くらいの声優になりたい有象無象がガーッといるわけですよ。
     おまけに、最初に出演する時は、みんな1言か2言のセリフなんだから、演技力もクソもないんですよね。
     というか「演技力なんて、あって当たり前」なんですよ。声優学校に行って、養成所まで行ったんだから、全員、演技力はある。そこまでの演技力はあって当たり前。あとはプラス何かの世界なんです。
     あと、舞台をやると舞台貧乏に落ちちゃうこともあるんですよ。

     ただ、青二塾とか、三ツ矢雄二がやってるような声優劇団ならば、そりゃもう舞台に出るべきですよね。三ツ矢雄二が座長をやってる劇団の中で、三ツ矢雄二から良く思われたら、三ツ矢雄二の引っ張りで舞台に出れるわけだし、アニメの声優も回ってくるから。
     そういう、声優養成所の主催者自身とか、音響さん周りの人達がやっている舞台だったら、そりゃ、コネクションとしては出るべきだと思うんですけど。

     「じゃあ、どうやって演技上手くするのか?」と。
     さっき「声優として出ていく時には演技なんて上手いのが当たり前だ」と言ったんですけど。『少年ジャンプ』だって初連載のマンガ家はみんなマンガが下手じゃないですか。つまり、絵の上手さではなく、何かを感じるからこそ、そいつを連載に起用するわけですよね?
     声優も同じで、「演技が上手いから役がもらえる」というのは、それはもうベテラン声優だけなんですよ。渋い役は絶対に演技が必要なんですけど、新人として出て行く時は、サムシングの方が大事なんです。それでも、そういったサムシングというのは、さっきも言ったように、若手の時はコネクションくらいしかないんですけどね。
     演技自体の上達法としては……たぶん、あんまりこれを言う人はいないと思うし、否定されてるのかもわからないんですけど、「自分が好きな上手い声優さんの口真似」が一番良いですよ。
     絵は真似したら上手くなるし、アニメも真似したら上手くなるし、映画だって真似したら上手くなるんですよ。小説だって真似したら上手くなる。世の中のクリエイティブなことというのは、基本、真似することでどんどん上手くなっていくので、上手い声優さんの声の演技というのをテレビで聞いたら、そのまんま、それを何回も口真似して声を出すくらいが、一番良い訓練法です。
     これは、舞台に出るよりよっぽど手っ取り早いし、逆にいえば、これくらいしかやることがないのが声優養成所のキツさなんですよね。
     演技というのは、ある程度、コストゼロで上手くなれちゃうものだから、あとはもう、膨大にある暇な時間と、自分の中の焦る心というのを、何か結果に結びつけようとして、やっぱりみんな舞台をやっちゃうわけなんですけど。

     まあ、舞台だの、チケット売りだの、人間はとりあえず何か努力しないと不安になっちゃう生き物なんですよね。
     だから、舞台に出るんだったら面白い劇団、チケット売りで苦労しないような劇団にしか参加しないというのが僕のお勧めなんですよ。
     そういう面白い、チケットがすぐに売り切れちゃうような劇団に参加できないんだとしたら、「自分には向いてない世界だ」と割り切って、まあ、趣味として楽しむ。
     諦めるという言い方をあんまりしちゃうのはナンですけど、ぶっちゃけで話すと、そういうことだと思います。

     あんまり意に沿うような答えは……もう本当にね、クリエイティブなジャンルは、適当な夢みたいなことを言って、それを引き伸ばしてお金取ろうという大人があまりにも多いから、ちょっとキツい目のことを言わせていただきました。
     すみません。

    「平野綾:いや、実力でしょう」(コメント)

     だから、なった人間は実力って言うんですよ。
     なってからは実力なんですよ。でも、なるまでは、もう本当に偶然なんですよ。一旦、声優になったら、始めてそこで演技の力が問われるわけで、なるまでは偶然なんですよね(笑)。

     じゃあ、次に行きましょう。
     ハンドルネームニューおでんさんからのお便りです。

    (パネルを見せる)

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    【画像】ゼミの正しい見方

    わたしは学がないこと、教養がないことがコンプレックスです。
    岡田先生のチャンネルのような、マニアックな話題は大好きなのですが、聞いているそばから忘れてしまい、知識として残りません。
    質問①
    岡田先生は、どのように得た情報をご自身の知識として蓄えられているのでしょうか?
    質問②
    また、岡田先生のチャンネルは、どのようなスタイルで見るのが正解なのでしょう?
    ながら見を前提とされているのでしょうか。それとも、ノートとペンを持って、授業のように拝見した方が良いのでしょうか。
    なにかアドバイスいただければ幸いです。
    追伸:タオルくんステッカー希望です!


     ああ、タオルくんステッカーを指名してきたということは、この『ガンダム』風のステッカーの評判が悪いということだね? わかったよ。お前らがそんなにタオルくんが好きだとは、俺、知らなかったから(笑)。
     なんかもう、一時期、コメント欄がタオルくんに対する恨みというか、憎しみで溢れてたから、俺、もういいと思ってたんだけど。タオルくんステッカーをちょっとだけ作ってみたら、タオルくんステッカーが一番評判がいいというね。
     もう本当に上手くいかない(笑)。

     真面目に答えると、基本的に知識を得ようという努力はわりと虚しいんですよ。退屈だし、知識って覚えてられないんですよね。僕もそうです。
     なので、僕が言えるのは「好きなことに関して手を抜かないしかない」ということなんですよ。
     「知識を蓄える」とか、「何かを好きだ」とか、そういうことは才能だと思うんですけど、「手を抜かない」というのは才能ではなくて、ただ単に努力の問題だから、やろうとして出来ることだと思うんです。
     興味のないことは知らなくていいんですけど、好きなことには手を抜かない。

     例えばで言うと、僕は『天空の城ラピュタ』というアニメが好きなんですよ。これを好きだということは『天空の城ラピュタ』に関して、手を抜いちゃいけないんですよね。
     手を抜かないということは、舞台になっているウェールズ地方の歴史とか、あと石炭を掘る炭鉱の構造まで、やっぱり調べなきゃいけない。だって、それを知ったら面白いかもしれないんですよ?
     いや、面白いかどうかは調べてみるまでわからないんだけど、『ラピュタ』が好きなんだったら、「宮崎駿は、こういうのが好きで、この世界観を作ったはず」と、宮崎駿が好きなことは、一応、調べておかないと、全部を味わい尽くせないかもわからないじゃないですか。
     『天空の城ラピュタ』という作品を、そういう予備知識を全く入れずに、ただ見て楽しもうというのは、本当に「一番上のトッピングの部分だけを楽しもうとしている」ようなもので、その下にあるもっと美味しい本質部分に行き着いていない気がしちゃうんですよね。
     なので、『ラピュタ』を味わい尽くすために、僕は勉強してるわけなんですけどね。

     こういうふうに、好きだったら手を抜かない。
     反対に、好きじゃないんだったら、別に手を抜いても全然構わないです。興味もないことへの余分な情報に脳を使わない方がいいです。
     僕、今、オリンピックとかサッカーとかラグビーとか、何一つ知りません。そこに脳を使いたくないからですね。
     ところが、『ゴーストバスターズ』の背中に背負っているバックパックがありますよね? あれ、プロトンバックって言うんですけど。あのプロトンバックって、ダン・エイクロイドが自分で設定を作ったそうなんですよね。
     あのECTO-1というゴーストバスターズが乗っている車と、プロトンバックっていうのは、ダン・エイクロイドという『ゴーストバスターズ』に出てくる太っちょの俳優、あいつ自身がシナリオを書いてるんですけど、あいつ自身が設定を考えて、一生懸命、周りに説明したんですけど、誰1人聞いてくれなかったそうです(笑)。
     美術さんが適当にでっち上げて、「こんな感じ?」って言ったら、そしたらダン・エイクロイドが「すごいよ! これだよ!」って言って、大喜びで背負ったそうなんですけど。
     だから、ダン・エイクロイドが背負っているやつだけ、ちょっと他よりも重いんですよね。本式にいろいろ機械が入っているから。他の人間は、みんな「ガワだけでいい」って言って、ハリボテを背負っているんですけど。
     『ゴーストバスターズ』好きだったら、「じゃあ、ダン・エイクロイドはどこまで考えたんだろうか?」っていうのを掘っていった方が、やっぱり楽しいし、そういうのをニコニコ生放送で話していくのも、僕は楽しいと思うんですけど。

     好きだったら手を抜かないということですか。
     僕も、この間、やっぱり『ラピュタ』で語った時にスラッグ渓谷の模型が中途半端だったことが、すごく気になっているんですよ。
     「やっぱり、スラッグ渓谷の谷の深さ自体を表現するために、あの模型はもっと下半分を大きくしなきゃいけなかったな」と、のたうちまわっているんですけど(笑)。
     こういう、手を抜かないということだけ。ニューおでんさんが自分が好きなことだけでいいんです。その好きなことに関して手を抜かなければ、知識なんて勝手に溜まってくるし。
     あと、僕、61歳ですよ? 61でこれくらいで構わないわけだから、25歳だったら25歳、30歳だったら30歳なりの貯まり方っていうのがあるので、そんなに急がなくても人生は長いし、オタク人生はもっと長いですから。長期戦で考えるのでいいと思います。

    お便り紹介「シンプルにニコ生ゼミを助ける方法」

     次です。最後のお便りですね。ペンネーム5丁目ラジオさんです。

    (パネルを見せる)

    nico_190922_04644.jpg
    【画像】ゼミのお手伝い

    単刀直入なのですが、岡田斗司夫ゼミのお手伝いをしたい場合、どのようなお手伝い参加させてもらえるのでしょうか?
    あまりにゼミが好き過ぎて、何か出来ることがないかと考えてしまいます。


     ありがとうございます。
     このフリップはいらすとやさんのイラスト使って、今回から外注を始めたんですけど。
     今回は、働き方改革として僕を楽にするために、「フリップを外注に出して、いらすとやさんのやつで作って貰う」というのと、「ナレーターに来ていただいてお便りを読んでもらう」ということをやったんですけど、実はこのフリップ、間違いなんですよね。ちょっと嘘なんですよ。
     この質問を出して来た人は男の人だからですね、本当はこうでなきゃいけないんですね。
    (パネルを見せる)

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    【画像】ゼミのお手伝い男版

     でも、なんとなく最初に上がってきた女の人のイメージがかわいかったので、「よし、このまま行っちゃえ!」と(笑)。
     こっちだったらよかったのに、本当はこっちだという実像ですね。

     じゃあ、ゼミのお手伝いについて、正直に答えると。
     今、話したみたいに、僕の働き方改革として、例えば「質問コーナーの時にこういうフリップを作ってもらう」ということをやってみたんですけど、他はなかなか難しいんですよね。
     例えば、さっきの見せたフリップなんて、こんなもん、もう自分でないと作れないわけですよ(笑)。
    (パネルを見せる)

    nico_190922_02649.jpg
    【画像】自動装置のサンドウィッチ ©1968 角川映画

     「『ガメラ対バイラス』のサンドウィッチのシーン」とか、これ、もう、僕本人じゃないと出来ないわけですよ。だって、どんなシーンなのか覚えてるのが僕だけなわけですから。
     あと、さっきの卵が焼けるシーンのフリップも、やっぱり『ハウルの動く城』の卵のシーンって、なんだかんだいって作画枚数でいうと60枚くらいあるんですよ。その中から、どの3コマを選ぶのかで、やっぱり全然印象が違うので、これも自分でやらないとどうしようもないことなんです。
     例えば、毎回、話していることが書かれたレジュメって、僕、本当にシンドいから、「下書きだけでもいいから、放送作家みたいな人に頼めないかな?」って、実は2、3ヶ月前に考えたことあるんですよね。
     このレジュメも、岡田斗司夫が面白いと思っていることを書いているわけだから、実は僕にしか書けないんですけど。レジュメの下書きだったら、テーマとか、こういうことをやりたいとか話したら、出来るんじゃないかなと、ちょっと考えたことがあるんですよ。

    「俺、美味しいコーヒー淹れます!」(コメント)

     おっ! そうか! ……いや、でも、コーヒーはあらかじめ淹れてポットに入れてるから、必要ないんですよね。
     ただ、他の人の書いたレジュメというのは、月に1回くらいだったら、やってみるのも面白いかもわからないと思うので。
     岡田ゼミのレジュメを書いてみたいという人がいたら、サンプル原稿を書いてメールで送ってくれたら、ちょっと僕、興味があります。
     ただ、その場合のレジュメは「最初の何分かだけ」ではダメです。例えば「5分だけ書いてみました!」、「10分だけ書いてみました」ではなくて。あるテーマに関して、丸々60分くらい書いてください。
     原稿用紙にすると30枚くらいだと思いますけど、「引用する画像はこれです」という候補まで用意してくれて投稿してくれたら、面白ければ、もちろん採用して「今回は〇〇さんの台本です」と紹介します。
     何回か採用が重なれば、正式なスタッフとして……実はこの生放送ってLINEグループがあるんですけど、そのLINEグループの会議にも参加してもらいますので。
     もし、自分の中のクリエイティブが余ってて、リサーチとかが好きで、「岡田さんこんなの好きじゃないか?」とか、もしくは「岡田斗司夫はこれが好きになるべきだ!」というテーマがある人、僕と趣味が似ている人がいれば、ハガキ職人よりもグレードが何段も上がっちゃうんですけど、書き方は自由で結構です。レジュメを書いて送っていただければ、チェックします。

     でも、これ、ハードルが高過ぎるじゃないですか。
     なので、シンプルにニコ生ゼミを助ける方法としては褒めるメールが欲しいです。マジで。
     なぜかと言うと、ゼミが終わった後、毎回、2時間くらい経ってから、とてつもない落ち込みがあるんですよね。
     どう言えばいいのかね? たぶん、ハイテンションで喋ってる分、このマイナスが、あとでこう、ドンと来るんですよね。
     「なんであんなこと言っちゃったんだろう」とか、「ああ、俺、上手く言えたんだろうか?」とか、「ここのところが上手く言えなかった」とか、「言葉が詰まっちゃった」とかね。
     なんか、今みたいに……ほら、「なんか」って言うじゃん。「なんかって何回言ったんだろう」とか。だから、俺、もう絶対に自分の放送を見返したり出来ないんですけど。
     そういう猛烈な落ち込みがやってくるので、ゼミが終わった2時間後くらいに、褒めるメールをいただければ、メンタル的にはものすごく助かるんですよ、真面目な話。
     そういう時に送るメールは、一切内容がなくていいです。「今回のアロハ、素敵でした!」でもいいですし、「これでよく寝れます!」とか、それをいただけると、日曜の夜、僕はものすごく寝やすくなります。
     本当に日曜の夜はね、月曜の朝の6時くらいまで、本当に寝れなくて、ゴットンゴットン、ドッカンドッカンやってて、本当にネガティブで無駄なんですよ。
     なので、よろしくお願いします。


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