岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/10/24

 今日は、2019/10/06配信の岡田斗司夫ゼミ「味を超越した“文化としてのハンバーガー論”」からハイライトをお届けします。


 ということで、ここからは「試験に出るハンバーガー年表」というのを見てみましょう。今日ハンバーガー特集なので、ハンバーガー年表ですね。
(パネルを見せる)

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【画像】ハンバーガー年表

 19世紀末にハンバーガーが誕生して、まあ、いろんなところがあるんですけども。
 この中で大事なこと、皆さんに覚えておいていただきたいことが、1876年のフィラデルフィア万国博覧会です。
(パネルを見せる)

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【画像】フィラデルフィア万博

 このフィラデルフィア万国博覧会でアメリカンチョッパーと言われる挽き肉器が発売されました。
 それまで挽き肉というのは、肉屋が鋭い包丁で、デカい肉の塊をこそげ取るようにして作ってたんですね。なので、挽き肉って、作るのが結構大変だったんですよ。
 そんな中、この19世紀末のフィラデルフィア万博で、手回し式の挽き肉器というのが発表された結果、5年か10年くらいでアメリカ中に広まったんです。

 やっぱりね、肉屋さんも苦労してたんですよ。というのは、柔らかくて美味しい肉は売れるんだけど、硬い肉とか、すじ肉とか、内蔵みたいなものは、やっぱりなかなか売れないんですよね。
 それを挽き肉にして他の肉に混ぜると、まとめて柔らかい肉として売ることが出来る、と。
 というわけで、万博で発表されたアメリカンチョッパーと、他にもパシフィックチョッパーというメーカーもあったそうなんですけど、こういった挽き肉器は、あっという間にアメリカ中に普及しました。

・・・

 19世紀末には、一応、焼いた挽き肉をパンに挟んだハンバーガーという料理が誕生したらしいんですけど。
 アメリカ中に「うちこそが元祖だ!」と言う店があるんですよ。
 例えば、1880年にテキサス州アセンズで、同じ頃にウィスコンシン州シーモアで、1885年にはニューヨークで「うちが最初だ!」って言うところがありますし、1900年にはコネチカット州のニューヘブンという土地にある店が「うちが元祖だ!」と言ってます。

 こんなふうに、アメリカ中に「うちの街が~」とか「うちの店が元祖だ!」と言うとこがあるんですけど。

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【画像】ルイーズ・ランチ(「別冊Lightning vol.49 ハンバーガーの本」枻出版社より)

 まあ、一応、コネチカット州ニューヘブンにある、1900年に作ったというルイーズ・ランチという店が、当時の調理器具とか写真とかがそのまま残っているので、証拠を辿っていった場合、ここが最初と言えるかもしれません。
 それ以前の、1885年とか1890年にやったというところもあるんですけど、証拠がないんですよね。
 その点、このルイーズ・ランチは「当時、幌馬車のワゴンでステーキサンドイッチを売っていて、そこでハンバーガーを始めた」という証拠があるので、まあ、ここが最初じゃないかと思います。

・・・

 こういうふうに、ハンバーガーというのは、アメリカ料理の代表みたいなものなんですけど。
 この「アメリカ料理」ってね、実はちょっと難しくて。もともと、アメリカ料理なんていうものは存在しなかったんですよね。

 正確に言うと、黒人料理とか、インディアン料理……これは「いわゆるインディアン」ですね。アメリカ原住民のことです。そういうものは存在するんですよ。ところが、アメリカ料理というのは存在しなかった。
 なぜかと言うと、ヨーロッパ人がアメリカを発見してから、この新大陸アメリカに来たのって、みんな金儲け目的の人らばっかりだったんですよ。
 投機目的の農場主が来たわけですね。それも、大部分が不在農家というやつで。ヨーロッパでアメリカの土地の権利を買ったり、もしくは船団だけを出したんだけど、実際に米国に来るのは大金持ちに雇われた手下とか、身分は低いけれど信頼されている召し使いだったんです。
 そんな人らがアメリカ大陸まで来て、もう本当に追放みたいに一方通行で送られて、アメリカの現地に着いてから、アフリカの奴隷を買いまくって、現地で農業を始めるわけなんですよ。
 なんかね、すごい特殊でしょ? アメリカという国は建国時点から、なんかすごい特殊なんですけど、その理由は、まず「ほとんどが金儲けで来る人ばっかりだった」ということなんですね。

 金儲けで来る人達というのは、現金を持っているので、それで黒人奴隷を買って農業を始めようとするんです。
 ところが、その農業というのはサトウキビの栽培なんですよね。小麦じゃないんですよ。
 「小麦みたいに、自分達が食えるものを作って自活していこう!」というのではなくて、完全に貿易目的、金目的なんですね。金目的なので、使える土地には全部サトウキビを植えちゃうんですよ。
 だって、全員召し使いですから、主人に命令されているわけですよ。「とりあえず、土地を耕したら、そこにはサトウキビを植えろ!」と。「サトウキビを作っとけば、ヨーロッパでメチャクチャ高く売れるから、とにかくサトウキビ作れ、作れ!」と言われているんです。
 しかし、そういう人達が「ああ、サトウキビを作るのか。俺たちが食べる食料は、まあ、現地に行ったらなんとか買えるだろう」なんて思ってたんですけど、この時点でのアメリカには、まだ農産物の取引市場なんか成立してないので、手に入らないんですよね。
 なので、食べるものにいきなり困っちゃって。さっきも言ったように、小麦の種も持って来ていませんから。
 とりあえず、サトウキビをヨーロッパに輸出して儲かるんですけど、その儲けた金は、やっぱり「農園をどんどん広げて、奴隷を買って~」というふうに使われるわけですよ。
 仕方がないから、インディアン達、現地の原住民からトウモロコシの調理方法を聞くんですね。
 トウモロコシというのは、ヨーロッパ大陸ではみんな見たこともない食材で、下手に加熱すると弾けてポップコーンみたいになってしまうし、粉を作るにも、小麦とは全然勝手が違うんですね。なんか、こう、小麦よりもずっと固まってて、おまけに粘り気もあるし、湿ってるし、扱いにくくて扱いにくくてしょうがない。
 「これどうやって食べたらいいんだ?」というのも、まずインディアンに聞くしかなかったんです。
 と、同時に、アフリカの奴隷を買って来る時というのは、前からいる奴隷に混ぜるわけですね。現地のアフリカ奴隷に。
 最初にアフリカから来た奴隷たちというのは、アメリカ大陸に来て、もう10年20年も経っているので、アメリカでの暮らしに慣れてきているわけです。
 なので、アメリカ原産の作物を使って、なんとか食い物を作る方法がわかってきている。
 ここで、黒人の奴隷料理というのが生まれて来るわけですね。アフリカは、もともと、アジア圏のような米食文化なので、彼らは米をちょっと持ち込んだりしてたんです。
 そういう、ヨーロッパ人にとっては「なんじゃこれ?」というような、米文化とトウモロコシ文化、それぞれインディアンと黒人が持ってた文化というのが混ざってきて、徐々に徐々にアメリカ料理の土台が出来つつありました。


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