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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『スター・ウォーズ』が起こした「特撮の革新」とは?」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『スター・ウォーズ』が起こした「特撮の革新」とは?」

2019-12-30 07:00

    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/12/30

     今日は、2019/12/15配信の岡田斗司夫ゼミ「『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』特集」からハイライトをお届けします。


     『スター・ウォーズ』というのは、1977年から42年間……長い。42年間にわたって続いている、映画業界でも、たぶん最長のシリーズの1つだと思います。
     一番長いのは『007』だと思うんだけど、『007』って、1話完結で、どれを前後ろにしてもあまり変わらなくて、同じ俳優さんがやっているわけでもないので。同じ俳優さんを使って明らかに続きモノのストーリーとしてやっているシリーズとしては、『スター・ウォーズ』が一番長いんじゃないでしょうか。
     『ターミネーター』みたいに、「これは続きモノです」って言ってるのもあるんですけど、あれも、シリーズの中でしょっちゅうリセットが掛かるので。たぶん、1つのお話を延々とやっているシリーズでは『スター・ウォーズ』が映画界では最長だと思います。
     42年間もやっているもんですから、最初の映画を14歳で見た人も、今は56歳なわけですよね。なので、シリーズ全部に付いてきている人って、わりと少ないわけですよね。
     さらに、年代によっても、一番好きな『スター・ウォーズ』は違います。
     例えば、50歳以上のオタクの男性に人気なのは『帝国の逆襲』ですよね。2作目であるエピソード5。
     この「エピソード5」とか「エピソード6」という言い方がややこしいんですよ。これ、僕も嫌いで。
     一番最初に作られたのは、エピソード4、5、6なんです。まあ、この一番最初のシリーズが、6年かけて1983年に完結した、と。みんな「これで終わりだ」と思ったんです。この時は「エピソード〇〇」とか覚えなくてよかったんですよ。『スターウォーズ』『帝国の逆襲』『ジェダイの帰還』これだけ覚えてれば良かったんですけど。
     なので、今日からこの最初のシリーズを、岡田斗司夫ゼミの中だけでは本家スターウォーズと呼ぶことにします。

     で、本家があるんだから、その前のお話は元祖なんですよ。この元祖スターウォーズというのが次に作られることになったから、ややこしいんです。
     本家スターウォーズ(エピソード4~6)が終了してから、20世紀も末になっての1999年、まさかの続編の制作が始まります。これがまた、本家の30年くらい前に遡る話だったんですね。
     元祖スターウォーズは、最初のエピソード1が1999年に始まって、以後、3年毎に新作が公開されて、2005年にエピソード3で完結。これで、もう今度こそ終わったはずだったんですよ。
     ジョージ・ルーカスも、ファンイベントで聞かれても「うるさい! もう絶対に作らない!」って言ってたんですけども。

     ここまでを整理すると、1977年に最初の『スター・ウォーズ』が出ました。その2年後の1979年に『機動戦士ガンダム』だから、そういう時代ですね。
     以後、1983年までの6年間で3本作られて、「これで終わりか」と思っていたら、元祖スター・ウォーズが出てきて、1999年から3年毎に3本。「いくらなんでも、これで終わりだろ」と思っていたら、2015年、4年前から、今度は2年毎に3本が公開され、今年に最新作が公開される、と。
     これが、今やっている、本家、元祖に続く続スター・ウォーズなんですね。
     つまり、もともと本家があって、その前の時代の元祖があって、今は続スター・ウォーズというお話として、やっと時系列が後ろに流れてきた段階なんです。

     なんで毎回、こんなに「これで終わり」とか「まさかの続編」というパターンになったのかと言うと。実は、それぞれのシリーズ、本家、元祖、続、それぞれに特徴があるからなんですよね。

     例えば、本家スター・ウォーズは「アナログ特撮を極めた」という特徴があります。
     とにかく、映画技術の革命を、やりたくてやりたくてしょうがなかったジョージ・ルーカスが、それまでは滅びたと思われていた特撮映画とか怪獣映画みたいなものについて、「今の技術を使ったら、そういう滅びたジャンルの映画も作れるよ!」というふうに、映画界に問いかけた革命行為。それが、本家スター・ウォーズのポジションなんですね。

     それに対して、元祖は「デジタル合成という技術があるんだ」と。
     「これによって、ロケとかセットとかにとらわれなくって構わない。実は映画というのは、監督のイメージ通りのものが作れる時代になったんだよ!」っていう宣言であり、アジテーション。これが、元祖スター・ウォーズなんです。
     「元祖スター・ウォーズ以降の21世紀になってからの映画というのは、CGをいっぱい使っている」って言われるんですけど。これは、監督のイメージをそのまま映像に出来るということであり、それがジョージ・ルーカスの提案であって、現に世界中の映画は今、そういうふうになっているんですよね。

     今やってる、続スター・ウォーズは何かと言うと、「そういう作家性・テーマを持った、言いたいことがいっぱいあるジョージ・ルーカスの手から離れて、ディズニーに渡った」んですね。
     いわゆる「宮崎駿が死んでしまって、鈴木敏夫とディズニーの手に渡ったジブリ」みたいなものですよね。だから、わりと普通の映画になったのが、続スター・ウォーズなんです。

    ・・・

     じゃあ、話は戻って、本家スター・ウォーズで行われた「アナログ特撮などの映画技術の革新」というのはどういう意味かと言うと。
     本家の3本というのは「こんな映画が本当に作れるのか?」「こんな映像が本当に作れるのか?」というチャレンジの塊みたいなものだったんですよ。

     例えば、1本目の『スター・ウォーズ』というのは、コンピューター制御のカメラでミニチュアと背景の合成を完璧にしてたんです。
     というのも、『スター・ウォーズ』以前の特撮映画では、カメラ位置が固定でミニチュアの動きも一方的だったんですね。
    (ロケットの模型を取り出して)

    nico_191215_01033.jpg
    【画像】アーク号

     例えば、これは『地球最後の日』という映画に出て来るアーク号というロケットなんですけど。これを映画の中に登場させる時は、だいたい、アーク号が進んでいる方向は一方向。それに星空が合成されて一定の方向に動いているというのが、ほとんどだったんですよ。
     今だったら「カメラに向かって寄って来てから離れる」みたいな構図が当たり前ですよね? そういうのが、昔の特撮は一切なかったんです。
     なぜかと言うと、飛んでいるアーク号のシーンを作ろうと思ったら、アーク号の周りに合成用のマスクというのを切って、そこに星空を流すから、一定方向にしか動かなかったんですよ。
     その上、これをやるためのセットも、メチャクチャデカくなったんですよね。
    (パネルを見せる 『地球最後の日』原題:WHEN WORLDS COLLIDE、1951年、より)

    nico_191215_01138.jpg
    【画像】アーク号のセット

     アーク号時代のミニチュアって、まあ、長さが1.5メートルくらいある、かなりデカいもんだと思ってください。これは、この後、ラストシーンの撮影で、1.5mのアーク号のミニチュアが、レールの上を走って山の上へ登って行って、ドーンっと発射されるんですけど。
     この、1メートル以上あるロケットのミニチュアにレールを走らせて上まで登るシーンが一発撮りなんですよ。火薬でロケット噴射を再現して、途中、誤魔化しもなくレールの上を走って行って、上まで行っちゃう。どんなにデカいセットかわかりますよね?
     だから、昔の特撮映画って金がかかったんですよ。金がかかるから、こんなものすごいシーンって、映画全体でも4カットとかに5カットくらいしかないんですよ。
     日本の怪獣映画は、もう本当に、世界の映画の歴史から見たら例外的に、特撮カットが多いんですよね。1本の映画の中に40カットも50カットも出て来るんですけど。その代わり「着ぐるみがミニチュアの町を壊す」というような、いわゆる物理的なシーンが多いんです。
     海外のやつは、もっとリアリティを重視するので、どうしても合成とか、デカいセットが必要になってくる。だから、1本の映画の中で4、5カット出てきたらいいところなんですけども。
     ところが『スター・ウォーズ』の1作目というのは、こんなすげえカットが、だいたい60カットくらいあったんですよね。
     それはなぜかと言うと、このミニチュアを撮る時に、まずカメラの側を動かして立体的に撮ってから、後ろの背景をそれに合わせて、普通に星空の背景があるところを、コンピューター制御のカメラで全く同じように動かして撮影するというモーションコントロールカメラのシステムがあったからなんです。
     このおかげで、ミニチュア合成が簡単になって、カッコいいシーンがわりと安く撮れるようになったんですね。そこら辺が、第1作目の『スター・ウォーズ』が成し遂げた功績です。
     ジョージ・ルーカスというのは、基本的に映像作家なんですよ。
     金儲けが好きな映像監督というよりは、金儲けを手段として山ほど技術革新をして、常に新しい映像、誰も見たことのない映像を見せたい人であり、同時に「世界中の映画業界に革命を起こしたい! みんながこっちの方に行くようにしたい!」というアジテーターでもあるんですね。
     だから、新しい実験がなければ映画は作らないし、映像の革命なしに『スター・ウォーズ』の新作なんか作らない。これが、ジョージ・ルーカスの信念でした。
     なので2作目の『帝国の逆襲』では、彼は完璧な合成をテーマにしたんです。

    nico_191215_01424.jpg
    【画像】スノースピーダー

     完璧な合成というのは、例えば『帝国の逆襲』の一番最初に出て来るスノースピーダーです。これ、前にも話したんですけども白いボディなんですね。この白いボディが真っ白な雪の上を飛ぶんですけども。この「白の背景の上に白のミニチュアを合成する」というのは、それまでのSF映画では禁断の技術だったんです。

    nico_191215_01430.jpg
    【画像】スノースピーダーと白い紙

     なぜかと言うと、合成する時に、周りに青いチラチラが出るんですけども、白画面だったら、それがものすごくハッキリわかっちゃう。だから、宇宙空間の合成ならともかく、白い雪の上に白いミニチュアを飛ばすなんていうのは自殺行為なわけです。
     ところが、『帝国の逆襲』では、それをふんだんにやった。おまけに、向こうから、また白とかグレーの巨大な象みたいなスノーウォーカーAT-ATってヤツが歩いてくるという、頭のおかしいシーンをやったんですよね。
     これが、もう本当に映像の革命だったんですよ。つまり、これによって事実上、合成できないものはなくなったんですよ。「ありとあらゆる合成が、おそらく、ここから先は可能になるであろう」と。
     ただし、「それは画面上で5個~10個くらい」という個数的な限度はあるんだけど。「どんなものでも映画の中に出せる」ということを証明したんですね。それが『帝国の逆襲』での革命でした。
     3作目の『ジェダイの帰還』では、個数の革命と言うのかな? 多重合成の限界まで行ったんですね。
     今、言ったように、『帝国の逆襲』では「1つの画面の中に、2つ、3つ、4つくらいだったら何でも出せる」ということを証明したんですけども。『ジェダイの帰還』では「1つの画面内に60いくつの要素を同時に合成する」ということをやってみせたんですね。
     この合成の数が、なぜ難しいのかと言うと。昔はオプチカル・プリンターっていう、フィルムの上に直接焼き付けるような形で合成してたんです。
     つまり、「1つ目の素材を撮る」→「フィルムを2秒間巻き戻す」→「2つ目の素材を2秒撮る」→「フィルムを2秒巻き戻す」→「3つ目の素材を撮る」→「フィルムを2秒巻き戻す」というのを、本当に60回繰り返したんですね。
     そのために……フィルムの横のパーフォレーションという四角い穴がありますよね? フィルムの横に歯車が入るようになっている送り穴があるんですけども。そのパーフォレーションの穴がボロボロになってしまったんです。
     もう、そんなことはやってられないから、ルーカスは、普通はフィルムを縦にバーッと送って撮影するところを、横方向に送ることで、パーフォレーションの数を増やし、それで1コマあたりの丈夫さを確保していって、何とか60数個の要素を合成することに成功したんです。
     『ジェダイの帰還』のクライマックスで、第2デス・スターの前で、Xウィングとか敵の宇宙船とか、タイ・ファイターとかがガーッと入り交じって戦争するカットって、60いくつの要素があって、頭がおかしいような映像になっているんですけども。まあ、これがアナログ合成の頂点なんですよ。

    ・・・

     もちろん、ジョージ・ルーカスは「それだけでなくて、もっともっと!」って考えてたんですけども。どう考えても、アナログ合成では、これが限界だったんですね。
     なので、本家スター・ウォーズは『ジェダイの帰還』で終わった、と。もう、ごくシンプルに、これが第1の理由なんですよ。
     なぜ、本家スター・ウォーズは3作で終わってしまったのかと言うと、それは革命が限界に来たから。これ以上、フィルム上で出来ることが何もなくなってしまったんですね。

     もちろん他の事情もあります。
     一番デカい事情は「『ジェダイの帰還』が終わった頃に、ジョージ・ルーカスの離婚問題というのがあって、この時、奥さんのマーシアに財産の半分を取られて、スッカラカンになったから」というのがあるんですけど(笑)。
     ただ、もう本当に、やれることがなくなってしまったというのが、一番の理由だったんですね。

     というわけで、まずは「これ以上のイメージを作るのはアナログの特撮の世界では不可能だ」と。
     もちろん、ジョージ・ルーカスは、最初から『スター・ウォーズ』は全6作とか全9作で作りたいと思っていたから、続編を作りたいと思ってたんですけども。まあ、「奥さんだったマーシア・ルーカスとの離婚で、財産の大部分を失ってしまった」と。
     次に、「続編をやるとしたら、前の元祖の部分、いわゆるクローン戦争と呼ばれる『スター・ウォーズ』の本家より前の時代の作品をやりたい。しかし、それはアナログ特撮の限界を遥かに超えるような映像技術が必要だ」と。まず、戦争を描かなきゃいけないし、出て来るモンスターも、これまでみたいな着ぐるみとかでは嫌だし、いろんな状況があって、もう技術的に無理だ、と。
     あと、3番目に、一番最初の『スター・ウォーズ/新たなる希望』って、ジョージ・ルーカスが監督をやったんですけど、その時に「自分は現場というものに、とことん向いてない」と気がついたんですね。
     例えば、ハリソン・フォードという、バンバン意見を言ってくるヤツに対して、自分は満足に言い返せない。彼が他の役者さん達に対して、ちょっと高圧的に当たるのも止められないし、セリフを直してもらうにしても、全ての役者に対して……例えば、オビ=ワン・ケノービ役をやったアレック・ギネスというイギリスのシェイクスピア役者にちょっとバカにされながらも演技指導しなきゃいけないんだけど。なんか、言い切れないとか、そういうストレスが重なったんですね。
     その結果、『帝国の逆襲』と『ジェダイの帰還』は、他の人に監督を任せたんですよ。でも、そうすると、思ったものに仕上がらない。なんか、自分は子供向けのファンタジーのメッチャ良いやつをやりたかったのに、他の人に監督を任せると大人向けの作品に作ってしまう、と。今で言う、マーベルヒーローみたいなものに近くなっちゃうんですね。だから、『帝国の逆襲』って、オタクの人に評判がいいんですけど。
     ジョージ・ルーカスがあくまで目指していた「12歳の子供が全く手加減なく本気で見れるもの」ではなくて、「20、25、30歳くらいの人でも、わりと身を乗り出して見れるもの」に『スター・ウォーズ』の2作目3作目はなってしまった。
     なので、ジョージ・ルーカスは「次をやるとしたら、やっぱり俺が監督をやるしかない! でも、もうあんな監督の仕事をするなんて嫌だ!」と。まあまあ、ロケ行くのも嫌だし、人と会うのも嫌だということで、ジョージ・ルーカスは続編を諦めていたんですね。

     以上の理由で、本家スター・ウォーズのシリーズは終わり、このまま続編も作らないはずだった。
     しかし、意外なことが、この後で起きるんですね。

     やべえ、ここまでで20分じゃん。俺、今日、無料放送は30分で終わる予定だったのに(笑)。


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