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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の解決!ズバっと 2015/06/24
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おはようございます。

今日は『解決!ズバッと』はお休み。
情報サイト『探偵ファイル』に掲載したコラムをお届けします。


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「ちょっと待ってちょっと待って、キングコング西野さん」

(元記事はコチラから)


 お笑い芸人・キングコング西野亮廣さんは「画を描くアーティスト」としても有名だ。
 ニューヨークでの個展も成功させ、彼の描くイラストは一点数十万で取引されている。

 その西野さん、次回作では「絵本を完全分業制でつくる」「資金はクラウドファンディングで集める」と宣言した。
 しかし、この西野さんの発言、僕にはピンとこない。


***(BLOGOS 6月3日記事より)発言引用*****

 これまでの僕の作品は全て、西野亮廣個人が一人で文章と絵を担当してきました。
 誰の力も借りずに一人で作った方がカッコイイと思っていたので、分業制のことなど考えもしませんでした。

 しかし、経験を重ねていくうちに、「誰が作ったか?」ではなく、「何を作ったか?」が大切だということに気がつきました。

 「ベイマックス」の監督さんの名前なんて、ほとんどの人が知りません。
 (監督は2人いるそうです)

 「パイレーツ・オブ・カリビアン」の脚本家さんの名前なんて誰も知りません。
 (脚本家は4人以上いるそうです)

 ただ、その作品のことは世界中の人が知っています。
 その作品は世界中の人達をドキドキさせています。

 絵本でも、それができるのではないか?
 日本のクリエイターさんが絵本を舞台に力を合わせれば、誰も見たことがない、世界中がドキドキするような作品を作れるのではないか?

 というわけで、日本のイラストレーターさん達と手を組んで、完全分業制で制作する「世界中をひっくり返す絵本」を作りたいと思いました。

***引用おわり(BLOGOS 6月3日記事より)*****
 

 絵本を多人数で作る試みは、すでにある。
 たとえば子ども向けの童話絵本、それも最近のアニメ絵のはぜんぶ分業制だ。
 「ももたろう」「かぐやひめ」「一寸法師」などを実際に書店で探してみて欲しい。
 それらほとんどが、アニメ絵で完全分業制で作られている。

 もともとは「個人の作家がひとりでぜんぶ仕上げるモノ」だった絵本は、1990年代あたりから完全分業化がはじまった。
 乗り物や昆虫などの子ども向け図鑑は、1人の作家が描いている作品のほうが珍しい。
 いまや大人向けの絵本以外は、完全分業制で当たり前なのだ。

 ではなぜ大人向けの絵本では分業制がメジャーにならないか?
 答えは簡単、「作家性が失われるから」

 マンガ家でも絵に対する作家性が強い人は、アシスタントが少ないとか、使わない傾向がある。
 映画監督も同じ。作家性が強い監督は、スタッフ数を絞って「家族的な環境」を望む。
 アニメ監督の新海誠さんはデビュー作『ほしのこえ』で、監督・脚本・演出・作画・美術・編集などほとんどの作業を一人で担当した。

 絵本の世界でも、大手出版社の量産する「アニメっぽい絵本」は作家性などどこ吹く風、完全分業制が当たり前。
 でも小さな出版社、作家性の強い絵本を出す出版社では、作家ひとりがぜんぶ担当する。

 キングコング・西野さんはきっと「作家性の強い、大人向けの絵本」ばっかり見てるんだと思う。
 本当に絵本を必要としている子供たちを育児した経験がないのに、カッコいい絵本ばっかり見てるから、ついつい「絵本には分業制がない。じゃあオレが世界初の!」とイキってしまうんだろう。

 逆だ。
 というより、時代遅れだと思う。

 芸人さんが他業種に参入するとき、やりがちな失敗は「各界の一流スタッフを集めて、オレが総指揮すれば」だ。
 オリエンタルラジオの中田さんも、その手法で映画を撮ろうとした。
 放送作家、スタジオ、ライター、PR担当・・・
 超一流のスタッフを集めて、何度も企画会議して、映像作品を作った。結果は、大失敗だ。

 それに対して、北野武、劇団ひとり、バカリズムなど映画で一定の評価を得ている芸人さんは、みんな「自分1人でやれる範囲」を探りながら作っている。
 映画のようなスタッフワークが当たり前の世界ですら、自分1人で動くのが鉄則だ。

 それに対して絵本は、完全分業がメリットになりにくい世界なのに。

 それにクラウドファンディングなど使わなくても、西野さんの原作や文章が本当に素晴らしければ、ギャラなど後回しで参加するクリエイターは多いはず。
 クラウドファンディングとは、作品を作ること自体に膨大なコストのかかるアニメや映画、または工業製品にこそ向いている方式なのに。
 なんで「コストの低い絵本作り」にその手法を使おうとするんだろうね?

 キングコングの西野さんは、クリエイティブではなく企画段階で、もっと優秀なスタッフを探して討議を重ねた方がいいと思う。


以上、情報サイト『探偵ファイル』よりお届けしました。
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