ユニバーサル・トークの共感の重要性について語ってきましたが、ついつい陥りがちなのが次のようなケースです。
「Bという意見もおっしゃるとおりです。しかし、やはりAで行きましょう」
これは、決裁権を持つプロジェクトのリーダーや町内会の会長が使いがちな手法です。
ほかの人の話を聞くフリはするんだけど、共感というプロセスをすっ飛ばして、「知ってますよ」「すでに考えてましたよ」「検討ずみです」というニュアンスで答えてしまう。
「わかるよ」と言うべきところを「わかってたよ」と言っちゃう。
彼らにはすでに決まっている結論があるわけですね。
そして「おっしゃるとおりです」と、議論を避ける方法も知っている。
リーダーを務めるくらいだから頭が良いし、自分なりの結論を思いついちゃう。
しかも確信している。
一度身につけたはずのユニバーサル・トークも、このように単なる技法としてだけ使っている場合、威力はどんどん衰えていきます。
これでは、相手は納得してくれません。
大事なことは、共感をいかにして得るかということです。
そのためには、まずは自分から相手に本気で共感しなければならないのはすでに述べたとおりです。
逆に、決裁権を持った相手がこの手法を使ってきたときはやっかいです。
そんなときは「偽ユニバーサル・トーク破り」として、次の手法を参考にしてみてください。
たとえば、Aに決まった前回の打ち合わせから間を置いて、次の打ち合わせで相手に次のように聞いてみます。
「前回、Bという意見が出ましたね。
あなたも、あの場では『おっしゃるとおり』とおっしゃいました。
私もそう思いましたが、折衷案を出すまでには至らず、結局Aのままで行くことにずっと心の中で引っかかりがあったんです。
で、今、私はCと考えています。あなたはどう思いますか?」
すると、相手は「おっしゃるとおりです」と答えるでしょう。
そこですかさず、「やはり引っかかりがあったんですね?」と確認します。
相手が自分の口で、「いやあ、じつは私も前から気にしてたんだよ」と答えたら成功です。
それは演技だけでは言えません。
人間、恐ろしいもんで、自分の口で言ったことを自分で信じちゃいますから。
とくに頭が良い人ほどに操られます。
「前から引っかかって気にしてたんだよ」と口にした瞬間に、前に決めたことを本当に気にしちゃうんですね。
こうなると、B、Cという提案を聞いたあとに、Aという結論に戻そうとしてもなかなかできません。
絶対にAという結論は、ちょっとずつBやCの要素が入ったものになっちゃうんです。
頭の回転が速い人の話し方
――あなたの会話力が武器になるユニバーサル・トーク×戦闘思考力