8時。AM。

駅前のコンビニエンスストアは

通勤、通学客で1度目のピークを迎える。

店長の奥さん(マネージャー。マネさんと呼ばれていた)と僕で、

このピークを乗り切るわけだが、

幾つかのコンビニを渡り歩いてきた僕とはいえど、

実はこんな忙しい店で働いたことはなかった。


さばいてもさばいても途切れることのない長蛇の列。

10時になると一気にピークは終わり、店は静けさを取り戻す。

それからは品だし、冷蔵庫の中からの品だし、

品が足りなくなってる商品は前だしと、

とにかく表面をビシッ!とそろえるのがコンビニの基本。


『休憩まだかなぁ~? 煙草吸いたいなぁ~おなかすいた~!』

と、思ってる間に次は昼のピークが襲いかかる!


昼のピーク。

コンビニの1日の中で一番の山場と言ってもいいだろう。

きつさは朝のピークの倍だ。

弁当レンジラッシュだ。


喫茶店の時の「カルボワン! アイミティーワン!」

と、同様

「○○弁当お待ちのお客様~!!」

が、恥ずかしくて言えない(笑)。


なぜなら僕は

酒が入らなければスーパーシャイボーイなのだから。


ああ嫌だ、もお嫌だ。

初日にして辞めたくなった。


ただこの店の人達はいい人ばかりだった。

初ひとりぐらし間もない貧しい僕には、

お昼休憩になると、特別に売れ残ったお弁当をくれた。

1食浮くのはとても助かる。

マネさんは当時まだ20代にしてやけに包容力のある人で

バイト達にとにかく優しかった。

特に僕には優しかったと記憶している。


あの頃の僕のことだ、

さぞかし可愛いかったに違いない。


話しているうちに

僕の実の姉と、

千葉の同じサーティーワンで働いていたとゆう過去が明らかになった(笑)。


ふたりして驚いた。

なんとゆう偶然だ。

僕はこの店に運命を感じずにはいられなかった。

なので約3年働いた。


クビにならなかったら今でも働いてたかもしれ……

と、いいたいところだがもうこの店はない。



↑ここまでは

『普通のコンビニじゃん!』となるわけですが、

ここからが違う。


初出勤からひと月とたたないうちに

僕はたびたび遅刻するようになった。


僕が遅刻するとどうなる?

そう、

あの地獄の朝のピークを

マネさんひとりで乗り切るのだ。

それはさぞかし辛かろう。


しかし!

ピーク終わりに

「さぁ~せぇん(苦笑)」

と、現れる僕に

優しいマネさんは怒らないのだ。

もちろん

「かんべんしてよ~!(笑)」

くらいはあるにはあるのだが、

僕はこれを『怒られた』とはみなさない。


根っからの甘え根性を持つ僕は

『あっ!』

というまに堕落した。


なぜ遅刻するかって?

髪立ててんだもん。

面接から髪立てるから立てないわけにいかないっしょ?


もちろん最初のうちは

髪立て時間を計算して起きてたし、

遅刻しそうな日はやや寝癖風に立てたりもした。


ひと月も過ぎたあたりかな?

8時に起きて髪立てて堂々と10時に出勤するようになったのは(笑)。

この頃にはさすがのマネさんも怒ってたような気がするけど

僕はそれを怒られたとはみなさない。


店長はたま~に来るか来ないかで来てもすぐに帰ってしまう。

それでいてバイト達の甘えが度を越した時には一喝するのである。

前にも書いたとは思うが180越えの巨体で亀田の親父にクリソツだ。


これは恐い。