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CIAがスーパー・エージェントを生み出そうと、1950年代から約30年にわたって秘密裏に実行してきたプログラム、通称「MKウルトラ計画」。一般市民をスーパーヒーロー並みのスパイにしようと向精神薬を用いてマインドコントロールし、危険なエージェントに改造しようとした極秘計画です。そんなMKウルトラ計画を題材にしたおバカでキュートなラブ&アクションムービー『エージェント・ウルトラ』が1月23日より公開となります。

本作の主人公は、バイト中にスーパーヒーローのサルを主人公にした自作漫画を描きながら、のらりくらりと過ごすダメ男、マイク・ハウエル(ジェシー・アイゼンバーグ)。ある日、マイクは店番中に謎の暗号を告げられる。気が付くとスプーン1本で2人の暴漢を刺殺していた……。なんとマイクは、CIAの極秘計画でトレーニングされた最強エージェントだったのだ!

うだつのあがらないダメ男が実はすご腕CIAだった、というのはボンクラ男子達の妄想ベスト3に入りそうなシチュエーションではありますが、そんな事が現実にあり得るのでしょうか?! 今回は特別に、CIA事情にも詳しい、元公安のK氏にお話を聞いてきました。また、「MKウルトラ計画」についても後半で解説!

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―映画をご覧になった率直な感想はいかがですか?

K氏:普通では考えられない様な、面白いアイデアがたくさんあって。これまでCIAやスパイをテーマにした映画って、カッコイイ男が出て来て、ガンガン銃を撃ちまくって、日本のチャンバラものの様なお決まりのパターンがありますけど、これは違いますよね。なので、映画の冒頭は「あれ、これ何の映画だっけ?」と思うほどなんですけど、だんだん惹き込まれる。

―この映画の様に、ある特定の人間を洗脳し、その能力をコントロールしながら何らかの作戦を行う、というような事は実際にあり得る事なのでしょうか?

K氏:私はあると思います。あの組織(CIA)ではおそらくやっているでしょうね。薬を使わなくても、催眠だけで何かヒントを与えると、(本作の主人公のように)いきなり覚醒するというのはあり得ますね。

―では、この映画の主人公の様に、冴えないコンビニバイトが実はCIAのメンバーだったなんて事も……。

K氏:CIAでなくても、諜報機関であればあると思います。例えば、私が藤本さん(インタビュアー)を仲間に入れようとする時には、藤本さんの生まれてから今までの人生や交友関係、家族の事まで全部調べますからね。その上で、その人間の弱点を突いていく、と。それこそ普通に面接を受けて就職をした企業でも、実はそこがスパイ機関の組織であって、その事実をずっと知らないまま働き続ける、なんていう事もアメリカではよくあると思います。組織が巨大すぎて、CIAの長官ですら、その全貌は把握していないと思いますね。

―CIAをテーマにした作品って、それこそ毎年何本も作られていますけど、なぜCIAというテーマがこんなに人気なのだと思いますか?

K氏:奥が深いからでしょうね。CIAをテーマにすれば、出世や家族の話も描けて、危険な事も起きると。日本で刑事ドラマばかり作られるのと一緒です。『相棒』なんかも、刑事ドラマでありながら、描かれている事は身近であったりするから観ている人も面白いという。『相棒』はちょっと長くやりすぎて、同じ様な話が増えてきたなと思いますけど(笑)。

―CIAと日本の政府、公安警察は実際にどんな関わりがあるのでしょうか?

K氏:私が現役の時にはCIAの日本部長やアジア局長から色々な話を聞きましたね。自動車の輸出に関する問題を話し合っている時に、日本の機密事項が、相手国に事前に全部バレていたと。調べてみると、通産省の女性がアメリカ人の恋人に話していたと分かったわけです。つまり、その恋人は相手国のスパイで、偶然を装ってバーで彼女と知り合い、長い時間をかけて信頼を作っていった上で、目的の情報を入手していたんですね。

―“ハニートラップ”という事が実際にあり得るわけですね。

K氏:日本の外務省の職員が上海で飲んでいたら、キレイなお姉さんに声をかけられて、全部喋ってしまうとかね。それはその美しい女性がスパイ組織のメンバーであるかもしれないし、組織がホステスさんにお願いしているのかもしれないし。だから私はよく「日本人なんてモテるわけないんだから、気をつけろ。自分の顔見ろ!」って言ってましたよ(笑)。

あとは、当時の私の部下がアジアに旅行に行って、金銭のやりとりを持って女性と関係を持ったのですが、その後にその国の大使館から「その女性があなたの部下に強姦されたと訴えています」と連絡が入って。つまり、そうやってこちらの弱みを握って、国家間の話し合いを有利に進めようとしているわけです。その時は断固拒否して、向こうも「じゃあ今後我々の国には来ないでくださいね」という事で話がつきましたけどね。

―こういう話を聞くと、スパイの存在は我々の身近にあるんですね。

K氏:電話も聞かれていると思っている方が良いですね。例えばアメリカのNASAは「金正恩」という単語だけピックアップして、その会話だけ聞くとか、そういった事もしています。だから私は電話する時は人物名や固有名詞は言わないです。皆さんも電話していて、音声がだぶったり、ぼーっと聴こえる事があると思うんですけど、それは電波を傍受されている影響だと。だから皆さん、「個人情報、個人情報」って騒ぐけれど、本当に知られちゃいけないのは、財布の中身と貯金通帳の残高。それだけは奥さんに知られちゃだめ。CIAより奥さんの方が恐いんだから(笑)。

―CIAより奥さんの方が恐い……名言いただきました(笑)。本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

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「MKウルトラ計画」とは

■MK、英語(mind control)をドイツ語(MIND KONTROLE)読みして名付けられた、アメリカ中央情報局(CIA)科学技術本部が極秘裏に実施していた洗脳実験のコードネーム。「MKウルトラ」の前身は、ナチスの人体実験に関与した科学者たちを集め行なった「ペーパークリップ作戦」といわれる。当初の目的は、洗脳の研究やスパイの自白薬の開発であった。しかし、やがて、人間の精神を意のままに操って殺人マシーンに変え、忠実な兵士として戦争に利用したり、冷徹な暗殺者に仕立てあげるといった、洗脳計画に発展していったといわれている。

■1953年から1960年代後半まで極秘裏に行っていた違法実験プログラムのコードネーム。1973年に、当時のCIA長官リチャード・ヘルムズがMKウルトラの関連書類の破棄を命じたが、75年に残されていた一部がアメリカ連邦議会で初公開され、全世界に衝撃を与えた。

■CIAの文書によると、「マインドコントロールの効果を立証するための実験」と称して、化学的、生物的な手段を用いた事に留まらず、放射性物質にも着手した事が明らかと成っているMK作戦の実態は、『ニューヨーク・タイムズ』(1977年8月3日付)に掲載された。また、過去25年間に2400万ドルもの巨額の資金が投入され、数万人もの囚人や精神病院の患者がモルモットにされたと報道している。

■1994年1月16日、『USニューズ&ワールド・レポート』誌は、
「冷戦時代にCIAが中心となって、麻薬や催眠術を用いた人体実験──洗脳実験を行なっていたことは、紛れもない事実である」と報じた。大学や監獄、精神病院で、CIAは被験者に麻薬を与えて薬がどのような影響を及ぼすかを観察、電気ショックと睡眠薬を交互に与えるなどの人体実験を行なったという。この内容は、日本の読売新聞でも報道された。
※参照http://enigma-calender.blogspot.jp/2013/12/Project-MK-ULTRA.html

■MKウルトラはこれまでに、メル・ギブソンとジュリア・ロバーツ主演のスリラー『陰謀のセオリー』(97)やジョナサン・リーベスマン監督のスリラー『実験室KR-13』(09)、ユアン・マクレガー主演の異色コメディ『ヤギと男と男と壁と』(09)といった映画のモチーフとなり、TVドラマシリーズ「フリンジ」や「エージェント・オブ・シールド」にも登場している。

■『RED/レッド』の副主人公の1人であるマーヴィンは、「政府機関の極秘プログラム」の過酷な実験に耐え抜いた数少ない人物の1人という設定。その結果超人的に研ぎ澄まされた感覚と記憶力を得たが、その代償として人格が破綻し、いかなる些細なリスクも排除しようとする危険人物になってしまった。娯楽性を重視した作品であるためコミカルに誇張されているが、劇中の台詞やDVDの映像特典(CIAの極秘情報)コンテンツなどでMKウルトラ計画をモチーフにしていることが判る。

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