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今春リリース『東方ロストワード』と、いま改めて知っておきたい「東方Project」の歴史
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今春リリース『東方ロストワード』と、いま改めて知っておきたい「東方Project」の歴史

2020-09-03 10:30
    lostword00-1024x512.jpg4月30日、スマホゲーム『東方ロストワード』がリリースされた。同作は、グッドスマイルカンパニー(開発運営はNextNinja)による、「東方Project」の“二次創作”RPG。

    リリースから約1か月で100万ダウンロードを突破した東方ロストワードのヒットをきっかけに東方Projectも再脚光を浴びているが、グッドスマイルカンパニーという“一般企業”がリリースしたゲームなのに、なぜ“二次創作”であることを殊更強調しているのか。東方はいわゆる“シリーズもの”ではないのか……などと疑問を持った筆者が、自分なりに調べてわかった“東方Projectの今と昔”の姿をまとめてみた。

    「東方」の歴史は古く、はじまりは約25年前に遡る

    東方Projectを「ニコニコ動画」や「pixiv」などで知った人は多いと思う(筆者もその一人)。しかし、東方Projectの作品自体は、ニコニコ動画やpixivで広く一般的に知られるよりはるか昔から存在しており、第1弾となるPC-98版ゲーム「東方靈異伝 ~ The Highly Responsive to Prayers.」は、「神主」ことZUN氏が大学在学中の1996年に発表したものだ。

    同作はシューティングゲームではなく、ZUN氏が1995年にプログラムの練習として作ったブロック崩しゲームだった。博麗靈夢(はくれいれいむ。当時は旧字体の「靈」を使用)が自機として登場する。

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    ▲東方Projectの主人公ともいえる「博麗霊夢」(画像は東方ロストワードから)

    翌1997年に、第2弾となる「東方封魔録 ~ the Story of Eastern Wonderland.」を「コミックマーケット52」に出展。東方Projectの作品が同人イベントにて頒布される。その後もコミケにて新作「東方夢時空 ~ The Phantasmagoria of Dim.Dream.」「東方幻想郷 ~ Lotus Land Story.」を頒布。1998年に、第5弾となる「東方怪綺談 ~ Mystic Square.」にて、ZUN氏の大学卒業と就職のため、一旦完結する。ここまでの5作は俗に「東方旧作」と呼ばれているという。

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    ▲東方Projectメインキャラのひとり「霧雨魔理沙」は東方封魔録が初登場作品(画像は東方ロストワードから)

    「上海アリス幻樂団」として活動再開

    2002年、4年ぶりに東方Project第6弾となるWindows版ゲーム「東方紅魔郷 ~ the Embodiment of Scarlet Devil.」が「コミックマーケット62」にて頒布された。サークル名を「上海アリス幻樂団」に改めての初出展となる。

    東方Projectの特徴的システムである「スペルカードシステム」も同作が初登場で、“東方”が広く認知されるきっかけとなった作品といわれている。2004年には東方オンリー同人誌即売会「博麗神社例大祭」も初めて開催され、以来年1回の開催となり、東方ファンにはおなじみのイベントとして定着(※ZUN氏及び上海アリス幻樂団は例大祭の運営に関与していない)。

    2005年の「博麗神社例大祭2」では、第9弾となる「東方花映塚 ~ Phantasmagoria of Flower View.」体験版plusが配布され、同年の「コミックマーケット68」にて完成版が頒布された。同作はZUN氏が東方Project制作を開始してから10周年を記念して制作された“ファンサービス”的な作品だという。

    2007年頃から前述のニコニコ動画やpixivが流行し、東方の二次創作もますます盛り上がりを見せる。特にニコニコ動画では、「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」「患部で止まってすぐ溶ける ~ 狂気の優曇華院」「チルノのパーフェクトさんすう教室」「Help me, ERINNNNNN!!」など、二次創作である“東方アレンジ楽曲”のMADが大流行したことから、もともと東方Projectを知らなかった、“同人の世界”にもそれほど明るくない一般層にも知られることとなったと考えられる(ちなみに筆者もその頃にニコニコMADで東方Projectを知った)。

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    ▲楽曲は東方ロストワードにも採用されている

    東方アレンジ楽曲は2010年にタイトーの音楽ゲーム「ミュージックガンガン!」への収録を皮切りに、現在はコナミの「BEMANIシリーズ」や、セガの“音ゲー”など、近年の音楽ゲームと“同人音楽”の親和性が高いことも相まって、幅広く収録されている。

    2015年には東方Project制作20周年を迎え、第15弾である「東方紺珠伝 ~ Legacy of Lunatic Kingdom.」が「コミックマーケット88」で頒布された。

    2020年6月現在、最新作は2019年の「コミックマーケット96」で頒布された、第17弾「東方鬼形獣 ~ Wily Beast and Weakest Creature.」。同人サークル「黄昏フロンティア」と共同開発された作品も含めると、第17.5弾「東方剛欲異聞 ~ 水没した沈愁地獄」の体験版が、2019年10月の「博麗神社秋期例大祭」で頒布されている。

    “東方シリーズ”と二次創作について

    これまで17作が発表されている東方Projectだが、“東方シリーズ”という括りはされていない。2005年の「4Gamer」でのインタビューで、ZUN氏が「東方はシリーズではない」と“シリーズもの”という括りに否定的な発言をしているので、ファンの間でも「東方シリーズ」とは呼ばない“暗黙の了解”的ものがあると考えられる。

    東方Projectの二次創作がここまで広がった理由については、「ZUN氏が二次創作に寛容だった」という説もある。しかし、当然ながらZUN氏は著作権を放棄していない。二次創作の著作権保有者はその作品の制作者で、二次創作を巡るトラブルなどは、上海アリス幻樂団は一切責任を負わないものとしている。ZUN氏によるガイドラインも設定されている( https://kourindou.exblog.jp/14218252/ )。

    ちなみに、東方ロストワードは、同作の公式サイトなどに「上海アリス幻樂団のゲーム作品『東方Project』を元に、許可を頂いた上で、自由な発想・解釈を加えて構成したものです。」という表記がある。

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    ▲ゲーム内でも表示される

    『東方ロストワード』、略して「東ロワ」とは?

    さて、話を東方ロストワードこと“東ロワ”に戻そう。冒頭の通り、本作はRPGで、プレイヤー(主人公)は「幻想郷」に迷い込んだ、記憶をなくした少女である。霊夢や魔理沙、紫などと、幻想郷に起こる異変を解決していくというのが、基本的なストーリーの流れとなっている。

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    ▲紫は操作解説などにも登場する“ナビゲーター”的役回りで、主人公にいろいろなことを教えてくれる

    「探索」では、最大6人まで入れるチームを組んで、バトル(※ストーリーだけの場合もある)に挑む。バトルでは「拡散」と「集中」2種類のショットを使い分けたり、「スペルカード」で敵を一気に蹴散らしたり、様々なコマンドを駆使して戦う。自分を強化するスキルのタイミングや、霊力を溜めてブーストで一気に畳みかけるタイミング、グレイズ(結界)を張るタイミングなど、“タイミングの読み合い”に奥深さを感じるバトルシステムである。

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    ▲白蓮のスペルカード『飛鉢「伝説の飛空円盤」』

    キャラクターは絵札を装備することで強くなることができる。絵札は主に「おいのり」(アイテム「賽銭」「封結晶」が必要)で入手可能。おいのりではごく稀にチームに加えることのできる仲間を迎え入れることもできる。

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    ▲絵札はおいのり以外にも、イベントなどで入手できることもある

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    ▲既にいる仲間や持っている絵札の場合、限界突破ができる

    キャラクターの強化はバトルに参戦して勝利するだけでなく、「おつかい」や、施設「寺子屋」「道場」に預けるという方法もある。仕事などで長期間ゲームを離脱せざるを得なくなった時などにうまく活用したい。

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    ▲ちなみにおつかい中のキャラクターも探索バトルに出撃できる

    東方に詳しくない“初心者”でも十分楽しめる!

    ここまで読んで、「でも東方詳しくないから……正直キャラの顔と名前全然一致しないし……」という人も大勢いるかもしれない。しかし、本作は東方のキャラクターやストーリーを知らなくても、純粋に楽しめると思う。ストーリーは本作のオリジナルなので、キャラクターの関係性、誰と誰がどういう繋がりか、なども特に覚えていなくても大丈夫。

    (もちろん、知っていた方が楽しみは広がると思うが)筆者のように、もともと東方に詳しくない、キャラクターの顔と名前も7~8人くらいしか一致していない人でも、純粋にひとつのRPGとして引き込まれるストーリーや、バトルの戦略性など、十分ハマれる要素はある。「東方は興味あるけどなんとなく世界観とかが難しそうで手を出しにくい……」等々、様々な理由で東方は未プレイという人にこそ、プレイしてもらいたい一作である。

    以上、改めて注目を集める東方Projectの歴史を振り返りつつ、その“今”を象徴する一作として東ロワを紹介してきたが、今後の両者の展開と、さらなる盛り上がりに期待したい。

    東方LostWord公式サイト:
    https://touhoulostword.com/[リンク]

    文/浦和武蔵

    ―― やわらかニュースサイト 『ガジェット通信(GetNews)』
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