東京都知事選が2月9日、投開票される。課題として脱原発や防災対策、東京五輪への取り組みなどが注目される一方、東京都の天下り問題はあまり注目されなかった。国に比べて地方自治体の天下り問題は陰に隠れがちだが、納税者にとって重要課題であることに変わりはない。

政府の監視を目的にする特定非営利活動(NPO)法人「万年野党」(会長・田原総一朗)は4人の都知事選立候補者に天下り問題についてアンケート調査し、結果を公表している(こちら)。その内容を紹介するとともに、地方公務員の天下り問題について考えてみる。

NPO調査「都職員の天下り249人」は氷山の一角

万年野党は舛添要一、細川護煕、宇都宮健児、田母神俊雄の4氏に公開質問状を送り、うち田母神を除く3氏から回答を得た。まず東京都の「天下り利権」について「重要課題と考えるか」、続いて「問題に具体的に取り組むか」と質問した。回答は「はい」と「いいえ」の二択で求めた。

回答した舛添、細川、宇都宮の3氏は上記2つの質問に、いずれも「はい」と答えている。具体的にどう取り組むかについては、それぞれ記述式で次のように回答した。

舛添は「求められる役職・職責を全うするのに、最適な人材が配置されることがその組織のパフォーマンスを最大化する上で重要なことであると考えています。また、都民の税金を有効に活用していくためにも、極力無駄を排除していくことが必要であると考えます。天下りの問題については、各外郭団体や関連財団において求められる人材要件に対して、最適な人材を個別具体的な人事を通して配置していくことを推進していくことが必要であると考えます」と答えた。

細川は「就任後に、皆様のご意見も参考にしながら、検討し、判断してまいります」という。

そして、宇都宮は「北海道ニセコ町などに学んで、都予算の財源・積算、また入札・コンペの評価などを市民が分かりやすい形で公開します。都の出資25%未満の監理団体も監査の対象とし、天下りや利権による都費の流出を防ぎます。監査委員(知事指名2)の人選を公開で拡げ、計数だけでなく仕事内容にもメスを入れてもらいます。天下りの受け皿を生むような、湾岸地域などの巨大開発予算を抑制します。特別会計で借金を作りながら巨大開発が進められており、都財政のあり方を歪めていると考えられます」と答えた。

簡単なアンケート調査だけで候補者の問題意識を評価するのは早計だ。それを認めたうえで、回答にはなんとなく各候補者の考え方がにじんでいる。

万年野党は、東京都にどんな天下り利権があるかについても独自に調査している。それによれば、課長級以上の東京都職員が再就職した先は、たとえば臨海地区の施設を束ねた臨海ホールディングスグループに25人、東京都公園協会に16人、東京都下水道サービスに14人など、合計249人という結果が明らかになった(こちら)。

これらは氷山の一角ではないか。というのは、私自身が人事監察委員会委員として天下り問題に取り組んだ大阪市の例と比べても、人数が少ないように思えるからだ。