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長谷川幸洋コラム【第70回】与野党はなぜ議論しないのか?失われた「集団的自衛権」の論点
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長谷川幸洋コラム【第70回】与野党はなぜ議論しないのか?失われた「集団的自衛権」の論点

2014-12-11 20:00
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    「アベノミクス信認」が焦点だが、もちろん集団的自衛権問題も重要なテーマ photo Getty Images

    今回の総選挙は安倍晋三政権が進めるアベノミクスを信認するかどうか、が大きな焦点になっている。

    日本の安全保障の本当の姿を前提に議論していない

    だが、実は外交防衛・安全保障政策もそれに劣らず重要なテーマだ。政治の目的は「平和と繁栄の確保」である。繁栄の前提が平和である点を踏まえれば、むしろ、外交安保のほうがずっと重要と言ってもいい。

    外交安保政策をめぐる最大の争点は、言うまでもなく集団的自衛権問題である。先の閣議決定をめぐって与野党の間で険しい対立があり、マスコミも賛成と反対に分かれて連日、大々的に報道した。

    だが、それで問題点が明らかになったかといえば、私はまだ全然、集団的自衛権の核心に迫っていないと思う。これまでも何度かコラム(たとえば、こちら)で触れてきたが、選挙戦が始まっても、与野党やマスコミが日本の安全保障について本当の姿を前提に議論しているとは思えない。

    そこで総選挙がいい機会だから、あらためて基本の論点を書いておきたい。

    一言で言えば、それは「米軍基地は何のためにあるのか」という問題である。多くの日本人は「米軍基地は日本を守るためにある」と思っている。はっきり言って、それは間違いだ。たとえば、沖縄の基地は日本を守るためにあるのか。そうではない。日本とともに極東地域を守るためである。

    岸信介首相が結んだ米国との秘密協定

    日米安全保障条約は第6条で次のように定めている。

    <日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

    前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、1952年2月28日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定(改正を含む)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。>

    前段にあるように、米軍基地は「日本の安全に寄与」すると同時に「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与」するためにある。「極東」を具体的に言えば、韓国と台湾、フィリピンだ。ついでに言えば、米国がベトナムで戦争しているときは、ベトナムも極東の範囲に含まれていた。

    日本人はつい、基地は日本を守るためと思いがちだが、米国から見れば、日本に劣らず韓国と台湾、フィリピンも重要なのである。それらの国を守ることで、ひいては米国自身の平和と安全に寄与する、と考えている。

    以上の条文と現実をあるがままに眺めれば、日本は自国の領土を米国軍隊に提供していることによって日本自身の平和を、それからここが肝心だが、日本だけでなく韓国や台湾、フィリピンの平和も守っている形である。これは、まったく集団的自衛権そのものだ。日本は米国に基地を提供することで韓国を守っており、それで日本を守っているからだ。

    具体的に言おう。北朝鮮が韓国を攻撃すると何が起きるか。米国は2つの理由から韓国防衛に動く。まず北朝鮮は朝鮮戦争の休戦協定を破ったことになるので、米国は国連軍としての立場から北朝鮮の攻撃を見過ごす訳にはいかない。次に米国は韓国と相互防衛条約を結んでいるので、条約上の防衛義務を果たすためにも韓国を守る。

    そのとき米国の軍隊はどこから出撃するのか。沖縄をはじめとする日本の基地からだ。かつてベトナム戦争で米軍機が沖縄基地から飛び立ったように、第2次朝鮮戦争が起きれば、米軍は沖縄基地から出撃するのである。

    ただし、日本と米国は基地使用をめぐって事前協議する建前になっている。米国は日本に対して基地使用を認めるように事前協議を申し入れるだろう。そのとき日本はどうするか。「沖縄基地は日本を守るためだから、韓国を守るために使うのは認められない」と拒否するのか。

    答えは、拒否しない。認めるのだ。歴代の政権は認めることを大前提にして日本の安全保障環境を構築してきた。たとえば1960年、当時の岸信介首相が日米安保条約を現行の形に改定したとき、日本は「事前協議がなくても基地の使用を認める」という秘密協定を米国と結んだ。 
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