自分はしがない競馬記者Y・Kといいます。そう、あれは「ダービー」という年に1度の大きなレースの予想を情けなく外した翌日のことでした。
「うーん、タンタアレグリア、全然ダメだったね~。応援して馬券も買ったのになあ~」。
競馬のことをしばし忘れようと女子を食事に誘ったのですが、彼女は遠慮なく、傷口に塩を塗ってきたのです。
ダービー当日、学生時代の友人たちと東京競馬場に来ていたことは聞いていました。予算は5000円とか言っていたと思うのですが・・・。
「ダービーで3000円使ってさあ。でも、電車が混んでいるときに帰るの嫌だから、目黒記念まで見てから帰ろうってなったのさ」。
ダービーのレース後取材が終わらぬ時間、ムシャクシャして自分は◎アドマイヤスピカの単勝●万円を先輩記者に頼んだことを思い出しました。
「で、日刊スポーツ見ながらみんなで予想してたの。そしたら、私と同じ誕生日の馬がいたんだよ。3月6日。それがね・・・、1番のヒットザターゲットッ。やーもう、うれしかったなあー。ヒットザターゲットだよ。勝っちゃうんだもん。すごかったよ」。
ふーんと相づちを打つ格好をしながら自分の心は確かに傷ついていたと思います。
「単勝と複勝だけじゃないんだよ。K君、スピカって書いてたから、4番でしょ。2番と3番もいっぱい印がついてたから迷ってたんだけど、一緒に行った子がそういうときはボックスだよって言うんで1から4までの馬連ていうボックス買ったんだ」。
ホラ、と言って彼女は携帯電話で撮った写真を見せてきました。
自分は言ったんです。君が当たったのは日刊スポーツの出走箱にしっかり馬の誕生日が記載されているからなんだよ、生産牧場やオーナーの名前も記載されているんだよ、見やすいでしょ、と。それに日本で走っている馬は日本産を中心に北半球産馬がほとんどだから、そんな誕生日で当たったとかいうのは不公平だよ、と。
「あっそう」と彼女はむげに言いました。そして、続けたのです。
「あー、もう、ダービー外してなかったらもっと買えたのにさあ。がっかりだよー。まー、いっかー、1万5000円くらいもうかっちゃったからさ~。てへっ。あー、ヒットザターゲット、ヒットザターゲット~」。
さあ、今週は安田記念。情けない思いはしたくないので頑張ります。【木南友輔】
目黒記念的中馬券のコピー