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La oscuridad de Columbia        〜事件簿 L 鉱山パートナー モンターニョの怪死〜
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La oscuridad de Columbia        〜事件簿 L 鉱山パートナー モンターニョの怪死〜

2020-11-25 14:31
    モンターニョという男

     モンターニョについては過去の記述でも何度もふれていますが、彼は私にとって兄弟
    と同じあるいはそれ以上の信頼できる友人であった。
    彼との最初の出会いを再現すると、まさにハリウッド映画の西部劇と同じ光景である。
    私がまだ一匹狼のエスメラルデーロであった頃の友達ヒルラルドが私のオフイスを訪ね
    てきた。

     ”モンターニョという男とクーナでエメラルド鉱山開発をやっている。今度オタンチェ
     でホテルをやることにしたので建設を始めたが資金が足りないので、その鉱山会社の
     持ち株半分を引き受けてくれないか、ハヤタ?”

     ”開発進行状況はどうなんだい?”

     ”もう1年ぐらい経ち鉱脈に近づきエメラルドも少しは出始めている”

     ”それでいくらつぎ込んだの?”

     ”一千万円くらいでオレの分は500万円だ、経費の領収書は全部揃っている”

     ”オレもそろそろ鉱山業やろうかと思っていたので、渡りに船だ。いくらで売ってくれ
     るの?”

     ”500万円、投資金額同額でというところだが、あんたはオレ友達だから割引の400万
     円でどうだ?”

     ”あんたの話が全部本当だということが確認できたら現金を払うが、買い取り値段は
     200万円だ”

     ”足元見られたとしてもそりゃひどい、ミニマム300万円だ”

    最終的オファー250万円

     ”あんたの性格はよく知ってるのでそれ以上は出してくれないだろう、しかたない
     それで手を打とう”

    と、まーこんな経緯で私の鉱山業着手が始まったのである。

     週末にヒルラルドと連れだってその開発中の鉱山へ旅立った。
    トヨタの四輪駆動ジープに用心棒5人とヒルラルドの総勢七人で、舗装のボゴタ街道
    をそれてから急傾斜の山道をゴツゴツと3時間もかけ合計5時間もかかり、谷底近く
    にあるそのクーナ鉱山にやっとたどり着いた。
    一服する間もなく、鉱山宿舎の一角からヒルラルドと男の言い争う声が聞こえてきた。

     ”オレの分を誰に売ろうとオレの勝手じゃないか、ハヤタは長年のオレの友達だ!”

     ”どこの馬の骨だかわからねえ外国人野郎なんかとパートナーが組めるもんか!”

    歩み寄った190cmの大男がカンペロ(ジープ)の脇に立つ私をジッと睨みすえた。

    腹の前のベルトに大型のピストルを挟み込み、上半身は裸で筋肉隆々の三十歳ぐらいの
    陽に焼けた白人男である。私も平然として、ジッと相手を見据えた。

     ”こいつがフエプータ(サノバビッチ)外人野郎か”

     ”外人にゃ違いねえが、お前みたいなフエプータじゃねえ”

     ”ナニオッ!言わせておけばいい気になりやがって、ぶち殺してやる!”

    こういう場合、当時のコロンビアでは100の中、8・90パーセント本当の殺し合いにな
    るのだ。私はカンペロや用心棒達のそばを離れて、庭の一角に立って、

     ”いつでもやってこい!”

    と、平然と言い放った。

    全く実際とはかみ合わない昨今の阿呆らしいアクションテレビ劇やハリウッド映画と
    違って、現実にはこういう場合、互いに弾を打ち尽くすまで撃ち合い、まず両者とも
    死ぬか、運良く片方が助かるかもしれない、ということを両者とも自覚しているという
    ことである。
    私の右手は右側の腰とベルトの間に挟まれているレボルバーに5・6cmのところにあり、
    彼の方は腹の右斜め前5・6cmのところである。
    10メートルを空けてまさに完全な決闘スタイルで、どちらかが手を動かせばテイオテロ
    (撃ち合い)が始まるのだ。
    彼の斜め横には20人ばかりの小銃を肩にした彼の私兵が立ち並び、私の斜め後ろには
    五人の用心棒が同じく緊張した面持ちで眺めていた。
    両者の微動だにせぬ緊張したにらみ合いが10秒、15秒と続き、30秒がたった時、彼が
    口を開いた。

     ”わかった、ハヤタお前が男であるのが。お前の名前はムッソーから鳴り響いている。
     これほど度胸が座ってるとは思わなかった。オレは臆病者とパートナーは組まない”

    そう言うと、下ろした右手を突き出して私の方へ歩み寄り、

     ”モンターニョだ、ムーチョ グスト(よろしく)”

     ”あんたの名声もコスクエス中で聞いてるよ、仲間になれて光栄だ”

    両者がっぷりと握手して、肩に腕を回して抱き合った。周りの観衆から一応に歓声が
    上がった。

     ”ワーオー! フエ マードレ、ブラボー!”

    たちまち冷えたビールで乾杯となった。

     それからのモンターニョと私の仲は、映画「明日に向かって撃て」のポール・ニュー
    マンとロバート・レッド・フォードのようなもので運命的な絆で結ばれた。
    彼はことごとく私の身辺に気を配り何度となく危険から私を救った。同様私は彼を弟の
    ように気遣い擁護した。この決闘はエメラルド・ゾーン(地帯)で皆の知るところとな
    り、あらかたの鉱山主どもが私に一目置いて鉱山業界に迎え入れるきっかけとなった。

     このクーナの鉱山はもともと彼の親分のオラシオ トリアーナのもので、モンターニョ
    の功績により親分から授かったものであった。
    オラシオは数年まえから同じクーナにカリの牧場主の有力者数人と開発した大きなエメラ
    ルド鉱山を持っていた。
    その端の方に特別にモンターニョに許可を与えて、鉱山開発を許していたのである。

     15歳の時からオラシオ一家に身を預け可愛がられてきたモンターニョは21・2歳のとき、
    オラシオの敵を2人殺ったのだ。収監されていた途中でオラシオ親分が金と力でもって彼を
    刑務所から解放したのである。私は彼の親分のオラシオ・トリアーナとはモンターニョを通
    して友達になり、ゆくゆくは同格の大鉱山主同士で鉱山開発のパートナーにもなった。した
    がってモンターニョは私を兄貴分のパートナーとして非常に尊重した。

     人を殺ると敵が増える、まして相手が大物だったらなおさらだ。
    モンターニョは常時20人ほどの自動小銃やライフルで武装した私兵を連れ歩いていた。

     彼らが3台のジープに分乗し、私の方の2台分のボデイガードと合わせて総勢30名ぐらい
    のいわば一個小隊の軍団が鉱山地区の村々を徘徊するのであるから、村人たちにとっては壮
    観な眺めであった。

     昼飯時間になると、通過中の農家の庭で餌を啄ばんでいる鶏や七面鳥を農家の主と交渉し、
    5・6匹買い取っては宿舎に持ち帰り、丸焼きにして皆んなで食べるのが日常だった。

     モンターニョはハンサムで人懐っこい性格をしていたので、村人や周りの人から大変慕わ
    れていた。あちらこちらの村に愛人を7・8人も持ち、各自に子供を産ませては面倒を見てい
    たが、気前よく懐からキャッシュを取り出しては彼女らに与えていた。

     行動を共にした数年の間に彼と私の間には数知れないほどのエピソードがあるが、ここで
    は紙面の都合上割愛しよう。
    そのモンターニョに不穏の面影が漂い始めたのは、私にさえ事情を告げずメデジンに出かけ
    て行った時からであった。

     ”ハヤタ、明日から2、3日メデジンへ行ってくるよ。留守を頼む”

     ”また、急に何用だい?”

     ”つまらんヤボ用でパーラ(民兵軍団)の友達に会いに行く”

    メデジンから帰って来てから、彼の行動が一変した。彼の帰着後2日して50人ほどの屈強な
    一見それとわかるパーラの若者たちが鉱山宿舎にやって来た。
    翌日から8台のジープに分乗したパラミリタール軍団がモンターニョを先頭に鉱山地帯を徘
    徊した。明らかに示唆行為であった。

     ”水臭い、どうしてそんな真似をするのかオレに言えないのか”

    と、詰め寄る私に、重い口を開いてモンターニョが告白したことは衝撃的な内容であった。

     ”オラシオがパートナー連中ともめている。オレが連れてきたのはメデジンの最も戦闘的
     なパーラだ”

     ”オラシオのパートナーというのはカリ カーテル(コロンビアのメデジン・カーテルに
     匹敵する強大なコカイン集団)のメンバーだな?”

     ”そうだ、ナンバー4・5ぐらいだろう”

     ”やってることはオラシオとあんたのそいつらに対する挑発行為でとても危険だな”

     ”わかってる、ハヤタあんたを巻き込みたくないからこれ以上何も言えないけど、あいつら
     に舐められたらおしまいだ。十分気をつけてるよ”

    それからその示唆行為の車列の練り歩きは2週間続いた。

    敵方から聞こえてくる情報は凄まじく激怒しているということだった。しかしながら鉱山地
    帯では周りの人間が総てエスメラルデーロのオラシオ側に分があった。いかにコケロが金と
    組織の規模で圧倒していてもエメラルド・ゾーンにおいては勇壮な我われエスメラルデーロ
    には手が出ない。屈辱をなめてカリ側は矛先を納めているという情報が鉱山中に伝わった。

    しかしそれからしばらくして事件は起こった。

     
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