●25日は和歌山毒物カレー事件から17年目となる日でした。この事件は1998年和歌山市園部地区の自治会が主催した夏祭りで、提供されたカレーを食べた67人が体調不良を訴え病院に搬送され、うち4人が死亡したものです。警察による捜査の結果、カレーライスに猛毒のヒ素が混入されていたことが判明し近くに住む主婦が逮捕されました。裁判の結果2009年5月18日に最高裁で死刑が確定しましたが主婦は無実を訴え現在再審を請求中です。
今回この欄で取り上げたのは事件そのものに対してではなく記事の最後の一行が気になったからです。そこにはこう書かれていました。
「地元の小学校では事件の影響で、今も給食の献立からカレーを外している」
たしかに事件直後は、カレーに対する恐怖感や拒絶反応はあったかもしれません。しかしあれからもう17年も経っているのです。もちろん、現在、地元の小学校に通う小学生たちは全員事件後生まれです。にもかかわらず、今も学校の給食のメニューにカレーが除かれているというのは驚きです。
この決定をしているのが学校側なのか保護者側なのかわかりませんが、カレーといえば全国どこの学校でも給食の好きな献立ランキングで常にベスト3にはいるといわれている人気メニューです。しかしこの町の小学生たちは学校の給食でカレーを食べることができないのです。
人に優しい配慮をするのは大切ですが、日本ではこういうとき、過剰に反応します。情けないことに、それが日本のお役所です。「もう17年も経ったから、カレーのメニューを復活させようではないか」と誰かが提案したりすれば、「では、批判が来たら、お前が責任を取るのか」と言い出す人間が必ず出てきます。で、結局、メニューの復活は消えるでしょう。
敢えて言いますが、カレーをメニューから消したのは、優しさでも何でもない、ただ批判が来るのを怖れた大人の事情にほかなりません。