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Vol.053 結城浩/ふと見上げたら桜/講演「数学ガールの誕生」(4)/本を書く仕事をするには?/
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Vol.053 結城浩/ふと見上げたら桜/講演「数学ガールの誕生」(4)/本を書く仕事をするには?/

2013-04-02 07:00

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年4月2日 Vol.053

    はじめに - ふと見上げたら桜

    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    今年は、朝に散歩する機会が多いため、たくさんの桜を見ています。 腰を落ち着けて「花見」というわけではなく、 「ふと見上げたら桜」や「風と共に花吹雪」という感覚で、 日常を桜が彩っている趣です。こういうのもよいですね。

    今年は「新年の抱負」を風化させないようにするために、 「新年の抱負」をしょっちゅう思い出すように心がけています。 もちろん、新年の抱負をがちがちに達成しようというわけではなく、 「ああ、そうだった。そういう抱負を抱いていたんだ」と思い起こした上で きちんと軌道修正しなくてはと思っているのです。

    実際の「新年の抱負」振り返りは後で行なうとして、 自分の性格に合わせた「予定の実行」について少しお話しします。

    結城はもともとは「きっちりやろう」という性格です。 かなり精密に細かいところまできっちりやるのが好きです。 まあそういう性格はプログラミングをするときにはとても役立ちます。 アバウトにコードを書いてもバグだらけになりますからね。

    でも「きっちりやる」ということは100%いいこと、ではありません (それに気づいたのは20代半ばを過ぎてからなんですが)。 まず、自分の能力やキャパシティというものがありますから、 「きっちりやる」ためには自分の活動範囲を狭くする必要があります。 広く深くやることは難しいからです。 そうすると「きっちりやる」ことを推し進めれば進めるほど、 活動範囲は狭くなっていくわけですね。これはちょっと悲しいものがあります。

    だから、意図的にずぼらに――アバウトになって、 「まあ、ここはこのくらいでいいや!」という見極めが必要になります (私の場合には、ですよ)。で、よくしたもので、 アバウトになればなるほど、今度は世界が広がってくれるようです。 活動の一部を深くするのを止めると、その分だけ活動の幅が広がる ということです。

    日々の活動そのものをやっている視点と、そのように 「自分の現在の活動はどういう深さで、どういう広さでやっているのかな」 という一つメタな視点と、その二つを持つことはフリーランスでやっている以上 とても大切なことではないかと思っています(上司がいませんからね)。

    ああ、これは以前「フロー・ライティング」で書いた「二つのモードの切り替え」に 通じるものがありますね。作業者モードと管理者モードの話です。

    さて、予定の話です。 自分の10代、20代の若い時代には「予定を立てて実行する」というのが苦手でした。 「予定なんか実際にやってみないとわからないんだから、 そんなのに無駄な時間を使うよりは実行しちゃおう」と考えることが多かったのです。 それがうまくいく場合もあり、うまくいかない場合もあり。

    でも30代、40代になってくると少しずつ考え方が変わってきました。 いや、単に能力が落ちたからかもしれませんが、 とにかく「予定」は大事だと思うようになったのです。

    予定が大事だと思うようになった理由の一つは記憶力の低下です (ああ、やっぱり能力が落ちたからか)。 「そもそも、何をしなくちゃいけないんだっけ」や、 「このあいだは、何をしていたんだっけ」と思うことが多くなり、 前もって予定を作っておかないと、 思い出すだけで非常に時間が掛かってしまう。思い出すといっても、 実際には前回自分が書いたり作ったりしたものを自分で見直して、 「ああ、そうだったそうだった」という状態まで 自分を持っていくということです。

    これはなかなか情けない状況ですね。でも現実です。

    予定(作業項目の洗い出しと大ざっぱな日数)を ざっくりでもいいから立てていると、 自分の記憶力は変わらないのだけれど、 比較的すばやく実際の作業に向かうことができるようです。

    予定が大事だと思うようになった別の理由としては、 うまく言えないのですが、人生の味わいのようなものです。

    作業のまわりの景色を楽しみ、 お仕事の全体像を眺めたいという気持ちがあるということです。 作業者モードで作業に入り込むと(それこそフロー状態になると)、 作業そのものに集中し、没頭してしまいます。 それは確かに楽しいのですが、もう少し身を引いて、 全体像をながめて楽しみたいという気持ちもあるのですね。

    予定を立てる、予定を見直すというのは、 ちょうどその「お仕事の全体像を眺める」ことに近いと感じます。 桜の花ひとつを見るのではなく、桜の木全体を見るように。

    結城は複数の仕事を並行して進めていますので、 予定も複数個立てることになります。 そうすると、自分がこれから送ることになる時間全体の様子も 予定を通して少しずつ見えてくる。 その感覚がとてもいいのです。 自分の仕事のポートフォリオを味わっている感覚なのでしょうか。

    「新年の抱負」には、 そのような自分の仕事のポートフォリオの一断面が見えています。

    一人仕事をしていると、大きさは限られていますが、 高い自由度があります。会議もなく根回しもいらない。 だからこそ、作業者モードだけで突っ走るのは危険です。 予定を立て、予定を確かめ、 「私はどんな時間を過ごしていきたいのか」を再確認して、 自分の限られた時間をていねいに生きていきたいと考えます。

    と、偉そうに書きましたが、 そんなふうに自分に言い聞かせていないと、 すぐにだらけてしまうからなんですけどね。

    さてさて「はじめに」がだいぶ長くなりました。 このまま「おわりに」まで突入しても困りますから、 今回のメルマガを始めましょう!

    今回のメインコンテンツは講演「数学ガールの誕生」の4回目です。 今回はコミック版のお話をお送りします。 それから「新年の抱負」と「Q&Aのコーナー」もお送りします。 どうぞお楽しみください!

    目次

    • はじめに - ふと見上げたら桜
    • 本を書く心がけ - 講演「数学ガールの誕生」(4)
    • 本を書く心がけ - 「新年の抱負」の振り返り
    • Q&A - 本を書く仕事をしたいですが、どうしたらいいでしょうか?
    • 次回予告 - フロー・ライティング
     
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