結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年4月9日 Vol.054

はじめに - 春の学び

おはようございます。結城浩です。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

春ですね。

先週末の大雨と大風が過ぎて、今日は暖かい日になりそうです。 (「今日」というのは4/8ですが)

春といえば、学びの季節だと思います。 新しい学校、新しい学年、新しい季節ですね。 何か新しいことを始めてみたくなる季節です。

結城が中学一年のころ、ラジオの基礎英語という講座がありました。 中学一年のときは聴かなかったのですが、二年になって続基礎英語という 講座を聴くようになりました。もしかしたら、あなたも聴いたことがあるかも? 現在は続基礎英語はなくて、基礎英語2という名前になっているようですね。

以前も書いたかもしれませんが、続基礎英語のネイテイブ・スピーカーに マーシャ・クラッカワーという女性がいらしてですね、 毎日このマーシャさんの声を聴くのが楽しみで楽しみでしかたがありませんでした。 萌えは学習の原動力ですね。

英語会話というラジオ講座も聴きました。こちらは東後勝明先生でした。 発音の際の「音の高低」と「音の強弱」を分けた解説がとても わかりやすくて感動したのを覚えています。 たしか、アクセントが強いことを大きな□で表現し、 弱いことを小さな□で表現していたはずです。

ラジオといえば、高校に入ってから「百万人の英語」という講座も聴きました。 こちらは曜日ごとに講師の先生が違っていて、J.B.ハリス先生が月曜日だったかなあ。 ハイディ矢野先生や、野村陽子(奈良橋陽子)先生などの講座を聴いたのを 覚えています。

「毎日少しずつ学んでいく」というスタイルが好きなのは現在も変わりません。 新しいテキストを開き、そこに書かれている未知の世界に思いをはせるというのは、 素直に楽しいことだと思います。

いまは中学生の子供が基礎英語を聴く年ごろなのですけれど、 親があれこれ言わないとなかなか聴いてくれないのでちょっとさびしいですね。

考えてみますと、自分が英語をそれなりに勉強したのは、 決して「将来役に立つから」という気持ちからではありませんでした。 「英語くらい身に付けておかなければならない」という気持ちはなくはないですが、 それよりも純粋に「未知のものを学ぶ喜び」があったからじゃないかな、 と思います。

英語を学ぶと日本語の学びにもなる――と結城はよく思います。 中学生・高校生だと、日本語を言語として自覚する機会は少ないですよね。 あたりまえのように使っているために、 特別な・時間をかけて習得すべき言語であるという意識は少ないです。

でも、英語を学ぶことで、「時制」のことや「構文」のことを学ぶと、 自然に「これは……日本語と違うぞ」と思い始める。 そうすると、そこから「いったいどこが違うんだろう」と思いは移り、 やがて、日本語のより深い理解につながるように思います。

たった一つしか学ばなければ、世界は広がらない。 でも、二つ学ぶと、その二つを比較・対照することで世界が広がる。 それは語学に限らずいろんなところに顔を出しそうです。

プログラミング言語もそうですね。 C, C++, C#, Javaといった言語と、Ruby, Perlといった言語はずいぶん違います。 LispやHaskellになってくるとさらに違う。そしてその違いを意識して学ぶと、 視点が変化して、自分の心の中の世界が広くなるように感じるのです。

話はあちこち飛びますが、結婚して驚くことはよくあって、 自分の実家ではこうしていたのに、配偶者の実家ではこうしていた。 私も家内も(まあたいていの人は)自分の生まれ育った家の習慣が「普通」 だと思いますよね。でも結婚して生活を共にしてみると「え!なんで?」と 驚くことがよくあります。

例を一つだけあげると、私は「デパート」と呼ぶけれど、 家内はつい「百貨店」と呼んでしまうそうです。 それは家内の両親が年配の方だったので、その語彙がうつったらしいです。

と、それはさておき、季節は春です。 何か新しいこと、新しい学びを始めてみたいなあという気持ちになりますね。

さて、そんなところで今回の結城メルマガを始めましょう。

今回はまず《夢中になって書く》『フロー・ライティング』をお届けします。 これが今回のメインコンテンツになります。

それから「本を書く心がけ」では、現在結城が取り組んでいる 「連載から書籍を作るということ」について解説します。

また、4月10日に刊行される『数学文章作法 基礎編』についても お話ししましょう。

それではお読みください!

目次

  • はじめに - 春の学び
  • フロー・ライティング - 私のコクピット
  • 本を書く心がけ - 連載から書籍を作るということ
  • 数学文章作法 - いよいよ刊行
  • 次回予告 - 新連載の検討