結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年9月10日 Vol.389
目次
- 良い本はどうやって見分けるか - 学ぶときの心がけ
- 自分の感情との付き合い方
- 頑なな知人を諭したい
- ネットで誤解されないために - コミュニケーションのヒント
- コミュニケーションに関心があるのに一人で働く理由
はじめに
結城浩です。
いつもご愛読ありがとうございます。
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初めに告知です。
この「結城メルマガ」は、まぐまぐ!とブロマガ(ニコニコチャンネル)とnote(ノート)という三つのプラットホームで同一内容を配信しており、料金はどのプラットホームでも同一です。
2019年10月からの消費税アップに伴い、以下のように税込料金が変わります。
毎号216円(毎月864円)
↓
毎号220円(毎月880円)
どうぞご了承ください。
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シリーズ第12作目となる『数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話』の執筆は現在第5章までたどりつきました。
数学が苦手な新キャラ「ノナちゃん」が登場する物語は、現在予約受付中。
今回は、いままでの「数学ガールの秘密ノート」シリーズとはひと味もふた味も違う一冊となります。
ぜひ、応援してくださいね!
◆『数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話』
https://bit.ly/hyuki-note12
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高校生とインターネットの話。
先日、「コンピュータやプログラミングなどIT関連の部活動を行なっている高校生限定」のアンケートをTwitterで行いました。質問は単純です。
部活動でインターネットを使うことはできますか。
というもの。回答として428票いただき、その結果は次の通り。
- 使える(63%)
- 学園祭時など限定的に使える(5%)
- 使えない(設備なし)(14%)
- 使えない(禁止されている)(18%)
きちんとしたアンケートではないとはいえ、結城のツイートに応答してくれた「IT関連の部活動をしている高校生」の14%が「設備なし」でネットが使えず、18%が「禁止されている」ためにネットが使えない。これは憂うべき状態ですね。
IT関連の部活動をやっている高校生が「ネットを使えない」というのは大変悲惨な状況であると私は思います。
IT関連で、インターネットほどコスパがいい教育手段はありません。特に、地域的な格差を一瞬で越えて世界の最前線に超低価格で触れることができる点。すでにインターネットのインフラは整っているのに、ITに強い関心がある高校生が部活動で使えないというのはたいへん悲しいですね。
もちろん、ITに強い関心があり気の利いた高校生なら、学校のネット環境が整うことなど期待せず、自分で何とかするでしょう。でも、IT関連の部活動で、同じ関心を持つ同じ年代の生徒同士が議論したり、調べたり、考えたり、作ったりする場で「ネットが使えない」なんてありえない状況でしょう。特に「禁止」はありえない。
私はそんなふうに思います。
良い本はどうやって見分けるか - 学ぶときの心がけ
質問
良い本(勉強のための本)の選び方について教えてください。
たとえばプログラミングを始めようと思った時、本屋さんにも図書館にもたくさんの本があり、そのタイトルが見えます。
タイトルを見てみると「たのしい〇〇」「やさしい〇〇」「おもしろいほどよくわかる〇〇」「〇〇入門」「△日でできる〇〇」「〇〇完全攻略」みたいなものが沢山ありすぎて、逆に全部うさんくさく感じてしまいます。
また、特に図書館で少し古めの本があると思うのですが、このような本の中にも良書はあるのでしょうか。古めの本や専門的な本についてのネットのレビューは少なく感じます。
『数学ガール』は中学生の時、図書室で手にとって読んでみたらとてもおもしろかったのでその時から読ませていただいています。
回答
ご質問ありがとうございます。
「こうすれば良い本が見つかる」という単純な答えやマニュアルはありません。それはちょうど「こうすれば良い人が見つかる」マニュアルがないのと似ています。
また、本には相性があるので人によって「良い本」は変化するという面もありますね。
ですから「自分にとっての良い本」の選び方は、自分で読みながら身につけていくのが一番だと思います。「こんな本を買って大失敗した!」という経験もまた、良い本を選ぶためには必要です。
以下では結城自身の《経験則》をいくつか書いてみたいと思います。
結城が「自分にとっての良い本」を選ぶ際の《経験則》
(1)著者買い・訳者買い
自分が過去に読んで「おもしろい」や「わかりやすい」や「役に立つ」と感じた著者の本を買うのは、かなり有効です。結局のところ、本は著者が書いているわけですから、これは当然ですね。
翻訳書の場合には、訳文の品質は読書体験に多大な影響を与えます。また、訳文がこなれていない場合、翻訳者がわけもわからず訳している危険性もあります。ですから訳者の名前をチェックすることは大事です。
(2)出版社買い
著者買いと同様に、出版社で選ぶのもまあまあ有効です。ただし、著者買いほど「良い本」を精密に判断することはできません。
(3)パラパラ読み・じっくり読み
本を買う前に「パラパラ読み」することは判断のために有効です。特に自分の力量に合っているかどうかの目安になります。
ランダムに開いた一ページを「じっくり読み」することも有効です。特に論理の進め方や行間の広さを確かめるのに有効になります。
「パラパラ読み」だけだと、何となく良さそうだけど、単に見た目だけの本をつかむ危険性があります。「じっくり読み」だけだと、良い本だけど自分が求めていることがそもそも書かれていない危険性があります。両方を組み合わせるのが大事です。
(4)目次読み・索引読み
本全体が何を扱っているかを調べるのに「目次読み」は有効です。また扱っているキーワードをチェックするために「索引読み」も使えます。
二冊の本があって、どちらにしようか迷ったときには、自分が知りたいなと思っている単語を索引で調べて、二冊のどちらがしっくりくるかを比べるのはたいへん有効です。
(5)ロングセラー
ベストセラーは裏切る場合があります。でも、ロングセラーは裏切ることが少ないです。古典的な本や、その分野でのバイブルと呼ばれる本は、失敗する可能性は低くなります。
図書館に入っている本を選ぶのは悪くはありませんし、分野によっては非常に良い本が揃っていることが多いでしょう。
ただし分野によっては古くなってしまう危険性はありますね。特にソフトウェアのマニュアル本やリファレンスの場合にはバージョンも大事になることがあります。その本に何を求めるかをよく考える必要があります。
(6)身銭を切る
自分でお金を払って買う(身銭を切る)と「良い本」を判断する力がつきやすくなります。自分のお金を出すと真剣味が違うからでしょうかね。
結城は「必要だと感じた本は高くても買う」という方針を持っています。私が買う本の場合、いくら高いといってもたかが知れているからです。
以上です。何かの参考になればうれしいです。
ご質問ありがとうございました。