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[MM日本国の研究839]「二宮金次郎に改革のヒントがある(後編)」
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[MM日本国の研究839]「二宮金次郎に改革のヒントがある(後編)」

2015-03-19 15:00
    ⌘                    2015年03月19日発行 第0839号
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     ■■■    日本国の研究           
     ■■■    不安との訣別/再生のカルテ
     ■■■                       編集長 猪瀬直樹
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                           http://www.inose.gr.jp/mailmag/

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     雑誌感覚で読める本の要約サイトflier (フライヤー)で『救出』が紹介され
    ました。登録すれば無料で読むことができます。
     → http://goo.gl/YKLhVB

        *                      *                   *

    「二宮金次郎に改革のヒントがある 人口減少時代の『成長戦略』論」

     少子化に歯止めがかからず、将来に消滅する可能性がある自治体がある―ー
    「消滅可能性都市」という論証が日本の脅威として受け止められていますが、
    人口減少の現状と未来を、地図、表、グラフ、図版を駆使してわかりやすく解
    説するムック『別冊宝島 図解ひとめでわかる地方消滅』が先月、宝島社から
    発売されました。猪瀬直樹の6ページにわたるロングインタビューが掲載され
    ています。『二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか』(文春文庫)の副題は
    「人口減少社会の成長戦略」で、そのエッセンスを解説しています。
     今回は、注目の後編を配信!

    『別冊宝島 図解ひとめでわかる地方消滅』はこちら⇒ http://goo.gl/ntOIni 

                  *

    ○「金次郎の改革」は再現できるのか

    ――金次郎の改革を現代に再現するにはどうしたらよいでしょうか?

     日本政府の税収はバブルの時に60兆円、歳出は70兆円でした。それがバブル
    崩壊後は税収が減ったのに歳出は増え続け、「ワニの口」のように開いてしま
    った。

     私が『二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか』を書いた2007年時点では、
    2011年までに「ワニの口」を閉じることが目標とされていました。累積債務の
    解消はすぐにはできないとしても、収支のバランスだけは当時の時点でも、す
    ぐに回復させなければいけなかった。だから小泉(純一郎)政権では構造改革
    を行い、民間にできることは民間に任せ、役所の経営を効率化しようとしたの
    です。

     ところがその後に民主党政権ができてからはさらに広がってしまい、自民党
    が政権復帰した後も止まらなかった。今は税収50兆円に対して歳出100兆円。
    「ワニの口」は広がるどころか顎が外れてしまいそうです。金次郎が考えた分
    度は、今の日本国にこそ必要でしょうね。

    ――現代の分度はどうすれば実現できるのでしょうか?

     税収が減っているのに、各省庁の要求する予算が毎年増えるのは、時代にそ
    ぐわない不要な事業もあるはずなのにそれを削ることなく新しい事業の予算を
    要求してくるからです。

     役所の場合、それぞれの事業に根拠となる法律があるので、一度ついた予算
    をなくすのは確かに難しいことではあるのですが、だからなおさらのこと官僚
    機構に、予算を獲得してくることのインセンティブだけでなく、減らすことの
    インセンティブを設定する必要があります。

     あとは外部監査。東京都は1999年に「包括外部監査」の制度を導入して、10
    人ほどの公認会計士のチームに、都の各局の支出をチェックしてもらっていま
    す。

     ところが国には国の機関である会計検査院しかない。会計監査院も頑張って
    はいますが、第三者機関と比べればどうしてもチェックが甘くなります。外部
    監査がない官僚機構は必然的に肥大化します。

    ――最終的に日本が人口減少を克服するための最大の障害は何でしょうか?

    「規制」の問題は大きいでしょうね。既得権益の利益の分配のためにあった規
    制を変えて、既得権益のない人たちでも新しいビジネスを立ち上げやすい環境
    にしていかなければいけない。

     ただ、金次郎が桜町領で最初にやったのが領民のマインドを変えたことだっ
    たように、個人個人のモチベーションの問題は意外と大きいと思います。実は
    僕が2020年のオリンピック・パラリンピックを東京に招致したのも、「10年後、
    20年後に自分がなにをしているか」というライフスタイルイメージが描けない
    人が、今の日本に増えていると感じたからです。

     かつての高度成長期にあっては、誰もが何歳までに結婚し、何歳までにはマ
    イホームを持ちたい、マイカーを持ちたいなどの将来像を描くことができまし
    た。ところが成長が途絶え、インセンティブが失われた社会では、誰もが明日
    とか明後日のことしか考えられなくなり、刹那主義に陥ってしまう。

     しかし「2020年」という少し先の年が目標として設定されることによって、
    未来の自分をイメージできるようになる人、いくらかは気持ちが変わるという
    人も多いんじゃないでしょうか。

     5年後のオリンピックが東京に限らず多くの日本人にとっての誘導灯という
    か、職場なり学校なり、それぞれの持ち場でモチベーションを保っていくため
    のものになってほしい。そう思っています。
                                  (後編 了)

    ◎本インタビューが掲載され、図解満載の『別冊宝島 図解ひとめでわかる地
    方消滅』(宝島社)はこちら→http://goo.gl/ntOIni

                                  * 

    ■本の要約サイトflier (フライヤー)で「読書のコツ」について猪瀬直樹イ
     ンタビューが掲載されています。
     → https://www.flierinc.com/features/interview002 

    ■3月15日発売の「フラッシュ」の最後のページ「妻へ夫へ 永遠のラブレ
     ター」最終回に猪瀬直樹が登場しています。

    ■週刊読書人3月6日号で石井光太×猪瀬直樹トークライブ「3.11を語り継ぐ」
     が載録されています。→http://goo.gl/jG9Tnw 

      臨場感―震災当日自分は何をしていたか/一通の緊急SOSを巡る一筋の
     ライン/死を見つめないメディア 報道と現実との乖離――。

    ■クリエイターと読者をつなぐサイト cakes(ケイクス)で『作家の誕生』連
     載中です。→ https://cakes.mu/series/3311 

      太宰治は芥川龍之介の写真をカッコイイと思った。文章だけでなく見た目
     も真似た。投稿少年だった川端康成、大宅壮一。文豪夏目漱石の機転、菊池
     寛の才覚。自己演出の極限を目指した三島由紀夫、その壮絶な死の真実とは。

    ■動画書き起こしサービス logmi(ログミー)で元プロ陸上選手の為末大さん
     との対談「日本のスポーツはなぜ体罰的なのか? 為末大氏が語った”遊び”
     としてのスポーツ論」がアップされました。→ http://logmi.jp/39351

    ■猪瀬直樹が「755」をはじめました。
     →http://goo.gl/RO9Vax 
                                        *
       
    「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp

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