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  • [MM日本国の研究861]「東京五輪招致から2年」

    2015-09-03 15:00
    ⌘                    2015年09月03日発行 第0861号
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            「必死に縦割りを超えていこうとした」
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        「なるほど『戦後レジーム』でなく『黒船レジーム』で考えると
           “現代”がよくわかるのですね!」(読者の声)
               「目からウロコの日本近現代史!」(読者の声)

          □ 戦後論ではみえない“日本国”の正体 ■
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      験を、現代の視点から再び読み解き語ります。

      憂国の視点を持ちつつ安直な国家批判や既得権益批判は決してしない、作
      家・猪瀬直樹ならではのファクトとエビデンスに基づいた批評と、現代に
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    「猪瀬前都知事、現在の心境語る 東京五輪招致から2年」

                       (スポーツ報知9月1日付より抄録)

     2020年東京五輪・パラリンピックは、13年9月7日(日本時間8日)、
    アルゼンチン・ブエノスアイレスのIOC(国際オリンピック委員会)総会で
    招致が決定した。歓喜の輪の中心にいたのは、招致委員会「チーム・ニッポン」
    を率いた当時東京都知事だった猪瀬直樹氏。間もなくあれから2年、新国立競
    技場や五輪公式エンブレムを巡り問題が相次ぐ東京五輪の行方を、猪瀬氏はど
    う見ているのか―。今の思いを聞いた。

     今年5月に突如、表面化した新国立競技場建設費問題。約2520億円にまで膨
    れ上がった総工費について、事業主体のJSC(日本スポーツ振興センター)
    の説明が二転三転した。2年前、五輪招致によって日本中に湧き上がった興奮
    は、もはや冷めきった感すらある。猪瀬氏は言う。

    「招致活動では『運営能力や協調性がある』と日本の良いところをアピールし
    てきた。だが、長所と短所は裏腹。今回は皮肉にも『同調性圧力に弱い』『リ
    ーダー不在』といった短所が如実に出てしまった」

     13年9月7日、ブエノスアイレス。IOC総会で、世界が固唾をのみ見守る
    なか、ジャック・ロゲ会長が「トーキョー」と東京の勝利を告げた。最終プレ
    ゼンテーションで、世界中の人々の心をつかんだ、フリーアナウンサーの滝川
    クリステルの「お・も・て・な・し」スピーチは、猪瀬氏の思いがベースにあ
    った。

    「東京は電車が3分間隔で正確に動き、タクシーは安全に指示した場所へ送り
    届けてくれる。当たり前のようだけど、一人一人が持ち場できちんとした仕事
    をする成熟した独自の文化がある。それが欧州にはない、『おもてなし』の文
    化だった」

     総会のスピーチで、安倍晋三首相はイラク人女性建築家のザハ・ハディド氏
    がデザインした新国立について「どんな競技場とも似ていない真新しいスタジ
    アム」と説明した。

    「ザハ氏や(デザインコンペ審査委員長の)安藤忠雄さんの悪口を言う人がい
    るが、彼らは悪くない。あくまで国際コンペでデザインを描き、選んだだけな
    んだから。あとは施主の問題。価格設定も業者選定も不透明だった」

     新国立の設計を進める過程で、JSCは各種競技団体などから128項目の
    要求を取り入れた。当初1300億円と見積もられていた総工費は、13年7月、
    約3500億円にまで膨れ上がった。

    「知らぬ間に、あんなことになっていた。JSCは大会組織委員会の森(喜朗)
    会長の了承を得なければ、競技団体の要望をカットできない。結局、根回しが
    できないJSCの無責任体質によって、2年間を無駄にした」

     総工費は乱高下し、今年7月に2520億円と発表されたが、首相判断で建設計
    画が「白紙撤回」された。その後、JSCを監督する文部科学省の担当局長が
    辞任したが、省庁のトップの責任は不明確なままだ。

    「縦割り行政のために情報が共有されないという日本の最悪の部分が露呈した。
    官邸がもっと早く対処すべきだった。しかし、官邸の力をもってしても組織委
    をなかなか制御できなかった。内閣支持率が下がり、(国会で)安保法案を強
    行採決した翌日に、ようやく白紙撤回となった。終戦間際の日本と似ている。
    (米国などによる無条件降伏勧告の)ポツダム宣言は7月に発せられたが、広
    島、長崎に原爆が落ちるまでズルズルと受諾を先延ばしにした。天皇が御聖断
    を下した時は、すでに遅かった」

     不可解なコストの乱高下はJSCや文科省が、ゼネコンにつけ込まれたので
    はないかとの指摘もある。

    「最初から建築のプロである国土交通省に任せておくべきだった。大規模建設
    に実績のない文科省では、ゼネコンと交渉はできない」

     政府は8月28日、総工費を1550億円に抑えた新国立競技場の整備案を発表し
    たが、冷房設備の設置を断念した。

    「五輪が行われる夏は蒸し暑く、クーラーがないとなると、熱中症が心配。高
    齢者や障害者の方も見に来るわけだから、予算が増えることになっても考え直
    してほしい」

    ※ エンブレム問題とは? 5年後の祭典に望むことは? 以下全文は、スポ
    ーツ報知ウェブサイトでぜひお読みください。
    http://www.hochi.co.jp/topics/20150901-OHT1T50029.html

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  • [MM日本国の研究860]「警備業の礎をつくったピンカートン探偵社」

    2015-08-27 15:00
    ⌘                    2015年08月27日発行 第0860号
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     日本の「安心・安全」はどうして成り立ってきたか――。敗戦・占領、再武
    装、復興の象徴・東京五輪警備……。民間警備会社の黎明期の秘話から戦後史
    の謎を解き明かす猪瀬直樹の意欲作「民警」が「週刊SPA!」誌上で大好評
    で連載中です。

     今回のメルマガでは、まだ読んでいない読者のために、特別に発売中の最新
    号「警備業の礎をつくったピンカートン探偵社」から、さわりをお届け!

     「19世紀半ばのアメリカにつくられたピンカートン探偵社は、公警察の力が
      及ばない時代に、贋金造りや列車強盗や殺人など、無法地帯で起きる犯罪
      を防ぐ警備業として生まれた。後のFBIやCIAの捜査手法のすべての
      基礎をつくったことで知られている……」

     全文はぜひ書店・コンビニで本誌をお求めください。

     ・週刊SPA!の電子版→ http://www.magastore.jp/product/27821
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                  *

    「警備業の礎をつくったピンカートン探偵社」 

     民間軍事会社ブラックウォーター社が2007年にイラクのバクダッドで起
    こした一般市民14名の殺害と18名への傷害事件は、ようやく2014年に刑事
    責任を問う裁判が始まった。その仔細はジェレミー・スケイヒル著『ブラック
    ウォーター─世界最強の傭兵企業』に記されているが、ブラックウォーター社
    副社長は民間軍事会社の役割に言及するにあたってこう述べた。

    「エイブラハム・リンカーンが就任式に臨もうとしたとき、ピンカートン社以
    外に自分を警護できる会社を見つけられなかったことを思い出す。ピンカート
    ン社は、米国の新大統領を警護するという問題に対する民間セクターを使った
    解決策だった」

     ピンカートン探偵社がかつて、19世紀にリンカーンの警護をして大統領就任
    直前の暗殺計画を未然に防いだ、という事実はアメリカではよく知られている。
    それを踏まえて、ブラックウォーター社はやや開き直りの弁明をしているので
    ある。

     探偵というとコナン・ドイルのつくったシャーロック・ホームズも、あるい
    は日本の江戸川乱歩の明智小五郎シリーズも、いわば謎解きによって犯人を見
    つける仕事として描かれている。

     1819年生まれのピンカートンが19世紀半ばにつくった会社は、公警察の
    力が及ばない時代に、贋金造りや列車強盗や殺人など、無法地帯で起きる犯罪
    を防ぐ警備業として生まれた。智恵較べで謎を解くのではなく、工作員を派遣
    して潜入捜査をしたり、オトリ捜査をしたり、司法取引をしたり、後のFBI
    やCIAの捜査手法のほとんどすべての基礎をつくったことで知られている。

     リンカーン暗殺未遂事件も、暗殺グループの噂を聞き、ピンカートン社の探
    偵が慎重に内偵し、相手側に潜入することで秘密裏に情報を入手し、土壇場で
    出し抜くという方法を用いた。

     シャーロック・ホームズの『恐怖の谷』には、英国ではなく米国の1875
    年の冬の風景が描かれているが、ピンカートンの時代の雰囲気がよく表わされ
    ている。

    「夜行列車がヴァーミッサ谷の上方にあるこのへんの中心地ヴァーミッサの町
    をさして、急傾斜をあえぎながら登っていた。ここからバートン交差点へかけ
    て線路は下りで、ヘルムデールをすぎ、純然たる農業地のマートンへと通じて
    いる。鉄道は単線だけれど、いたるところに側線があって、石炭や鉄鉱を満載
    したおびただしい数の貨車が行列をしており、地下に埋蔵された豊富な資源が、
    アメリカ合衆国でもとりわけ人煙まれだったこの地方に、多くの荒くれ男ども
    を引きつけ、一種の繁栄を来していることを語っていた」
     
     産業革命は勢いがすさまじい。ゴールドラッシュの時代、ヒト、モノ、カネ
    が広大な風景を一変させ、欲望と無法がないまぜに荒れ狂う。

    『恐怖の谷』は1部と2部に別れて独立した作品のように書かれており、1部
    はホームズが相棒ワトソン博士と謎を解いていくのだが、2部は文体がハード
    ボイルド風に転調し、ハリウッド映画のようなテンポで物語が展開する。先に
    引用したのはその2部の冒頭である。

     この無法地帯に「中肉中背の男で、三十歳を越したばかり」の人物が潜入し
    て荒くれ男たちの仲間、結社に加わっていくのだ。敵対する人物を平気で殺す
    ボスは、当初は新参者を疑い、試すような試練を課すが、しだいに信用するよ
    うになっていく。その人物がピンカートン探偵社の潜入工作員であることは読
    者には知らされない。

     終幕に近づいたころ、探偵が潜入しているらしい、との噂があって、こんな
    会話が出てくる。

    「なんだ、ばかなことをいうな! ここにゃ巡査や探偵がうようよしているじ
    ゃないか。それで一度だって損害をうけたことなんかありゃしないじゃないか」
    「いいや、こんどのはこの土地の探偵じゃない。なるほどこの土地の探偵なら、
    知れたもんだ。たいしたことはできやしない。しかしピンカートン探偵局の名
    は聞いているだろう?」

    「そんな名は何かで読んだことがあるな」
    「うそはいわないが、あいつらにねらわれたら、君だってあごを出すぜ。ここ
    いらにいる『できたらやる』政府の連中とはことが違う。真剣でとっくんでき
    て、どんな手段によっても、かならず目的を遂げずにはおかない。だからピン
    カートン探偵局のやつに、本気で向かってこられたら、われわれはまず根こそ
    ぎだね」

     舞台となる1875年は、ピンカートン社がそれなりに実績と名声を得た時
    期だった。             
                 (週刊SPA!9月1日号掲載「民警」より抄録)

                  *

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  • [MM日本国の研究859]「官僚主権の国、『縦割り』の呪縛」

    2015-08-13 15:00
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      詳しくは→ http://www.tv-asahi.co.jp/asanama/contents/theme/cur/ 

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    「官僚主権の国、『縦割り』の呪縛
     敗戦も新国立競技場の迷走も同じ病根」

                    (「夕刊フジ」8月11日号への寄稿より)

     日本社会の転換点を先の大戦での敗北に位置づけ、「戦前」と「戦後」を非
    連続に扱うのは間違いである。
     国家の主権が天皇に帰属する「天皇主権」の世の中から、敗戦によってその
    主権が国民に移り、「国民主権」に変わった――とする見方だ。

     だが、この認識は本質を見誤っている。日本社会の構造は、「戦前」も「戦
    後」も変化はない。近代化を主導した官僚が主権を握る「官僚主権」の国なの
    である。それはすなわち、官僚組織の宿痾(しゅくあ)ともいえる「縦割り」
    の呪縛に縛られ続けていることをも示している。

     日本は、国家として意思決定する統合機能を持たなかったがために戦争の泥
    沼に突入し、負けた。私は、その過程を拙著『昭和16年夏の敗戦』(中公文
    庫)で書いた。

     日米開戦直前の昭和16(1941)年夏、当時の帝国政府は、各省庁や民間企業
    から若手エリートを集めて「総力戦研究所」を立ち上げた。模擬内閣をつくり、
    日米戦争のシミュレーションをするためだ。彼らは、あらゆるデータを分析し、
    「敗戦必至」という結論に行き着いた。

     戦争継続の絶対条件は、インドネシアの石油補給路を確保することだった。
    そこで彼らは、石油を運搬する商船が撃沈される確率と日本の造船能力を分析
    した。撃沈率が製造率を上回れば、戦勝のシナリオは崩れ去る。導き出された
    のは、「補給路は断たれる」、つまり「敗戦」という答えだった。大本営も同
    じく戦況分析を行ったが、権益をめぐって対立する陸軍と海軍が、戦争遂行の
    ために最も重要な石油の備蓄量を隠し合った。そのために正確な分析ができず、
    開戦になだれ込んだ。引き返すポイントがあったのに、組織の「縦割り」の壁
    を越えられなかった。

     この構図は、2020年東京五輪に向けた新国立競技場の建設問題でも繰り返さ
    れた。
     文部科学省やJSC(日本スポーツ振興センター)が、組織のしがらみにと
    らわれて情報を共有できず、正しい意思決定がされないままにあの混乱を招い
    た。

     思えば、明治や大正の時代には明治維新を成し遂げた元老たちがいた。
     彼らは、官僚組織の「縦割り」を飛び越えた意思決定と国家運営ができる存
    在だった。

     昭和に入り、元老たちの強力なリーダーシップは失われて硬直化した官僚組
    織だけが残った。

     そして、残された官僚らによる「戦略なき国家運営」の末路が70年前の敗
    戦だったのである。

     戦後、米国の傘の下に入り、安閑と過ごしてきた多くの日本人は、その病巣
    にも気づかず、脱却できずにいる。

     新国立競技場をめぐる迷走がそのことを図らずも証明した。いま一度70年
    前の敗戦の意味を問い直すべき時が来ている。

               *   *   *

    ◇ 終戦記念日未明の14日(金)深夜の「朝まで生テレビ」に猪瀬直樹が出演、
      戦後70年スペシャルで、深夜1:55~放送開始!
      詳しくは→ http://www.tv-asahi.co.jp/asanama/contents/theme/cur/ 

    ◇ 日本の「安心・安全」はどうして成り立ってきたか――。敗戦・占領、再
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      上で大好評連載中。

      発売中の最新号の第12回は「家業での修行ののちもたげてきた独立心」

      「敗戦から10年。貧しさは消えたわけではないが、市井の人々の日常は活
      気に満ちていた。進駐軍に反感を抱いた少年は青年となり、父の家業を継
      ぐこととなった……」

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     ・週刊SPA!の電子版→ http://www.magastore.jp/product/27260
     ・紙版はアマゾン→ http://goo.gl/qSXsQz                   

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