いつも大変お世話になっております。斉藤です。
明日11月13日、一年ぶりの著書「BEソーシャル!」が出版されます。
前著「ソーシャルシフト」を書いていた去年の夏の日、「単なるソーシャル系の流行りもの書籍ではない、クオリティが高くて真に役立つものを創りたい」という強い想いをもっていたこと、覚えています。そんな気合いが、フェイスブック非公開グループ「ソーシャルシフトの会」につながり、その場で、出版する前から読者の方々と緊密に交流させていただくことができました。実は、これも予めきちんと計画していたわけではなく、少し余裕ができたから、思い切って無印良品さんの「モノづくりコミュニティ」を地で行ってみよう。そんな、思い立ったら吉日で始めたものでした。
おかげさまで、とても多くの方から大変に貴重なご意見をいただき、「ソーシャルシフト」は一人で部屋にこもって書くより、ずっとクオリティの高いものに仕上がりました。もっと有り難かったのは、出版後もオンライン、オフラインを問わず、日本中の読者の皆さまと深く接することができたことです。今まで、著者と読者が接する場は「書籍」というほぼ唯一の顧客接点に限定されていました。しかしながら「ソーシャルシフト」における著者と読者の関係は「リアル」であり「持続的」です。「モノを創る、モノを売る、売った後にサポートする」といったバリューチェーンに生活者が関与する新しい価値創造のカタチ。これを僕自らが経験でき、そのプライスレスな価値を実感できたことは、いくら感謝してもしきれないものでした。
さて、今回の「BEソーシャル!」では、それらの実体験を通じて、とても強い使命感を持って取り組むことができました。ソーシャルメディア活用に対して、事業成果への過大な期待を持って取り組むと多くの場合は失望に終わります。一方で、そのオープンな文化に触れ、自らのビジネスのスタイルを変革し、新しい時代に溶け込もうとしている企業にとって、ソーシャルメディアは欠かせないツールとなりました。
ソーシャルメディアは特別なテクノロジーではなく、あくまで電話やメールの延長にある、新しいオープンなコミュニケーション・プラットフォームです。情報過多の時代において、電話で一方的な売り込みをしても効果がうすいように、ソーシャルメディアで売り込みしても効果はありません。電話はそもそも売り込みのためにあるものではなく、話し手と聴き手がいつでもどこでもコミュニケーションするために生まれたツールです。同じように、ソーシャルメディアは、新しい時代に、人々がお互いの信頼を深めあい、シェアを通じて貴重な情報を流通させるためにある道具なのです。
今、大切なのは、ソーシャルメディアを活用する「DOソーシャル」を超えて、ソーシャルメディアに溶け込む「BEソーシャル」の考え方だと思います。企業の評判がたちどころに広まり、ウソの通用しない世界。その中で、企業は誠実になり、社会に貢献する存在になければならない。今まで、選択肢のひとつだった誠実さが、これからは必須になる。それを理解していない、パワーマネージメントを強硬する企業は、そう遠くない将来に行き詰まることでしょう。
僕は日本が本当に好きだし、日本人であることに誇りを持っています。そんな僕が今回のテーマの一つとしたのは、日本的経営の光と陰についてです。(ご興味ある方は、ITmediaの 連載記事 をご覧ください) おもてなしの心が根づく日本企業のサービスは、世界でもトップレベルにあります。しかしながら、その素晴らしいサービスは、日本人の持つ滅私奉公の心、社員の我慢強さを礎としているケースが多いのです。「過労死」という言葉は世界各国の辞書に自国語として掲載されています。最近、中国で過労死が増えているというニュースがありましたが、先進国における過労死は極めて少なく、特にホワイトカラーの過労死は例がほとんどないと言ってよいでしょう。
ソーシャルメディアの時代、社員や顧客は「歩く広告塔」になり、顧客接点は「広告が生まれる瞬間」となります。今、我々ビジネスパーソンにとって大切なことは、企業姿勢を正し、自社サービスの使命や価値観に思いをめぐらし、社員と顧客、さらにはあらゆるスタークホルダーを幸せにするような企業に生まれ変わることです。社員の幸せは生産性や創造性を向上させ、顧客の幸せは結果的に売上に貢献します。そして「三方よし」の考え方は、持続的な企業存続につながります。数値を追いかけるのではなく、自社を内面から磨いていくことこそ大切だ。そんな想いを、この「BEソーシャル!」という書籍に込めました。
今回の執筆においては、とても多くの資料を丹念に読み込み、数多くの取材を行いました。そして、学問的な裏付けや30社に及ぶ国内外の素晴らしい事例を盛り込むカタチで、丁寧にストーリーをすすめました。すでに4000名に近いグループとなった「ソーシャルシフトの会」でも、前著同様に大変多くの貴重なご意見をいただき、数多くの加筆修正をさせていただきました。ここにあらためて、ソーシャルシフトの会の皆さまに御礼申し上げます。
「ソーシャルシフトの会」には、各地域ごとのリアルな交流を目的とした地域版ソーシャルシフトの会が全国12都市にできています。今年は、それぞれの会の皆さまが主催者となり、各地で出版記念講演 (ご興味ある方は こちら をどうぞ) も開催いただく運びになりました。感謝の念にたえません。ちなみに出版当日である明日の夜は、昨年同様に、さとなお(佐藤尚之氏)が会長をつとめる「助けあいジャパン」でのチャリティ講演「助けあいジャパン チャリティセミナー 2012」での登壇を予定しており、そこで完全リニューアルした新講演を初めてお披露目させていただくことになっています。
またまたまた、能書きが長くなってしまいましたが、そんなこんなで、今年も本を書きました。これから全国を回ります。できるだけ多くの皆さまとご一緒させていただき、リアルで持続的なお付き合いをさせていただきたいと思っております。もうすぐ51才になるにもかかわらず、相変わらず朝まで痛飲する酔っ払いであったり、ガキのように手に負えないイタズラ野郎であったりしますが、そんな男だという事で諦めていただき、今年の本も、なにとぞご愛顧のほど、宜しくお願いいたします。
(参考資料)
書籍内容を盛り込んだ講演スライドはこちらです。Slideshare ないし「ソーシャルシフトの会」(申請いただければ即許諾させていただきます) からダウンロードも可能です。なにとぞ宜しくお願いいたします。
by 斉藤 徹