9月1日「防災の日」を皮切りに東京・仙台・大阪・石巻・大垣の全国5会場でアイデアソン・ハッカソンの開催を行い、ハッカソンで勝ち残った各会場2チームが品川:Microsoft本社に集結しました。
まず初めに株式会社 ゼンリンデータコム 取締役 企画本部長 奥様よりご挨拶がありました。
「私も石巻 アイデアソン・ハッカソンと大阪のアイデアソンに参加しました。ファシリテーターの方々が持っている、アイデアを引き出すノウハウやアイデアをまとめていくノウハウ。僕自身も会場にいて、ついついアイデアを考えてしまいました。是非、みなさん今からのプレゼンテーション頑張ってください!!」
プレゼンテーション5分、審査員による質疑応答約3分の後、厳選なる審査の上で各賞が決定しました。賞は、全部で9賞。その中で今回は3タイトルをピックアップさせて頂きレポートをさせて頂きます。
アース・コミュニケーション・アワード2013 最優秀賞
チーム 防災マッシュアップ
サービス名「逆マッシュアップで誰でも作れる防災マップ」
サービス概要
誰でも臨機応変に防災に役立てるためのマップを作成できるプラットフォーム。災害時には常に新しいニーズやデータが発生するので、固定のデータ形式だと難しい。防災マップに使用するデータは、お天気APIやいつもNAVIのデータだけではなく、各種オープンデータとの連携も可能です。
アプリはそのままに、中のデータだけを入れ替えるという逆マッシュアップの手法を提案します。プログラム経験がないボランティアの方や素人の方が扱いやすいようになっており、自由にオープンデータなどのデータを入れ替えるだけで防災マップに反映されるようになっています。
今回のサービスを思いついたキッカケは?
この“逆マッシュアップ”はソフトウェア工学の新しい技法として最近注目を集め出していますが、もともとはバイオマス工学という全くかけ離れた分野の研究を円滑にすすめるために私たちが理化学研究所(理研)で考案した方法です。
従来の“マッシュアップ”は、人が提供するデータを、自分でプログラムを書いてアプリにするものです。一方で、研究者は逆に、自分の実験で得たデータを、人が作ったプログラムで処理しています。つまり、研究者は、マッシュアップの逆を円滑に進められるようにすることを望んでいたわけです。
そこで“逆マッシュアップ”では、データ所有者が主体的にアプリを作れるようにしています。データ所有者の主導で、クラウドの中にアプリのインスタンスを簡単に使えるようにして、そこに自分のデータをAPI化して挿入します。これまでと違う点はこれがオープンな環境でグローバルに行われるため、オープンデータの活用にぴったりであるという点です。
なぜ、今回のイベントに?
この“逆マッシュアップ”技術を一般に開放して、オープンデータの推進に広く使ってもらうことになったのは、震災後の復興支援を始めたのがきっかけでした。
誰でもこの技術を使えるようにと、下山紗代子が工夫してLinkData.orgというわかりやすいシステムを開発しました。また、豊田哲郎は、企業やアカデミアの有志と連携して「つながるオープンデータChallenge(通称、LOD Challenge)」という活動を立ち上げ、分野をこえて日本全体としてのオープンデータ運動を推進してきました。
今回のアースコミュニケーションアワードでは、防災がテーマになっており、日本気象さんとゼンリンデータコムさんから大変すばらしいAPIが提供されていたので、そのAPIを逆マッシュアップでつかえるようにしたアプリを福原和朗がLinkData.orgを使って作成し公開しました。それが今回の受賞対象となった作品「逆マッシュアップで誰でも作れる防災マップ」です。
事例
こちらの「逆マッシュアップで誰でも作れる防災マップ」は、ハッカソン 東京会場から勝ち残ったチームです。そして、9月のハッカソンからブラッシュアップをされている間になんとこのサービスを使っての事例ができました。
アプリ名 「横手市避難場所×混雑度 マッシュアップMAP」
オープンデータの推進に携わる秋田県横手市情報政策課の方が、自ら「逆マッシュアップ」を実践することで、ゼンリンデータコムのAPIを使ったアプリの開発に成功しました。
URL : http://linkdata.org/work/rdf1s842i/apps#work_information
実際に事例として利用をされましたが、反応はいかがでしたか?
秋田県横手市の職員の方がこのアプリを使って、同市のオープンデータを逆マッシュアップしたアプリを作成してくださいました。これには私たちも驚きました。自治体のオープンデータと企業のビッグデータがAPIの逆マッシュアップで簡単にむすびついたからです。従来は自治体がオープンデータを出してもプログラマがアプリにするまでそのデータは活用されませんでした。地方自治体の職員自らの手でデータからアプリを作成したのはおそらく全国初かもしれません。
横手市の職員の方からは、
“当市がオープンガバメントに取り組むにあたり、「データは出してみたが、なかなか成果を見える化できない」というのが、かかえている問題です。この点において、逆マッシュアップ技法は、アプリ開発のスキルを持たない自治体にとって非常に魅力的です。”
というコメントをいただきました。
特別賞 受賞作品
特別賞は、日本気象株式会社と株式会社ゼンリンデータコムの2社から出ました。
今回は、株式会社ゼンリンデータコム 特別賞を受賞したチームを紹介します。
ゼンリンデータコム 特別賞
サービス概要
既に世の中にはさまざまな素晴らしい防災アプリやサービスがあります。
しかし、もし実際に大きな地震や津波などの大災害に直面したら・・・
専用アプリって、インストールしたの覚えてます?
電話に出れる状況にあるでしょうか?
逃げるのに必死でスマホなんて触ってる場合ではないのでは?
でも、災害が発生した直後なら、何かできるんじゃないか。。
「I’m Here」は、そんな疑問から生まれたアプリ・サービスです。
この仕組みは真剣に世の中の役に立つはずだと信じていますので、必ず実現させていきたいと考えています。
今回のサービスを思いついたキッカケは?
311の地震の際、それまでにあった色々な防災に絡むアプリケーションはネットワークの問題などで使えないものが多かった。 また、実際に被害にあった時に、スマートフォンを起動してアプリを立ち上げるということは難しい。そうした問題を解決するためのサービスを考えたいと思いました。
参加されて、ご感想は?
緊急時に本当の意味で使えるアプリを作りたい、というチームの思いから生まれたサービスです。まだ色々な課題を残していますが、これを機にブラッシュアップを重ねていきたいと思っています!
企業賞 受賞作品
Microsoft賞
チーム Personal Cosmos プロジェクトチーム
サービス名「Personal Cosmos」
サービス概要
Personal Cosmosは、地球や惑星のデータを映し出すための、球状ディスプレイを制作するプロジェクトです。プロジェクターから発する光を、魚眼レンズに通して拡散し、球に投影するという仕組みのものを制作しています。
映像は、NASAやJAXAが提供しているデータを変換して映し出しています。
センサを利用し、手の動きによって映像を操作することもできます。
※Facebook ページ
今回のサービスを思いついたキッカケは?
Personal Cosmosは、International Space Apps Challenge(ISAC)というハッカソンイベントで生まれました。ISACはNASAやJAXAのデータを使ってアプリをつくるハッカソンで、みんなが宇宙や地球を身近に感じられるようなきっかけを作りたいと考え、プロジェクションマッピングで地球や惑星の画像を
映し出したら面白いんじゃないかと思いました。ISACのプレイベントのアイデアソンのときに、会場の日本科学未来館に展示されているGeo-Cosmosを見て「Geo-Cosmosを自分の部屋に置きたい」と思い、それをコンセプトにして制作しました。
今回、参加をしてみていかがでしたか?
大学・大学院で地球科学の研究をしてきたので「気象」や「防災」といったキーワードはとても馴染み深く、どのチームも素晴らしい作品を発表していてとても楽しめました。API情報を活用していないため本Awardへの応募を迷ったのですが、多くの方に興味を持って頂き、またスポンサー賞も頂く事ができたので、発表してよかったです。今後、より多くの人達に地球のデータを活用してもらえるよう、Personal Cosmosの活動を進めていきたいと思います。
今回のアワードは、一般公募と8月はアイデアソン、9月は毎週各地でハッカソンをおこないました。
本当にどれも素晴らしい作品ばかりでした。特別賞をとられた防災マシュアップは、9月の東京 ハッカソンでの準優勝チームの方達でした。ハッカソン後、開発を重ねられて秋田県横手市での事例まで生まれるという素晴らしい作品です。
特別賞を受賞されたTKOの皆さんは、ハッカソン 大阪会場から勝ち残られました。必ず実現させていきたいと言う熱い思いがプレゼンテーションにも反映されており、そこが非常に評価されたのではないでしょうか。
今回、一般公募からは受賞をされたのがPersonal Cosmos プロジェクトチーム。地球や惑星のデータを映し出すための、球状ディスプレイという斬新そして今後の利用が様々考えられるものを応募されました。
まさに、Earth Communicationいう様々なアイデア・考え方・独創で”地球とコミュニケーション” を皆さん形にされていました。次回も、生まれたサービスについてレポートをさせて頂きます。
今後の活動などもFacebookで公開をしていきます。
by 上田 哲弘