お世話になっております。

ループス直人です。

 

どういうわけか、「リーンスタートアップ」について人前で話をすることになってしまいました。まだ完全とは言えないのですが、講演資料の初版ができたので公開させていただきます。まだ文字々々しているので、これからもうちょいブラッシュアップする予定です。

 

 
ちなみに講演のお知らせはこちらです。来週10月1日ですが、無料ですのでよろしければどうぞ
 

「スタートアップ」という呼称から、「起業家」向けの印象が強いリーンスタートアップですが、大企業の新規事業開発やプロジェクト・マネジメントにも十分応用できる、非常に洗練されたマネジメント手法です。今回の資料は、エリックリースの「リーンスタートアップ」、スティーブン・G・ブランクの「アントレプレナーの教科書」をベースとしたエッセンスの紹介になります。

 

エリックリースの考え方については、以下の記事もご参照ください。

 

過去記事 : リーンスタートアップの図解付き解説-トヨタのDNAを継ぐ新規事業マネジメントの極意

 

リーンスタートアップの背景

リーンスタートアップは、スティーブン・G・ブランクの「顧客開発モデル」をベースにしています。彼は、自身がコンサルティングを行う過程で、新規事業開発で発生する問題と議論に一定のパターンがあるのではないかと考えました。そして、そのパターンを探るうちにより構造的な問題に行き当たります。

 

勝者に共通するのは、上層部の経営陣が早い段階から頻繁に顧客と接しながら開発されている。一方、失敗する例 (スティーブによれば、ほとんどの企業がそうしているというのですが) は、新製品投入を自社内でのマーケティング活動のみに依存している。と。

 

 

私も、これまでにいくつかの事業開発プロジェクトにアドバイザーやPMとして関わってきた中で、数千万円から数億円という予算が、市場調査結果と事業責任者の分析に基づいた直感によって決定され執行されるプロセスを目にしてきました。プロジェクトの計画段階で大きな予算をかけ、計画の精度を高めることは、事業計画において当然存在するプロセスで、動くお金が大きければ大きいほど計画にもたくさんの資金が投入されます。乏しい経験による感覚値ですが、構築コスト1億円程度のビジネスでも数百万円単位、10億を超えるようなプロジェクトだと設計だけで1,000万円以上の予算が投下されることもあります。

 

確かに、そうせざるを得ないケースもあります。しかし、事業が計画書通り進むことはほとんどないというのが、リーンスタートアップを支持する人々の結論で、これは私の経験からも共感できます。最終的に成功するケースも、そうでない場合も、ローンチ後は常に予測不可能の状態に見まわれながら臨機応変な対応を求められます。

 

最終的な成功とは、その「臨機応変な対応」の成果に依る部分の方が多いのではないかと思うのです。

 

MITメディアラボ所長の伊藤穣一氏は、リーンスタートアップの本質について以下のようなコメントを寄せています。

 

リーン・スタートアップの本質をわかりやすく表現すると「地図を捨ててコンパスを頼りに進め」ということになる。イノベーションに必要なコストが劇的に下がった現代においては、あるプロダクトを生み出すために、それを成功に導くまでの「地図」を描こうとすると、その作業だけでプロダクトを開発する以上のコストがかかってしまう。たとえ地図ができたとしても、イノベーションが急速に進むいまの世の中では、プロダクトを開発している途中でゴールが変わり、地図そのものが陳腐化する可能性が高い。こうした状況下においてはむしろ地図などはじめから持たずに、市場の変化を敏感に感じ取るコンパスを手に、しなやかにプロダクトの方向性を変えていった方がよい。

 

書籍「リーンスタートアップ」解説(P390)
MITメディアラボ所長 伊藤穣一

 

新製品、新規事業、スタートアップ、規模や前提条件は違えど、「限られた予算が尽きる前に、事前に把握不可能な顧客ニーズを把握し、拡大再生産への道筋を道筋をつけること」という点では共通しています。その道筋さえついたならば、追加投資でも、事業売却でも選択肢はいくらでもあります。

 

大企業の新規事業も、スタートアップのベンチャーも、どちらも顧客、それも自社製品を最初に受け入れてくれる「最初の顧客」とその真のニーズを検証できていないことに (予測精度の差はあれど、) 変わりはないわけです。

 

 

 

ヒューリスティックな事業マネジメント手法

まあ、そんなわけで、現代はよりヒューリスティックな事業のマネジメント手法が求められている、と。

 

特に製品を投入する市場が「新規市場」、つまりまだ顧客ニーズが顕在化していない市場を開拓する場合、製品開発と並行して少しでも早くアントレプレナーのビジョンに大してお金を払ってくれる「まだ見ぬ顧客」、エバンジェリストと出会い、ニーズと製品仕様の一致を確認し、初期市場においてビジネスが成立するという確証を得ないといけないわけです。

 

 

 

そう、問題は「キャズム越え」のずっと前、最初の顧客に出会うところにあります。それらの顧客のニーズを把握することに続き、販売の筋道を立てること(営業ロードマップ)、それを再現可能にすること。

 

そして何より重要なのが、それらのプロセスを正しく測定し、検証し、カイゼンし続けること。

 

この素晴らしいメソッドを、起業家だけのものにしておくのはもったいないと思いませんか?豊富なリソースを持つ大企業だって、その強みを活かすことでアジャイルでヒューリスティックなものづくりができるはず。

 

もしご興味があれば、是非原点をご覧いただければと思います。

 

 

リーン・スタートアップの本質をわかりやすく表現すると「地図を捨ててコンパスを頼りに進め」ということになる。イノベーションに必要なコストが劇的に下がった現代においては、あるプロダクトを生み出すために、それを成功に導くまでの「地図」を描こうとすると、その作業だけでプロダクトを開発する以上のコストがかかってしまう。たとえ地図ができたとしても、イノベーションが急速に進むいまの世の中では、プロダクトを開発している途中でゴールが変わり、地図そのものが陳腐化する可能性が高い。こうした状況下においてはむしろ地図などはじめから持たずに、市場の変化を敏感に感じ取るコンパスを手に、しなやかにプロダクトの方向性を変えていった方がよい。

 

書籍「リーンスタートアップ」解説(P390)

MITメディアラボ所長 伊藤穣一


by 許 直人
RSS情報:http://media.looops.net/naoto/2012/09/25/the-lean-startup-v0-1/